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 HOME > 健康を測る > Ⅱ 健診で精密検査が必要と云われたら

Ⅱ:健診で精密検査が必要と云われたら

Ⅰ 健診検査項目の解説
Ⅱ 健診で精密検査が必要と云われたら
Ⅲ 健診データの判定区分
Ⅳ 高齢者の基準値

血液一般検査

【検査項目】赤血球数
精密検査で何が判るか?
 赤血球数は、単独で測ることは無く、血色素量とヘマトクリット値を同時に測り、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球血色素量)、MCHC(平均赤血球血色素濃度)を計算し、この値で、貧血を小球低色素性貧血、正球性正色素性貧血、大球性正色素性貧血に分けます。次に、病名を確定するために血清鉄、フェリチン、総鉄結合能、ビタミンB12、葉酸、末梢血液像、骨髄像などの検査を行います。
 健診で見つかる貧血の原因の多くは、男性は消化管からの出血、女性は過多月経や子宮筋腫ですから、消化器と婦人科の検査が必要になることもあります。血色素量が高値の時は多血症を疑い、エリスロポエチンの測定や骨髄像、遺伝子変異の検査を行います。
 健診では赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値のいずれか一つが基準範囲を超えた場合は、要精密検査にしています。
関連する病気は?
  1. 小球性低色素性貧血:鉄欠乏性貧血、妊娠貧血、慢性炎症に伴う貧血
  2. 正球性正色素性貧血:急性消化管出血、溶血性貧血、再生不良性貧血、腎性貧血、白血病
  3. 大球性正色素性貧血:ビタミンB12欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血、肝障害による貧血、骨髄異形成症候群
  4. 多血症:真性多血症、二次性多血症、ストレス多血症
【検査項目】血色素量
精密検査で何が判るか?
 血色素量は、貧血や赤血球増加症の診断や病気の経過を見るために測定しますが、同時に測定した赤血球数とヘマトクリット値と合わせて、赤血球指数(MCV、MCH、MCHC)を算定し、貧血の種類を決めます。
 血色素量は、加齢と共に低下しますので、60~69歳で11.5g/dL以下、70歳以上で11.0g/dL以下 を貧血としています。WHOの定義では男性:8.0g未満、女性:8.0g未満、妊婦:7g未満が高度貧血です。
関連する病気は?
高値:真性赤血球増加症、二次性赤血球増加症
低値:各種の貧血
【検査項目】ヘマトクリット値
精密検査で何が判るか?
 ヘマトクリット値は、全血液に占める赤血球の割合を%で表したもので、単独では、貧血や赤血球増加症を疑う切っ掛けになる検査ですが、臨床的には、赤血球数、血色素量と共に、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球血色素量)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)の算定に利用し、単独では評価しません。
関連する病気は?
高値:真性赤血球増加症、二次性赤血球増加症
低値:各種の貧血
【検査項目】MCV(平均赤血球容積)
精密検査で何が判るか?
 平均赤血球容積(mean corpuscular volume)は、赤血球一個一個の平均容積を絶対値で表したもので、大型の赤血球が多いか、小型のものが多いかが分かります。代表的な貧血である鉄欠乏性貧血では、個々の赤血球が小型化しているので、数値は低くなります。
 MCVは多量飲酒によりしばしば高値(100fL以上)になりますので、アルコール依存症やアルコール性肝障害のマーカーとしても使います。
 また、MCVの上昇は、食道がんや咽頭がんの発がんリスクと相関するといわれています。特に、肝機能検査の一つであるγ-GTが高値の場合は食道がん、咽頭がんの定期的検査が必要です。
関連する病気は?
  1. 大球性貧血(MCV>100、MCH>32、MCHC>32):巨赤芽球性貧血、ビタミンB12欠乏症(悪性貧血、胃全摘出後、回腸疾患)、葉酸欠乏症、慢性肝疾患、アルコール性肝障害、アルコール多飲、アルコール依存症、再生不良性貧血、甲状腺機能低下症
  2. 正球性正色素性貧血(MCV80~100,MCH27 ~32、MCHC32~36):溶血性貧血、再生不良性貧血、白血病、癌の転移、悪性リンパ腫、悪性腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄線維症、腎性貧血、慢性感染症、内分泌疾患、急性失血性貧血
  3. 小球性低色素性貧血(MCV<80、MCH<27、MCHC<32):鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、慢性感染症、サラセミア、無トランスフェリン血症
【検査項目】MCH(平均赤血球血色素量)
精密検査で何が判るか?
 平均赤血球血色素量(mean corpuscular hemoglobin)は、一個一個の赤血球に含まれる平均血色素量を絶対値で表したもので、値が低い場合は低色素性貧血と呼ばれる貧血群が疑われます。
関連する病気は?
MCVの項を参照する
【検査項目】MCHC(平均赤血球血色素濃度)
精密検査で何が判るか?
 平均赤血球血色素濃度(mean corpuscular hemoglobin concentration)は、一個一個の赤血球の容積に対する血色素重量の比を%で表したものです。これらMCV、MCH、MCHCの値は主として貧血の種類の判定に使われます。
関連する病気は?
MCVの項を参照する
【検査項目】血小板数
精密検査で何が判るか?
 血小板の異常は、量的な数の増減と質的な機能の異常に分けられます。量的な異常は、数の減少と増加があり、減少は産生の低下と破壊の亢進が原因です。産生の低下は、骨髄での血小板産生の機能不全で、破壊の亢進は、脾臓機能の亢進や免疫学的機序によるものです。また、増加は腫瘍性と反応性があり、反応性の増加はあまり問題になりません。
 血液中の血小板の数が約5万/μLを下回ると、比較的軽いけがでも出血する可能性があります。しかし、出血リスクが最も大きくなるのは、血液中の血小板の数が1万~2万個/μLを下回ってからです。血小板数がここまで少なくなると、傷がなくても出血する可能性があります。また、思春期から中年にかけての女性に多く見られる慢性型の特発性血小板減少性紫斑病は、免疫異常による血小板減少の代表的な疾患です。
 血小板数の増加は、本態性血小板血症と反応性(二次性)血小板血症があります。本態性血小板血症は、血小板を作る細胞の病気が原因で、通常は50~70歳の人や若い女性に見られます。この疾患は、症状が現れることもあれば、無症状のこともあり、症状が現れた場合、原因は血栓による血管の閉塞で、糖尿病や高血圧を持つ高齢者では一過性脳虚血発作、脳卒中、心臓発作などの合併症のリスクが高まります。
 反応性血小板血症は、鉄欠乏性貧血などの病気によって起こる血小板の増加で、血小板が過剰に作られますが、通常は血栓を作ったり出血を起こすことはありません。
 健診では9.9万/μL以下と40万/μL以上を要精密検査としています。
関連する病気は?
高値:本態性血小板血症、慢性骨髄性白血病、真性多血症、骨髄線維症、鉄欠乏性貧血、感染症
低値:白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、播種性血管内凝固症候群、肝硬変 
【検査項目】血清鉄
精密検査で何が判るか?
 体内の鉄の多くは、ヘモグロビンに含まれています。ヘモグロビンは赤血球の成分で、酸素を体の各組織へ運搬しています。赤血球の寿命は約120日ですが、寿命が尽きて赤血球が壊れると、その中の鉄は骨髄へ戻り、新しい赤血球に入り、再び使われます。
 鉄は主に腸の粘膜から剥がれ落ちる細胞と一緒に、毎日少しずつ失われます。失われた鉄は、食物から吸収される1日当たり1~2mgの鉄によって補われます。女性では月経の際により多くの鉄が失われ、その量が食物から吸収される鉄では完全に補われないことがあります。
 成人の場合、鉄欠乏症の最も多い原因は、閉経前の女性では、過多月経です。男性と閉経後女性は、出血で、最も多くは消化管からの出血で、出血性潰瘍、結腸ポリープ、癌などがあることを示しています。中年以上の人では、結腸がんによる慢性出血のサインとして重要です。
 鉄の増加を鉄過剰症といい、原因は繰り返しの輸血、鉄補充療法、慢性アルコール中毒、鉄の過剰摂取、ヘモクロマトーシスなどです。
 健診では男性63μg/dL以下、女性39μg/dL以下と男性188μg/dL以上、女性163μg/dL以上を要精密検査としています。
関連する病気は?
高値:ヘモクロマトーシス、急性肝炎、再生不良性貧血、急性白血病、鉄芽球貧血、慢性アルコール中毒
低値:鉄欠乏性貧血、感染症、膠原病、悪性腫瘍 
【検査項目】白血球数
精密検査で何が判るか?
 白血球数の異常には、減少と増加があります。白血球減少症は、血液中の白血球数が4000/μL未満になることで、通常は5種類ある白血球のうち、最も多い好中球数の減少を意味します。勿論、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の数の減少も原因となることがあります。
 好中球減少症の重症度は、軽度(1000~1500)、中等度(500~1000)、重度(500未満)に分けられます。好中球が少なくなると、一般に免疫機能が低下し、減少が重度であれば、生命を脅かす感染症のリスクが著しく高まります。また、健康な人には問題のない、口の中や腸内で共存している細菌により感染症が起こることがあります。
 重症の好中球減少症患者で、特に高い頻度で発生する感染症は、蜂窩織炎、ブドウ球菌による皮膚膿瘍、肺炎、敗血症です。
 好中球が減少する原因は、好中球の急速な消費や破壊と産生の低下です。また、好酸球やリンパ球の減少は、感染症の初期に見られます。一方、白血球は、感染性微生物や外来物質から体を守る役割を担っているため、感染が起きると、正常な生体反応として増加します。また、関節リウマチなどの炎症性疾患、白血病、特定の薬剤などによっても増加します。
 健診では3,000/μL以下と10,000/μL以上を要精密検査としています。
関連する病気は?
  1. 好中球高値:肺炎、敗血症などの感染症、急性出血、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、悪性腫瘍、膠原病
  2. 好中球低値:再生不良性貧血、ビタミンB12欠乏性貧血、多発性骨髄腫、骨髄線維症、骨髄異形成症候群、急性白血病、粟粒結核、チフス、ウイルス感染症、肝硬変、脾機能亢進症、アジソン病、バセドウ病、種々の薬剤
  3. 好酸球高値:アトピー性皮膚炎、気管支喘息、膠原病、好酸球増加症候群
  4. 好酸球低値:腸チフスの感染初期、悪性貧血、再生不良性貧血
  5. リンパ球高値:急性感染症の回復期、伝染性単核球症、慢性リンパ性白血病
  6. リンパ球低値:急性感染症の初期、悪性リンパ腫、結核、再生不良性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE,)、HIV感染症(AIDS)
  7. 好塩基球高値:アレルギー疾患
 

