疾患解説
フリガナ | タハツセイコツズイシュ |
別名 |
骨髄腫症 形成細胞骨髄腫 |
臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
英疾患名 | Multiple Myeloma |
ICD10 | C90.0 |
疾患の概念 | 多発性骨髄腫は、形質細胞の悪性腫瘍で、免疫グロブリンを産生する形質細胞が単クローン性に腫瘍化し、その産物である単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)により多彩な臨床症状を呈する疾患である。10万人に対し2人の罹患率があり、男:女比は1.6:1、罹患年齢中央値は65歳である。M蛋白の型により、IgA,IgG,IgD,IgE型とL鎖のみを産生するBJP型に分けられる。悪性形質細胞が産生するMタンパクは、約55%がIgG型、約20%がIgA型、IgD型は1%である。IgG型またはIgA型のうち、40%にベンスジョーンズ蛋白尿がみられ、尿中のκまたはλ型の遊離単クローン性軽鎖として検出される。患者の15~20%は、形質細胞からベンスジョーンズ蛋白のみが分泌される。形質細胞腫が骨組織に浸潤し、悪性形質細胞から分泌されるサイトカインにより破骨細胞が活性化され、骨芽細胞が抑制されると骨盤、脊椎、肋骨および頭蓋に骨粗鬆症または孤立性の溶骨性病変が出現する。多くの患者で、骨髄腫腎が見られるが、原因は遠位尿細管における軽鎖沈着、または高Ca血症である。腫瘍細胞による腎不全または赤血球産生の抑制に起因する貧血もみられる。アミロイドーシスが骨髄腫患者の10%見られ、多くは2λ型M蛋白の患者である。 |
診断の手掛 |
40歳を超えてから、夜間または安静時に背部と胸郭に持続性の骨痛を訴えたり、説明のつかない貧血、腎機能障害などの症状を訴えたら本症を疑う。また、血中総蛋白量の増加、尿蛋白陽性、CRP陰性で赤沈異常亢進など説明のつかない検査所見を呈する患者も本症を疑う。病的骨折、貧血、過粘稠度症候群の症状、寒冷感受性、レイノー症候群、反復性の細菌感染症などにも注意する。 【診断基準:SWOG】 1.major criteria:Ⅰ.組織生検にて形質細胞を認める Ⅱ.骨髄中の形質細胞の割合が>30%である Ⅲ.血清の電気泳動でモノクローナルのグロブリンspikeが、IgGでは>3.5g/dL、IgAでは>2.0g/dLのピークを示す 2.minor criteria:a.骨髄中の形質細胞が10~30% b.モノクローナルグロブリンspikeを認めるが、上記Ⅲ以下 c.骨髄融解像が2個以上認められる d.正常免疫グロブリンが、IgGでは<600mg/dL、IgAでは<100mg/dL、IgMでは<50mg/dLに減少 *診断:明らかな進行性の臨床症状を有する患者において、下記のa)~d)のいずれかの場合は多発性骨髄腫と診断する。 a)Ⅰ+b、Ⅰ+c、Ⅰ+d b)Ⅱ+b、Ⅱ+c、Ⅱ+d c)Ⅲ+a、Ⅲ+c、Ⅲ+d d)a+b+c、a+b+d 【診断基準:MGUS】 A.モノクローナルのグロブリン血症を認める B.M蛋白が、IgGでは≦3.5g/dL、IgAでは≦2.0g/dL、BJPでは≦1.0g/24hr C.骨髄中の形質細胞<10% D.骨病変が認められない E.無症状 |
主訴 |
易感染性|Susceptibility to infection 息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 意識障害|Memory impaiment 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 肝腫大|Hepatomegaly 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 蛋白尿|Proteinuria 背部痛|Backache 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 脾腫|Splenomegaly 貧血症状|Anemic symptom 浮腫|Edema/Dropsy 腰痛|Low back pain/Lumbago リンパ節腫脹|Lymphadenopathy レイノー現象|Raynaud phenomenon |
鑑別疾患 |
B細胞リンパ腫 良性単クローン性ガンマグロブリン血症 原発性アミロイドーシス 原発性マクログロブリン血症|Waldenstrom's Macroglobulinemia 高Ca血症|Hypercalcemia 骨粗鬆症|Osteoporosis 腎不全 貧血 非定型骨髄腫 多尿症 多飲症 末梢神経障害 手根管症候群 |
スクリーニング検査 |
