疾患解説
フリガナ | シンキンショウ |
別名 |
拡張型心筋症 肥大型心筋症 拘束型心筋症 |
臓器区分 | 循環器疾患 |
英疾患名 | Cardiomyopathy |
ICD10 | I42.9 |
疾患の概念 | この疾患は、1995年に「原因不明の心機能障害を伴う心筋疾患」と定義された。臨床病型は1.肥大型心筋症(HCM)(左室に肥大を認める、自由壁より中隔の肥大が多いが、収縮期の心内圧較差のあるものとないものがある。左室腔の拡大はない) 2.拡張型心筋症(DCM)(左右両室あるいはいずれかの心室の拡大、収縮機能低下、うっ血性心不全、不整脈、塞栓を認める)3.拘束型心筋症(心内膜の瘢痕化や心筋浸潤により、左右両室あるいはいずれかの心室の充満が阻害される)の3種に分けられる。肥大型心筋症は、拡張機能障害を伴うが、大動脈弁狭窄、大動脈縮窄、高血圧による後負荷の増大を伴わない著明な心室肥大を特徴とする先天性または後天性の疾患である。HCMの殆どの症例は遺伝性で、常染色体優性の突然変異が少なくとも50以上同定されている。後天性は稀で、先端巨大症、褐色細胞腫、神経線維腫症の患者に発症することがある。拡張型心筋症は、心室拡大と収縮機能障害を主体とし、心不全を引き起こす心筋機能障害である。一部のDCMは、急性ウイルス性心筋炎とともに始まり、その後、ウイルスにより変性した筋細胞に対する自己免疫反応で心筋細胞のびまん性壊死が生じ慢性の線維化へ進展するとされている。温帯地域で最も頻度の高い原因は、びまん性虚血性心筋症を伴う冠動脈疾患である。また、20種以上のウイルスがDCMを引き起こす事が知られており、温帯地域ではコクサッキーウイルスB群の頻度が最も高い。拘束型心筋症(RCM)は、コンプライアンスが低下し拡張期充満に抵抗するようになった心室壁が特徴で、片方または両方の心室が侵される。原因としてファブリー病、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシスなどの遺伝学的異常、アミロイドーシス、び全身性強皮症、心内膜線維弾性症などの結合織疾患やカルチノイド腫瘍、好酸球増多症候群、サルコイドーシス、放射線などが知られている。 |
診断の手掛 | 頻脈、動悸、呼吸困難、下肢の浮腫、全身倦怠感、食欲不振を訴える患者を診たら本症を疑う。心電図検査では、1.肥大型心筋症:左室流出路閉塞があり症状のある患者では、必ず異常が見られ、多くはST-T異常である。2.拡張型心筋症:異常が見られるが、殆どは非特異的変化である。3.拘束型心筋症:アミロイドーシスではR波増高不良を伴った低電位、サルコイドーシスは伝導障害が見られる。HCMの症状は多くの場合、20~40歳で出現し、呼吸困難、典型的な狭心症に似た胸痛、動悸、失神などであり、収縮機能は維持されるため、易疲労感は無い。DCMの症状は、どちらの心室が侵されたかにより決まり、左室機能障害が起きると、左室拡張期圧の上昇と心拍出量の低下により、労作時呼吸困難および疲労が生じる。右室不全では末梢浮腫および頸静脈怒張がみられる。RCMの症状は、労作時呼吸困難と起座呼吸で、右室が侵された場合には末梢浮腫も生じる。 |
主訴 |
下肢浮腫|Lower extremity edema 胸痛|Chest pain 胸部圧迫感|Cest oppression 呼吸困難|Dyspnea 失神|Syncope 食欲不振|Anorexia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 動悸|Palpitations 頻脈|Tachycardia めまい|Dizziness |
鑑別疾患 |
アルコール依存症|Alcoholism ウイルス感染症 虚血性心疾患 筋ジストロフィー|Muscular Dystrophy 高血圧症|Hypertension 高血圧性心肥大 産褥性心筋症 アミロイドーシス|Amyloidosis 心筋炎|Myocarditis 神経筋障害 心内膜炎 心不全|Heart Failure スポーツ心 大動脈弁狭窄症 Fabry病 頻脈性心筋症 尿毒症 多発性筋炎/皮膚筋炎|Polymyositis/Dermatomyositis 甲状腺機能亢進症|Hyperthyroidism |
スクリーニング検査 |
Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Eosinophils|好酸球 [/B] Erythrocytes|赤血球数 [/AsF, /B, /PcF] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Iron|鉄/血清鉄 [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/AsF, /PcF] Lymphocytes|リンパ球 [/B] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
Adrenomedullin|アドレノメデュリン [/P] Anti-Mitochondrial M7 Antibodies [/S] Atrial Natriuretic Peptide|心房性Na利尿ペプチド [/P] Brain Natriuretic Peptide|脳性Na利尿ペプチド [/P] BSP Retention|BSP test/ブロムサルファレイン試験 [/S] Copper|銅 [/S] Endothelin-1|エンドセリン [/P] Kynurenine|キヌレニン [/S] Lactate|乳酸/ラクテート [/B] Neopterin|ネオプテリン [/S] Selenium|セレン/セレニウム [/S] Troponin T|心筋トロポニンT/トロポニンT [/S] Zinc|亜鉛 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【脳性Na利尿ペプチド】 重症度に相関して増加する。BNPは心室から分泌されるホルモンで、強力な水・Na利尿作用、血管弛緩作用、交感神経系とレニン・アンジオテンシン系の抑制作用、心不全の病態改善作用などがある。健常者の血中濃度は極めて低値であるが、心筋虚血、心筋肥大や心負荷により産生量が増え血中濃度は高値となる。臨床的には心室負荷を表す指標として有用であり、心不全特に慢性心不全の重症度評価、治療効果判定や経過観察に用いる。臨床的にはANPと同時に測定されるが、重症心不全ではANP濃度をはるかに超えて上昇する。このため心不全の指標としてはANPよりも優れている。 【心内膜生検】【心筋生検】 炎症性心筋症の鑑別、心筋病変の重症度評価に有用である。心筋細胞は変性、肥大化、間質の線維化などの非特異的所見を認める。 |
検体検査以外の検査計画 | 心電図検査、胸部X線検査、心超音波検査、心ドップラ超音波検査、心筋シンチグラフィー、CT検査、MRI検査、心カテーテル検査、運動負荷タリウム-201シンチグラフィー |