炎症・血清検査

【検査項目】CRP(C反応性蛋白)
精密検査で何が判るか?
 CRP(C反応性蛋白)は、肺炎球菌のC多糖体と結合する蛋白として発見された、急性相反応物質の一つで、感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患、組織壊死などで増加しますので、その活動性の指標とされています。
 この蛋白は、発病すると6時間後には増加し始め、24時間以内に急激に増え、病気が回復すると速やかに低下し、正常化します。CRP値は赤沈値とよく相関しますが、CRPは赤沈より早く増加し、正常化も早い特徴があります。
 また、0.001mg/dL程度の検出感度がある、高感度CRPは、極めてわずかな炎症でも検知出来るので、動脈硬化症、心筋梗塞、糖尿病などでの血管の炎症を知ることが出来ます。このため、冠状動脈疾患のリスクが高い患者の発症の予測にも使われます。
 生理的には、年齢と共に上昇し、高齢者で高くなること、喫煙者は非喫煙者より高くなること、男性は女性よりやや高いことが知られています。
 健診では1mg/dL以上を精密検査にしていますが、これは、感染症、膠原病、悪性腫瘍、心筋梗塞の存在を疑い、早期の診断と治療をするためです。
関連する病気は?
高値:軽症の急性炎症性疾患、炎症性疾患の初期、細菌感染症、関節リウマチ、血管炎、リウマチ熱、悪性腫瘍、心筋梗塞、免疫不全症
【検査項目】血液沈降速度(赤沈)
精密検査で何が判るか?
 赤血球沈降速度(赤沈)は、どのようなメカニズムで亢進したり遅延したりするかについては、いまだ不明な点もありますが、血漿蛋白の種類、濃度、血漿粘度、赤血球形態、赤血球数などが大きく影響しているとされています。
 この検査は、非特異的な検査ですから、異常値が特定の病気に結び付くものではありませんが、種々の病気の経過観察の指標に使われています。
 また、炎症、特に急性心筋梗塞、胆嚢炎、胸膜炎、腹膜炎などで著明に亢進しますので、CRPなどの急性相反応物質と一緒に測ります。
 赤沈は赤血球が異常に増加したり、フィブリノゲンが減少すると遅延します。
 健診では25mm/時以上の軽度亢進から、要精密検査としています。
関連する病気は?
亢進:感染症の初期、種々の炎症性疾患、膠原病、多発性骨髄腫などの血清蛋白異常を示す病気、悪性腫瘍や心筋梗塞などの組織崩壊を伴う病気、月経、妊娠
遅延:多血症などの赤血球数増加を来す病気、フィブリノゲンが減少する病気、免疫グロブリンの減少
【検査項目】リウマチ因子
精密検査で何が判るか?
 リウマチ因子は、関節リウマチ患者の70%で認められます。しかし、この因子は、がん、全身性エリテマトーデス(SLE)、肝炎や一部の感染症などの病気でも見られ、健常者の約2~4%、健常高齢者の約10%で100IU/mL以下の陽性になります。
 血液中のリウマチ因子の値が高ければ高いほど、関節リウマチも重症で、予後も悪くなります。関節の炎症が弱まれば、リウマチ因子の値が下がることもあります。
 健診では16IU/mL以上を、要精密検査としていますが、これは、膠原病などの自己免疫疾患、C型肝炎などの慢性感染症などを早期に見つける目的もあります。
関連する病気は?
高値:関節リウマチ、悪性関節リウマチ、原発性マクログロブリン血症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症、慢性肝炎、肝硬変、亜急性細菌性心内膜炎、結核
【検査項目】TPHA
精密検査で何が判るか?
TPHAは梅毒トレポネーマ(T. pallidum)赤血球凝集反応法と呼ばれる、梅毒のスクリーニング検査法です。この検査は、抗トレポネーマ抗体を定性的に検出するもので、梅毒に対して非常に特異性の高い検査です。ただし、梅毒に感染後3~6週間経過しないと陽性になりませんので、第1期梅毒の初期には、陰性のことがよくあり、感染の機会があってから、6週間経過するまでは、陰性であっても梅毒感染の可能性を否定出来ません。
 また、TPHAは通常、治療を受けて治癒しても抗体は消えないで残るため、数十年間は陽性という結果が続きますが、心配ありません。
 この検査は、梅毒に感染していなくとも陽性になる場合があり、病気としては、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患やマラリアなどの他、妊娠時にも陽性になることがあります。
関連する病気は?
陽性:梅毒
偽陽性:全身性エリテマトーデス(SLE)、マラリア、レストスピラ症、妊娠
【検査項目】RPR
精密検査で何が判るか?
RPRは、非トレポネーマ(レアギン)試験と呼ばれる検査で、脂質抗原(ウシ心臓に由来するカルジオリピン)を用いてレアギン(脂質に結合するヒト抗体)を検出するものです。
 この検査は、感度が高いため、スクリーニングに使いますが、梅毒に対して完全に特異的というわけではありません。
 RPRはTPHAと同様に、初感染後3~6週間経過しないと陽性にならないので、第1期梅毒の初期に結果が陰性であることは良くあり、6週間経過するまでは、陰性であっても梅毒感染の可能性を否定出来ません。
 この検査は、トレポネーマ感染症以外の多くの疾患(全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、肝疾患など)で陽性になることがあり、これを生物学的偽陽性反応と呼んでいます。
関連する病気は?
陽性:梅毒
偽陽性:全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、肝疾患、麻疹、水痘、抗リン脂質抗体症候群
 

