疾患解説
フリガナ | ヤトビョウ |
別名 | |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Tularemia |
ICD10 | A21.9 |
疾患の概念 | グラム陰性桿菌である野兎病菌(Franciselle tularesis)による急性感染症で、野兎などの感染動物から感染する人獣共通感染症である。野兎病菌は、多形性かつ非運動性の小さな好気性無芽胞桿菌で、汚染された食品または水の摂取、感染したダニ、メクラアブ、ノミの刺咬、吸入、感染組織または材料への直接接触で感染するが、ヒトからヒトへ伝播することはない。野兎病菌にはA型とB型の2種類があり、A型はヒトに対する病原性が強い型で、ウサギおよび齧歯類の体内に生息している。B型は軽度の潰瘍リンパ節型感染症を引き起こす型で、水中や水生動物の体内に生息している。感染は、猟師、食肉業従事者、農業従事者、毛皮を扱う人たちに多く見られる。冬期には、殆どの症例が感染した野ウサギの皮はぎの時の接触による。また、夏期は、感染動物または鳥を取り扱った後や、感染したダニなどに咬まれた後に発症する。4類感染症に指定されているので、診断後7日以内に保健所に届け出の義務がある。 |
診断の手掛 | ウサギまたは野生のげっ歯類との接触後(殆どが野生のウサギの皮剥ぎ)1~10日(平均2~4日)で突然発症する、頭痛、反復性の悪寒戦慄、悪心、嘔吐、重度の疲労感、極度の脱力感、39.5~40℃の発熱、大量の発汗を訴える患者を診たら本症を疑う。24~48時間以内に炎症性の丘疹が感染部位に見られる。丘疹は急速に膿疱化および潰瘍化し、少量の希薄で無色の滲出液が見られ、きれいなクレーター状の潰瘍を形成する。所属リンパ節が腫脹し、化膿して大量の排膿を見ることがある。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪寒戦慄|Chill with shivening 悪心|Nausea 潰瘍|Ulcer 丘疹|Papule 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 脱力感|Weekness 発汗異常|Dyshidrosis/Paridrosis 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 発疹|Eruption/Exanthema リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
胃腸炎|Gastroenteritis ネコひっかき病 皮膚潰瘍 リンパ節炎 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/U] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Leukocytes|白血球数 [/B, /B] |
異常値を示す検査 |
Agglutination Tests [Positive/S] Insulin|インスリン [/P] |
関連する検査の読み方 |
【血液培養】 確定診断に用いる。感染の危険があるので設備の整った施設に依頼する。 【塗抹染色標本】 細胞内、細胞外にF.tularensisを認める。 【血清凝集反応】 死菌浮遊液による菌凝集反応は診断の参考になる。野兎病はFrancisella tularenisisによっておこる人畜共通感染症であリ、ヒトからヒトへの感染は稀である。野兎、ネズミ、汚染水、ダニ等を介して感染し3~10日の潜伏期を置いて発熱、頭痛、倦怠感で発症し局所の潰瘍形成、リンパ節腫脹を来す。抗体価は7~21日後に上昇し始め、60~90日でピークに達する。血清凝集反応で抗体価が1:640以上になれば感染と考えるが、ブルセラとの交差反応に注意する。 【抗体価】 急性期と回復期の2週間間隔での抗体価が4倍の上昇、または1:128を超えれば診断的であるが、ブルセラ症との交差反応も念頭に置く。 【PCR】 培養法に勝る結果は出ていないが、有用性が検討されている。 |
検体検査以外の検査計画 |