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微生物検査

[菌種別]Escherichia

胆汁に含まれていた抗菌薬の影響を示した症例
■分 類:一般細菌
■材 料:胆汁
■その他:-
■染色法:-
■菌種名:Escherichia coli
■培地名:BTB乳糖加寒天培地
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説
 BTB乳糖加寒天培地に臨床検体の胆汁を塗布した結果、塗布した部位にはEscherichia coliの発育阻止作用が認められた。本症例の患者背景を調査した結果、抗菌薬投与中の検体であることが判明した。胆汁を白金耳にて画線培養すると、塗布部位から離れるに従い、抗菌薬が希釈されるため E. coli は正常な形態の発育を示した。なお、塗布部位のなかに存在する微小な集落を薬剤感受性検査した結果、薬剤耐性傾向が確認された。

・ 本症例での注意点
 微生物検査を依頼する場合には抗菌薬投与前の臨床検体を提出するのが基本である。ただし、抗菌薬投与中の臨床検体を提出する場合には抗菌薬の血中濃度が最も低い時期に検体を採取し提出することが望ましい。

カルバペネム系抗菌薬の影響が疑われた症例
■分 類:一般細菌
■材 料:尿
■その他:-
■染色法:グラム染色
■菌種名:Escherichia coli
■培地名:-
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説
 Escherichia coli はグラム陰性桿菌の腸内細菌科細菌に含まれ、ラクビーボール様の形態を呈する。カルバペネム系抗菌薬の投与を受けたグラム陰性桿菌の場合にはバルジ状の形態が時に観察されることがある。バルジ状を示すにはPBP2およびPBP3の細胞壁に阻害があると認められる。

PBP2:細胞形態の維持に必要な蛋白
PBP3:隔壁形成に関する蛋白

 培養検査の結果、Escherichia coli(大腸菌)と同定された。
膿汁から複数菌が検出された症例
■分 類:一般細菌
■材 料:非開放性膿
■その他:-
■染色法:グラム染色
■菌種名:Eschrichia coli
     Klebsiella pneumoniae
     Enterobacter cloacae
     Enterococcus faecalis
     Enterococcus faecium
     Clostridium perfringens
     Bacteroides fragilis
     Bacteroides thetaiotaomicron
■培地名:-
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説

①左側上スライド
 腹腔内膿瘍の検体で、悪臭を伴う褐色の膿汁であった。

②右側(グラム染色像)スライド
 好中球には複数の貪食された細菌が多数認められ、周囲にもグラム陽性球菌からグラム陰性桿菌、グラム陽性桿菌などが多数観察された。

③左側下スライド
 培養検査の結果、好気性菌はEschrichia coli, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Enterococcus faecalis, Enterococcus faecium と同定された。
 嫌気性菌はClostridium perfringens, Bacteroides fragilis, Bacteroides thetaiotaomicron と同定された。なお、 Clostridium spp.は周囲が不均一性の集落を形成する特徴がある。

・ 嫌気性菌を疑うポイント

  1. 悪臭のある臨床検体
  2. 閉鎖性の膿瘍(脳膿瘍、肺膿瘍、皮下膿瘍など)
  3. 腹腔内感染症(肝膿瘍、横隔膜下膿瘍など)
  4. 婦人性器感染症(膣炎、付属器炎など)
  5. 塗抹検査陽性、好気培養陰性の検体
  6. アミノグリコシド系薬が無効な感染症
  7. 抗菌薬投与後の下痢症
  8. ABPCやCEZが無効な感染症
  9. 壊疽、土で汚染された壊死組織
  10. 膿汁中のドルーゼ(硫黄顆粒、菌塊)

腹腔内膿瘍の混合感染症例
■分 類:一般細菌
■材 料:非開放性膿
■その他:-
■染色法:-
■菌種名:Klebsiella pneumoniae
     Escherichia coli
     Enterobacter cloacae
     Enterococcus faecalis
     Staphylococcus aureus (MRSA)
     Bacteroides fragilis
     Bacteroides thetaiotaomicron
     peptostreptococcus spp.
■培地名:-
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説

