疾患解説
フリガナ | サイキカンシエン |
別名 | |
臓器区分 | 呼吸器疾患 |
英疾患名 | Bronchiolitis |
ICD10 | J21.9 |
疾患の概念 | 生後18ヶ月未満の乳幼児が罹患する呼吸窮迫、喘鳴、水泡音を特徴とする下気道の急性ウイルス感染症で、しばしば流行性に発生する。原因ウイルスは、RNウイルが大部分を占める。殆どの症例が、11月から4月にかけて発生するが、発生数は1月から2月にかけてがピークとなる。原因ウイルスは、RAウイルスと3型パラインフルエンザウイルスであるが、稀にA型およびB型インフルエンザウイルス、1型および2型パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、アデノウイルスによるものもある。ウイルスが、上気道から中気管支、小気管支、細気管支へと広がると、上皮の壊死を引き起こし、炎症を起こす。炎症による浮腫と滲出液が、部分的な閉塞を引き起こすが、この閉塞は呼気時に最も著明で、肺胞のエアトラッピングを引き起こす。 |
診断の手掛 | 流行期に頻呼吸、陥没呼吸、頻発性の空咳と急速に悪化する呼吸窮迫症状を呈する、特に乳幼児を診たら本症を疑う。罹患した乳児は頻呼吸、陥没呼吸およびゼイゼイいう咳または空咳を特徴とする上気道感染症状がみられ、進行性に悪化する呼吸窮迫を伴う。乳児期早期の患者では、反復性の無呼吸発作が起きてから、24~48時間かけて典型的な症状および徴候が現れる場合もある。その他の症状として、口周囲のチアノーゼ、陥没呼吸、喘鳴、発熱が見られる。重症になると低酸素血症が起こるので注意する。小児の多くは急性中耳炎を併発する。 |
主訴 |
空咳|Dry cough 呼吸困難|Dyspnea 呼吸促迫|Respiratory distress 湿性咳|Wet cough 咳|Cough 痰|Sputum チアノーゼ|Cyanosis/Cyanopathy 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 頻呼吸|Tachypnea 鼻閉|Rhinostenosis/Rhinodeisis 鼻漏|Rhinorrea/Nasal flow/Nasal discharge 労作時呼吸困難|Exertional dyspnea |
鑑別疾患 |
喘息|Asthma 胃食道逆流症|Gastroesophageal Reflux |
スクリーニング検査 | |
異常値を示す検査 |
Eosinophil Cationic Protein|好酸球塩基性蛋白/好酸球顆粒蛋白/好酸球陽イオン蛋白/好酸球陽性荷電蛋白 [/S] RS Virus Antigen|RSウイルス抗原 [Positive/Nasal Swabs] Surfactant Protein A|サーファクタントプロテインA/肺サーファクタントプロテインA [/S] Surfactant Protein D|サーファクタントプロテインD/肺サーファクタントプロテインD [/S] |
関連する検査の読み方 |
【サーファクタントプロテインA】 高値になることがある。SP-AはⅡ型肺胞上皮で産生されるリン脂質・蛋白質の複合体で、肺胞内に分泌され表面張力を打ち消すことで肺胞の含気を保持している。欠乏や機能低下は肺の含気を低下させ、呼吸困難をきたす。 【サーファクタントプロテインD】 高値になることがある。サーファクタントプロテインは肺胞II型細胞で産生され分泌される表面活性部質でA、B、C、Dの4種が同定されている。SP-Dは親水性が強く約70%が肺胞被覆層の可溶性分画に分布している。肺胞上皮細胞が損傷を受けると、この細胞に強く発現しているSP-Dが血中に増加する。臨床的には肺にびまん性の線維化陰影が見られた時に、肺損傷の程度を把握するために測定する。 【RSウイルス抗原】 乳幼児の場合にチェックする必要がある。RSウイルスは生後6ヶ月未満の乳幼児に感染すると、重篤な細気管支炎や肺炎を引き起こす。この検査は患者の鼻腔洗浄液や鼻腔拭い液を用いるRSウイルスの迅速検査でRSウイルスサブタイプのtypeA、B共に検出できる。特に初感染乳児では母体由来の抗体が少ないこと、抗体産生量が低いことなどから、急性期の診断に抗体測定は向いていないので、抗原検査が有用である。 【パラインフルエンザウイルス抗体】 1歳未満の患者ではチェックする必要がある。パラインフルエンザウイルスは秋から冬にかけ乳児~小児に飛沫による気道感染で咽頭炎、気管支炎、肺炎、クループなどをを発症するRNAウイルスである。臨床的には冬季に小児呼吸器感染症が認められた場合にペア血清を用いて検査を行う。 【気管支肺洗浄液】 リンパ球の増加が見られる。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、パルスオキシメトリー、呼吸機能検査、副鼻腔X線検査、心超音波検査 |