Albumin:Globulin Ratio|アルブミン:グロブリン比 [![]() ![]() Albumin|アルブミン [ ![]() ![]() Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [ ![]() ![]() Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [ ![]() Calcium|カルシウム [ ![]() ![]() ![]() ![]() Chloride|クロール [ ![]() Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [ ![]() ![]() Creatinine|クレアチニン [ ![]() C-reactive Protein|C反応性蛋白 [ ![]() Erythrocytes|赤血球数 [ ![]() ![]() Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [ ![]() Ferritin|フェリチン [ ![]() GFR|糸球体濾過量 [ ![]() Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [ ![]() Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [ ![]() Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [ ![]() Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [ ![]() ![]() Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [ ![]() ![]() Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [ ![]() Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [ ![]() Leukocytes|白血球数 [ ![]() Lymphocytes|リンパ球 [ ![]() MCV|平均赤血球容積 [ ![]() Neutrophils|好中球 [ ![]() Phosphate|無機リン [ ![]() ![]() ![]() Platelets|血小板 [ ![]() Potassium|カリウム [ ![]() ![]() Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [ ![]() ![]() ![]() ![]() Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [ ![]() Sodium|ナトリウム [ ![]() Urea Nitrogen|尿素窒素 [ ![]() Uric Acid|尿酸 [ ![]() ![]() α2-Globulin|α2-グロブリン [ ![]() β-Globulin|β-グロブリン [ ![]() γ-Globulin|γ-グロブリン [ ![]() ![]() |
異常値を示す検査 |
Acid Phosphatase|酸性ホスファターゼ [![]() Acid Phosphatase, Tartrate Resistant|骨型酒石酸抵抗性フォスファターゼ [ ![]() Albumin:Globulin Ratio|アルブミン:グロブリン比 [ ![]() ![]() Ammonium Ions|アンモニウムイオン [ ![]() Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [ ![]() Anion Gap|アニオンギャップ [ ![]() Anti-p53 Antibodies|抗p53抗体 [ ![]() Apolipoprotein A-I|アポリポ蛋白A-I [ ![]() Apolipoprotein A-I:Apolipoprotein A-II Ratio [ ![]() Apolipoprotein A-II|アポリポ蛋白A-II [ ![]() Apolipoprotein D [ ![]() Bence-Jones Protein|ベンスジョーンズ蛋白 [Present/S, Present/U] Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [ ![]() Bone Sialoprotein|骨シアロ蛋白質 [ ![]() Chylomicrons [ ![]() Cold Agglutinins|寒冷凝集反応/寒冷血球凝集反応 [ ![]() Complement C1b [ ![]() Complement C1r|補体複合体成分1r/C1r [ ![]() Complement C1s|補体複合体成分1s/C1s [ ![]() Complement C2|補体第2成分/C2 [ ![]() Complement C4d [ ![]() Creatinine|クレアチニン [ ![]() Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [ ![]() Cryoglobulins|クリオグロブリン [ ![]() Deoxypyridinoline|デオキシピリジノリン [ ![]() Dipyridinoline [ ![]() Epidermal Growth Factor|上皮細胞増殖因子/上皮細胞成長因子 [ ![]() Fructosamine|フルクトサミン/グリコシレイテッドプロテイン/フルクトースアミン [ ![]() Fucosyltransferase [ ![]() Hemoglobin F|ヘモグロビンF/胎児性ヘモグロビン/胎性ヘモグロビン [ ![]() Immunoglobulin D|免疫グロブリンD [ ![]() Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [ ![]() Immunoglobulin Light Chain|免疫グロブリン遊離L鎖/免疫グロブリン遊離L鎖κ:λ比 [ ![]() Immunoglobulins|免疫グロブリン [ ![]() Interleukin-2|インターロイキン-2 [ ![]() Interleukin-6|インターロイキン-6 [ ![]() Interleukin-7|インターロイキン-7 [ ![]() Kappa Light Chain|免疫グロブリンKappa鎖 [ ![]() Lamda Light Chain|免疫グロブリンLamda鎖 [ ![]() Latent Tumor Growth Factor-β1 [ ![]() Lysozyme|リゾチーム/ムラミダーゼ/ムコペプタイド/グリコヒドロラーゼ [ ![]() M Component|モノクロナール蛋白質/M成分 [ ![]() MCV|平均赤血球容積 [ ![]() Neopterin|ネオプテリン [ ![]() ![]() Osmolal Gap|浸透圧ギャップ [ ![]() Osmolality|浸透圧 [ ![]() Osteocalcin|オステオカルシン [ ![]() ![]() Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [ ![]() pH|尿pH [ ![]() ![]() Plasma Cells|形質細胞 [ ![]() ![]() Pseudouridine|シュードウリジン [ ![]() Pyridinoline|ピリジノリン [ ![]() Sialyltransferase [ ![]() Soluble CD16 [ ![]() Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [ ![]() Soluble Interleukin-6 Receptor [ ![]() ![]() Viscosity|血液粘稠度/血液流体特性検査/血液流体変動能検査 [ ![]() Vitamin B12 Binding Capacity|ビタミンB12結合能 [ ![]() VLDL-Cholesterol [ ![]() Volume [ ![]() α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [ ![]() β-Hexosaminidase|β-ヘキソサミニダーゼ [ ![]() β2-Macroglobulin [ ![]() β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [ ![]() |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 患者の80%は正色素性正球性貧血。塗抹標本では85%の患者に連銭形成がみられる。白血球と血小板は基準範囲内。リンパ球が40~50%である。 【連銭形成】 赤血球の連銭形成を認める。赤血球が貨幣を連ねるように連続して結合している状態で、γ-グロブリン分画など高分子の血漿蛋白が増加している場合に見られる。 【β2-ミクログロブリン】 増加し、その程度は骨髄腫細胞量と相関する。3mg/L以上になれば予後不良である。β2mは全ての有核細胞の膜抗原を構成しているが、細胞から遊離すると糸球体を通過し近位尿細管で再吸収され分解される。この蛋白の異化経路の大部分は腎を経由するため、腎の排泄機能が低下すると、他の低分子蛋白よりも著しく血中濃度が増加する。また、血中濃度はGFRと良く相関するので、GFRに代用されることもある。臨床的には腎障害部位の推測や腎疾患活動性の推定に用いる。 【ZTT】【TTT】 ZTTは2.3U以下、TTTは0.5U以下である。 【骨髄像】 20~50%は形質細胞あるいは骨髄腫細胞で占められる。 【ESR】 90%の患者で亢進し、γ-グロブリンの量に比例する。本症でのみ100mm/時以上のことがある。 【蛋白分画】 殆どの患者で血清、尿ともに異常。蛋白電気泳動のみではκ軽鎖骨髄腫とλ軽鎖骨髄腫を見逃す。患者の10%は0.6g/dL以下の低γ-グロブリン血症である。 【免疫電気泳動】 M蛋白が増加し、IgGが2g/dL以上、IgAが1g/dL以上である。 【血清粘稠度】 通常4.0を超える(正常で1.4~1.8)。 【尿一般検査】 ベンスジョーンズ蛋白は試験紙法では殆ど陽性にならない。尿比重は1.025以上の高値である。 【ベンスジョーンズ蛋白】 患者の35~50%に認められる。試験紙法は見逃しが多く、熱沈降法は信頼性にかける。ベンスジョーンズ蛋白とγ-グロブリンの連続測定は化学療法の良い指標である。 【尿沈渣】 骨髄腫腎の患者では尿中に異常な形質細胞を認めることがある。 【Anion Gap】 IgG型骨髄腫で10mEq/L以下である。 【リンパ節生検】 骨髄検査が正常な場合に行うが、びまん性高分化型リンパ腫または形質細胞様リンパ球性リンパ腫と診断される頻度が高い。 【骨髄生検】 骨髄穿刺とともに行う。 |
検体検査以外の検査計画 | 骨X線検査、CT検査、MRI検査 |