肝機能検査

【検査項目】総蛋白
精密検査で何が判るか?
 血漿中には約100種類の蛋白があり、膠質浸透圧の維持、免疫機能による生体防御など多くの生理作用を持っています。セルロースアセテート膜電気泳動では、アルブミン、α1-グロブリン、α2-グロブリン、β-グロブリン、γ-グロブリンの5分画に分けられます。
 総蛋白量は、アルブミンとグロブリンの総和ですが、その増減は、血漿蛋白の大部分を占めるアルブミンとγ-グロブリンの変化が反映されています。総蛋白の増加は、多くの場合、γ-グロブリンの増加によるもので、アルブミンが増加することは脱水症以外にはありません。グロブリンで最も多いγ-グロブリンの90%は、IgG(免疫グロブリンG)ですから、グロブリンの増加は、病的なグロブリンが増加する多発性骨髄腫などの病気か肝疾患が考えられます。
 一方、総蛋白の減少は、多くの場合、アルブミンの低下によるものです。アルブミンの低下は、栄養不良、肝合成能の低下、体外への喪失、代謝亢進により起こります。このため、総蛋白の増減を見ることは、色々な病気の発見や病勢を知るために重要です。
 健診では、5.9mg/dL以下と9.1mg/dL以上を要精密検査にしていますが、特に、高値の場合は、多発性骨髄腫などの重大な病気の発見につながりますので、必ず受診が必要です。
関連する病気は?
高値:多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、肝硬変の初期、慢性炎症性疾患、悪性腫瘍、脱水症
低値:ネフローゼ症候群、重症肝障害
【検査項目】アルブミン
精密検査で何が判るか?
 アルブミンは、肝で合成される蛋白質で、血漿蛋白の50〜70%を占め、血漿浸透圧の維持、ビタミン・ホルモン・薬物などとの結合と運搬、生体内アミノ酸プールなど、生命を維持するために必要な、多くの機能を持っています。
 臨床的には、肝障害や炎症性疾患による産生低下、尿、消化管、皮膚などからの体外漏出、甲状腺機能亢進などによる代謝亢進、低栄養、消化吸収障害による栄養障害などで低値になりますので、これらの病気の診断、治療効果判定、予後の推定に使われますが、全身一般状態を知るためにも大切な検査です。
 健診では3.1mg/dL以下を要精密検査にしています。
関連する病気は?
低値:悪液質、急性肝炎、急性感染症、炎症性疾患、肝硬変、浸出性びまん性皮膚疾患、全身性浮腫、蛋白漏出性胃腸症、吸収不全症候群、栄養障害、ネフローゼ症候群、慢性消耗性疾患、甲状腺機能亢進症、先天性無アルブミン血症、血液希釈
【検査項目】総ビリルビン
精密検査で何が判るか?
 老廃した赤血球が壊れると、ヘム蛋白が出てきますが、このヘム蛋白からビリルビンが作られます。このビリルビンは間接ビリルビンと呼ばれ、アルブミンと結合し、肝細胞に取り込まれグルクロン酸抱合を受け直接ビリルビンに変わります。この間接ビリルビンと直接ビリルビンを合わせたものを、総ビリルビンと呼んでいます。
 総ビリルビンが2〜3mg/dL以上になると、眼球結膜黄染などの症状が出てきますので、このような症状を認めたら、直接ビリルビン測定し、総ビリルビンから直接ビリルビンを差し引いて、間接ビリルビンを求め、この3者により黄疸の種類を判断します。
 健診で見つかるビリルビン高値例の多くは、ビリルビンの処理を妨げる遺伝性の病気で、体質性黄疸と呼ばれ、ジルベール症候群やデュビン-ジョンソン症候群などです。
 ジルベール症候群では、間接ビリルビンの値が、また、デュビン-ジョンソン症候群では直接ビリルビンの値が、上昇しますが、通常は黄疸が生じるほどではありません。
 体質性黄疸は、若年成人の健診で見つかることが、最も多く、特に症状はありませんし、治療しなくても問題はありません。ただし、健診ではウイルス性肝炎などと鑑別するため、3.2mg/dL以上を要精密検査にしています。
関連する病気は?
高値:ジルベール症候群、デュビン-ジョンソン症候群、急性肝炎、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎、薬剤性肝炎、劇症肝炎、肝炎後高ビリルビン血症、肝硬変、肝癌、肝膿瘍、急性脂肪肝、急性肝内胆管うっ滞、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、閉塞性黄疸、レプトスピラ症、ヘモクロマトーシス、溶血性貧血、心不全、Wilson病
【検査項目】直接ビリルビン
精密検査で何が判るか?
 総ビリルビンのうち、直接ビリルビンの割合が50%を超える場合は、胆汁産生または排泄の減少(胆汁うっ滞)が原因です。もし、他の肝機能検査でも異常所見がみられ、血清ビリルビンが高値なら肝細胞機能障害があることが考えられます。
 健診では、体質性黄疸の一種である、デュビン-ジョンソン症候群で直接ビリルビンの高値が見られます。
 直接ビリルビンは水溶性ですから、血中の値が2.4mg/dLを超えると、尿中に出てきます。ただし、体質性黄疸なら治療の必要はありませんが、精密検査といわれた場合は、肝臓の病気を除外するため、受診してください。
関連する病気は?
高値:デュビン-ジョンソン症候群、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎、薬物性肝障害、急性肝炎、劇症肝炎、肝硬変、肝癌、急性脂肪肝、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、閉塞性黄疸、肝膿瘍、ヘモクロマトーシス、レプトスピラ症、Wilson病
【検査項目】間接ビリルビン
精密検査で何が判るか?
 総ビリルビンのうち、間接ビリルビンの割合が85%を超える場合は、溶血などによるビリルビン産生の増加、あるいは、肝臓への取込みまたは遺伝性の病気である、ジルベール症候群が考えられます。このような間接ビリルビン値の上昇は、肝障害を伴わない限り、通常は正常上限値の5倍(6mg/dL未満)を超えることはありません。
 間接ビリルビンは水に溶けませんので、血中の値が高くなっても尿中には出てきません。
 健診では間接ビリルビンが5mg/dLを超えると要精密検査で、一度は必ず受診し、原因を確認する必要があります。
関連する病気は?
高値:ジルベール症候群、溶血性貧血、心不全
【検査項目】γ-GT
精密検査で何が判るか?
 γ-GTは腎に多く含まれていますが、肝、膵、脾、脳、心筋、小腸にも分布しています。肝のγ-GTの90%は、細胞膜に結合していますので、肝細胞が障害されると血中に出現します。このため、アルカリホスファターゼやロイシンアミノぺプチダーゼと同じ胆道系酵素として肝・胆道系の検査に使われます。ただし、この酵素は飲酒との関連が深く、健診では高頻度に異常値が見られます。
 γ-GTはアルコール性肝障害で早期に上昇し、アルコール性脂肪肝では100〜300U/L、アルコール性肝線維症、肝硬変では200〜500U/L、アルコール性肝炎では500U/L以上になりますが、禁酒すると減少し、2週間で値は半減します。このため、健診で高値になった場合は、3ヵ月の禁酒か節酒後に再検査をして、アルコールによる異常値か否かを確かめます。
 γ-GTが高値でMCV(平均赤血球容積)も100fl以上の高値になった場合は、食道がんや喉頭がんのリスクか高いと言われていますので、定期的な検査が必要です。
 アルコール摂取量と肝障害:一般にはアルコールの摂取量・摂取期間と肝疾患との間に直線的な相関が認められます。
 アルコール摂取量は、お酒の量(ml)×[アルコール度数(%)÷100]×0.8で計算されます。例えば、ビール中びん1本では、500×[5÷100]×0.8=20gになります。アルコール度数はビールで5%、ワインで14%、日本酒で15%、焼酎で25%でから、グラス1杯(約150mL)のワインには17g、1合の日本酒には約22gのアルコールが含まれていることになります。男性における肝疾患のリスクは、1日のアルコール摂取量が、10年以上にわたり40gを超えると著明に増大し、特に80g(ビール2~8缶、ワイン3~6グラス、日本酒3~4合)を超えると極めて高くなります。
 性別では、女性は体格を考慮した場合でも、男性よりもアルコール性肝疾患に対する感受性が高いことが知られています。女性の場合、20~40gのアルコール(男性の半量)でもリスクが高くなります。女性のリスクが高いのは、胃粘膜に存在するアルコール脱水素酵素が少ないために、多くのアルコールが分解されないまま肝臓に到達するためと考えられています。
 健診では男女ともに100U/L以上を精密検査にしています。
関連する病気は?
高値:アルコール性肝障害、脂肪肝、慢性肝炎、薬物性肝障害(抗てんかん薬、抗痙攣薬、向精神薬、睡眠薬、ステロイド薬など)、慢性活動性肝炎、肝硬変、肝癌、胆道疾患、閉塞性黄疸、肝内胆汁うっ滞
【検査項目】AST
精密検査で何が判るか?
ASTは主として肝臓、筋肉、赤血球内に存在する酵素で、これらの細胞の壊死や破壊によって血中に出現します。このため、血中AST値の上昇は、肝細胞、筋肉、赤血球の壊死や破壊の程度を反映していると考えてよいでしょう。
 ALTまたはASTが単独で軽度の上昇(基準値の2倍未満)を示した場合は、3~6ヶ月後に再検査をしますが、高値例の約1⁄3は基準値の範囲内に戻っています。
 他の、検査でも異常が認められ、その値か高値であるか、3~6ヶ月後の再検査でも高値の場合は、脂肪肝の検査、B型およびC型肝炎のスクリーニング検査を行います。受診者が、特に若年または中年女性の場合は,自己免疫性の病気についてのスクリーニング検査を行うことがあります。
 健診では51U/L以上を精密検査にしています。
関連する病気は?
高値:
  1. 軽度(150U/l以下~基準値上限):ウイルス性慢性肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝、肝硬変、肝癌、溶血性貧血、悪性腫瘍
  2. 中等度(150~500U/l):ウイルス性慢性肝炎、自己免疫性肝炎、アルコール性肝炎、胆汁うっ滞、薬剤性肝障害、急性心筋梗塞、筋疾患
  3. 高度(500U/l以上):劇症肝炎、ウイルス性急性肝炎、ウイルス性慢性肝炎の急性増悪、ショック肝
【検査項目】ALT
精密検査で何が判るか?
 ALTは主に肝細胞内に存在する酵素で、肝細胞の壊死や破壊によって血中に出現する酵素です。このため、血中ALT値の上昇は、肝細胞の壊死や破壊の程度を反映していると考えていいでしょう。
 肝障害を評価する場合は、ASTと同時に測定し、AST/ALT比を求めます。急性肝炎では、多量の肝細胞が破壊されますので、AST、ALTは500U/L以上の高値となりますが、肝含有量を反映して初期にはAST>ALTですが、極期を過ぎると半減期の長いALTが血中に残るためAST<ALTとなります。
 慢性肝炎や脂肪肝では、AST、ALTは中等度上昇しますが、半減期の差で、AST<ALTとなります。アルコール性肝障害は、障害がミトコンドリアにまで及ぶため、AST-m(ミトコンドリア-AST)が逸脱し、AST>ALTとなります。
 肝硬変は、正常の肝細胞が減少するためAST、ALTの上昇は軽度で、細胞内のALT活性は正常に比べ著しく低下するので、血中の比もAST>ALTとなります。
 健診では51U/L以上を精密検査にしています。
関連する病気は?
高値:
  1. 軽度(150U/l以下~基準値上限):ウイルス性慢性肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝、肝硬変、肝癌、溶血性貧血、悪性腫瘍
  2. 中等度(150~500U/l):ウイルス性慢性肝炎、自己免疫性肝炎、アルコール性肝炎、胆汁うっ滞、薬剤性肝障害、急性心筋梗塞、筋疾患
  3. 高度(500U/l以上):劇症肝炎、ウイルス性急性肝炎、ウイルス性慢性肝炎の急性増悪、ショック肝
【検査項目】LD(乳酸脱水素酵素)
精密検査で何が判るか?
 LDは解糖系酵素の一つで、殆ど全ての細胞に分布し、5種のアイソザイムがあります。細胞が障害を受けた時に、逸脱酵素として血中に出現するため、細胞障害を検知するスクリーニング検査として測定します。特に、大型の臓器である肝や骨格筋の障害や含有量が高い赤血球崩壊では高値になります。
 健診では、細胞障害のスクリーニング検査として、体に何か異常が生じていないか、もし、異常があれば、その程度はどのくらいかを推定し、アイソザイムによって障害を受けている臓器を見つけます。500U/L以上は要精密検査になります。
関連する病気は?
高値:溶血性貧血、悪性貧血、心筋梗塞、白血病、悪性リンパ腫、悪性腫瘍、横紋筋壊死、急性肝炎、肝硬変
【検査項目】ChE(コリンエステラーゼ)
精密検査で何が判るか?
 生体内には2種類のChEが存在します。一つは肝で合成され血清、肝、膵に多く分布する偽性コリンエステラーゼで、もう一つは赤血球、神経組織などに多く分布する真性コリンエステラーゼです。
 健診で測定するはChEは、偽性コリンエステラーゼで、このChEは肝細胞で合成され、肝の蛋白代謝障害の程度によって増減しますので、肝機能検査の一つとして使われています。
 ChEは男女差があり、健診では男性は490U/L以上、女性は385U/L以上を要精密検査にしています。
 また、ChE値が極めて低値(40U/L以下)になる遺伝性の異型コリンエステラーゼ血症は、麻酔の際に用いられる筋弛緩剤(サクシニルコリン)を分解できないため、医師が知らないで手術をすると、生命に危険が及ぶこともあります。このため、手術に際しては術前検査が必要になります。
 もし、ChEが40U/L以下の異常低値と言われたら、内科を受診し、その原因が遺伝性か否かを確かめてください。もし、遺伝性と言われたら、手術をする機会があれば、必ず遺伝性のChE低値であることをを医師に伝えてください。
関連する病気は?
高値:過栄養性脂肪肝、糖尿病、甲状腺機能亢進症、ネフローゼ症候群
低値:栄養障害、 悪性腫瘍、 慢性感染症、 慢性疾患、 慢性消耗性疾患、 肝硬変など肝機能障害、慢性農薬中毒、有機リン中毒、遺伝性ChE異常症
【検査項目】ALP(アルカリホスファターゼ)
精密検査で何が判るか?
 ALPはγ-GTP、LAPとともに、肝胆道系酵素と呼ばれ、閉塞性黄疸や肝内胆汁うっ滞の指標として測定されます。また、悪性腫瘍などが肝臓内を占拠したり、癌の肝臓内への転移による病変を示唆する酵素として、肝臓や胆嚢の病気の有無を調べるスクリーニング検査として使われています。
 この酵素は肝以外にも骨、胎盤、小腸に分布していますので、異常値の場合は、アイソザイムで由来する臓器を決めます。
 女性でALPだけが単独で高値の場合は、原発性胆汁性肝硬変の可能性がありますので、精密検査が必要です。
 健診では79U/L以下、261U/L以上を精密検査にしています。
関連する病気は?
高値:アルコール性肝障害、脂肪肝、薬剤性肝障害、原発性胆汁性肝硬変、うっ血肝、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝癌、悪性腫瘍、肝占拠性病変、甲状腺機能亢進症
低値:遺伝性低ALP血症
 

