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微生物検査

索 引
71歳、男性の吸引痰からStreptococcus pneumoniaeが検出された症例
①右側スライド
 血液を含む粘液性の薄黄色を呈した吸引痰の画像を示した。
②左側スライド
 71歳、男性、抗菌薬投与の無い吸引痰のグラム染色像で、1000倍の強拡大にて多数のグラム陽性双球菌が観察され、かつ鮮明な好中球の背景が認められることより、急性炎症のStreptococcus pneumoniae(肺炎球菌)感染症と推定された。

・肺炎球菌の薬剤耐性菌判定基準

疾患 薬剤投与法 S(感性) I(中程度) R(耐性)
非髄膜炎 PC注射剤 ≦2 4 ≧8
PC経口剤 ≦0.06 0.12~1 ≧2
髄膜炎 PC注射剤 ≦0.06   ≧0.12

μg/mL

喀痰からStreptococcus pneumoniaeが検出された症例
①右側下スライド
 100倍の弱拡大にて、多数の好中球が認められ、Geckler分類では5群(白血球数>25個、扁平上皮数<10個)であった。
②右側上、左側上・下スライド
 1000倍の強拡大にて、多数のグラム陽性双球菌(菌体の周囲が白く抜けた莢膜も認める)が観察され、かつ鮮明な好中球とフィブリンが析出した背景が認められる事より、急性炎症のS. pneumoniae(肺炎球菌)感染症と推定された。

・ Geckler分類(100倍での鏡検)

群別 白血球数 扁平上皮数
1 <10 >25
2 10~25 >25
3 >25 >25
4 >25 10~25
5 >25 <10
6 <25 <25
 ※数値は1視野あたりの細胞個数を表している。
 ※良質な検体と判断できる4~5群の喀痰を採取する。
急性炎症時の喀痰からStreptococcus pneumoniaeが検出された症例
①左側上・下スライド
 鮮明な好中球と多数のグラム陽性双球菌が観察されたため、急性炎症時のStreptococcus pneumoniae(肺炎球菌)感染と推定された。
②右側上・下スライド
 同一患者に抗菌薬が投与され結果、多数の好中球は認められるが、S. pneumoniaeの菌体は認められなかった。抗菌薬投与が有効な場合には、すみやかに臨床材料から細菌が消滅するため、グラム染色は抗菌薬の有効性を判断するには最も安価で迅速性に適した検査法のひとつと考えて良い。
 培養検査の結果、Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)と同定された。
8歳、男児の吸引痰からEnterobacter cloacaeとStreptococcus pneumoniaeが検出された症例
 1000倍の強拡大にて観察した結果、少数の好中球(急性から慢性に移行過程と推定)とグラム陽性双球菌が観察され、かつ細長いグラム陰性桿菌も認められた。グラム陽性双球菌はS. Pneumoniae (肺炎球菌)を疑ったが、グラム陰性桿菌は細長い形態を呈していたことより、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)を推定した。
 培養検査の結果、グラム陽性球菌はStreptococcus pneumoniaeであったが、グラム陰性桿菌はP. aeruginosaではなく、腸内細菌科細菌のEnterobacter cloacaeと同定された。

※腸内細菌科細菌は丸太いグラム陰性桿菌として認識されているが、本症例のように非発 酵性グラム陰性桿菌と思わせる形態を示す場合もあるため、起炎菌の推定には十分注意する必要がある。

