フリガナ |
ハイケツショウ |
別名 |
敗血症性ショック
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臓器区分 |
感染性疾患
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英疾患名 |
Sepsis
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ICD10 |
A41.9
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疾患の概念 |
感染症による全身性炎症反応症候群で、微生物あるいはその代謝産物が血液中に流入することで引き起こされる。進行すると播種性血管内凝固症候群、急性呼吸促迫症候群、多臓器不全などを併発する。敗血症の定義は1.体温:38℃以上または36℃未満。 2.心拍数:90拍/分以上。3.呼吸数:20回/分以上またはPaco₂が32mmHg未満。4.白血球数:12,000/μL以上または4,000/μL未満、もしくは幼若型が10%を超えるとされているが、あくまでも参考にすべき数値とされている。
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診断の手掛 |
典型例では、悪寒戦慄で始まり発熱、頻脈、頻呼吸、乏尿を訴えるが、血圧は正常を保っている。重症化し敗血症性ショックが発生すると錯乱や注意力の低下が見られ血圧も低下する。 【診断基準:1992年SCCM/ACCP】 1)①体温:38℃以上か36℃以下、②心拍数:90回/分以上、③呼吸数:20回/分以上またはPaco₂32torr以下、④白血球数:12,000/μL以上または4,000/μL以下、あるいは未熟白血球10%以上。 *上記4項目中、2項目以上を満たすような高度な全身性の炎症反応を生じた状態をSIRSと呼び、そのうち体内に侵入した微生物が原因であることが証明されるか、疑われるものを敗血症と呼ぶ。血液培養陽性の所見は必ずしも必要としない。 2)上記の定義を満たす敗血症のうち、以下の症状のような臓器不全、低潅流の徴候を示すものを重症敗血症と呼ぶ。①乳酸アシドーシス、②乏尿、③急速な意識レベルの低下 3)敗血症ショック:上記の重症敗血症のうち、収縮期血圧が90mmHg以下であるか、ベースラインよりも40mmHg以上低下し、十分な補液によっても改善しない場合を敗血症ショックとする。昇圧剤によって血圧を維持しなければならない場合も敗血症ショックとしてよい。
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主訴 |
意識障害|Memory impaiment 悪寒戦慄|Chill with shivening 血圧低下|Blood pressure decreased 呼吸困難|Dyspnea 錯乱|Confusion ショック|Shock 全身倦怠感|General malaise/Fatigue チアノーゼ|Cyanosis/Cyanopathy 低体温|Hypothermia 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 頻呼吸|Tachypnea 頻脈|Tachycardia 乏尿|Oliguria 無尿|Anuria
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鑑別疾患 |
悪性腫瘍 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma 関節炎 菌血症 血管炎症候群|Vasculitic Syndrome 毒素性ショック症候群|Toxic Shock Syndrome(TSS) 尿路感染症|Urinary Tract Infection(UTI) 膿瘍 慢性副鼻腔炎 急性膵炎|Acute Pancreatitis 熱傷 肺炎|Pneumonia 髄膜炎|Meningitis 胆管炎
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スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S, /U] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S, /WBC] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Anti-Streptolysin O|抗ストレプトリジンO価/抗ストレプトリジン抗体 [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Cholinesterase|コリンエステラーゼ/ブチルコリンエステラーゼ/偽コリンエステラーゼ [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Eosinophils|好酸球 [/B] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P, /P] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Iron|鉄/血清鉄 [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /B] Lymphocytes|リンパ球 [/B, /PlF, /B] Monocytes|単球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B, /B, /PlF] Phosphate|無機リン [/S] Platelets|血小板 [/B, /B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/Pulmonary Edema Fluid] Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P] TIBC|総鉄結合能 [/S] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] Uric Acid|尿酸 [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S]
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異常値を示す検査 |
