疾患解説
フリガナ | シシュンキソウハツショウ |
別名 | 早発思春期 |
臓器区分 | 内分泌疾患 |
英疾患名 | Precocious Puberty |
ICD10 | E30.0 |
疾患の概念 | 8歳以前の女児、9歳以前の男児に二次性徴が出現する病態で、同時に身長の伸び率促進、骨成熟促進が見られる。原因はゴナドトロピン依存性は特発性、中枢神経系腫瘍あるいは炎症性疾患、視床下部過誤腫が、またゴナドトロピン非依存性は女性ではMcCune-Albright症候群、先天性副腎過形成、芳香化酵素過剰症候群、外来性エストロゲン、甲状腺機能低下症が、男性では先天性副腎過形成、活性化LH受容体突然変異、hCG分泌腫瘍、外来性アンドロゲン、甲状腺機能低下症があげられる。疾患はGnRH依存性思春早発症の方がよくみられ、女児は5~10倍頻度が高い。この疾患は、視床下部-下垂体系が活性化された結果、性腺の増大と成熟、第二次性徴の発達、卵子形成または精子形成が起こる。女児における思春期の最初の出来事は、乳房の発達で、そのすぐ後に陰毛および腋毛が現れ、その後初経を迎えるが、初経は早発乳房から2~3年後に起こる。男児では、思春期の最初の出来事は精巣の成長で、続いて陰茎の成長および陰毛と腋毛がみられる。女児で8歳以前、男児で9歳以前にこれ等の徴候が見られたら思春期早発症を疑う。 |
診断の手掛 | 8歳以前の女児に乳房の発達、恥毛、腋毛、月経出現が、また9歳以前の男児に髭、腋毛、恥毛が現れたら本症を疑う。 |
主訴 |
骨成熟促進|Promote bone maturation 性早熟|Precocious maturity 成長促進|Growth promotion 二次性徴出現|Appearance of secondary sex characteristics 腹部腫瘤|Abdominal tumor/Abdominal mass |
鑑別疾患 |
頭蓋内腫瘍 甲状腺機能低下症|Hypothyroidism 副腎腫瘍 卵巣腫瘍 副腎性器症候群|Adrenogenital Syndrome 視床下部症候群 先端巨大症|Acromegaly |
スクリーニング検査 | |
異常値を示す検査 |
Dehydroepiandrosterone|デヒドロエピアンドロステロン [/S] Estradiol|エストラジオール/E2 [/P] Luteinizing Hormone|黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモン/性腺刺激ホルモン [/P] Melatonin|メラトニン [/P] Testosterone|テストステロン/総テストステロン/アンドロゲン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【性腺刺激ホルモン】 分泌亢進が明らかに認められる。LH/FSHは男性性機能の中心である睾丸と女性性機能の中心である卵巣をコントロールしている性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)で、精巣からテストステロンとインヒビンを、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンを分泌させる。臨床的には男性では睾丸機能障害、女性では排卵障害が疑われる時に両者を同時に測定し低値、高値、正常の組み合わせから疾患を判断する。また、黄体形成ホルモン放出ホルモンの分泌能、卵巣・精巣機能も把握できる。 【エストラジオール】 高値になる。E2は最も強いエストロゲン作用を持つホルモンで、卵巣と胎盤で産生され、卵巣の成熟に伴い増加し更年期になると減少する。正常月経周期を持つ女性では黄体形成ホルモンサージの一日前にピークを示し、排卵日頃に一度低下した後、黄体期に再び上昇する性周期を示す。卵巣から分泌されるE2は、下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)により分泌が調節されるが、LHとFSHの分泌を調節するネガティブフィードバック機構もある。臨床的にはFSHと共に卵巣機能の評価に用いられる。また、尿中E2は血中E2と良く相関することから一日単位の分泌量の推定の際に測定する。 【エストロゲン】【プロゲステロン】【テストステロン】 分泌亢進が明らかに認められる。エストロゲンは女性ホルモン作用を持つ性ステロイドホルモンの総称で卵巣、胎盤、副腎、精巣などで産生され、約30種あるが、主なものはエストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)である。蓄尿によりエストロゲンの一日産生量を知ることが出来るが、それぞれのエストロゲンの個別測定が可能になった現在、総エストロゲンの測定意義はホルモン産生腫瘍や副腎皮質機能亢進症の補助診断に限られる。プロゲステロンはプレグネノロンを基質として主として卵巣の黄体と胎盤で産生されるステロイドホルモンで、血中では90%はアルブミンと結合している。血中濃度は卵胞期には低いが排卵後黄体形成と共に増加し、黄体退縮と共に減少する。妊娠が成立すると黄体は妊娠黄体になるため産生が維持され血中濃度は高値を保つが、妊娠10週前後になると産生は胎盤に移行する。臨床的には卵巣機能不全や不妊症の患者に黄体中期に測定し、黄体機能を評価する。テストステロンは精巣のLeydig細胞で産生される男性ホルモン作用の最も強力なアンドロゲンで、血中では大部分が性ホルモン結合グロブリン(SHBG)と結合しているが生物活性を持つ遊離型は1~3%に過ぎない。女性では副腎と卵巣で産生される。生理作用は男性では性器発育と機能の維持、蛋白同化作用、脂肪異化作用、体毛発育であるが、女性が過剰分泌を起こすと無月経、多毛などの男性化徴候をきたす。臨床的には男性ホルモン産生過剰、視床下部下垂体機能低下が疑われる症状を見た場合に測定する。 【デヒドロエピアンドロステロン】 基準範囲以上になることがある。 【ゴナドトロピン放出ホルモン刺激試験】 視床下部機能不全と下垂体機能不全の鑑別のために行う。 |
検体検査以外の検査計画 | 頭部X線検査、頭部CT検査、副腎・卵巣超音波検査、頭部・卵巣MRI検査 |