喀痰での抗菌薬投与後におけるStreptococcus pneumoniaeの症例
 本症例では好中球の破壊像が観察されるため、感染から時間が経過した喀痰と推定される。また、グラム染色像はStreptococcus pneumoniae(肺炎球菌)と推定される形態を示しているが、すべてグラム陰性双球菌として染色された。この要因としては、抗菌薬の投与が原因と考えられた。全体的にはグラム陰性桿菌様の形態も観察されたため、グラム陽性双球菌と陰性桿菌との混合感染を疑った。
 同患者の髄液および咽頭粘液、鼻汁分泌物からは多数のS. pneumoniaeが培養で検出された。本症例の血液培養では僅かにS. pneumoniaeのみが検出された。従って、グラム陰性桿菌様と思われた細菌は、グラム染色の陰性化にてS. pneumoniaeをグラム陰性桿菌と見間違えた。このようにS. pneumoniaeは自己融解あるいは抗菌薬の投与によりグラム陰性化し易い傾向にあるため、十分に臨床背景を考慮しながら鑑別することが重要と言える。
喀痰からStaphylococcus aureus(MRSA)が検出された症例
 グラム染色では好中球に貪食された多数のグラム陽性球菌が認められるが、一部の菌体では陰性化した像も認められた。
 貪食された菌体で陰性化する要因としては、細菌が貪食されたことで細菌の増殖能力が低下し、かつ細胞壁の合成も阻害されるため、細胞壁が薄くなったことが要因と考えられる。
 培養検査の結果、Staphylococcus aureus(MRSA)と同定された。
1歳、男児の吸引痰からStreptococcus pneumoniaeMoraxella(Branhamella)catarrhalisが検出された症例
①左側上(1000倍)、右側上(拡大)スライド
 好中球に貪食されたグラム陽性短桿菌様の形態が観察された。観察時点ではCorynebacterium属を最も疑った。培養検査の結果、Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)と同定された。

※グラム染色所見と培養結果が異なった要因としては、抗菌薬の使用(不明)により双球菌状の形態がフィラメント化したことで短桿菌様の形態に観察されたと考えられた。

②左側下(1000倍)、右側下(拡大)スライド
 好中球に貪食されたグラム陰性双球菌の形態が観察された。観察時点ではMoraxella(B)catarrhalisを最も疑った。
 培養検査の結果、 Moraxella(B) catarrhalisと同定された。

※喀痰のグラム染色所見で貪食されたグラム陰性双球菌の形態が観察された場合には、Moraxella(B)catarrhalisを念頭において検査することが重要と言える。

35歳、女性の喀痰からMoraxella(Branhamella)catarrhalisが検出された症例
①右側上、右左側下スライド
 喀痰の好中球に貪食された多数のグラム陰性双球菌が観察された。形態的にはNeisseria gonorrhoeae(淋菌)やNeisseria meningitidis(髄膜炎菌)と同様の染色像を呈するが、呼吸器外来の自然痰のため、 Moraxella(B)Catarrhalis が疑われた。
 培養検査の結果、Moraxella(B) catarrhalisと同定された。

Moraxella(B) catarrhalis の特徴

  1. グラム陰性双球菌(直径1.0mm)で腎臓を2個接合した形態を呈する。
  2. 莢膜、芽胞、鞭毛は保有していない。
  3. 至適温度:37℃、偏性好気性菌で血液寒天培地および普通寒天培地に 発育できる。
  4. カタラーゼ、チトクロムオキシダーゼ、Dnase産生能は陽性で、硝酸塩を還元できる。ただし、糖の分解性は認められない。
  5. 健常者の鼻咽腔に常在するが、時に呼吸器感染症、中耳炎、結膜炎を起こす。
  6. 90%以上はペニシリナーゼ(β-ラクタマーゼ)を産生するため、ペニシリン系抗菌薬に耐性を示す。