①左側スライド
 腹腔内膿をBTB乳糖加寒天培地に塗布し、35℃の好気的環境下で24時間培養した時の発育集落像を示した。 多数の細菌の発育が観察される。Klebsiella pneumoniae:2+は粘液性に富んだ細菌で、乳糖分解性のためBTB乳糖加寒天培地では黄色の集落を形成し、白金線などで集落に触れると糸を引く菌株もある。 Escherichia coli:2+は乳糖分解性のためBTB乳糖加寒天培地では黄色のR型集落を形成し易い。Enterobacter cloacae:1+は菌種により乳糖分解性がことなる。 集落はE. coliに比べてS型の集落を形成する。なお、本症例ではグラム陰性桿菌以外にヒツジ血液寒天培地にてEnterococcus faecalis:少数とStaphylococcus aureus(MRSA):少数が検出された。

②右側スライド
 腹腔内膿をブルセラHK(RS)寒天培地に塗布し、35℃の嫌気的環境下で48時間培養した時の発育集落像を示した。ブルセラHK(RS)寒天培地には嫌気性菌のみならず通性嫌気性菌も発育するため多数の細菌の発育が観察される。このような症例では嫌気性菌の検出は難しくなるため必要に応じて選択培地の併用が望ましい。今回、嫌気性菌を検索した結果、グラム陰性桿菌のBacteroides fragilis:3+、 Bacteroides thetaiotaomicron:3+とグラム陽性球菌のPeptostreptococcus spp.:1+が検出された。

腸管出血性大腸菌(O157)感染患者の糞便
■分 類:一般細菌
■材 料:便
■その他:-
■染色法:-
■菌種名: Eschrichia coli( EHEC:enterohemorrhagic E. coli 
■培地名:-
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説
 腸管出血性大腸菌感染患者の糞便では、血液の混入した鮮血便が観察される。

・腸管出血性大腸菌( EHEC:enterohemorrhagic E. coli )の特徴

  1. 大腸粘膜に付着して増殖する際にベロ毒素(2種類)を産生する。この毒素は志賀赤痢菌が産生する毒素と同一ためShiga toxin(Stx)とも呼ばれる.そのため、ベロ毒素産生大腸菌(VTEC)や志賀毒素産生大腸菌(STEC)とも言われる。
  2. 溶血性尿毒症症候群や脳症などの合併を起こし、死亡することがある。
  3. 血清型はO157:H7が有名、その他 O26:H11、O111:H2、O128:H7、O145:H8などがある。
  4. 鮮血便を伴う下痢を起こす。血液像では赤血球の破壊した破砕赤血球像が観察される。
  5. ウシの常在細菌となる事が多く、牛肉や便で汚染された野菜なども原因食品になる。
  6. 選択培地にはソルビトールマッコンキー寒天培地などがある。

ソルビトールマッコンキー寒天培地に発育した腸管出血性大腸菌の症例
■分 類:一般細菌
■材 料:便
■その他:-
■染色法:-
■菌種名: Eschrichia coli( EHEC:enterohemorrhagic E. coli )
■培地名:ソルビトールマッコンキー寒天培地
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説

①左側スライド
 ソルビトールマッコンキー寒天培地はマッコンキー寒天培地の乳糖の代わりにソルビトールを添加して作製した培地で、腸管出血性大腸菌はソルビトール利用能がない性質を利用した選択培地である。そのため、集落は無色から薄いピンク色の色調を呈する。

②右側スライド
 病原大腸菌をソルビトールマッコンキー寒天培地にて培養した集落の色調を示した。病原大腸菌はソルビトール利用能があるためピンク色の色調を呈する。

・マッコンキー寒天培地の主な組成
 乳糖 1%、胆汁酸 0.1%、NaCl 0.5%、指示薬:ニュートラルレッド

・SS寒天培地の主な組成
乳糖 1%、胆汁酸 0.9%、クエン酸Na 0.85%、チオ硫酸Na 0.55%、
クエン酸第二鉄 0.1%、ブリリアントグリーン、指示薬:ニュートラルレッド

・DHL寒天培地の主な組成
乳糖 1%、白糖 1%、デオキシコール酸Na 0.1%、クエン酸Na 0.1%、
チオ硫酸Na 0.23%、クエン酸鉄アンモニウム 0.1%、指示薬:ニュートラルレッド

