疾患解説
フリガナ | フクコウジョウセンキノウコウシンショウ |
別名 | |
臓器区分 | 内分泌疾患 |
英疾患名 | Hyperparathyroidism |
ICD10 | E21.3 |
疾患の概念 | 副甲状腺の腫瘍や過形成により、副甲状腺ホルモンの分泌が亢進し、その作用が過剰に発現した病態である。分泌亢進により高Ca血症や低リン血症などを来す原発性と、血中Ca濃度の低下で二次的に副甲状腺ホルモン分泌が亢進する続発性がある。 |
診断の手掛 | 血清Ca濃度が、10.4mg/dL(イオン化Ca5.2mg/dL)以上、腎結石の存在、神経・筋症状、骨病変を訴える患者は副甲状腺の検査が必要である。ただし、高Ca血症や低リン血症を呈する患者は25%に過ぎない。また、25%の患者は甲状腺癌の手術中に副甲状腺の過形成が偶然見つかるため、症状や徴候での診断は困難な場合が多い。原因のはっきりしない腎結石、多尿、高血圧、便秘、疲労、骨痛、精神機能の変化を訴える患者は、本症を疑う必要がある。 |
主訴 |
易疲労感|Fatigue 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 筋力低下|Weakness 傾眠|Drowsiness/Somonolency 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure 呼吸困難|Dyspnea 昏睡|Coma 混濁|Turbidity/Opacity 昏迷|Stupor 嗄声|Hoarseness 食欲不振|Anorexia 前頸部腫瘤|Anterior neck tumor 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 多飲|Polydipsia 多尿|Polyuria テタニー|Tetany 皮膚乾燥|Xeroderma 不安|Anxiety 便秘|Constipation 抑うつ状態|Depressive state |
鑑別疾患 |
下垂体癌 甲状腺癌|Cancer of Thyroid 膵臓癌|Cancer of Pancreas 高Ca血症|Hypercalcemia 高血圧症|Hypertension 腫瘍随伴症候群 腎不全 多発性内分泌腫瘍症 ビタミンD中毒症 副腎腫瘍 慢性腎不全|Chronic Renal Failure |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Calcium|カルシウム [/U, /CSF, /S, /U] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Leukocytes|白血球数 [/B] Magnesium|マグネシウム [/S] Phosphate|無機リン [/S, /Saliva, /U] Potassium|カリウム [/S, /S, /U] Tri-Iodothyronine (T3)|総トリヨードサイロニン/総T3/トリヨードサイロニン/トリヨードチロニン [/S] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S, /S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] Uric Acid|尿酸 [/CSF, /S] α2-Globulin|α2-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
1,25-Dihydroxy Vitamin D|1,25-ジヒドロキシビタミンD3/1α,25-ジヒドロキシビタミンD/活性型ビタミンD [/S] 1,25-Dihydroxy Vitamin D3|1,25-ジヒドロキシビタミンD3/1α,25-ジヒドロキシビタミンD/活性型ビタミンD [/S] 5-Hydroxyindoleacetic Acid|5-ヒドロキシインドール酢酸 [/CSF] Acid Phosphatase|酸性ホスファターゼ [/S] Acid Phosphatase, Tartrate Resistant|骨型酒石酸抵抗性フォスファターゼ [/S] Adenosine Monophosphate|アデノシン一リン酸/アデニル酸 [/U] Alkaline Phosphatase, Bone Isoenzyme|骨型アルカリホスファターゼ/骨性ALP [/S] Amino Acids|アミノ酸分析/アミノ酸41分画 [/U] Ammonium Ions|アンモニウムイオン [/U] Anion Gap|アニオンギャップ [/U] Antibody Titer [/S] Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/S] Bone