※ペニシリン系の抗菌薬を分解し、肺炎球菌やインフルエンザ菌を保護する作用あり。

※治療にはβ-ラクタマーゼ阻害剤との併用薬やセフェム系、カルバペネム系抗菌薬が有効である。

喀痰からCorynebacterium pseudotuberculosisが検出された症例
 ハの字形で短桿菌状のグラム陽性桿菌であるCorynebacterium spp.を推定した。Corynebacterium spp.は皮膚あるいは口腔内に存在する常在菌として考えられているが、免疫が低下した患者などでは日和見感染菌の起炎菌となる場合があるため、患者の背景を参考に検査を進めることが重要である。グラム染色でCorynebacterium spp.の菌種を推定することは出来ない。
 培養検査の結果、Corynebacterium pseudotuberculosisと同定された。
喀痰からKlebsiella pneumoniaeが検出された症例
 喀痰のグラム染色では丸太い短桿菌がみられ、一般的には大腸菌などの腸内細菌科細菌が疑われるが、一部の菌体では菌体の周囲が白く抜けた莢膜と思われる像が観察された。Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)は太長いグラム陰性桿菌と教科書には記載されていることが多いが、実際には大腸菌と思われるような丸太い短桿菌として観察されることが多いので注意する必要がある。
61歳、男性の喀痰からPseudomonas aeruginosaが検出された症例
 喀痰のグラム染色では好中球に貪食されたグラム陰性桿菌の伸長化が観察された。本症例では好中球に貪食されたグラム陰性桿菌であることより、起炎菌の可能性は極めて高い。
 本症例で貪食されたグラム陰性桿菌が腸内細菌科細菌か非発酵性グラム陰性桿菌かを鑑別するのは困難と言える。
 伸長化はスフェロプラストと呼ばれ、細胞壁合成阻害薬(主にβ-ラクタム系抗菌薬)によって起こる。通常、 β-ラクタム系抗菌薬は細胞壁の合成を阻害するため細胞壁が薄くなる。細胞壁が薄くなると菌体内の内圧が高いため、細菌は伸長化しながら最終的には溶菌して死滅する。ただし、伸長化の過程で抗菌薬の影響が無くなると伸長化した菌体は回復し、数箇所に隔壁が形成され細菌の分裂がすぐに始まる。そのため、細胞壁合成阻害薬を使用したグラム陰性桿菌ではPAE(post antibiotic effect;ある抗菌薬が微生物に短時間接触した後に持続してみられる増殖抑制 効果)は無いと言われている。
 培養検査の結果、 Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)と同定された。
70歳、男性の喀痰からM型のPseudomonas aeruginosaが検出された症例
①左右側スライド
 菌体の周囲にピンク色に薄く染まった物質は、グリコカリックスと呼ばれ、アルギン酸と呼ばれる粘性の高いムコ多糖類で構成されている。このグリコカリックスが菌体を覆い込んで薄層を形成することをバイオフィルムと言う。バイオフィルムは消毒薬や白血球などの貪食にも抵抗性を示す性質がある。
 Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)のバイオフィルム形成は、遺伝性疾患である嚢胞性線維症患者に対する緑膿菌感染の原因となる。このバイオフィルムは気道内の粘液に形成され、P. aeruginosaの生息場所となる。
 M型のKlebseilla pneumoniaeでも菌体の周囲は莢膜の保有によりピンク色に染まるが、その染まり方は菌体周囲のみに対して、M型のP. aeruginosa はグリコカリックスが不規則に数個の菌体を覆うように存在している。
 培養検査の結果、M型Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)と同定された。

・多剤耐性P. aeruginosaの判定基準
 多剤耐性緑膿菌(MDRP)は5類感染症で定点把握の対象菌種である。

※IPM≧16mg/mL, AMK≧32mg/mL, CPFX≧4mg/mLの条件を満たした場合にMDRPと判断する。

喀痰からM型のPseudomonas aeruginosaが検出された症例
 菌体の周囲を覆うピンク色に薄く染まった物質は、アルギン酸と呼ばれる粘性の高いムコ多糖類でグリコカリックスと呼ばれている。このグリコカリックスが菌体を覆い込んで薄層を形成することをバイオフィルムと言う。バイオフィルムは消毒薬や白血球などの貪食にも抵抗性を示す性質がある。本症例では菌体の湾曲化とグリコカリックス様の物質を認めた。
 培養検査の結果、M型Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)と同定された。
 Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)のバイオフィルム形成は、遺伝性疾患である嚢胞性線維症患者に対する緑膿菌感染の原因となる。このバイオフィルムは気道内の粘液に形成され、P. aeruginosaの生息場所となる。

・多剤耐性P. aeruginosaの判定基準
 多剤耐性緑膿菌(MDRP)は5類感染症で定点把握の対象菌種である。

※IPM≧16mg/mL, AMK≧32mg/mL, CPFX≧4mg/mLの条件を満たした場合にMDRPと判断する。

吸引痰から多剤耐性Acinetobacter baumaniiを検出した症例
 Acinetobacter baumaniiはグラム陰性双球菌として一般的に観察されるが、本症例のように短桿菌として認められる場合もあるため、本症例でA. baumaniiを推定することは困難である。
 培養検査の結果、多剤耐性Acinetobacter baumaniiと同定された。

