疾患解説
フリガナ | ズイマクエン |
別名 | |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Meningitis |
ICD10 | G03.9 |
疾患の概念 | 髄膜およびくも膜下腔の炎症性疾患で、細菌性、結核性、真菌性、ウイルス性がある。髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)とS.pneumoniaeによるものが代表的であるが、薬剤でも起こりうる。臨床的には急性細菌性髄膜炎、ウイルス性髄膜炎、非感染性髄膜炎、再発性髄膜炎、亜急性および慢性髄膜炎に分類される。急性細菌性髄膜炎は重篤で急速に進行するが、ウイルス性および非感染性髄膜炎は通常自然に治癒する。 |
診断の手掛 | 発熱、頭痛、項部硬直が3徴候である。髄膜炎菌性の場合は、発症直後に斑点状丘疹または点状出血発疹がしばしばみられる。項部硬直は重要な髄膜刺激症状であり、検査としてはKernig徴候、ブルジンスキー徴候、口を閉じた状態で顎を胸につけることが困難、額または顎を膝につけることが困難がある。劇症型はWaterhouse-Friderichsen症候群で、敗血症、ショック、紫斑、副腎出血が見られる。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 丘疹|Papule 傾眠|Drowsiness/Somonolency 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure ケルニッヒ徴候|Kernig sign 高熱|High fever/Hyperthermia 項部硬直|Nuchal stiffness/Stiffness of neck/Stiff neck 紫斑|Purpura 羞明|Photophobia/Photosensitibity 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis ショック|Shock 髄膜刺激症状|Meningeal irritation sign 頭痛|Headache/Cephalalgia 点状出血|Petechiae 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever ブルジンスキー徴候|Brudzinski sign |
鑑別疾患 |
インフルエンザ|Influenza エイズ/HIV感染症|Acquired Immune Deficiency Syndrome(AIDS) 関節炎 腎炎 心筋炎|Myocarditis 水頭症|Hydrocephalus 肺炎|Pneumonia 敗血症|Sepsis 熱性痙攣 脳腫瘍|Cerebral Tumor 髄膜症 リステリア症 神経梅毒 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/CSF, /U] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Erythrocytes|赤血球数 [/U] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/CSF] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/CSF] Leukocytes|白血球数 [/B, /CSF] Neutrophils|好中球 [/B, /CSF] Platelets|血小板 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF] Thyroxine (T4)|総サイロキシン/総T4/サイロキシン/チロキシン [/S] Tri-Iodothyronine (T3)|総トリヨードサイロニン/総T3/トリヨードサイロニン/トリヨードチロニン [/S] |
異常値を示す検査 |
Amyloid A Protein|血清アミロイドA蛋白/アポSAA/アミロイドA蛋白 [/S] Apolipoprotein A-I|アポリポ蛋白A-I [/CSF] Apolipoprotein E|アポリポ蛋白E [/CSF] Cells [/CSF] Creatine Kinase BB-Isoenzyme|CK-BB [/CSF] Growth-related Protein-α [/CSF] Interleukin-1|インターロイキン-1/インターロイキン-1α/インターロイキン1β [/CSF] Interleukin-1 Receptor Antagonist [/CSF, /S] Interleukin-1 Receptor Antagonist Type II [/CSF, /S] Interleukin-1β|インターロイキン-1β [/CSF, /S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/CSF] Interleukin-8|インターロイキン-8 [/CSF] Lactate|乳酸/ラクテート [/P] Macrophage Inflammatory Protein-1α [/CSF] Macrophage Inflammatory Protein-1β [/CSF] Monocyte Chemotactic Protein-1 [/CSF] Oligoclonal Banding|オリゴクローナルバンド [/CSF] Prostaglandin E2|プロスタグランジンE2 [/CSF] Soluble E-Selectin|可溶性E-セレクチン/可溶性CD62E/可溶性ELAM-1 [/S] Soluble HLA-I [/CSF] Somatostatin|ソマトスタチン [/CSF] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/CSF] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/S] α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 桿状核球数増加、中毒性顆粒、Döhle小体、多核白血球の空胞形成を認める。 