疾患解説
フリガナ | クロー-フカセショウコウグン |
別名 |
POEMS症候群 高月病 PEP症候群 |
臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
英疾患名 | Crow-Fukase Syndrome |
ICD10 | C90.2 |
疾患の概念 | 多発性神経障害(polyneuropathy)、臓器腫大(organomegaly)、内分泌障害(endocrinopathy)、単クローン性免疫グロブリン血症monoclonal gammopathy)、皮膚病変(skin changes)を伴う非自己免疫性多腺性機能不全症候群で、障害の頭文字からPOEMS症候群とも呼ばれる。最も重要な特徴は形質細胞障害を合併した重度で進行性の感覚運動性多発ニューロパチーである。この疾患は形質細胞疾患に起因する循環血液中の免疫グロブリンによって引き起こされるが、循環血液中のIL-1-β、IL-6、血管内皮増殖因子および腫瘍壊死因子-αも増加する。 |
診断の手掛 |
足先の感覚異常(ジンジン感)、筋力低下、浮腫を訴える患者を診たら本症を疑う。浮腫は胸水、腹水、心膜液の形でも見られる。また皮膚は色素沈着、血管腫、多毛が特徴的である。患者には次の徴候、疾患が見られることがある。1.肝腫大 2.リンパ節腫脹 3.性腺機能低下症 4.2型糖尿病 5.原発性甲状腺機能低下症 6.副甲状腺機能亢進症 7.副腎機能不全/アジソン病 8.形質細胞腫による単クローン性IgAおよびIgGの過剰産生 9.皮膚異常(色素沈着、皮膚肥厚、男性型多毛症、血管腫、多毛症) 10.その他の症状および徴候には、浮腫、腹水、胸水、乳頭浮腫および発熱などがある。 【診断基準:2015年厚労省】 大基準:1.多発ニューロパチー 2.血清VEGF1,000pg/mL以上に上昇 3.血清・尿M蛋白陽性 小基準:骨硬化性病変、キャッスルマン病、臓器肥大、浮腫、胸水、心嚢水、内分泌異常(副腎、甲状腺、下垂体、性腺、副甲状腺、膵)、皮膚異常(色素沈着、剛毛、血管腫、チアノーゼ、爪床蒼白)、乳頭浮腫、血小板増多 *ただし、甲状腺機能異常、膵機能異常については有病率が高いため、単独の異常では小基準の1項目としない。 診断基準:Definite:大基準を3項目とも満たし、かつ小基準を1項目以上満たすもの。 Probable:大基準のうち多発ニューロパチーと血清VEGF上昇を満たし、かつ小基準を1項目以上満たすもの。 Possible:大基準のうち多発ニューロパチーを満たし、かつ小基準を2項目以上満たすもの。 |
主訴 |
感覚障害|Sensory disturbance 胸水|Pleural effusion 筋力低下|Weakness 血管腫|Hemangioma 色素沈着|Pigmentation/Chromatosis 多毛|Hypertrichosis/Hirsutism 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 腹水|Ascites 浮腫|Edema/Dropsy |
鑑別疾患 |
血管性ニューロパチー 性腺機能低下症 2型糖尿病 甲状腺機能低下症|Hypothyroidism 副甲状腺機能亢進症|Hyperparathyroidism 副腎機能低下症 多発性骨髄腫|Multiple Myeloma |
スクリーニング検査 | |
異常値を示す検査 |
Soluble E-Selectin|可溶性E-セレクチン/可溶性CD62E/可溶性ELAM-1 [/S] Vascular Endothelial Growth Factor|血管内皮増殖因子 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【血管内皮増殖因子】 高値を示し診断、治療効果判定の指標となる。VEGFは、血管内皮細胞に特異的に作用し血管の新生に関与している糖蛋白で、腫瘍細胞由来の血管透過性亢進因子と同じ遺伝子産物である。血管内皮細胞の他に、産生細胞としてマクロファージ、平滑筋細胞、線維芽細胞、腫瘍細胞などが知られている。生理作用として血管内皮細胞の増殖、血管新生の促進、血管透過性の亢進などに関係することから、血管新生に関与する各種疾患への関与が考えられている。 【可溶性E-セレクチン】 高値になる。sCD62Eは、サイトカインで活性化された血管内皮細胞に発現し、白血球との接着に関与している。また、癌組織などの血管新生が盛んな場所でも発現する。臨床的には炎症性疾患の活動性や癌組織での血管新生の程度を判断するために用いる。 【サイトカイン】 IL-1-β、IL-6、血管内皮増殖因子、腫瘍壊死因子αが増加することがある。 |
検体検査以外の検査計画 | 神経伝導速度、骨シンチグラフィー |