Acinetobacter baumaniiの特徴

  1. 土壌や下水などの自然界に広く生息し、病院内の環境からも検出される。
     ※院内感染菌として重要。
  2. グラム陰性球桿菌(0.9×1.6~1.5×2.5mm)で芽胞・莢膜・鞭毛は保有していない。
     ※形態はMoraxella (B) catarrhalisに類似。
  3. チトクロムオキシダーゼ:陰性、カタラーゼ:陽性の偏性好気性菌で5%ラクトース:陽性(黄色)である。
  4. 尿路感染症や血管留置カテーテルによるライン菌血症を起こす。
  5. 薬剤耐性アシネトバクター(MDRA)は五類感染症の定点把握対象菌種。
     ※IPM≧16mg/mL, AMK≧32mg/mL, CPFX≧4mg/mL を満たした場合をMDRAと判断する。
     ※MBLやOXA型(クラスD)β-ラクタマーゼ産生が多い。
  6. 医療従事者による接触感染が主流である。

喀痰からHaemophilus influenzaeが検出された症例
①左右側スライド
 急性の気道感染を発症した患者の喀痰で、新鮮な好中球が多数観察された。好中球のなかに、小さなグラム陰性短桿菌が貪食されており、本症例ではH. influenzae が最も強く疑われた。
 培養検査の結果、Haemophilus influenzaeと同定された。

Haemophilus influenzaeの特徴

  1. 主要な菌種には H. influenzae, H. parainfluenzae, H. ducreyiなど14菌種が存在する。
  2. 発育にはX因子(ヘミン)とV因子(NAD)の両方が必要である。
  3. ウマ・ウサギ血液寒天培地には発育するが、ヒト・ヒツジ血液寒天培地には発育しない。
  4. 莢膜分類は6つの型があり、病原的にはb型(髄膜炎、敗血症の大部分)が重要で、喀痰由来は型別不能が多い。
  5. ペニシリナーゼ産生株は20%程度で、BLNARが急増(小児)している。
     ※BLNAR: β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(小児の40%がBLNAR)菌である。
  6. 衛星現象: ヒト・ヒツジ血液寒天培地で黄色ブドウ球菌の周囲に発育する現象である。

喀痰からHaemophilus influenzaeが検出された症例
①左右側スライド
 急性の気道感染を発症した患者の喀痰で、粘液性を伴う新鮮な好中球が多数観察された。好中球のなかに、小さなグラム陰性短桿菌が貪食されており、本症例ではH. influenzaeが疑われた。
 培養検査の結果、Haemophilus influenzaeと同定された。

Haemophilus influenzaeの特徴

  1. 主要な菌種にはH. influenzae, H. parainfluenzae, H. ducreyi など14菌種が存在する。
  2. 発育にはX因子(ヘミン)とV因子(NAD)の両方が必要である。
  3. ウマ・ウサギ血液寒天培地には発育するが、ヒト・ヒツジ血液寒天培地には発育しない。
  4. 莢膜分類は6つの型があり、病原的にはb型(髄膜炎、敗血症の大部分)が重要で、喀痰由来は型別不能が多い。
  5. ペニシリナーゼ産生株は20%程度で、BLNARが急増(小児)している。
     ※BLNAR: β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(小児の40%がBLNAR)菌である。
  6. 衛星現象: ヒト・ヒツジ血液寒天培地で黄色ブドウ球菌の周囲に発育する現象である。