肝炎ウイルス検査

【検査項目】HBs抗原
精密検査で何が判るか?
HBs抗原はB型肝炎の表面抗原で、抗原が陽性の場合は、現在HBVに感染していることを示しますが、無症候性HBVキャリア、B型慢性肝炎、B型肝硬変、急性B型肝炎の初期などの場合にも陽性となります。
 HBs抗原陽性は、B型肝炎ウイルスに感染していることしかわかりませんので、精密検査を受け、病態の把握や治療方針の決定、治療効果の判定の為、様々な検査を行います。
 HBs抗体が陽性の場合は、過去に感染があったことを示し、この抗体は中和抗体ですので、再度感染があっても、肝炎を発症することはありません。
 また、B型肝炎にはワクチンがあり、接種すると抗体が陽性になり、感染を防止できます。
関連する病気は?
陽性:急性B型肝炎、慢性B型肝炎、無症候性キャリアなどB型肝炎ウイルスの存在
【検査項目】HCV抗体
精密検査で何が判るか?
 HCV抗体検査は、C型肝炎ウイルスに対する抗体の有無を知るもので、現時点でC型肝炎ウイルスに感染している場合と、過去にC型肝炎ウイルスに感染した場合の両方で陽性となります。
 この検査では、現在の感染と過去の感染を区別できませんので、HCV-RNA検査(核酸同定検査)を行い、現在のHCV感染と過去の感染を区別します。
関連する病気は?
陽性:HCV感染の疑い。感染確認の為にHCV-RNA検査を行う。
 

