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疾患解説

フリガナ イチョウエン
別名
臓器区分 消化器疾患
英疾患名 Gastroenteritis
ICD10 A09
疾患の概念 胃腸炎は胃、小腸および大腸の粘膜組織に炎症が生じる病態で、悪心、嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状を呈する。原因として細菌・ウイルス感染、寄生虫、化学物質、暴飲、暴食などが挙げられる。大半の症例が、ウイルスによる感染性胃腸炎であり、最も頻度の高いウイルスは、ロタウイルスとノロウイルスである。ロタウイルスは幼児における脱水を伴う重度の下痢症で、最も頻度が高く発症のピークは生後3~15カ月である。このウイルスは非常に感染性が強く大半は糞口感染で、成人は感染した乳児との接触によって感染するが、一般に軽症である。ノロウイルスは、児童および成人に最も多く、感染は1年中発生するが80%が11月から4月までにみられる。このウイルスは、成人の散発性ウイルス性胃腸炎および全年齢層の流行性ウイルス性胃腸炎の主要な原因ウイルスで、飲料水および食品を介した大規模なアウトブレイクが起こる。ノロウイルスは非常に感染性が高いため、ヒトからヒトへの伝播も起こる。胃腸炎を起こす細菌はSalmonella属、Campylobacter属、Shigella属、大腸菌O157:H7、Clostridium difficileなどであるが、ウイルス性胃腸炎と比較して頻度は低い。また寄生虫ではGiardia属、Cryptosporidium属の頻度が高い。
診断の手掛 食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、水様性下痢、腹部不快感を訴える患者を診たら本症を疑う。同様の症状は虫垂炎、胆嚢炎、潰瘍性大腸炎などでも見られるので、除外診断が必要である。ウイルス感染症で最もよくみられる症状は、水様性下痢で、乳幼児のロタウイルス胃腸炎では下痢は5~7日間続き、90%の患者で嘔吐が見られ、約30%は39℃を超える発熱がある。ノロウイルスは急性の嘔吐、腹部痙攣および下痢を引き起こし、症状は1~2日間しか持続しない。小児では下痢より嘔吐が著明であるが、成人では下痢が主症状である。Shigella属、Salmonella属は、発熱、極度の疲労感および血性下痢を引き起こす可能性が高い。大腸菌O157:H7感染は、1~2日間の水様性下痢に始まり、続いて血性下痢が見られ、発熱は無いか、あっても微熱である。C. difficileによる症状は、軽度の腹部痙攣と粘液性の下痢から、重度の出血性大腸炎およびショックまで様々である。黄色ブドウ球菌、セレウス菌、C. perfringensなどのエンテロトキシン産生菌は、水様性下痢を引き起こす。寄生虫感染症は、亜急性下痢または慢性下痢であり、大半は非血性下痢である。胃腸炎では、詳細な下痢の観察が必要である
主訴 嘔吐|Vomiting
悪心|Nausea
血便|Bloody stool/Hemorrhagic stool/Hematochezia
下痢|Diarrhea
消化管出血|Gastrointestinal bleeding
食欲不振|Anorexia
ショック|Shock
水様性下痢|Watery diarrhea
発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever
腹痛|Abdominal pain
腹部不快感|Abdominal discomfort
鑑別疾患 栄養不良
潰瘍性大腸炎|Ulcerative Colitis
消化管感染症
胆嚢炎
虫垂炎
脳血管障害
下痢症|Diarrhea
スクリーニング検査 CEA|癌胎児性抗原 [/S]
Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B]
Leukocytes|白血球数 [/B, /F]
Potassium|カリウム [/S, /S]
Sodium|ナトリウム [/S, /S]
Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S]
異常値を示す検査 Adenovirus Antigen|アデノウイルス抗原 [Positive/Feces]
CA 72-4|CA72-4 [/S]
Detection of Verotoxin-Producing Escherichia Coli|大腸菌ベロトキシン [Positive/E.coli]
Enteroglucagon [/P]
Escherichia Coli O157 Antigen|大腸菌O157抗原 [Positive/Feces]
Glucagon, Pancreatic|グルカゴン/膵グルカゴン [/P]
