疾患解説
フリガナ | シャーガスビョウ |
別名 | アメリカトリパノソーマ症 |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Chagas Disease |
ICD10 | B572 |
疾患の概念 | サシガメ類の刺咬により伝播されるクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)による人畜共通感染症で、侵入した原虫はマクロファージに入り増殖し、血液中に放出され細網内皮系、心筋、筋肉、神経系細胞などに感染する。トリパノソーマに感染したサシガメは、刺咬しながらメタサイクリック型トリポマスティゴートを含む糞を皮膚上に排泄し、この感染型原虫が、刺咬傷、結膜または粘膜から侵入することで感染が成立する。原虫は、侵入部位のマクロファージに入り、アマスティゴートに変態し、アマスティゴートはトリポマスティゴートに発育し、血流および組織間隙に入り、網内系、心筋層、筋肉、神経系の細胞を侵す。感染は輸血、臓器移植または感染したサシガメまたはその糞便で汚染された非加熱調理食品やサトウキビジュースなどの飲料からも伝播する。 |
診断の手掛 | 流行地に滞在後、1~2週間で皮膚に刺咬による硬化した紅斑性の皮膚病変(シャゴーマ)や一側性の眼窩周囲の浮腫(Romana徴候)を訴えたら本症を疑う。その後、発熱、全身倦怠感、全身性のリンパ節腫脹、肝腫大、脾腫に進行する。数年~数十年の潜伏期の後に、慢性真菌症、巨大食道、巨大結腸で見つかることもある。急性期は無症状のこともあるが、通常は感染後1~2週間で侵入部位に硬結を伴う紅斑性のシャゴーマと呼ばれる皮膚病変が見られるが、感染部位が結膜なら、結膜炎を伴う片側性の眼周囲および眼瞼浮腫と耳前リンパ節腫脹がみられ、Romaña 徴候と呼ばれている。潜伏期にある患者は、寄生虫学的または血清学的所見は見られるが、症状や身体所見の異常は訴えない。慢性期は、数年ないし数十年の潜伏期の後、20~40%の患者で発症し、心臓と消化管に異常が見られる。心疾患は慢性心筋症、全房室の弛緩性拡大、心尖部動脈瘤、興奮伝導系の局所的変性を来し、心不全、失神、心ブロックや心室性不整脈による突然死や血栓塞栓症を起こすことがある。胃腸疾患はアカラシアまたはヒルシュスプルング病に似た症状を引き起こす。 |
主訴 |
肝腫大|Hepatomegaly 紅斑|Erythema/Rubedo 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 脾腫|Splenomegaly リンパ節腫脹|Lymphadenopathy ロマニャ徴候|Romana sign |
鑑別疾患 |
血栓症 誤嚥性肺炎 心筋症|Cardiomyopathy 髄膜炎|Meningitis 腸捻転 便秘症 |
スクリーニング検査 | C-Reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] |
異常値を示す検査 |
Neopterin|ネオプテリン [/S] Plasma Renin Activity|活性型レニン/血漿レニン活性/総レニン [/P] |
関連する検査の読み方 |
【末梢血液塗抹標本】 急性期には末梢血トリパノソーマの数が多いので、検出は容易である。潜伏期または慢性期には、血液中に原虫はほとんど存在しないので、リンパ節などの臓器からの吸引物の検査を行う。 【ELISA】 T.cruzi抗体の血清学的検査法は慢性シャーガス病の診断に用いる。ただし、血清学的方法は偽陽性反応を避けるため、2っの検査法での確認と、明確な陽性、陰性コントロール血清を使う。 【抗体検査】 数種類の高感度の検査がルーチンで用いられているが、偽陽性、偽陰性が多いため、検査は2~3回行う。ELISAと蛍光免疫検査は感度93~98%、特異度99%である。IgMクラスの抗体は急性期の初期に増加するが、疾患の進行に伴いIgG抗体が増加し、3~4ヶ月で最大になる。その後抗体価は低値のまま生涯にわたり陽性のままである。 【生検】 潜伏期と慢性期には血液中に原虫はほとんど存在しないので、リンパ節などの生検を行う。 【PCR】 原虫特異DNAの検出が最も確実な診断法である。 |
検体検査以外の検査計画 | 心電図検査、消化管造影X線検査 |