脂質検査

【検査項目】総コレステロール
精密検査で何が判るか?
 コレステロールは、細胞膜や脳・神経細胞に必須の成分ですが、それ以外にも、脂肪と脂溶性ビタミンの吸収を助ける胆汁生成にも不可欠な物質です。体はコレステロールを使って、 エストロゲン、 テストステロン、 コルチゾールなどのホルモンや ビタミンDを作ります。体に必要なコレステロールは全て体内で作ることが出来ますが、食物からも取り入れます。
 血中脂質の値は、加齢変化、遺伝性疾患などの病気、治療薬、生活習慣(飽和脂肪酸を多く含む食事、運動不足、過体重など)によって異常になることがあります。
 コレステロールの正常値と異常値を区切る値は存在しませんが、成人で望ましいとされる総コレステロール値は、130~200mg/dLです。
 総コレステロール値が300mg/dL近くになると、心臓発作のリスクは2倍以上になりますので、血中脂質の値をより低い水準に維持することは、多くの人にとって有益です。
 しかし、総コレステロール値は、動脈硬化になるリスクを示す大まかな指標でしかありませんので、現在は、総コレステロール値よりもその中身、特にLDLおよびHDLコレステロール値の方が重要とされています。
 一般的に、総コレステロール値が低いことは、高いよりも望ましいと考えられていますが、コレステロール値が低すぎても、健康的ではない場合があります。 血液中の脂質が少ない原因としては原発性(遺伝性疾患)、続発性(甲状腺機能亢進症、貧血、低栄養、食物の吸収不良、癌、C型肝炎などの慢性感染症)などがあります。
 健診では、79mg/dL以下と261mg/dL以上を精密検査にしています。
関連する病気は?
高値:原発性:家族性高コレステロール血症(Ⅱa型高脂血症)、broad-β病(Ⅲ型高脂血症)、LPL(リポプロテインリパーゼ)欠損症 続発性:ネフローゼ症候群、アルコール性肝障害、糖尿病、甲状腺機能低下症、動脈硬化症、妊娠、閉塞性黄疸、多発性骨髄腫
低値:原発性:無β-リポ蛋白血症、低β-リポ蛋白血症、LCAT欠損症、Tangier病、魚眼病  続発性:甲状腺機能亢進症、下垂体機能低下症、重症肝障害、Addison病、悪液質
【検査項目】HDL-コレステロール
精密検査で何が判るか?
 HDL-コレステロール(高密度リポ蛋白)は、末梢細胞からコレステロールを除去することで、動脈硬化症の予防物質としての役割を果たしています。疫学調査では、低HDL血症は虚血性心疾患の発症頻度が増加することが証明されました。
 低HDL血症は、動脈硬化症の危険因子となりますで是正する必要がありますが、現時点では、特異的にHDLを増加させる薬剤はありません。低HDL血症の原因の一つとして、高中性脂肪血症によることが知られています。このため、低HDL血症と言われたら、中性脂肪を減少させる食事療法とHDLを低下させる原因になる喫煙、運動不足、肥満、高糖質食などを改善することが大切です。
 一方、100mg/dL以上の高HDL血症は、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)欠損症などで認められます。高HDLコレステロール血症は長寿に繋がるとして、長寿症候群として扱われて来ました。しかし、日本人の1,000人に一人はいるとされるCETP欠損症は、冠状動脈硬化に関係するとされますので、定期的な検査が必要です。
 健診では、19mg/dL以下と100mg/dL以上を要精密検査にしています。
関連する病気は?
高値:コレステロールエステル転送蛋白(CETP)欠損症、肝性リパーゼ欠損症、アポ蛋白C-Ⅲ異常、肝硬変を伴わない慢性アルコール中毒、原発性胆汁性肝硬変、甲状腺機能亢進症、薬剤(コルチコステロイド、インスリン、フェニトイン)
低値:高脂血症、高中性脂肪血症、肥満、喫煙、糖尿病、甲状腺機能亢進症、肝硬変、慢性腎不全、多発性骨髄腫、脳梗塞、プロブコール投与時、アポ蛋白A-Ⅰ欠損症、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症
【検査項目】LDL-コレステロール
精密検査で何が判るか?
 LDL-コレステロールは動脈硬化症を引き起こすコレステロールとして知られています。疫学的な調査では、LDL-コレステロール値が高くなると虚血性心疾患の頻度が増加することが明らかにされています。
 LDL-コレステロールは、基本的に総コレステロールと連動して増減することが多いため、高LDL-コレステロール血症の治療は、総コレステロール値を下げるための生活習慣の改善から始めます。
 健診では、181mg/dL以上を要精密検査にしていますが、この値は、20歳以降、加齢に伴い徐々に増加し、特に女性では更年期を境に急速に増加することが知られています。
関連する病気は?
高値:肥満、糖尿病、ネフローゼ症候群、閉塞性黄疸、家族性高コレステロール血症(Ⅱa型)、家族性混合型高脂血症(Ⅱb型)
低値:慢性肝炎、肝硬変、甲状腺機能亢進症、家族性低コレステロール血症、先天性無β-リポ蛋白血症
【検査項目】non HDL-コレステロール
精密検査で何が判るか?
 コレステロールや中性脂肪などの脂質は、アポ蛋白と結合して血液中をリポ蛋白として流れています(脂質+アポ蛋白=リポ蛋白)。リポ蛋白は、肝臓で産生され、VLDL(超低比重リポ蛋白)、IDL(中間比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)となり、末梢組織にあるLDL受容体に取り込まれます。
 VLDL、IDL、LDLの3種リポ蛋白は、動脈硬化を促進するため、動脈硬化促進リポ蛋白と呼ばれています。
 末梢組織の過剰なコレステロールは、HDLによって肝臓に運ばれ、胆汁酸として排出されます。このため、HDLは動脈硬化を防ぐ、抗動脈硬化リポ蛋白と呼ばれます。
 総コレステロールは、VLDL、IDL、LDLとHDLに含まれるコレステロールを合計したもので、総コレステロールから動脈硬化促進リポ蛋白を引いたものをnon-HDLコレステロールといいます。
 nonHDLコレステロールは動脈硬化を促進するLDL-コレステロールだけでなく、動脈硬化促進因子の総和ですから、動脈硬化のリスクを総合的に管理できる指標とされています。
 健診では、89mg/dL以下と210mg/dL以上を要精密検査にしています。
関連する病気は?
高値:動脈硬化、脂質代謝異常、甲状腺機能低下症、家族性高脂血症
低値:栄養障害、低βリポ蛋白血症、肝硬変
【検査項目】中性脂肪
精密検査で何が判るか?
 中性脂肪(トリグリセリド)は脂肪細胞の中に入っていますが、分解され、成長などの体に必要なエネルギーとして使われます。中性脂肪は、腸と肝臓で脂肪酸という小さな脂肪からつくられ、脂肪酸は体内で作られるものと、食物から摂取するものがあります。
 中性脂肪の値が高いと心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まるかどうかは、現時点では不明です。
 中性脂肪値150mg/dL以上は異常とされますが、高値であるからといって全ての人のリスクが高まるわけではないようです。
 中性脂肪値が高い人で、同時にHDLコレステロール値が低い、糖尿病や慢性腎臓病などの病気がある、あるいは家族に動脈硬化になった人がいるなどの条件が重なると、心臓発作や脳卒中のリスクが高くなります。
 健診では、29mg/dL以下と500mg/dL以上を要精密検査にしています。
関連する病気は?
高値:原発性:家族性高コレステロール血症(Ⅱa型高脂血症)、broad-β病(Ⅲ型高脂血症)、LPL(リポプロテインリパーゼ)欠損症 続発性:ネフローゼ症候群、アルコール性肝障害、糖尿病、甲状腺機能低下症、動脈硬化症、妊娠、閉塞性黄疸、多発性骨髄腫
低値:原発性:無β-リポ蛋白血症、低β-リポ蛋白血症、LCAT欠損症、Tangier病、魚眼病  続発性:甲状腺機能亢進症、下垂体機能低下症、重症肝障害、Addison病、悪液質
 

含窒素化合物

【検査項目】尿酸
精密検査で何が判るか?
 尿酸は肉類、豆類、キノコなどに含まれるプリン体の最終代謝産物で3/4は尿から、残り1/4は胆汁成分に混じり腸管に排泄されます。尿酸はプリン体の最終代謝産物ですから、体内でもプリン体産生が多くなる血液疾患(白血病、悪性リンパ腫など)や悪性腫瘍(肉腫、乳癌など)、組織破壊亢進(溶血性貧血、横紋筋融解症など)などの病気では、尿酸産生が亢進し血中の濃度が高値になります。
 メタボリックシンドロームの人は、尿酸の血中濃度が高い傾向があります。メタボリックシンドロームの特徴は、ウエストが太いこと(過剰な腹部の脂肪が原因)、血圧が高いこと、 インスリンの作用が効きにくいか血糖値が高いこと、血液中のコレステロールや他の脂質の値が高いことです。
 血液中の尿酸ナトリウムの飽和溶解度は、6.8mg/dLですから、その濃度を超えると関節などに尿酸結晶が析出し、痛風を発症する可能性があります。 血清尿酸値は、尿酸産生量と腎臓からの排泄量によって決まりますので、腎機能が低下しても尿酸は高値になります。
 一方、尿酸低値は腎性低尿酸血症が、最も疑われます。原因は腎の尿酸排泄量が過剰になるためで、尿路結石や激しい運動後に急性腎不全を起こすこともありますので注意が必要です。
 健診では2.0mg/dL以下と9.0mg/dL以上は要精密検査にしています。
関連する病気は?
高値:無症候性高尿酸血症 痛風、腎不全、サイアザイド系利尿薬、白血病、悪性リンパ腫、慢性骨髄増殖症候群
低値:腎性低尿酸血症、尿酸低下薬、重症肝障害、尿細管性アシドーシス
 