口腔内常在菌の混入が疑われた4症例
①左側上スライド
 右側部位は慢性の呼吸器感染像が疑われるが、中央には多数の扁平上皮細胞のみが認められ、微生物検査には適しない検査材料と判断した。
②右側上スライド
 カルバペネム使用で炎症は抑制されているが、フィブリンの析出が多いため、強い炎症が起こったと推定される。なお、本症例でも扁平上皮細胞の混入が認められ、微生物検査には適しない検査材料と判断した。
③左側下スライド
 胃内容物が逆流し、喀痰に混入したでんぷんと思われる球状の物質が認められた。本症例も微生物検査には適しない検査材料と判断した。
④右側下スライド
 好中球と扁平上皮が入り混じった喀痰で、好中球のなかに貪食されたグラム陰性短桿菌や微小なグラム陽性球菌が観察された。本症例は唾液誤嚥の可能性があることが示唆された。この場合の起炎菌は口腔内常在菌が大部分である。
唾液誤嚥による誤嚥性肺炎が疑われた4症例
①右側上スライド
 弱拡大(100倍)で観察した喀痰のグラム染色像で、好中球の集塊に扁平上皮の混入が僅かに認められる。Geckler分類では5群(白血球数>25個/視野、扁平上皮数<10個/視野)と推定され、微生物検査に適した検体と判断された。
②左側上スライド
 好中球のなかに形態が若干変化したグラム陰性短桿菌や微小なグラム陽性球菌の貪食像が観察された。本症例は唾液誤嚥による誤嚥性肺炎の可能性が示唆された。
③左右側下スライド
 フィブリンの析出した好中球のなかに、貪食された僅かなグラム陽性球菌とグラム陰性双球菌様の形態が観察された。唾液誤嚥による誤嚥性肺炎では口腔内に常在する細菌が起炎菌となるため、培養検査では口腔内常在菌のみが検出されることが多い。
口腔内常在菌の混入が疑われた喀痰の1症例
 本症例では粘液成分は多数認められるが、好中球および扁平上皮細胞は認められない。 Geckler分類では6群(白血球数<10個、扁平上皮数<10個)と推定された。一方、グラム陽性双球菌は多数存在し、特に川の流れのようにグラム陽性双球菌が観察された。このような染色像では口腔内常在菌の可能性が極めて高いので、観察する際には注意する必要がある。
喀痰からStreptococcus pneumoniaeが検出された症例
①左側(血液寒天培地での発育像)スライド
 Streptococcus pneumoniaeは肺炎球菌と呼ばれ、ヒトに対しては髄膜炎、敗血症、中耳炎、肺炎の原因菌となる。通常、炭酸ガス環境下ではスライド左側の陥没型を呈するが、時にスライド右側のようにM型のタイプを形成することがある。一般的にM型を集落を形成させるためには嫌気培養が実施されている。
②右側(グラム染色像)スライド
 強拡大にて、菌体の周囲が白く抜けたグラム陽性双球菌が観察されたため、S. pneumoniaeと推定された。培養検査の結果、Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)と同定された。

Streptococcus pneumoniaeの特徴

  1. グラム陽性双球菌(0.5~1.0mm)の配列、莢膜は有するが、芽胞、鞭毛は保有しない。
  2. 通性嫌気性菌(炭酸ガスおよび嫌気培養の方が集落形成は大きい)である。
  3. 血液成分含有培地には発育するが、普通寒天、普通ブイヨンには未発育である。
  4. オプトヒン試験:感性 5mgオプトヒン含有ディスクで直径14mm以上の発育阻止。
  5. 胆汁溶解試験:陽性 10%デオキシコール酸ナトリウムを滴下すると菌液が透明となる。
  6. 自己融解作用が強いため、集落の中央が陥没する。
  7. 薬剤耐性は細胞壁の変異による。

