疾患解説
フリガナ | ペスト |
別名 |
腺ペスト 黒死病 |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Plague |
ICD10 | A20.9 |
疾患の概念 | エルシニア属のグラム陰性桿菌である、ペスト菌(Yersinia pestis)によって引き起こされる感染症で、ネズミを吸血したノミの胃で増殖し、刺咬によって感染が成立する。高熱を伴う重症肺炎とリンパ節腫脹が特徴的で、しばしば敗血症に進行する。我が国には常在しないが、1類感染症で、診断後直ちに届け出る必要がある。 |
診断の手掛 | 流行地の滞在歴やげっ歯類への接触暦がある患者が、悪寒を伴う突発的な高熱を発症し、リンパ節(鼠径部)が腫脹していたら本症を疑う。この疾患は、臨床像が異なる4種に分けられる。腺ペストは、潜伏期間が通常2~5日で、39.5~41℃の発熱で突然発症し、しばしば悪寒を伴う。発熱とともに、リンパ節が腫大する。腫大するリンパ節は大腿、鼠径リンパ節が多いが、腋窩、頸部または複数部位のリンパ節がそれに続く。リンパ節には強い圧痛と硬結があり、周囲には著明な浮腫が生じる。皮膚病変は、局所的な軽度のリンパ管炎を伴った小さな水疱から痂皮まで様々で、時にノミ刺咬の部位に見られる。患者は不穏、せん妄、錯乱、協調運動障害を起こす。肝と脾臓が腫大することがある。肺ペストは、感染性飛沫の吸入で引き起こされ、2~3日の潜伏期に続き高熱、悪寒、頻脈、胸痛、頭痛で突然発症し、しばしば重症となる。咳嗽は、初期には目立たないが、24時間以内に出現する。痰は当初粘液状であるが、すぐに血液が混じり、やがて一様なピンク色またはラズベリーシロップ様の明赤色を呈する泡沫状となる。頻呼吸および呼吸困難がみられる。敗血症ペストは、急性かつ劇症の疾患で、40%の患者で腹痛がみられ、最終的には播種性血管内凝固症候群、四肢の壊疽と多臓器不全を発症する。軽症ペストは腺ペストの良性型で、流行地域のみで発生し、リンパ節炎、発熱、頭痛および極度の疲労を訴えるが、1週間以内に軽快する。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 嘔吐|Vomiting 悪寒戦慄|Chill with shivening 悪心|Nausea 血痰|Bloody sputum/Hemoptysis 高熱|High fever/Hyperthermia 呼吸困難|Dyspnea 弛張熱|Remittent fever 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 出血斑|Ecchymosis 頭痛|Headache/Cephalalgia リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
リンパ節炎 敗血症|Sepsis 播種性血管内凝固症候群|Disseminated Intravascular Coagulation(DIC) 肺炎|Pneumonia |
スクリーニング検査 | Leukocytes|白血球数 [/B] |
異常値を示す検査 | |
関連する検査の読み方 |
【血清学的検査】 抗体価が1:16を超えるか、急性期と回復期で4倍の上昇が認められたら陽性とする。 【PCR】 最も診断的な検査である。 【CBC】 白血球数は10,000~25,000/μLになり、多数の未熟球を含む。時には類白血病反応のように1000,000/μLになることもある。 【塗抹】【培養】 病変部から吸引した検体で塗抹・培養を行う。塗抹標本はGiemsa染色ないしWayson染色、グラム染色を行う。Giemsa染色では形態が安全ピンに類似する短桿菌がみられる。培養で陽性ななるが、増殖は遅い。検体は鼠径部リンパ節吸引、血液、痰を用いる。 【肝機能検査】 AST、ALT、ビリルビンが上昇することもある。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査 |