膵機能検査

【検査項目】血清アミラーゼ
精密検査で何が判るか?
 アミラーゼは、主に膵臓と唾液腺から分泌される消化酵素の一種です。血中のアミラーゼ高値は、膵臓や唾液腺の炎症や腫瘍によって引き起こされます。
 膵臓の病気としては、急性膵炎、慢性膵炎、膵癌がありますが、健診では主として、慢性膵炎を見つける目的で測定し201U/L以上を要精密検査にしています。
関連する病気は?
高値:急性膵炎、慢性膵炎、膵のう胞、膵癌、急性耳下腺炎、唾石
 

糖代謝検査

【検査項目】血糖
精密検査で何が判るか?
 健診における血糖の測定は、糖尿病を見つけるために行います。
 糖尿病には1型と2型があり、1型糖尿病は、自己免疫性の膵β細胞破壊が原因で インスリン産生が出来なくなることで、発症します。1型糖尿病は一般に小児期または青年期に発症し、自己免疫性のβ細胞破壊の原因は、感受性遺伝子、自己抗原、および環境因子の相互作用が関与しているようですが、完全には解明されていません。
 2型糖尿病は、患者に インスリンに対する抵抗性があるため、インスリン分泌が不十分な状態となる病気です。肝臓で インスリン抵抗性が上昇すると、肝臓でのグルコース産生を抑制できなくなります。また、末梢 インスリン抵抗性により末梢でのグルコース取り込みが阻害されます。これらが組み合わさり、空腹および食後に高血糖になります。2型糖尿病は一般に成人で発病し、年と共に発病の頻度が高まります。
 2020年に日本糖尿病学会で定めた、糖尿病の診断基準は、①早朝空腹時血糖値126mg/dL以上、②75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値200mg/dL以上、③随時血糖値200mg/dL以上、④HbA1c6.5%以上、のうち①~③のいずれかと④が確認されれば、糖尿病と診断する、としています。
 また、①~④の一つだけを認めた場合は、「糖尿病型」と診断し、別の日に再検査を行い、再び「糖尿病型」と確認されれば、糖尿病と診断する、としています。
 健診では、空腹時血糖値126mg/dL以上、随時血糖値200mg/dL以上を要精密検査としています。また、空腹時血糖値が60mg/dL以下の場合は低血糖として、精密検査としています。
関連する病気は?
高値;2型糖尿病、1型糖尿病、境界型耐糖能異常、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、クッシング症候群、グルカゴノーマ、慢性膵炎、急性膵炎、異常インスリン血症
低値:インスリン・経口糖尿病薬の使用、インスリノーマ、インスリン自己免疫症候群、膵島細胞症、胃切除後、耐糖能障害
【検査項目】HbA1c
精密検査で何が判るか?
長期にわたって血糖値が高い状態が続くと、ブドウ糖がヘモグロビンに結合して糖化ヘモグロビン(HbA1c)が作られます。HbA1cの値(全ヘモグロビンのうちヘモグロビンA1Cが占める割合)は、血糖値の急速な変化ではなく長期にわたる血糖値の傾向を反映しています。つまり、HbA1c値は、検査直前の1カ月間の血糖値が50%、その前の1カ月間の血糖値が25%、さらに前の2カ月間の血糖値が25%寄与するといわれています。
 また、HbA1c値は血糖値と違い、検査前の食事の影響を受けませんから、検査前に誤って食事をしてしまっても、検査できます。
 健診では4.1%以下と6.5%以上を要精密検査にしています。
関連する病気は?
高値:糖尿病、アルコール多飲者
低値:失血、溶血などによる赤血球寿命の短縮、妊娠、肝硬変、インスリノーマ、異常ヘモグロビン血症
【検査項目】糖負荷試験
精密検査で何が判るか?
 ブドウ糖を飲ませて、そのブドウ糖がどのように処理されるかを調べる検査で、軽い糖代謝異常を検出する最も鋭敏な検査法です。一般的には空腹時血糖値が110~140mg/dlの人を対象とします。
 糖尿病で最も多い、2型糖尿病は、年単位で境界型を経て発症します。境界型は俗に「糖尿病予備軍」といわれる状態ですから、境界型から糖尿病への進行をいかに防ぐかが重要です。
 また、この検査は、妊婦に対する妊娠糖尿病のスクリーニングや、糖尿病の症状がある高齢者で空腹時の血糖値が正常な場合などでも行われます。ただし、非常に煩雑な検査ですので、糖尿病の検査として常に行われるものではありません。
 糖尿病の始まりの時期には、空腹時血糖値に先駆けて食後血糖値が上昇しますから、空腹時血糖値のみの検査では、耐糖能障害や初期糖尿病を見逃すこともあります。75g経口ブドウ糖負荷試験は、そのような例を発見するのに適しています。
 健診では、空腹時血糖値126mg/dL以上、負荷試験2時間値200mg/dL以上を要精密検査としています。
関連する病気は?
高値:負荷後2時間血糖値:200mg/dL以上(糖尿病型)、負荷後2時間血糖値:140~200mg/dL(境界型)
 

腎機能検査

【検査項目】尿素窒素
精密検査で何が判るか?
 食物に含まれている蛋白質や体の組織の蛋白質が分解されるとアンモニアになりますが、このアンモニアは肝臓で尿素になり血液中に入ります。血液中の尿素は、腎糸球体で濾過された後35~70%が尿細管で再吸収され、残りが尿中に排出されます。
 この検査は血液中の尿素に含まれる窒素の量を測ることで、腎の排泄機能の指標にしています。
 血中の尿素窒素の値は、主に腎からの尿素排泄量を反映しているますが、糸球体濾過率(GFR)が30%前後に低下してはじめて上昇するといわれ、腎機能検査のスクリーニングとしてはあまり鋭敏ではありません。
 健診では、31mg/dL以上を要精密検査としています。
関連する病気は?
高値:腎機能障害、甲状腺機能亢進症、消化管出血、脱水、心不全、高蛋白食、絶食、低カロリー食、副腎皮質ステロイド剤使用時、閉塞性尿路疾患
【検査項目】クレアチニン
精密検査で何が判るか?
 クレアチニンは筋肉中のクレアチンの終末代謝産物で、腎糸球体で濾過され、尿細管での再吸収や分泌が少ないので糸球体濾過量(GFR)の指標として使われますが、GFRが60%程度に低下するまでは基準値内の値を示しますので、あまり鋭敏な検査ではありません。
 臨床的には尿素窒素と同時に測りその比を見ることで、腎機能の指標としています。
 クレアチニン筋肉量に比例しますから、男性は女性よりやや高値になります。
 健診では、男性1.10mg/dL以上、女性0.83mg/dL以上を要精密検査としています。
関連する病気は?
高値:脱水、心不全、ショック、糸球体腎炎、間質性腎炎、尿管結石、前立腺肥大、先端巨大症、薬物性腎障害、腎不全
低値:糖尿病の初期、妊娠、長期臥床、筋ジストロフィー、多発性筋炎、筋萎縮性側索硬化症
【検査項目】eGFR(推算GFR値)
精密検査で何が判るか?
 蛋白尿などの尿異常、画像診断、血液検査、病理組織像で腎障害が明らかなもの、あるいは糸球体ろ過量(GFR)が基準値以下の状態の、いずれかが3カ月以上持続するものは、慢性腎臓病と定義されています。
 慢性腎臓病は最終的には透析が必要になりますので、腎障害を早期に見つける必要があります。eGFRはこの目的で開発された検査法で、クレアチニンの値から計算で算出します。
 健診では、44.9/分/1.73m²以下を要精密検査としています。
関連する病気は?
低値:慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症(顕性蛋白尿期~腎不全期)、腎硬化症、急性腎炎、ループス腎炎、血管炎、間質性腎炎、嚢胞腎、腎血管性高血圧、腎静脈血栓症、水腎症、薬剤性腎障害、肝硬変、うっ血性心不全
 