喀痰からStaphylococcus aureusが検出された症例
①右側スライド
 グラム染色ではグラム陽性球菌の塊が観察された。本症例では菌体の周囲がピンク色を呈した莢膜様物質に覆われているのが特徴と言える。このピンク色を呈した莢膜様物質はStaphylococcus aureus(黄色ブド ウ球菌)が産生するコアグラーゼによりフィブリノーゲンがフィブリンとして菌体周囲に付着した像と推定される。したがって、Staphylococcus spp.で菌体の周囲がピンク色を呈した場合にはStaphylococcus aureusの可能性が高いと判断できる。ただし、 MRSAか否かの鑑別はできない。
②左側スライド
 ヒツジ血液寒天培地にて35℃の炭酸ガス環境下で24時間培養した時のS. aureusの発育集落像を示した。通常のS. aureusではS型集落を形成するのが一般的であるが、本症例のようにM型を呈する集落は稀のため、見落とさないように注意する必要がある。
 培養検査の結果、Staphylococcus aureus(MRSA)と同定された。
チョコレート寒天培地/ヒツジ血液寒天培地の2分画に発育したHaemophilus influenzaeの症例
①右側スライド
 Haemophilus influenzaeの発育には、ヘミンを含むX 因子およびV因子が必要である。 ヒツジ赤血球内にはV 因子を破壊する酵素であるdiphosphopyridin nuclease や nicotinamide adenine dinuclease が大量に存在するため、ヒツジ血液寒天培地では発育できない。そこで、NAD 含有のディスクを置くことで、ディスク周囲にH. influenzaeの発育が認められる。
②左側スライド
 チョコレート寒天培地に発育する理由は、V 因子破壊酵素が加熱処理により熱変性されることによって, V 因子が破壊されなくなるためである。

Haemophilus influenzaeの特徴

  1. 通性嫌気性のグラム陰性短桿菌(小桿菌)で莢膜をもつ菌株も存在する。
  2. 発育にはX因子とV因子の両方が必要である。
  3. 5~10%炭酸ガス培養で発育が促進する。
  4. カタラーゼ・チトクロムオキシダーゼ試験は陽性、血液寒天培地は非溶血、ポルフィリン試験は陰性である。
  5.  ※ポルフィリン試験:はⅩ因子非要求菌種はデルタ-アミノ-レブリン酸からポルフィリンを合成する酵素を有する。
  6. 莢膜分類は6つの型があり、病原的にはb型(髄膜炎、敗血症の大部分)が主体、喀痰由来株は型別不能が多い。
  7. 化膿性髄膜炎、咽頭炎、心膜炎、肺炎、骨髄炎などを起こす。
  8. ペニシリナーゼ産生株:20%程度、PBPの変異による耐性菌:BLNARが急増(小児)。

血液培養からEnterococcus faeciumが検出した症例
①左側スライド
 血液培養の症例で、短い連鎖状のグラム陽性球菌が観察されるため、Streptococcus agalactiae(B群溶血連鎖球菌)などの細菌を推定したが、培養および同定検査を実施した結果、Enterococcus faeciumであることが判明した。 Enterococcus spp.の場合には、本症例のように連鎖状の形態を示すことがある。
②右側スライド
 ヒツジ血液寒天培地とBTB乳糖加寒天培地にて、 35℃の好気的環境下で24時間培養した時のE. faeciumの発育集落像を示した。本症例では、ヒツジ血液寒天培地にStaphylococcus spp.を疑うような白色の集落が観察され、 Enterococcus spp.特有の白灰色の形態は認められなかった。
 培養検査の結果、Enterococcus faeciumと同定された。

Enterococcus spp.の特徴

  1. グラム陽性球菌(0.5~1.0mm)で双球菌または短い連鎖状の配列を呈する。
  2. 血液寒天培地ではα~γ溶血を示すカタラーゼ陰性の通性嫌気性菌で、Lancefieldの分類ではD群に含まれる。
  3. 治療薬ではE. faecalisの場合には ABPC、E. faeciumではVCMが基本とされている。
  4. 接触感染による院内感染が主流であり、耐性遺伝子にはVanA (プラスミド由来)、VanB(プラスミド・染色体由来)、VanC, VanD, VanE, VanG (染色体由来)などがある。
  5. VRE感染症は五類感染症(全数把握)に含まれる。

喀痰からBacillus cereusが検出された症例
①左側スライド
 好気的環境下における35℃、24時間のマンニット卵黄寒天培地でのBacillus cereusの発育集落像を示した。 B. cereusはレシチナーゼ産生菌のため、集落の周囲が白濁する特徴がある。 なお、Bacillus anthracisはレシチナーゼ非産生菌のため、マンニット卵黄寒天培地では白濁を生じない。
②右側(グラム染色像)スライド
 強拡大にて、大型の芽胞を有するグラム陽性桿菌が観察される。なお、本菌の形態のみでは、Bacillus spp.かClostridium spp.の鑑別は不可能である。