Sialoprotein|骨シアロ蛋白質 [/S] C-terminal Propeptide of Type I Procollagen|Ⅰ型プロコラーゲンC末端プロペプチド [/S] Calcitonin|カルシトニン [/P] Citrate|クエン酸/クエン酸塩 [/U, /P, /U] Copper|銅 [/S, /U] Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [/U] Deoxypyridinoline|デオキシピリジノリン [/U] Gastrin|ガストリン [/S] Homovanillic Acid|ホモバニリン酸 [/CSF] Hydroxyproline|総ヒドロキシプロリン/ヒドロキシプロリン [/U] Insulin|インスリン [/P] Ionized Calcium|イオン化カルシウム/Caイオン [/CSF, /S] Net Acid Excretion|総酸排泄量 [/U] Osmolal Gap|浸透圧ギャップ [/U] Osteocalcin|オステオカルシン [/S] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/CSF, /P] Parathyroid Hormone 1-84|副甲状腺ホルモン1-84 [/P] Parathyroid Hormone, Intact|副甲状腺ホルモンインタクト/インタクト副甲状腺ホルモン [/P] Parathyroid Hormone-related Peptide|副甲状腺ホルモン関連蛋白 [/P] pH|尿pH [/U] Pyridinoline Cross-linked Telopeptide of Type I Collagen [/S] Pyrophosphate [/Synovial Fluid] Specific Gravity|比重(尿)/尿比重 [/U] Tubular Maximum for Phosphate [/U] Type I Collagen Cross-Linked N-Telopeptide|I型コラーゲン架橋N末端テロペプチド [/U,/S] Volume [/U] Zinc|亜鉛 [/U] |
関連する検査の読み方 |
【副甲状腺ホルモンインタクト】 多くの患者で増加。少数の患者は基準範囲上限。常にCaと同時に測定する。基準値の2倍を超えたら殆ど原発性HPTである。日内リズムのため採血は10時以前に行う。 【電解質】 Clは102mEq/L以上である。本症以外の高Ca血症では99mEq/L以下。高Cl血性アシドーシスになりやすい。 【無機リン】 50%の患者で3mg/dL以下に低下、低値はHPT診断の根拠となる。 【Cl:無機リン比】 33以上ならHPT、30以下なら否定できる。 【Ca】 増加(10.4mg/dL以上)は本症(HPT)の特徴で、診断の最初のステップである。サイアザイド利尿剤のようなCa増加をきたす薬物の服用を確認する。総蛋白とアルブミンを同時に測定する。尿Caは患者の70%で増加する。Caが12mg/dLを上回る場合は腫瘍や副甲状腺機能亢進症以外の原因が示唆される。 【蛋白分画】 多発性骨髄腫とサルコイドーシスを除外するために必須の検査である。 【サイクリックAMP】 尿中cAMPは本症と悪性腫瘍に伴う高Ca血症(HHM)患者の90%以上で4.0mmol/L以上に増加する。腎原性cAMPは著しい高値を示す。cAMPは細胞内の情報伝達、細胞分化、増殖、免疫や各種代謝などに関与しており、ATPを基質として産生される。臨床的には高Ca血症あるいは低Ca血症の鑑別診断の際に副甲状腺機能異常が疑われるときや肝予備能検査であるグルカゴン負荷試験のマーカーとして測定される。腎原性cAMPの算定:腎原性cAMP(nmol/dL)=尿cAMP×sCr/uCr-血漿cAMP(基準値:0.8~2.8nmol/dlGF) 【I型コラーゲン架橋N末端テロペプチド】 血清、尿ともに中等度~高度に増加する。NTxはI型コラーゲンC末端テロペプチドと同じくI型コラーゲンが分解され血中に放出されたN末端ペプチドであるが、1CTPと異なり尿細管で再吸収されないため、より検体が得やすい尿中濃度の測定で1CTPと同じ臨床的意義があるとされている。 【I型プロコラーゲンC末端プロペプチド】 高値である。PICPはI型プロコラーゲンがI型コラーゲンになりコラーゲン線維に組み込まれる際に血中の放出されるので、血中濃度はコラーゲン線維の生成速度を反映している。 【胃液一般検査】 胃液分泌能が亢進し過酸になる。 【ガストリン刺激試験】 分泌が亢進する。 【血漿HCO₃-濃度】 24mEq/L未満で代謝性アシドーシスを示す。 【尿細管リン再吸収率】 80%未満である。 |
検体検査以外の検査計画 | 超音波検査、CT検査、MRI検査、99m-TcMIBIシンチ、99m-Tcサブトラクションシンチ |