疾患解説
フリガナ | ケンビキョウテキタハツケッカンエン |
別名 | 全身性壊死性血管炎 |
臓器区分 | 膠原病・免疫疾患 |
英疾患名 | Microscopic Polyangitis |
ICD10 | M30.0 |
疾患の概念 | 小血管(毛細血管、細小動脈)を主体とした、免疫グロブリン沈着を伴わない全身性壊死性血管炎で、抗好中球細胞質抗体(ANCA)が、高率に陽性になる。肉芽腫病変を欠き、急速に進行する壊死性糸球体腎炎と肺胞出血を伴う腎肺症候群として発症することがある。高齢者に発症し、男女差はない。 |
診断の手掛 |
通常は、発熱、体重減少、筋肉痛、関節痛などの全身症状を伴う前駆症状で発症するが、他の症状は、どの臓器や器官が侵されるかによって決まる。最大90%の患者で腎臓が侵される。腎病変は尿蛋白、尿潜血を認め赤血球円柱が特徴的で、数週間から数ヶ月で急速に腎不全に移行する。肺病変は咳、痰、息切れ、頻呼吸、血痰、喀血が見られる。発熱、体重減少、関節痛、腹痛、肺胞出血、新たに発生した腎炎症候群、新たに発生した多発性単神経炎または多発神経障害などの説明のつかない組合せがみられる患者では、顕微鏡的多発血管炎を疑うべきである。 【診断基準:2014年難治性血管炎に関する調査研究班改訂】 主要症候:1.急速進行性糸球体腎炎 2.肺胞出血もしくは間質性肺炎 3.腎・肺以外の臓器症状:紫斑、皮下出血、消化管出血、多発性神経炎など。 主要組織所見:細動脈・毛細血管・後毛細血管細静脈の壊死、血管周囲の炎症性細胞浸潤。 主要検査所見1.MPO-ANCA 2.CRP 3.蛋白尿・血尿、UN・クレアチニン上昇 4.胸部レントゲンにて肺胞出血を疑う浸潤像や間質性肺炎像。 *確実:主要症候の2項目+主要組織所見、主要症候の1および2+MPO-ANCA陽性。 *疑い:主要症候の3項目、主要症候の1項目+MPO-ANCA陽性 *鑑別すべき疾患:抗GBM抗体関連血管炎、IgA腎症、クリオグロブリン血漿、シェーグレン症候群、白血球破砕性血管炎、ベーチェット病、SLE、悪性関節リウマチ、皮膚筋炎、強皮症、MCTDなど。 |
主訴 |
息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 易疲労感|Fatigue 喀血|Hemoptysis 関節痛|Arthralgia 筋肉痛|Myalgia 血痰|Bloody sputum/Hemoptysis 原因不明熱|Fever of unknown origin/FUO 高血圧|Hypertension 呼吸困難|Dyspnea 咳|Cough 体重減少|Weight loss 痰|Sputum 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 頻呼吸|Tachypnea やせ|Weight loss |
鑑別疾患 |
結節性多発動脈炎|Polyarteritis Nodosa(PAN) ウェゲナー肉芽腫症 Churg-Strauss症候群 ANCA関連血管炎 成人発症スティル病 血管炎症候群|Vasculitic Syndrome |
スクリーニング検査 |
Creatinine|クレアチニン [/S] Leukocytes|白血球数 [/U] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/U] |
異常値を示す検査 |
Anti-Neutrophil Cytoplasm Antibodies|抗好中球細胞質プロテナーゼ-3抗体/抗好中球細胞質抗体/好中球細胞質抗体/C-ANCA/PR-3ANCA [/S] c-Antineutrophil Cytoplasmic Autoantibodies|抗好中球細胞質プロテナーゼ-3抗体/抗好中球細胞質抗体/好中球細胞質抗体/C-ANCA/PR-3ANCA [/P, /S] Elastase Antineutrophil Cytoplasmic Autoantibodies [/S] |
関連する検査の読み方 |
【スクリーニング検査】 全身性炎症を反映して、赤沈、CRP、白血球数、血小板数が上昇する。貧血がよくみられる。ヘマトクリット値の急な低下は、肺胞出血または消化管の出血を示唆するので注意する。血尿、タンパク尿、細胞円柱を調べるために尿検査は必須であり、腎障害を調べるために血清クレアチニンを定期的に測定する。 【P-ANCA】 約60%の患者で陽性となり、重要な診断所見である。P-ANCAは好中球細胞質にあるα顆粒中の酵素(ミエロペルオキシダーゼ)に対する抗体で好中球の細胞質部分と反応する。この抗体は血管炎症候群の病態形成の主要因であり、血管炎症候群の診断、活動性評価に極めて有用とされている。臨床的には顕微鏡的多発血管炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、特発性半月体形成性糸球体腎炎が疑われる場合に用いる。これら疾患における陽性率は70~100%と高い。ただし、健常者でも5%程度の頻度で陽性になりうるので注意する。 【ELISA】 特異抗体である抗ミエロペルオキシダーゼ抗体を測定する。 【免疫組織化学染色】 核周囲型(p-ANCA)が観察される。 【生検】 診断は生検で確定する。 |
検体検査以外の検査計画 | 肺CT検査、血管造影検査 |