代表的な菌種のグラム染色像
■分 類:一般細菌
■材 料:複数材料
■その他:-
■染色法:グラム染色
■菌種名:Staphylococcus spp.
     Streptococcus spp.
     Streptococcus pneumoniae
     Moraxella(B) catarrhalis
     Haemophilus influenzae
     Esherichia coli
     Klebsiella pneumoniae
     Pseudomonas aeruginosa
     Campylobacter jejuni
     Candida spp.
■培地名:-
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説

・微生物検査において最初に実施されるのが、塗抹標本によるグラム染色である。
下記にグラム染色の手順を示す。

① 臨床検体をスライドグラスに塗布する
 ↓
② 自然乾燥後、火炎固定またはメタノール固定を実施する
 ↓
③ 自然乾燥後、前染色液であるクリスタル紫液にて染色する
 ↓
④ 水洗後、媒染液のルゴール液を滴下する
 ↓
⑤ 水洗後、純アルコール液かアルコール・アセトン液にて脱色する
 ↓
⑥ 水洗後、後染色液であるサフラニン液にて染色する
 ↓
⑦ 水洗後、光学顕微鏡にて観察する。

・本アトラス集は、著者が佐賀大学医学部附属病院検査部にて経験した症例を中心に掲載し、実際に判断に迷った症例や臨床微生物学を学習するうえで必要な資料を解説と共に掲載した。

・臨床検体からのグラム染色による細菌の推定では、貪食像や抗菌薬投与による形態変化、さらには検体の保存期間による染色性の劣化など多くの要因が関与する。従って、実際には光学顕微鏡にて判断した推定菌種と培養検査で発育した菌種の間で乖離がみられることがある。

・臨床検体から起炎菌を推定する場合、多くの細菌は属レベルでの判定に留まることが多い。例えば、ブドウ球菌とは推定できても、その細菌が黄色ブドウ球菌かコアグラーゼ陰性のブドウ球菌かを鑑別することは経験者でも非常に難しい。そのため、本アトラス集を参考に出来る限り起炎菌の推定が普及することを期待している。

代表的な菌種の発育像
■分 類:一般細菌
■材 料:複数材料
■その他:-
■染色法:-
■菌種名:Staphylococcus aureus
     Staphylococcus epidermidis
     Streptococcus pneumoniae
     Streptococcus pyogenes
     Streptococcus agalactiae
     Haemophilus influenzae
     Eschrichia coli
     Klebsiella pneumoniae
     Salmonella spp.
     Serratia marcescens
     Pseudomonas aeruginosa
     Campylobacter spp.
■培地名:ヒツジ血液寒天培地
     チョコレート寒天培地
     BTB乳糖加寒天培地
     SS寒天培地
     スキロー寒天培地
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説

・微生物検査においてグラム染色の次に実際されるのが培養検査である。
 下記に培養検査に関する概要を記載する。

① 分離培地

  • 分離培地には水、肉水・肉エキス、ペプトン、寒天、増強成分、化学薬品・指示薬などが含まれている。
     分離培地には選択分離培地と非選択分離培地の2種類があり、臨床材料から分離される細菌の種類によって使い分けられている。特に選択培地は目的菌以外の細菌の増殖を抑制し、特定菌種の発育を目的とする場合に使用される。
    (例)非選択分離培地:BTB乳糖加寒天培地、血液寒天培地など
       選択分離培地:SS寒天培地、TCBS寒天培地など

②培養条件

  • 酸素の要求性により、偏性好気性菌、通性嫌気性菌、偏性嫌気性菌、微好気性菌に大別される。
    (例)偏性好気性菌:緑膿菌、炭疽菌など(遊離酸素濃度:21%必要)
       通性嫌気性菌:大腸菌、ブドウ球菌など(酸素の存在は関係ない)
       偏性嫌気性菌:破傷風菌、ボツリヌス菌など(酸素がない条件が必要)
       微好気性菌:ヘリコバクター、カンピロバクターなど
       (遊離酸素濃度:3~15%必要)
  • 至適温度:35~37℃が大部分
  • 至適pH:6~7が大部分