尿一般検査

【検査項目】尿蛋白
精密検査で何が判るか?
 腎の糸球体基底膜は、アルブミンのような比較的大きな分子量の蛋白質に対して非常に大きなな壁となり、蛋白の漏出を防いでいます。しかし、少量の蛋白は毛細血管基底膜を通過して糸球体濾液中に出てきます。こうして出てきた蛋白の一部は、分解されて近位尿細管で再吸収されますが、一部は尿中に排泄されます。このため、一日に尿中には150mg程度の蛋白が排泄され、この量が尿蛋白排泄量の正常上限とされています。
 この蛋白のうち、尿中に排泄されるアルブミンの正常上限は約30mg/日で、アルブミン排泄量が30~300mg/日になると、微量アルブミン尿と呼ばれ、これより高値の場合は顕性アルブミン尿と呼ばれています。
 タンパク尿の最も頻度の高い原因は糸球体疾患ですが、微量アルブミン尿は糖尿性腎症の早期発見に有用とされています。また、顕性蛋白が見られれば、糸球体腎炎を疑います。
関連する病気は?
陽性:慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、巣状分節性糸球体硬化症、高血圧性腎硬化症、起立性蛋白尿、熱性蛋白尿、薬剤性尿細管障害
【検査項目】尿ビリルビン
精密検査で何が判るか?
 赤血球は約120日の寿命が尽きると網内系に取り込まれ破壊されます。この時に赤血球の中にあったヘモグロビンは鉄を失い、ビリルビンになります。このビリルビンは、水に溶けない遊離ビリルビン(間接ビリルビン)で、肝細胞に取り込まれ、水に溶ける抱合型ビリルビン(直接ビリルビン)に変わります。
 直接ビリルビンの大部分は、胆汁の中に排泄されますが、一部は血液中に出てきます。この、直接ビリルビンの血中濃度が、腎の排泄閾値である2.4mg/dLを超えると尿中に出てきます。つまり、尿中にビリルビンが認められたら、体内で異常にビリルビンが作られていることになります。
 健診では肝機能のスクリーニング検査として測定されます。
関連する病気は?
増加:肝細胞性黄疸、肝内胆汁うっ滞、閉塞性黄疸、体質性黄疸(デュビン-ジョンソン症候群)
【検査項目】尿ウロビリノゲン
精密検査で何が判るか?
 ウロビリノゲンは、肝臓から胆汁の中に入った直接ビリルビンが腸管で腸内細菌により還元されて出来たもので、大部分は糞便と共に排出されますが、一部(10~15%)は腸管から吸収され、肝でビリルビンに再合成されます。
 再合成されたビリルビンは再び腸管に排泄され、ウロビリノゲンになります。これを、ウロビリノゲンの腸肝循環と呼んでいます。
 このため、尿中のウロビリノゲンの濃度は 1.肝からのウロビリノゲンの胆汁排泄の障害 2.腸管で内容物の停滞があり腸肝循環に入るウロビリノゲンの増加 3.溶血などによるビリルビンの増加によります。
 病気としては1.は急性肝炎、肝硬変、うっけつ肝など、2.は便秘、腸閉そくなど、3.は溶血性貧血、腸管内の出血などがあります。
 また、ウロビリノゲンの減少は閉塞性黄疸、肝内胆汁うっ滞、抗菌薬投与による腸内細菌の減少などが考えられます。
関連する病気は?
増加:急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、アルコール性肝障害、薬物性肝障害、溶血性貧血、体内出血、便秘、腸閉そく
減少:閉塞性黄疸、肝内胆汁うっ滞、抗菌薬投与による腸内細菌の減少
【検査項目】尿潜血
精密検査で何が判るか?
 腎糸球体~尿細管~腎盂~尿管~膀胱~尿道の尿路のどの部分から出血しても尿潜血反応は陽性になります。
 健常人でも、尿中に赤血球は3個/μL(強拡大で毎視野1個程度)は生理的に見られます。試験紙法では赤血球5個/μL(強拡大で毎視野2~3個程度)で陽性を示します。
 溶血によるヘモグロビン尿や筋融解によるミオグロビン尿でも尿潜血反応は陽性となりますが、血尿と確定するためには、沈渣で赤血球を確認します。 肉眼的な血尿は、尿1000mL中に1mL以上の血液が混じることで、血液の量により、尿はやや混濁の状態から、赤色まで様々です。
 健診では2+以上を要精密検査にしています。
関連する病気は?
陽性(1+~3+):糸球体腎炎、間質性腎炎、尿路感染、尿路結石、尿路腫瘍、出血性素因、ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿、性器出血の混入
【検査項目】尿白血球
精密検査で何が判るか?
 健常人でも尿中に白血球は1~2個/10視野見られますが、5個以上あれば、陽性としています。
 尿中の白血球の大部分は好中球ですが、好酸球やリンパ球が見られることもあります。好中球は尿路の炎症の際に見られ、特に、膀胱炎では膿尿になることもあります。
 また、女性では腟分泌物が混入することがあり、扁平上皮細胞と白血球の増加がみられることがありますが、これは尿路感染症によるものではありません。
 健診では10個/1視野で排尿痛、頻尿、尿混濁などの臨床症状がある場合に要精密検査にしています。
関連する病気は?
陽性:腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎などの腎・尿路系の感染症)、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎の急性増悪期、ループス腎炎、薬剤性急性間質性腎炎、乳び尿
【検査項目】円柱
精密検査で何が判るか?
 尿中に見られる円柱は、尿細管の中で蛋白質がゲル化して出来るものです。この円柱は、尿細管内に出てくる赤血球、白血球などの細胞や脂肪などをを円柱表面に付着させますので、円柱の種類により腎臓の病気が判ります。
 このため、健常人に見られる、硝子様円柱を除いて、他の円柱が100倍の視野に1個でもあれば異常としています。
 健診では硝子円柱以外の円柱が1個/弱視野見られれば、要精密検査にしています。
関連する病気は?
陽性:糸球体腎炎、血管炎、腎梗塞、急性腎盂腎炎、尿細管間質性腎炎、ネフローゼ症候群、急性尿細管壊死、慢性腎不全、ループス腎炎、糖尿病性腎症
 