【IgG合成比】 IgG合成比=(CSF IgG×血清アルブミン/血清IgG×CSFアルブミン)が基準範囲上限以上である。炎症性神経疾患では中枢神経系の組織でIgGの合成が起こっているが、このIgGの合成量を知るために髄液と血清中のIgGとアルブミンの量からIgG合成比として算定する。臨床的にはIgGの値により炎症性神経疾患、感染症の診断、経過観察に用いる。 異常値を認めたらオリゴクロナールIgGバンドの検索、髄液中の免疫グロブリンκ/λ比、IgGサブクラス、IgA Index、IgM Indexの測定を行う。 【エコーウイルス抗体】 エコーウイルス感染の確認に用いる。エコーウイルスは糞便で経口感染する髄膜炎、中枢神経疾患、心筋症などの原因ウイルスで、夏季(6~8月)に多発する。臨床症状でウイルス感染を疑うが、コクサッキーウイルス感染などとの区別がつかない場合に検査する。 【コクサッキーウイルス抗体】 コクサッキーウイルス感染の確認に用いる。コクサッキーウイルスはA群とB群の二つに分類され、A群は手足口病、ヘルパンギーナ、急性リンパ結節性咽頭炎、上気道炎を、B群は夏季に流行性無菌性髄膜炎、夏風邪、乳幼児に致死的な心筋炎を発症する。この抗体はコクサッキーウイルス感染が疑われる場合に測定する。 【ムンプスウイルス抗体】 ムンプスウイルス感染の確認に用いる。ムンプスウイルスは髄膜炎、脳炎、膵炎、心筋炎、睾丸炎、卵巣炎、ムンプス難聴など重篤な疾患を発症する病原ウイルスである。特に中枢神経の合併症による後遺症は発症すれば治療は困難である。臨床的には耳下腺や顎下腺の腫脹を見た場合に測定が必要となる。診断は急性期には感染後数日で診断可能なIgM抗体を検出するか、ペア血清でIgG抗体の優位な上昇で判断する。また、ムンプス髄膜炎では髄液中のIgG抗体が91%の患者で高値になるとされている。 【細菌塗抹染色】 髄膜炎菌血症患者の75%から皮下出血部のグラム染色で病原体が見つかる。バフィコートのグラム染色も有用である。 【髄液一般検査】 細菌性髄膜炎:多核白血球(PMN)がしばしば大幅に増加、蛋白は上昇、糖は血糖値の50%未満であるが、極めて低値のこともある。グラム染色で10⁵細菌コロニー形成単位/mLがみられれば診断率が高い。ウイルス性髄膜炎:リンパ球上昇、最初の24~48時間はPMNおよびリンパ球が上昇、蛋白は上昇、糖は基準範囲内、エンテロウイルス、単純ヘルペス、帯状疱疹、ウエストナイルウイルスを確認するためのPCR、ウエストナイルウイルスまたはその他のアルボウイルスを確認するためのIgMそくてい。結核性髄膜炎:PMNおよびリンパ球は上昇、蛋白は上昇、糖は血糖値の50%未満であるが、極めて低値のこともある、抗酸菌染色、30mL以上の髄液を用いての抗酸菌培養、血清および髄液のインターフェロンγ検査。真菌性髄膜炎:通常リンパ球が優位、蛋白は上昇、糖は血糖値の50%未満であるが、極めて低値のこともある、クリプトコッカス抗原検査、Coccidioides immitisまたはHistoplasma属抗原に対する血清学的検査、30mL以上の髄液検体を用いての真菌培養、Cryptococcus属に対しての墨汁染色。 【肺炎球菌抗原】 髄液中と尿中の肺炎球菌抗原の検査は肺炎球菌による髄膜炎の迅速診断に用いる。肺炎球菌は重症の肺炎のほか髄膜炎、敗血症、関節炎などを引き起こすが、尿中の肺炎球菌莢膜多糖体抗原を検出する迅速検査(検査時間15分)は高い診断的有用性を持つ。特に呼吸器疾患の培養検査は口腔内常在菌の混入があるため、結果の解釈に問題があるが、尿中抗原は常在菌の混入が否定できる。臨床的には肺炎球菌感染を疑う場合に行う簡易迅速検査で、感度80.4%、特異度97.2%と報告されている。 【ヘモフィルスインフルエンザ抗原】 髄液中と尿中の抗原検査はヘモフィルスインフルエンザによる髄膜炎の迅速診断に用いる。 【髄液中B群溶血連鎖球菌抗原】 B群溶連菌による髄膜炎の迅速診断に用いる。 【髄膜炎菌抗原】 髄液中の抗原検査は髄膜炎菌による髄膜炎の迅速診断に用いる。 【ミエリン塩基性蛋白】 髄液中の値は基準範囲上限以上である。MBPは中枢神経のミエリン鞘に特異的に存在する蛋白で、自己免疫性脱髄疾患の動物モデル作成抗原として知られている。脱髄疾患の代表である多発性硬化症では、脳脊髄液中のMBP量は臨床症状と良く相関する。臨床的には多発性硬化症の診断、増悪期・慢性進行期・寛解期のステージ判断に有用性がある。また、髄液中のMBP量からミエリン鞘の破壊の程度と大きさが推定できる。 【動脈血ガス分析】 PaCO2が低下し、pHは7.4以上になる。 【原因微生物の抗原・抗体検査】 あらゆる可能性を考え、可能性のある原因微生物の抗原・抗体検査を積極的に行う。 【細菌性髄膜炎】 症例の大部分は髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌による。 【無菌性髄膜炎】 ウイルス(ポリオ、コクサッキー、エコー、HIV、EBV、エンテロ)、スピロヘータ(レプトスピラ、梅毒、ライム病ボレリア)、結核、真菌(カンジダ、コクシジオイデス、クリプトコッカス)、トキソプラズマ、マイコプラズマなどが原因。 【ウイルス性髄膜炎との鑑別】 細菌性は、細菌の染色、培養、抗原が陽性。髄液グルコースの低下、グルコースの髄液:血清比低下(0.25以下)、蛋白の増加(1.72g/dL以上)、白血球増加。 【その他の原因】 化学物質、薬剤性(通常は薬剤投与後24時間以内に発症)、全身疾患(血管炎症候群、混合性結合組織病、サルコイドーシス、ベーチェット症候群、SLEなど) |
検体検査以外の検査計画 | 頭部CT検査、造影MRI検査、神経画像診断 |