疾患解説
フリガナ | ケッカンエンショウコウグン |
別名 | |
臓器区分 | 膠原病・免疫疾患 |
英疾患名 | Vasculitic Syndrome |
ICD10 | M30 |
疾患の概念 | 血管壁に炎症を来す病態の総称で、原発性血管炎と膠原病、炎症性疾患、感染症などによる続発性血管炎に分けられる。罹患した血管のサイズにより大型(側頭動脈炎、高安動脈炎)、中型(結節性多発動脈炎、川崎病)、小型(Wegener肉芽腫性血管炎、顕微鏡的多発血管炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、本態性クリオグロブリン血症、皮膚白血球破砕性血管炎)に分けられる。病理組織像は、フィブリノイド壊死を主体とする炎症、肉芽腫性炎症、破砕白血球の浸潤を伴う炎症、巨細胞性炎症に分けられる。 |
診断の手掛 | 原因不明の発熱、関節痛、筋肉痛、体重減少を訴える患者を診たら本症を疑う。患者は「一見脈絡のない、多彩な全身症状を呈する発熱患者」と表現されている。わが国では、結節性多発動脈炎患者が殆どであるので、結節性多発動脈炎を念頭において診断を進める。発熱は38~39℃の高熱が多く、スパイク熱の型をとることが多いが、悪寒戦慄は顕著ではない。全身症状は発熱の持続による体重減少が多く、6kg/6か月以上の体重減少が見られる。また、脱力感、全身倦怠感などの漠然とした症状も訴える。臓器症状は、多臓器の症状が同時に、または順に見られるのが特徴で、原因は罹患血管障害による虚血や出血の結果であり、罹患血管のサイズにより差がある。 |
主訴 |
運動障害|Dyskinesia 関節痛|Arthralgia 筋肉痛|Myalgia 血尿|Hematuria 下血|Melena 原因不明熱|Fever of unknown origin/FUO 高血圧|Hypertension 紅斑|Erythema/Rubedo 紫斑|Purpura しびれ|Numbness 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 蕁麻疹様皮疹|Urticarial eruption 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 脱力感|Weekness 知覚障害|Esthesia disorder/Sensitivity disorder 吐血|Hematemesis 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 皮下出血|Bruise/Subcutaneous bleeding 皮疹|Eruption/Exanthema 浮腫|Edema/Dropsy やせ|Weight loss レイノー現象|Raynaud phenomenon |
鑑別疾患 |
結節性多発動脈炎|Polyarteritis Nodosa(PAN) Churg-Strauss症候群 ウェゲナー肉芽腫症 混合性結合組織病|Mixed Connective Tissue Disease(MCTD) 側頭動脈炎|Temporal Arteritis 全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE) 成人発症スティル病 急性腎炎症候群 多発性筋炎/皮膚筋炎|Polymyositis/Dermatomyositis 若年性特発性関節炎|Juvenile Idiopathic Arthritis(JIA) 血清病 |
スクリーニング検査 |
Complement CH50|補体価/CH50 [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] |
異常値を示す検査 |
Anti-Endothelial Cell Antibodies|抗内皮細胞抗体 [/S] Anti-Entactin Antibodies [/S] Anti-Neutrophile Antibody|抗好中球抗体 [/S] Anti-Neutrophil Cytoplasm Antibodies|抗好中球細胞質プロテナーゼ-3抗体/抗好中球細胞質抗体/好中球細胞質抗体/C-ANCA/PR-3ANCA [/S] Complement C1|補体第1成分/C1 [/S] Complement C1q|補体複合体成分1q/C1q [/S] Complement C2|補体第2成分/C2 [/S] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Complement C4|補体第4成分/β1Eグロブリン/C4 [/S] Hyaluronic Acid|ヒアルロン酸 [/S] p-Antineutrophil Cytoplasmic Autoantibodies|抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体/核周囲型抗好中球細胞質抗体/MPO-ANCA/P-ANCA [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 殆どの患者で軽度の貧血が認められる。白血球は増加または減少する。好酸球は700/μL以上に増加する。 【ESR】 ほぼ必ず亢進を来し、著しく亢進することもある。 【尿一般検査】 蛋白尿、血尿、細胞円柱がしばしば見られる。 【C-ANCA】 全身性血管炎、Wegener肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、壊死性半月体形成性糸球体腎炎では高率に陽性となる。C-ANCAは好中球細胞質にあるα顆粒中のセリンプロテアーゼの一つであるpreteinase-3に対する抗体でWegener肉芽腫(WG)の特異自己抗体として報告された。臨床的には原因不明の発熱や耳鼻科領域、上気道、肺、腎にWegener肉芽腫を疑う症状を持つ患者に積極的に行う検査である。 【クリオグロブリン】 陽性のことがある。 【クレアチニン】 増加することがある。 【抗核抗体】 陽性のことがある。 【抗好中球抗体】 陽性のことがある。好中球表面にはHLA class I抗原などの多種類の好中球特異抗原が存在するが、これら抗原に対する抗体が産生されると、好中球が破壊され好中球減少の原因となる。臨床的には原因不明の好中球減少症や好中球減少症の鑑別が必要な場合に測定する。 【尿一般検査】 蛋白や潜血が陽性のことがある。 【免疫複合体】 強陽性になることがある。 【リウマチ因子】 陽性になる。 【生検】 症状の発現を認める部位での生検は、感度も特異性も高いので必ず行う。腓腹筋と腓腹神経は一般的な診断では必ず採取する。腎生検所見は非特異的で、血管炎の所見を呈することは稀である。 |
検体検査以外の検査計画 | 血管造影検査、造影CT・MRI検査、筋電図検査 |