疾患解説
フリガナ | フェニルケトンニョウショウ |
別名 | 高フェニルアラニン血症 |
臓器区分 | 先天性代謝性疾患 |
英疾患名 | Phenylketonuria(PKU) |
ICD10 | E70.0 |
疾患の概念 | フェニルケトン尿症は、血清中フェニルアラニン上昇による認知および行動障害を伴う知的障害の症候群で、主な原因はフェニルアラニン水酸化酵素の欠乏または欠損で、食事で摂取されたフェニルアラニンが蓄積する事による。脳が主な障害臓器で、髄鞘形成の障害が原因とされてれる。酵素欠損の程度とその結果としての高フェニルアラニン血症の重症度は、遺伝子変異に依存しているため患者毎に異なる。新生児期には異常は認められないが、フェニルアラニンの蓄積に伴い数カ月かけて症状と徴候が徐々に出現してくる。患児は極度の多動性、歩行障害、精神発達遅延を呈し、尿と汗に含まれるフェニルアラニンの分解産物であるフェニル酢酸よるネズミの匂いに似た不快な体臭が認められる。患児はまた、皮膚、毛髪、および眼の色が薄くなる傾向がある |
診断の手掛 |
精神発達遅滞、赤毛、尿と汗の不快な臭い(ネズミ臭)があれば本症を疑うが、我が国では生後5~7日の時期にガスリー法による集団検査が行われているので、殆どの症例は早期発見されている。 【診断基準:2015年厚労省】 ①アミノ酸分析(HPLC法)血中フェニルアラニン値:2mg/dL以上。 ②プテリジン分析:BH4欠損症で異常パターンが見られる。 ③DHPR酵素解析:DHPR欠損症ではDHPR活性の著しい活性低下を認める。 ④BH4・1回負荷試験:通常、血中Phe値が6mg/dL以上の場合に行われる。BH4 10mg/kgを経口1回投与。負荷前・負荷後4,8,24時間の血中Phe値を測定。古典的PKUもしくはDHPR欠損症では変化なし。BH4欠損症で血中Phe正常化、BH4反応性高Phe血症で前値より20%以上低下。 ⑤遺伝子解析:PHA遺伝子などの責任遺伝子において2アレルに病因となる変異が同定されること。 *診断の根拠となる①を認めるものを生化学的診断例とし、②③を実施し(必要に応じ④⑤を実施)、PHA欠損症、BH4欠損症、BH4反応性高Phe血症のいずれかに病型分類できたものを確定例とする。BH4反応性高Phe血症の診断の確認のために、④に加えて、4歳以降にBH4・1週間投与試験にて血中Phe30%以上の低下を確認することが望ましい。 |
主訴 |
赤毛|Red hair 汗異常臭|Abnormal odor of sweat 色白|Fair complexion 精神発達遅滞|Mental retardation 尿異常臭|Abnormal odor of urine 歩行障害|Gait disturbance |
鑑別疾患 |
中枢神経障害 神経変性疾患 脳炎|Encephalitis 脳症 肝機能障害 腎障害 |
スクリーニング検査 | |
異常値を示す検査 |
Amino Acid|アミノ酸分析/アミノ酸41分画 [/S] Carnitine|カルニチン分画/ビタミンBT [/S] 5-HIAA|5-ヒドロキシインドール酢酸 [/U] Phenylalanine|フェニルアラニン [/P] Tyrosine|チロシン [/P] |
関連する検査の読み方 |
【フェニルアラニン】 出生時は正常であるが、蛋白摂取が始まると急速に上昇し、しばしば20mg/dL以上になる。確定珍断のためには、血中フェニルアラニンが20mg/dl以上でチロシンが基準範囲内(1~4mg/dl)であることを確かめる。 【セロトニン】 低値になることがある。5-HTは約90%が消化管に、残りが脳と血小板に分布し血管や気管支の平滑筋収縮、消化管運動・分泌調節、知覚・睡眠などへの関与、血小板凝集促進などの作用がある。血中5-HTの大部分は5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)として尿中に排泄されるので両者の同時測定が望ましい。 【VMA】 低値になることがある。 【アミノ酸】 症状や一般検査所見、ガスリー法から先天代謝異常症を疑えば尿、血液のアミノ酸分析を行う。 【ガスリー法】 枯草菌を用いた細菌増殖阻止試験で1963年ガスリーらにより開発された。この方法はメープルシロップ尿症やホモシスチン尿症など他のアミノ酸代謝異常症にも応用されるが、わが国では1977年から行政レベルにおいて新生児マススクリーニングに利用されていた。現在のアミノ酸代謝異常症の診断はタンデムマススペクトル法が主流となっている。 |
検体検査以外の検査計画 |