疾患解説
フリガナ | ケッセツセイタハツドウミャクエン |
別名 |
全身性壊死性血管炎 多発動脈炎 結節性動脈周囲炎 |
臓器区分 | 膠原病・免疫疾患 |
英疾患名 | Polyarteritis Nodosa(PAN) |
ICD10 | M30.0 |
疾患の概念 | 全身性の中・小動脈の血管分岐部に、結節を形成する壊死性血管炎で、炎症症状と虚血・梗塞による臓器障害症状が組み合わさって発症する。腎臓、皮膚、関節、筋肉、末梢神経、消化管が侵される頻度が高いが、どの臓器も侵される可能性がある。50~60歳代に好発するが、あらゆる年齢に起こりうる。殆どの症例は、特発性であるが、約20%の患者は、B型肝炎またはC型肝炎に罹患している。原因は不明であるが、免疫機構が関与していると考えられている。この疾患は、動脈分岐部に生じた全層性の壊死性炎症を特徴とするが、他の血管炎疾患と異なり毛細血管細静脈および静脈は侵れさない。 |
診断の手掛 |
症状は非特異的であり説明のつかない発熱、腹痛、腎不全、高血圧を示す患者や、説明のつかない関節痛、筋肉圧痛、筋力低下、皮下結節などを訴える患者を診たら本症を疑う。 【診断基準:2015年厚労省】 (1)主要症候:①発熱(38℃以上、2週以上)と体重減少(6ヶ月以内に6kg以上)②高血圧 ③急速に進行する腎不全、腎梗塞 ④脳出血、脳梗塞 ⑤死因筋梗塞、虚血性心疾患、心膜炎、心不全 ⑥胸膜炎 ⑦消化管出血、腸閉塞 ⑧多発性単神経炎 ⑨皮下結節、皮膚潰瘍、壊疽、紫斑 ⑩多関節痛(炎)、筋痛(炎)、筋力低下 (2)組織所見:中・小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎の存在 (3)血管造影所見:腹部大動脈分枝(特に腎内小動脈)の多発性小動脈瘤と狭窄・閉塞 (4)判定:①確実:主要症候2項目以上と組織所見のある例 ②疑い:a)主要症候2項目以上と血管造影所見の存在する例 b)主要症候のうち①を含む6項目以上存在する例 (5):参考となる検査所見:①白血球増加(10,000/μL以上)②血小板増加(400,000/μL以上)③赤沈亢進 ④CRP強陽性 (6)鑑別診断:顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、川崎病動脈炎、膠原病(SLE、RAなど)、IgA血管炎 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 関節痛|Arthralgia 筋力低下|Weakness 原因不明熱|Fever of unknown origin/FUO 高血圧|Hypertension 四肢のしびれ|Sensory disturbance of Extremities 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 頭痛|Headache/Cephalalgia 体重減少|Weight loss 脱力感|Weekness 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 皮下結節|Subcutaneous nodule 皮膚潰瘍|Ulcer of skin 貧血症状|Anemic symptom 腹痛|Abdominal pain 浮腫|Edema/Dropsy 乏尿|Oliguria 無尿|Anuria やせ|Weight loss |
鑑別疾患 |
Churg-Strauss症候群 ウェゲナー肉芽腫症 川崎病|Kawasaki Disease 全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE) 成人発症スティル病 結節性紅斑 側頭動脈炎|Temporal Arteritis Behcet症候群 グッドパスチャー症候群|Goodpasture's Syndrome 過敏性血管炎 皮膚筋炎 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S, /U] Calcium|カルシウム [/U] Chloride|クロール [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Eosinophils|好酸球 [/B] Erythrocytes|赤血球数 [/U] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Hepatitis B Surface Antigen|HBs抗原 [/S] Iron|鉄/血清鉄 [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /U] MCH|平均赤血球ヘモグロビン量 [/B] MCHC|平均赤血球ヘモグロビン濃度 [/B] MCV|平均赤血球容積 [/B] Monocytes|単球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B] Potassium|カリウム [/S] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/U] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S] TIBC|総鉄結合能 [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] α1-Globulin|α1-グロブリン [/S] α2-Globulin|α2-グロブリン [/S] β-Globulin|β-グロブリン [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
Ammonium Ions|アンモニウムイオン [/U] Anion Gap|アニオンギャップ [/U] Anti-Neutrophil Cytoplasm Antibodies|抗好中球細胞質プロテナーゼ-3抗体/抗好中球細胞質抗体/好中球細胞質抗体/C-ANCA/PR-3ANCA [/S] Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S] Cellular Casts|円柱 [/U] Citrate|クエン酸/クエン酸塩 [/U] Cold Agglutinins|寒冷凝集反応/寒冷血球凝集反応 [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S, /S] Cryoglobulins|クリオグロブリン [/S] Granular Casts|円柱 [/U] Hyaline Casts|円柱 [/U] Immune Complexes|免疫複合体 [/S] Immunoglobulin D|免疫グロブリンD [/S] Iron Saturation|鉄飽和度 [/S] Net Acid Excretion|総酸排泄量 [/U] Neutrophil Proteinase 3|好中球プロテナーゼ3 [/S] Osmolal Gap|浸透圧ギャップ [/U] pH|尿pH [/U] Ristocetin Cofactor [/P] von Willebrand Factor Antigen|第VIII因子様抗原/第VIII因子関連抗原/フォンウィルブランド因子抗原量 [/P] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 白血球は患者の80%で20,000~40,000/μL以上に増加する。多核白血球も増加する。肺に病変があれば好酸球が増加する。 【HBs抗原】【HCV抗体】 成人患者の20~40%はB型ないしC型肝炎に感染している。 【抗好中球細胞質抗体】 70%の患者で陽性である。 【蛋白分画】 グロブリンが増加する。時に循環抗凝血素、クリオグロブリン、マクログロブリンを認める。 【直接クームス試験】 陽性である。溶血性貧血を認めることがある。D-AGTは赤血球表面に結合している免疫グロブリンや補体を検出する検査でCoombsらによって紹介された。自己免疫性溶血性貧血、血液型不適合妊娠による新生児溶血性疾患、血液型不適合輸血などの患者赤血球に結合している免疫グロブリンや補体の検出を目的とする。 【尿一般検査】 患者の60%に蛋白尿、40%に顕微鏡的血尿を認める。75%の患者に腎障害がみられ、15%が尿毒症になる。 【CH50】 免疫複合体が存在すると低下する。 【生検】 診断は、壊死性動脈炎を示す生検によって確定する。 |
検体検査以外の検査計画 | 血管造影検査、筋電図検査、神経伝導速度測定 |