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 HOME > 微生物検査 _ [菌種別]Moraxella

微生物検査

[菌種別]Moraxella

吸引痰から複数菌が検出された症例
■分 類:一般細菌
■材 料:喀痰
■その他:-
■染色法:グラム染色
■菌種名:Streptococcus pneumoniae
     Moraxella(Branhamella)catarrhalis
■培地名:-
■年 齢:1
■性 別:男児
■解 説

①左側上(1000倍)、右側上(拡大)スライド
 好中球に貪食されたグラム陽性短桿菌様の形態が観察された。観察時点ではCorynebacterium spp.を最も疑った。
 培養検査の結果、Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)と同定された。

※グラム染色所見と培養結果が異なった要因としては、抗菌薬の使用(不明)により双球菌状の形態がフィラメント化したことで短桿菌様の形態に観察されたと考えられた。

②左側下(1000倍)、右側下(拡大)スライド
 好中球に貪食されたグラム陰性双球菌の形態が観察された。観察時点ではMoraxella (B) catarrhalisを最も疑った。
 培養検査の結果、 Moraxella (B) catarrhalisと同定された。

※喀痰のグラム染色所見で貪食されたグラム陰性双球菌の形態が観察された場合にはMoraxella (B) catarrhalisを念頭において検査することが重要と言える。

喀痰からMoraxella(Branhamella)catarrhalis が検出された症例
■分 類:一般細菌
■材 料:喀痰
■その他:-
■染色法:グラム染色
■菌種名:Moraxella(Branhamella)catarrhalis
■培地名:-
■年 齢:35
■性 別:女性
■解 説

①右側上、右左側下スライド
 喀痰の好中球に貪食された多数のグラム陰性双球菌が観察された。形態的にはNeisseria gonorrhoeae(淋菌)やNeisseria meningitidis(髄膜炎菌)と同様の染色像を呈するが、呼吸器外来の自然痰のため Moraxella (B) catarrhalis が疑われた。
 培養検査の結果、Moraxella (B) catarrhalisと同定された。

Moraxella (B) catarrhalis の特徴

  1. グラム陰性双球菌(直径1.0µm)で腎臓を2個接合した形態を呈する。
  2. 莢膜、芽胞、鞭毛は保有していない。
  3. 至適温度:37℃、偏性好気性菌で血液寒天培地および普通寒天培地に発育できる。
  4. カタラーゼ、チトクロムオキシダーゼ、Dnase産生能は陽性で硝酸塩を還元できる。
    ただし、糖の分解性は認められない。
  5. 健常者の鼻咽腔に常在するが、時に呼吸器感染症、中耳炎、結膜炎を起こす。
  6. 90%以上はペニシリナーゼ(β-ラクタマーゼ)を産生するためペニシリン系抗菌薬に耐性を示す。

※ペニシリナーゼはペニシリン系の抗菌薬を分解し、肺炎球菌やインフルエンザ菌を保護する作用がある。

※治療にはβ-ラクタマーゼ阻害剤との併用薬やセフェム系、カルバペネム系抗菌薬が有効である。

代表的な菌種のグラム染色像
■分 類:一般細菌
■材 料:複数材料
■その他:-
■染色法:グラム染色
■菌種名:Staphylococcus spp.
     Streptococcus spp.
     Streptococcus pneumoniae
     Moraxella(B) catarrhalis
     Haemophilus influenzae
     Esherichia coli
     Klebsiella pneumoniae
     Pseudomonas aeruginosa
     Campylobacter jejuni
     Candida spp.
■培地名:-
■年 齢:-
■性 別:-
■解 説

・微生物検査において最初に実施されるのが、塗抹標本によるグラム染色である。
下記にグラム染色の手順を示す。

① 臨床検体をスライドグラスに塗布する
 ↓
② 自然乾燥後、火炎固定またはメタノール固定を実施する
 ↓
③ 自然乾燥後、前染色液であるクリスタル紫液にて染色する
 ↓
④ 水洗後、媒染液のルゴール液を滴下する
 ↓
⑤ 水洗後、純アルコール液かアルコール・アセトン液にて脱色する
 ↓
⑥ 水洗後、後染色液であるサフラニン液にて染色する
 ↓
⑦ 水洗後、光学顕微鏡にて観察する。

・本アトラス集は、著者が佐賀大学医学部附属病院検査部にて経験した症例を中心に掲載し、実際に判断に迷った症例や臨床微生物学を学習するうえで必要な資料を解説と共に掲載した。

・臨床検体からのグラム染色による細菌の推定では、貪食像や抗菌薬投与による形態変化、さらには検体の保存期間による染色性の劣化など多くの要因が関与する。従って、実際には光学顕微鏡にて判断した推定菌種と培養検査で発育した菌種の間で乖離がみられることがある。

・臨床検体から起炎菌を推定する場合、多くの細菌は属レベルでの判定に留まることが多い。例えば、ブドウ球菌とは推定できても、その細菌が黄色ブドウ球菌かコアグラーゼ陰性のブドウ球菌かを鑑別することは経験者でも非常に難しい。そのため、本アトラス集を参考に出来る限り起炎菌の推定が普及することを期待している。

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