血液像から破砕赤血球が観察された症例
■分 類:一般細菌
■材 料:その他
■その他:-
■染色法:ギムザ染色
■菌種名: Eschrichia coli( EHEC:enterohemorrhagic E. coli )
■培地名:-
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説
 主に溶血性尿毒症症候群(HUS)は小児に発症し、腸管出血性大腸菌(O157など)や赤痢菌に感染した際、ベロ毒素が腎臓の毛細血管内皮細胞を破壊する。その結果、そこを通過する赤血球が破壊されることで溶血がおき、並行して急性腎不全となり尿毒症を発症する。

・腸管出血性大腸菌( EHEC:enterohemorrhagic E. coli )の特徴

  1. 大腸粘膜に付着して増殖する際に、ベロ毒素(2種類)を産生する。この毒素は志賀赤痢菌が産生する毒素と同一ためShiga toxin(Stx)とも呼ばれる。そのため、ベロ毒素産生大腸菌(VTEC)や志賀毒素産生大腸菌(STEC)とも言われる。
  2. 溶血性尿毒症症候群や脳症などの合併を起こし、死亡することがある。
  3. 血清型はO157:H7が有名、その他 O26:H11、O111:H2、O128:H7などがある。
  4. 鮮血便を伴う下痢を起こす。血液像では赤血球の破壊した破砕赤血球像が観察される。
  5. ウシの常在細菌となる事が多く、牛肉や便で汚染された野菜なども原因食品になる。

BTB乳糖加寒天培地に発育した複数菌の症例
■分 類:一般細菌
■材 料:その他
■その他:-
■染色法:-
■菌種名:Klebsiella pneumoniae
     Eschrichia coli
■培地名:BTB乳糖加寒天培地
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説
①左側(K. pneumoniae)スライド
 Klebsiella pneumoniae の大部分は乳糖分解のためBTB乳糖加寒天培地では黄色の集落を形成し、かつムコイド状を呈する特徴がある。

Klebsiella pneumoniae の特徴

  1. 莢膜を保有するグラム陰性桿菌(0.3~1.0×0.6~6.0µm)で非運動性、肺炎桿菌と呼ばれる。
  2. ムコイド状(>5mm以上の粘性糸で鑑別)を呈する菌株は肝膿瘍などを発症するリスクが高い。
  3. ヒトでは呼吸器、尿路感染の原因菌となる。
    ※近年はESBL、KPCなどの耐性菌が院内感染として問題となっている。

②右側( E. coli )スライド
 E. coli の大部分は乳糖分解のためBTB乳糖加寒天培地では黄色のS型集落を形成する。

Eschrichia coli の特徴

  1. グラム陰性桿菌(0.4~0.7×1.0µm)で周毛性鞭毛を持ち運動する。
    ※鞭毛を欠いて非運動性でガス非産生の菌株も有り。
  2. ヒトや動物の腸管内常在菌である。
  3. 遺伝子学的相同性では赤痢菌と鑑別できない。
  4. 土壌や水の中では数カ月生存可能で、自然界には比較的抵抗性がある。

Eschrichia coli(M)型およびAlkalescens-Dispar の発育症例
■分 類:一般細菌
■材 料:その他
■その他:-
■染色法:-
■菌種名:Eschrichia coli(M型)
     Alkalescens-Dispar
■培地名:BTB乳糖加寒天培地
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説

・BTB乳糖加寒天培地に発育したEschrichia coli のムコイド型(M型)およびAlkalescens-Dispar の症例を提示する。

①左側(Eschrichia coli のムコイド型:M型)スライド
 Eschrichia coli の大部分は乳糖分解のためBTB乳糖加寒天培地では黄色のS型集落を形成するが、Klebsiella pneumoniae と見間違えるM型集落を形成する場合があるので注意する。

②右側(Eschrichia coli のAlkalescens-Dispar )スライド

  1. Shigella spp.の生物学的反応に類似したE. coli をAlkalescens-Disparと呼ぶ。
  2. ガス非産生, 非運動性および乳糖非分解または遅発酵性である。
  3. O抗原がE. coli と密接な関係を持つ。
  4. 下痢症で分離されることが多い。

運動性の確認方法およびHafnia alvei の発育症例
■分 類:一般細菌
■材 料:その他
■その他:-
■染色法:-
■菌種名:Klebsiella pneumoniae
     Eschrichia coli
     Hafnia alvei
■培地名:SIM培地
     BTB乳糖加寒天培地
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説