腫瘍マーカー検査

【検査項目】CEA(癌胎児性抗原)
精密検査で何が判るか?
 CEAは大腸癌から分離された分子量18〜20万の糖蛋白で、胎児消化器粘膜と共通の抗原性があります 。生理的には細胞間接着因子として癌細胞同士の接着に関与していると考えられています。
 CEAは皮膚、食道、胃、大腸、膵、乳腺、肺胞、気管支、甲状腺、胆嚢、胆管、尿管などの正常組織にも存在しますが、血中には極めて小量しか出て来ません。しかし、癌細胞でCEAの産生が増加すると血中CEA量は増加します。
 また、健常者や良性疾患でも高値を示すことがあるので、スクリーニングには適していません。
 臨床的には癌の治療効果判定、再発予知、進展度推定などに用いられています。
関連する病気は?
高値:結腸・直腸癌、膵癌、胆道癌、肺癌、胃癌、甲状腺髄様癌、乳癌、泌尿器癌、子宮癌、肝細胞癌、食道癌、卵巣癌、腹膜偽粘液腫、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、閉塞性黄疸、炎症性腸疾患、胃潰瘍、胃炎、憩室炎、慢性気管支炎、肺疾患、甲状腺機能低下症、腎不全、糖尿病、加齢、長期喫煙
【検査項目】AFP(α-フェトプロテイン)
精密検査で何が判るか?
 AFPは胎生時に卵黄嚢と肝で産生され、胎生13週頃に最高値に達し、出生後250〜300日で成人値になる糖蛋白です。
 臨床的には肝細胞癌、転移性肝癌、肝芽細胞腫やYolk Sac腫瘍で増加しますので、これ等疾患の診断、治療効果判定、再発の指標に使います。
 肝細胞癌の場合、腫瘍の大きさが2cm以下では、半数以上の症例ががAFP値100ng未満になりますが、肝硬変や慢性肝炎でも多くの症例が200〜400ngであるため鑑別が困難な場合があります。
関連する病気は?
高値:肝細胞癌、ヨークサック腫瘍、肝硬変、慢性肝炎、急性肝炎、胃癌、胆管癌、膵癌、腎癌、肺癌、大腸癌、子宮癌、膀胱癌、毛細血管拡張性運動失調症、妊娠
【検査項目】PSA(前立腺特異抗原)
精密検査で何が判るか?
 PSAは前立腺組織と前立腺分泌物に特異的に含まれ、前立腺の腺組織での濃度は、血液の100万倍以上とされています。
 生理的には射精時に分泌され精子の運動を活発にする作用があります。臨床的には前立腺癌のスクリーニング、診断、経過観察に有用とされています。
 スクリーニング検査では4.1〜10.0ng/mLをグレイゾーンとし10.0ng/mL以上を癌疑いとする判定基準が提唱されていましたが、4.0ng/mL以下でも、1.0~4.0ng/mLでは20%に前立腺癌が生検により発見されるため、グレイゾーンとする意義は少ないとされています。
 10.0ng/mLを超える場合は、約60%以上が前立腺癌だといわれています。ただし、PSAは前立腺肥大でも高率に陽性となります。
関連する病気は?
高値:前立腺癌、前立腺肥大症、急性前立腺炎
【検査項目】CA125
精密検査で何が判るか?
 CA125は卵巣癌を疑うとき、卵巣癌の再発予知、経過観察、子宮内膜症の診断に使います。
 CA125はヒト卵巣漿液性嚢胞腺癌株を免疫原とするモノクローナル抗体により認識される糖蛋白で、胎児の体腔上皮や腹膜、心膜、子宮・卵管内膜の発達と関係していますので、これらの組織に発生する癌で血中濃度が上昇します。
 臨床的には卵巣癌(97%)、膵癌(50%)で陽性になりますが、子宮内膜症(80%)や良性卵巣腫瘍(23%)でも偽陽性を示します。
 血清CA125値は性周期による変動があり、月経期に高く、卵胞期から黄体期にかけて低下します。また、妊娠初期(12週まで)に上昇し、その後、基準範囲まで低下します。
関連する病気は?
高値:卵巣癌(漿液性嚢胞腺癌、ムチン性嚢胞腺癌)、肝癌、胆道癌、膵癌、子宮頸癌、子宮体癌、胃癌、結腸癌、肺癌、癌腹膜転移,子宮内膜症、良性卵巣腫瘍、子宮筋腫、腹膜炎、胸膜炎、妊娠初期(12週まで)、月経期、産褥期
【検査項目】CA19-9
精密検査で何が判るか?
 CA19-9は膵癌の治療効果の判定、再発の早期発見に使われる検査です。
 CA19-9はヒト大腸癌細胞株を免疫原とするモノクローナル抗体により認識される糖鎖抗原で、抗原決定基はシリアルルイスAのため、日本人の約10%に存在するLewis抗原陰性者は癌を発症しても偽陰性になりますので、癌が疑われるのに低値の場合はルイス式血液型を調べます。
 臨床的には膵癌の治療効果判定に使われますが、スクリーニング検査にはあまり有用ではありません。
関連する病気は?
高値:良性肝・胆・膵疾患、胆石症、胆管炎、良性婦人科疾患、卵巣嚢腫、慢性呼吸器疾患、気管支嚢胞、気管支拡張症、膵癌、胆道癌、消化器癌、卵巣癌、子宮体癌、肺癌
【検査項目】エラスターゼ 1
精密検査で何が判るか?
 エラスターゼは膵、脾、大動脈、白血球、血小板に存在し、エラスターゼ-1と2があります。 血中のエラスターゼは殆どが膵エラスターゼ-1で、臨床的には膵炎を伴う早期の膵癌で高値を示すことから、早期膵癌の補助診断に使われます。
関連する病気は?
高値:急性膵炎、慢性膵炎(再燃期)、膵癌
【検査項目】シフラ21-1
精密検査で何が判るか?
 シフラ21-1は乳癌培養細胞株を免疫原としたモノクロナル抗体で、肺非小細胞癌に特異的に検出され、扁平上皮癌ではSCC(扁平上皮癌関連抗原)より陽性率が高いことが知られています。
 臨床的には肺癌の85〜90%を占める肺非小細胞癌の診断、治療効果のモニタリングに使います。また、肺扁平上皮癌の病期I・IIで60%以上の陽性率になりますので、診断と治療効果のモニタリングに有用とされています。
 また、婦人科癌,消化器癌では非扁平上皮癌でも陽性となりますので、これらの癌の腫瘍マーカーとして有用とされています。
関連する病気は?
高値:肺癌(扁平上皮癌)、食道癌、胃癌、結腸・直腸癌、卵巣癌、肝癌、子宮癌、肝良性腫瘍、肺良性腫瘍
 

甲状腺機能検査

【検査項目】TSH(甲状腺刺激ホルモン)
精密検査で何が判るか?
 甲状腺がどの程度機能しているかを調べるため、通常は血液検査により、TSH、fT3、fT4の濃度を測定します。血液中のTSH値は甲状腺機能の最も優れた指標です。このホルモンは甲状腺を刺激し、甲状腺の活動が低下すると、より強い刺激が必要になるため血液中のTSH値は上昇し、甲状腺の活動が過剰になると、刺激を弱めるためTSH値は低下します。この機能をフィードバックといいます。
 日常の臨床では、TSH値の異常は、このフィードバック系による甲状腺ホルモンの分泌異常によるものが多いため、TSH値の異常をみた場合は、まず甲状腺原発疾患を疑います。甲状腺に異常がない場合は、下垂体や視床下部の疾患の可能性がありますので、下垂体ホルモンの検査をします。
 通常、TSHはFT3、FT4と同時に測定し総合的な診断を行います。TSH値が低値でFT3、FT4が高値の場合は、Basedow病や無痛性甲状腺炎を疑います。また、TSH値が高値でFT3、FT4が低値の場合は、原発性甲状腺機能低下症を考えます。
 健診では更年期の女性には必須の検査で、0.522μU/mL以下と4.191μU/mL以上を要精密検査としています。
関連する病気は?
高値:橋本病、原発性甲状腺機能低下症、TSH不適合分泌症候群
低値:甲状腺中毒症、下垂体性甲状腺機能低下症、視床下部性甲状腺機能低下症
【検査項目】FT3(遊離トリヨードサイロニン)
精密検査で何が判るか?
 FT3は総トリヨードサイロニン(T3)量のわずか0.3%しかありませんが、甲状腺ホルモン作用を持つ活性型ホルモンで、目標とする細胞のT3受容体に結合して生物学的作用を発現します。T3の80%はT4の脱ヨード反応により生成されますから、T3を測定することは、T4代謝の指標にもなります。
 臨床的には甲状腺機能異常を疑う場合、甲状腺機能亢進症の再発を疑うときや甲状腺疾患の治療効果のモニタリングとして測定します。甲状腺機能異常を疑う場合はTSH、FT4とともに測定しますが、FT3が基準範囲内でもTSHが増加していれば機能低下状態と考えます。
 健診では更年期の女性に必須の検査で、1.9pg/mL以下と21.0pg/mL以上を要精密検査としています。
関連する病気は?
高値:甲状腺機能亢進症、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、T3甲状腺中毒症、甲状腺薬内服中
低値:原発性甲状腺機能低下症、下垂体性甲状腺機能低下症、肝硬変症、腎不全、亜急性甲状腺炎および無痛性甲状腺炎の回復前期、甲状腺全摘出術後、神経性食欲不振症
【検査項目】FT4(遊離サイロキシン)
精密検査で何が判るか?
 FT4は総サイロキシン(T4)量のわずか0.03%ですが、標的細胞に入りトリヨードサイロニンに転換した後で、甲状腺ホルモンとして生理作用を発揮しますので、血中FT4濃度は甲状腺機能の最も信頼できる指標とされてます。
 臨床的には甲状腺の機能を直接的に示す指標ですから、甲状腺機能異状が疑われる全ての病気で測定されます。
 健診では0.4ng/dL未満と8.1ng/dL以上を要精密検査としています。
関連する病気は?
高値:甲状腺機能亢進症、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、甲状腺ホルモン製剤過剰内服、甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腺腫、甲状腺ホルモン不応症
低値:慢性甲状腺炎(橋本病)に伴う甲状腺機能低下症、肝硬変症、腎不全、粘液水腫、下垂体性甲状腺機能低下症、甲状腺全摘出術後
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