Bacillus cereusの特徴

  1. 土壌、空気中などの自然界に広く存在する。
  2. 通性嫌気性の大きなグラム陽性有芽胞桿菌である。
  3. 周毛性鞭毛を有するため運動性はあるが、莢膜は保有していない。
  4. 普通寒天培地に良く発育し、血液寒天培地ではβ溶血を認める 。
  5. 卵黄寒天培地ではレシチナーゼ産生が確認できる。
  6. カタラーゼ:陽性、硝酸塩を還元する。
  7. 腸管毒素による食中毒を起こす(外毒素)。
  8. 芽胞形成菌のため消毒薬に抵抗性を示す。
  9. ペニシリン、セフェム系には耐性傾向を示す。
  10. ヒトへの感染経路は接触感染が主体である。

喀痰からSerratia marcescensが検出された症例
①左側スライド
 BTB乳糖加寒天培地に発育したS. marcescensの画像を示した。Serratia spp.は水溶性のプロジギオシンと呼ばれる赤色の集落を形成するのが特徴のひとつである。ただし、近年では色素を産生しない菌株も臨床現場では多く検出されている。
②右側スライド
 ヒツジ血液寒天培地に発育したS. marcescensの画像を示した。

Serratia spp.の特徴

  1. S. marcescens, S. liquefaciensを含む10菌種が存在する。
  2. グラム陰性小桿菌(0.5~0.8×0.9~2.0mm )で運動性有り。
  3. 水や土壌に広く分布し、病院内では排水口などの湿潤環境に多く生息している。
  4. 日和見感染や院内感染として、尿路感染・呼吸器感染・術後感染・血液感染・髄膜炎などを起こす。
  5. VP反応は陽性、クエン酸利用能は陽性、リジン・オルニチン脱炭酸反応は陽性、Dnase産生は陽性である。
  6. ESBL( Extended-spectrum β-lactamase )、メタロβ-ラクタマーゼ産生株がみられる。
  7. 院内感染は接触感染経路によって伝播する。

54歳、女性の吸引痰からLegionella pneumophilaが検出した症例
①左側上スライド
 本症例は基礎疾患に再生不良性貧血があり、カルバペネム系抗菌薬の投与を受けていた患者で、血液・生化学的検査ではCRPおよびCPKが極めて高値を示す特徴がある。
 微生物検査に提出された検体はピンク色の漿液化痰であった。なお、ピンク色を呈した喀痰が提出された場合には、Legionella感染症も疑う必要がある。
②左右側下スライド
 Legionella spp.の選択培地である左:BCYEα寒天培地、右:GVPC BCYEα寒天培地での発育像を示した。培養は35℃の好気的環境下で5日間培養した。その結果、純培養状にLegionella spp.の発育が認められ、確認検査としてヒツジ血液寒天培地には未発育であることを確認した。
 本症例はMALDI Biotyterによる質量分析の結果、Legionella pneumophilaと同定された。 なお、尿中抗原検査でも陽性が認められた。

Legionella spp.の特徴

  1. グラム陰性桿菌(0.3×0.9~2.0×5.0mm)で1~2本の極鞭毛で運動し、莢膜・芽胞は保有しない。
  2. 発育にはL-システインと鉄化合物が必要である。
  3. 自然環境の水、空調の冷却水、温泉水、土壌から分離される。
  4. 血清型には15種類あるが、患者由来はセロタイプ1である。
  5. 迅速診断の尿中抗原はセロタイプ1のみ反応する。
  6. 患者由来検体はグラム染色では染まらないのでヒメネス染色を実施する。
  7. 肺炎型とポンテアック熱型があり、レジオネラ症は四類感染症に含まれる。
  8. 細胞内寄生菌であり、エリスロマイシン・リファンピシン有効、β-ラクタム薬は無効である。

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