Ketones|ケトン体定性 [/U]
LPS Antibody of Escherichia Coli O157|病原性大腸菌O157LPS抗体/抗病原性大腸菌O157LPS抗体 [Positive/S]
Motilin|モチリン [/P]
Nitrate|亜硝酸/硝酸イオン [/S]
Occult Blood|潜血反応(便)/グアヤック法/o-トリジン法/ラテックス凝集法 [/F]
Peptide Tyrosine-Tyrosine [/P]
Rotavirus Antigen|ロタウイルス抗原/便中ロタウイルス [Positive/Feces]
関連する検査の読み方 【大腸菌O157抗原】
腸管毒素性大腸菌はO157,O111,O128,O145などの血清型があるが60~80%はO157が占めている。O157の多くの菌種はベロトキシンを産生するため、下痢、腹痛、血便、嘔吐などの消化器症状を訴える患者はこの検査を積極的に行う。臨床的には大腸菌O157が確認されたらEHECを疑いベロトキシン産生の有無を検査し、ベロトキシンによる溶血性貧血や腎不全の症状が現れていないか注意深く観察する。
【病原性大腸菌O157LPS抗体】
大腸菌O157感染で陽性である。病原性大腸菌O157に感染し出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群を発症した患者の第3病日以降に、抗体価が上昇する。この疾患は感染による下痢発症後2日迄は、糞便中の病原菌検出率がほぼ100%であり、診断のゴールドスタンダードになっている。
【組織侵入性大腸菌】
大腸の炎症を起こし細菌性赤痢に似た症状を呈する。
【大腸菌O157抗原】
大腸菌O157感染で陽性である。病原性大腸菌O157に感染し出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群を発症した患者の第3病日以降に、抗体価が上昇する。この疾患は感染による下痢発症後2日迄は、糞便中の病原菌検出率がほぼ100%であり、診断のゴールドスタンダードになっている。ただし、経過と共に菌の検出率が低下すること、早期に抗生剤を投与されると菌陰性になること、菌培養・確定に時間がかかることから、抗体価測定は補助診断として有用性がある。
【大腸菌ベロトキシン】
腸管出血性大腸菌感染で陽性である。腸管出血性大腸菌はベロ毒素産生大腸菌とも呼ばれ、ベロトキシンと呼ばれる毒素を産生する。この毒素は激しい腹痛と血便を起こし、重症化すると溶血性尿毒症症候群や脳症を引き起こす。この菌は極めて高い感染力を持ち、約50個の菌で感染が成立するといわれる。臨床的には激しい腹痛を伴う鮮血便を見た場合に検査を行う。
【ベロトキシン産生大腸菌】
血清型ではO157:H7が溶血性尿毒症症候群と出血性大腸炎を発症する。
【腸管ウイルス】
胃腸炎を引き起こすウイルスはロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルスと腸管アデノウイルスの4種がある。
【腸管病原性大腸菌]
幼児と小児に下痢を起こす。
【毒素産生性大腸菌】
コレラ様分泌亢進性の下痢を発症する。
【アデノウイルス抗原】
糞便中の抗原検出は原因病原体鑑別に必要である。
【アデノウイルス抗体】
40、41型が原因となる。
【糞便ロタウイルス抗原】
原因病原体鑑別に必要である。
【便中抗原】
ロタウイルスおよび腸管アデノウイルス感染症は、便中のウイルス抗原を検出する迅速アッセイを用いる。ノロウイルスはPCRにより検出できる。ジアルジア症やクリプトスポリジウム症は酵素免疫測定法が感度が高い。
【C.difficile感染】
抗菌薬の使用歴またはC. difficile感染の危険因子(炎症性腸疾患、プロトンポンプ阻害薬使用)を有する患者には、C. difficile毒素の便検査を行うが、現在ではC. difficile感染症の約25%は危険因子が同定されない患者で発生しているので、疑わしい症状を呈する患者では、これらの危険因子がなくとも検査を行うべきである。C. difficile感染症の診断は、従来は毒素AおよびBに対する酵素免疫測定法が用いられてきたが、現在はC. difficile毒素遺伝子または、その調節因子を標的とした核酸増幅検査が、より感度が高いことから第1選択の診断検査となっている。
【一般検査】
重篤感のある患者では、水分および酸塩基平衡を評価するため、血清電解質、UNおよびクレアチニンを測定すべきである。血算は特異度が低いが、好酸球増多から寄生虫感染症が示唆される場合がある。大腸菌O157:H7感染患者は、症状の出現から約1週間後に早期発症の溶血性尿毒症症候群を検出するため腎機能検査および血算を行う。
検体検査以外の検査計画

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