①左側(運動性の確認)スライド
 腸内細菌科細菌の運動性を確認する場合には無染色生鮮標本およびSIM培地による方法が実施されている。SIM培地で運動性を確認する場合、穿刺の状況によっては判定に苦慮する場合を経験する。そこで簡易に運動性を確認する方法を紹介する。

  1. SIM培地を2本用意し、湯煎にて寒天を溶かす。
  2. 滅菌シャーレに溶かしたSIM培地を注いで固める。
  3. 対象菌種を寒天の中層部まで接種し培養する。
結果:運動性が無いKlebsiella pneumoniae では接種した周囲のみ発育する。
   運動性が有るEschrichia coli では培地全面に広がる特徴がある。

②右側スライド
 Hafnia alvei は腸内細菌科細菌に属するグラム陰性の通性嫌気性桿菌で、30℃までは運動性を認めるが、それを超える温度では運動性を失うことが多い。土壌や水中、動物の腸管内に存在し、ヒトにおける日和見感染の原因菌のひとつである。

腸内細菌科細菌の試験管による同定法(1)
■分 類:確認培地
■材 料:その他
■その他:-
■染色法:-
■菌種名:Eschrichia coli
■培地名:TSI培地
     SIM培地
     VP培地
     シモンズのクエン酸塩培地
     リジン液体培地
     オルニチン液体培地
     DNA培地
     アルギニン液体培地
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説
 本症例はEschrichia coli の生物学的性状を示した。
 インドールピルビン酸(IPA)反応は陰性、硫化水素(H2S)産生およびシモンズのクエン酸利用能も陰性である。この段階では、Eschrichia spp.かShigella spp.、Salmonella Paratyphi Aが推定される。 TSI寒天培地で高層部が黄色(乳糖か白糖、あるいは乳糖と白糖の分解性有り)で陽性、ガスの産生も認められた。SIM寒天培地ではインドール反応が陽性、運動性も認められた。リジンおよびオルニチン脱炭酸反応は陽性であることより、 Eschrichia coli と同定された。
Eschricha coli の鞭毛染色による症例
■分 類:一般細菌
■材 料:その他
■その他:-
■染色法:レイフソン染色
■菌種名:Eschricha coli
■培地名:-
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説
 鞭毛は菌の運動器官で、その位置や数により単毛菌、両毛菌、叢毛菌、周毛菌に分類される。鞭毛は非常に細い器官であるため電子顕微鏡での観察が理想と言えるが、鞭毛にタンニン酸を付着して太くし、それを染めることで光学顕微鏡でも観察することができる。ただし、染色液の取り扱いや染色手技が難しく、また鞭毛の発育状態も大きく影響するため経験ある施設以外での実施は難しい現状にある。

・レイフソン(Leifson)染色

組成①色素混合液:パラローズアニリン酢酸塩0.9g、パラローズアニリン塩酸塩0.3g、95%エタノール 100mL
※色素と95%エタノールを混合後、室温にて一晩放置して完全に溶解させる。
組成②1.5%塩化ナトリウム水溶液
組成③3.0%タンニン酸水溶液

 ①②③を等量ずつ混合し、室温に2時間放置後濾過せずに冷蔵庫にて保存する。室温放置では数日で使用不能になるが、冷蔵庫では2ヶ月、-20℃の冷凍庫では1年以上は安定である。

手順 1)脱脂洗浄済みのスライドグラスを使用する(重要なポイント)。
手順 2)被検菌液を1白金耳採り、スライドグラスの端につけ、直ちにスライドグラスを立てて菌液を自然に流し広げる。
※被検菌作製では鞭毛が菌体から剥がれないようにすることがポイント
手順 3)自然乾燥後固定せずに室温に戻した染色液をスライドグラス全面に載せる。
手順 4)数分時間が経過すると、染色液の表面に金色の光沢ある膜が生じ、それ以降やや遅れて染色液中に沈殿物が析出し軽く白濁してくる(10分程度)。
手順 5)直ちに水洗し、染色液表面の膜を浮き上がらせるように上から静かに水を流す。
手順 6)乾燥後に顕微鏡にて観察する。
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