11-Dehydro-thromboxane B2|11-デヒドロトロンボキサンB2 [/U] 17-Hydroxycorticosteroids|17-ヒドロキシコルチコステロイド [/U] 17-Ketogenic Steroids|17-ケトジェニックステロイド [/U] 2,3-Dinor-6-Keto-Prostaglandin F1α [/U] 3,3'-Di-iodothyronine [/S] 5'-Nucleotidase|5'-ヌクレオチダーゼ [/S] 6-Keto-Prostaglandin F1α|6-ケトプロスタグランジンF1α/プロスタサイクリン [/P] Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [/S] Adenosine Triphosphate|アデノシントリホスフェート/アデノシン三リン酸 [/RBC] Adrenomedullin|アドレノメデュリン [/P] Alanine|アラニン [/P] Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/S] Antithrombin III|アンチトロンビンIII/アンチトロンビン [/P] Apolipoprotein A-I|アポリポ蛋白A-I [/S] Apolipoprotein B|アポリポ蛋白B [/S] Arginase|アルギナーゼ [/S] Atrial Natriuretic Peptide|心房性Na利尿ペプチド [/P] C1-Esterase Inhibitor|C1インアクチベーター活性/C1エステラーゼインヒビター/C1インヒビター [/S] C4b-Binding Protein [/S] Calcitonin Gene-related Peptide [/S] Catalase|カタラーゼ [/RBC, /S] Catecholamines|カテコールアミン総 [/P, /U] Cells [/PlF] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Complement C3a|補体フラグメントC3a,C4a,C5a/補体分解産物C3a,C4a,C5a/アナフィラトキシン [/S] Complement C3dg [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S, /S] Complement, Total Hemolytic [/S] Copper|銅 [/S] Corticotropin|副腎皮質刺激ホルモン/コルチコトロピン [/P] Cortisol|コルチゾール [/P] Creatine|クレアチン [/U] Di-Iodotyrosine [/S] Elastase-α1-Proteinase inhibitor [/P] Elastase-α1-Proteinase inhibitor Complex [/S] Endothelial Cell Protein C Receptor [/P] Endothelin-1|エンドセリン [/P] Endotoxin|エンドトキシン/内毒素/リポ多糖体/リポポリサッカライド [/S] Epinephrine|カテコールアミン総 [/P] Erythrocyte Casts|円柱 [/U] Erythropoietin|エリスロポエチン [/S] Estradiol|エストラジオール/E2 [/P] Estrone|エストロン/E1 [/P] Factor II|第II因子活性/プロトロンビン [/P] Factor IV|第IV因子活性/フリーCaイオン [/P] Factor XII|第XII因子活性 [/P] Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [/P] Fibrinopeptide A|フィブリノペプタイドA [/P] Fibronectin|フィブロネクチン [/P, /P] Follistatin|フォリスタチン [/S] Glucose Tolerance|ブドウ糖負荷試験/グルコース負荷試験 [/S] Glutathione Peroxidase [/S] Glycine|グリシン [/P] Hep 3B Erythropoetin [/P] High Molecular Weight Kininogen|高分子キニノゲン/フィッツジェラルド(Fitzgerald)因子 [/P] Hyaluronic Acid|ヒアルロン酸 [/S] Immunoglobulin D|免疫グロブリンD [/S] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] Insulin|インスリン [/P] Insulin-like Growth Factor Binding Protein-3 Protease [/S] Interferon-γ|インターフェロン-γ [/S] Interleukin-1|インターロイキン-1/インターロイキン-1α/インターロイキン1β [/S] Interleukin-1 Receptor Antagonist [/S] Interleukin-10|インターロイキン-10 [/S] Interleukin-1α [/S] Interleukin-1β|インターロイキン-1β [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Interleukin-8|インターロイキン-8 [/Pulmonary Edema Fluid, /S] Lactate|乳酸/ラクテート [/B] Lactoferrin|ラクトフェリン [/P] Leukemia Inhibitory Factor [/S] Lyso-Platelet Activation Factor [/P] Mean Platelet Volume|平均血小板容積 [/B] Methemoglobin|メトヘモグロビン [/B] Methionine|メチオニン [/P] Myeloperoxidase|ミエロペルオキシダーゼ抗原/MPO抗原 [/S] Neopterin|ネオプテリン [/S, /U] Neuropeptide Y|ニューロペプチドY [/P] Neutrophil Elastase|顆粒球エラスターゼ/好中球エラスターゼ [/P] Nitrate|亜硝酸/硝酸イオン [/S] Nitrate plus Nitrite [/S] Nitrogen Balance [Negative/Patient] Norepinephrine|カテコールアミン総 [/P] Phenylalanine|フェニルアラニン [/P] Phospholipase A|ホスホリパーゼA [/S] Phospholipase A2 [/S] Phospholipase A2 Type I [/S] Plasminogen|プラスミノゲン活性 [/P] Plasminogen Activator Inhibitor-1|プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1 [/P] Plasminogen:α2-Antiplasmin Ratio [/P] Prekallikrein|プレカリクレイン/Fletcher因子 [/P] Procalcitonin|プロカルシトニン [/P] Protein C|プロテインC/プロテインC抗原量 [/P] Protein S|プロテインS/プロテインS抗原量 [/P] Prothrombin Consumption [/B] Reticulocytes|網赤血球/レチクロサイト/網状赤血球数 [/B] Retinol|ビタミンA/レチノール [/U] Secretory Non-pancreatic Phospholipase A2 [/S] Soluble E-Selectin|可溶性E-セレクチン/可溶性CD62E/可溶性ELAM-1 [/S] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S] Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor-p55 [/S] Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor-p75 [/S] Soluble Vascular Cell Adhesion Molecule-1|可溶性VCAM-1/可溶性CD106/可溶性血管細胞接着分子-1 [/S] Substance P|サブスタンスP/ニューロキニンA [/P] Superoxide Dismutase|スーパーオキサイドディスムターゼ/スーパーオキサイドジスムターゼ [/RBC, /S] Testosterone|テストステロン/総テストステロン/アンドロゲン [/S] Thrombin Antithrombin III Complex|トロンビン・アンチトロンビンIII複合体/トロンビン・アンチトロンビン複合体/TATテスト [/P] Thrombomodulin|トロンボモジュリン [/P] Thromboxane B2|トロンボキサンB2 [/P] Tissue Factor Antigen|組織因子/組織トロンボプラスチン [/P] Tissue Factor Pathway Inhibitor [/P] Tissue Plasminogen Activator|組織プラスミノゲンアクチベータ [/P] Troponin T|心筋トロポニンT/トロポニンT [/S] Tumor Necrosis Factor|腫瘍壊死因子-α [/S] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] Urea|尿素 [/S] Vasoactive Intestinal Polypeptide|バゾアクティブ腸管ペプチド/血管作動性腸管ポリペプチド [/P] von Willebrand Factor Antigen|第VIII因子様抗原/第VIII因子関連抗原/フォンウィルブランド因子抗原量 [/P] Xylose Tolerance Test [Abnormal/U] α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [/S] β-Endorphin|β-エンドルフィン [/P]
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関連する検査の読み方 |
【CBC】 血小板はDICを発症すれば減少すが、50,000/μL以下までの急激な減少が、しばしば早期に診られる。白血球は4,000/μL未満まで減少し、多核白血球は20%迄低下する事がある。しかし、この状況は1~4時間以内に逆転し、白血球数が15,000/μL以上、幼弱な多核白血球80%以上になるという変化を生じる。 【血液培養】 陽性である。連続培養が必要である。 【インターロイキン】 IL-1とIL-6が高値を示す。迅速診断に有用である。 【β-D-グルカン】 β-D-グルカンは真菌の主要な細胞膜構成成分でカブトガニ血球を凝集させる。この性質を利用し深在性真菌症やニューモシスチス・カリニ肺炎の血液診断に使われる。ただし菌種は同定できない。 【エンドトキシン】 グラム陰性桿菌感染で陽性であり、診断に有用である。 【HMGB1】 High mobility group box 1は非ヒストン核蛋白の主要成分で、敗血症におけるエンドトキシンショックの際に血中に増加する致死的メディエーターである。敗血症性ショックの晩期に発現する。 【プレセプシン】 食細胞が細菌を貪食する際に利用されるCD14が分解され、13KDの蛋白(sCD14)が分泌される。この蛋白の血中量は敗血症の病態と良く相関する。全血を用いる迅速診断が可能である。 【プロカルシトニン】 この蛋白は甲状腺のC細胞で恒常的に産生されるが、重症感染症では甲状腺以外の全身諸臓器の細胞で産生され、血中に放出されるため、敗血症の早期診断マーカーとして有用である。 【カンジダ抗原】 カンジダ感染に有用である。カンジダ症を疑う場合に用いる検査であるが、現在はカンジダ抗原検出に置き換えられつつある。抗体検査は、初回の検査で320倍以上か2週間の間隔をおいて採取したペア血清の抗体価が4倍を超えた場合に強くカンジダ症が疑われる。この抗体はカンジダ属が定着しているだけでも陽性になることがある。また、HIVなどの免疫不全症よる日和見感染では抗体は産生されないので注意が必要である。 【髄液中B群溶血連鎖球菌抗原】 陽性になれば溶連菌感染が示唆される。 【腫瘍壊死因子-α】 細菌性敗血症ショックで、高値例は予後が不良である。 【白血球中細菌核酸検査】 白血球に貪食された細菌のDNAを同定するもので、迅速診断が可能である。 【動脈血ガス分析】 PaCO₂が低下し、pHは7.4以上になる。 【毛細血管抵抗試験】 軽度に減弱し症候性血管出血を来す。 【L型脂肪酸結合蛋白】 著しく増加し、1,000μg/g・Cr以上のこともある。脂肪酸結合蛋白は細胞内のエネルギー代謝、脂質代謝、疎水性リガンドの輸送を担当している蛋白で、複数のサブタイプがある。このうち、L-FABPは腎の近位尿細管に特異的に発現している。近位尿細管で再吸収された遊離脂肪酸は、L-FABPにより細胞内のミトコンドリアに運ばれエネルギー産生に用いられる。しかし、腎尿細管周囲の血流が低下すると遊離脂肪酸は細胞毒性を持つ過酸化脂質に変換され、この過酸化脂質を尿中に排泄するためL-FABPが結合する。すなわち、L-FABPが尿中に増加したことは、尿細管に酸化ストレスが存在することになり、腎組織障害の危険があることになる。 【血糖】 糖尿病患者では高血糖を来し、糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こすことがある。 【コルチゾール】 重症肺血症患者の50%は相対的な副腎機能不全を生じるので、コルチゾールの測定を行う。
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検体検査以外の検査計画 |
心電図検査、胸部X線検査、肺動脈カテーテル検査、心超音波検査
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