疾患解説
フリガナ | ビタミンB12ケツボウショウ |
別名 | コバラミン欠乏症 |
臓器区分 | 代謝性疾患 |
英疾患名 | Vitamin B12 Deficiency |
ICD10 | E53.8 |
疾患の概念 | 菜食主義者、吸収不全、胃内因子欠乏、寄生虫疾患、需要増大などでビタミンB12(コバラミン)が欠乏すると悪性貧血、巨赤芽球性貧血、亜急性連合変性症、末梢神経障害を来す。ビタミンB12の摂取不足は、完全菜食主義者ではあり得るが、それ以外では可能性は低い。完全菜食主義者の母親から授乳を受けている乳児は、肝の貯蔵量が限られ、発育が早い為に需要が多くなり、欠乏症を生後4~6カ月までに発症することがある。不十分なビタミンB12の吸収は、欠乏症の最も頻度の高い原因で、高齢者では、胃酸分泌低下の結果として発症する。吸収不良が細菌の異常増殖を伴う盲係蹄症候群や広節裂頭条虫の寄生で起こることがあるが、この場合、摂取したビタミンB12を細菌または寄生虫が利用するため、吸収量が減少する。 |
診断の手掛 | 四肢の位置感覚や振動感覚の低下、筋力低下などの神経症状や食欲不振、便秘、腹痛などの消化器症状を伴う貧血患者を診たら本症を疑う。患者によっては、いらいら感と軽度のうつ状態を示すので見逃さない。大球性貧血、末梢血塗抹標本で大楕円赤血球及び過分葉好中球を見たらビタミンB12を測定する。貧血は通常、潜行性に発症するが、進行が緩徐で生理的適応があるため、しばしば症状が示す以上に貧血の程度は重度である。時に、脾腫および肝腫大が生じ、体重減少や腹痛などの様々な消化管症状が起こることがある。ビタミンB12 欠乏を原因とする神経系の退行性変化である亜急性連合変性症が、血液学的異常とは無関係に出現するので注意する。 |
主訴 |
いらいら|Irritability 運動失調|Ataxia 肝腫大|Hepatomegaly 筋力低下|Weakness 四肢のしびれ|Sensory disturbance of Extremities 食欲不振|Anorexia 知覚障害|Esthesia disorder/Sensitivity disorder 白髪|Canities/Poliosis 脾腫|Splenomegaly 貧血症状|Anemic symptom 腹痛|Abdominal pain 便秘|Constipation 抑うつ状態|Depressive state |
鑑別疾患 |
骨髄異形成症候群|Myelodysplastic Syndrome 赤白血病 悪性貧血|Pernicious Anemia 栄養不良 炎症性腸疾患 スプルー エイズ/HIV感染症|Acquired Immune Deficiency Syndrome(AIDS) 悪性腫瘍 胆嚢疾患 膵疾患 盲管症候群 条虫症 |
スクリーニング検査 | MCV|平均赤血球容積 [/B] |
異常値を示す検査 |
Folic Acid|葉酸/プテロイルモノグルタミル酸/ビタミンM/乳酸菌発育因子 [/S,/RBC] Homocysteine|ホモシステイン/ホモシスチン/総ホモシステイン [/P, /U] Methylmalonate|メチルマロン酸 [/S, /U] Vitamin B12|ビタミンB12/コバラミン/シアノコバラミン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【血液像】 楕円形の大赤血球、好中球過分葉(4~6分葉)、汎血球減少症の所見を示す。 【MCV】 MCVが100~140fLの大赤血球症は巨赤芽球性貧血の存在を示唆する。MCVは基準範囲内のこともあるが、この場合はサラセミアや鉄欠乏性貧血の合併も考える。 【骨髄像】 赤芽球系の過形成像と特徴的な巨赤芽球や巨大後骨髄球が認められる。 【LD】 異常赤血球の髄内破壊を反映し、上昇する。同時に軽度の間接ビリルビン上昇も見られる。 【葉酸】 低値になる。葉酸はビタミンB複合体の一つで、緑色野菜、小麦、大豆、肝、牛肉、キノコなどに含まれ、体内では核酸合成の基質として生命の維持に大切なビタミンである。葉酸欠乏は細胞の分裂・増殖に大きな影響を与える。臨床的には末梢血中に過分葉好中球が出現し大球性貧血を呈する巨赤芽球性貧血を疑う場合に測定する。 【ビタミンB12】 200pg/mL未満なら臨床的に有意な欠乏状態とする。ビタミンB12はビタミンB複合体の一種でDNA合成に関与している他、抗貧血因子として重要な働きを持っている。肝、卵黄、牛乳などに多量に含まれ、胃壁細胞から分泌される内因子と結合し小腸で吸収される。臨床的には欠乏症である巨赤芽球性貧血を疑う場合に測定するが、この貧血は葉酸欠乏でも起こるため両者の測定が必要である。 【ホモシステイン】 血漿、尿ともに上昇する。Hcyはメチオニンの代謝産物でシステインと結合して血中に存在する。臨床的には脳血管障害の危険因子として動脈硬化症との関連が注目されている。脳卒中、心筋梗塞、動脈硬化症、深部静脈血栓症とHcyの血中濃度の間には優位の相関が認められるので、これら疾患の発症予測、経過観察に用いる。異常値を認めたらメチオニンとHcyの代謝に関連するシスタチオニンβ-シンターゼを測定する。 【メチルマロン酸】 ビタミンB12が基準範囲下限で血液学的指標がせいじょうであれば、メチルマロン酸を測定し、上昇していればB12欠乏の裏付けとなる。MMAはメチルマロニル経路と呼ばれる代謝経路に関連する物質であるが、メチルマロニル経路の代謝反応には補酵素としてビタミンB12が必要である。臨床的には先天性アミノ酸代謝異常症の一つであるメチルマロン酸尿症の診断に用いられるが、ビタミンB12が欠乏すると尿中に多量に出現するので、ビタミンB12欠乏症を疑う場合にも測定される。異常値を認めた場合、ビタミンB12欠乏症を疑えばシリングテストを行うかう。また、メチルマロン酸の前駆物質であるバリンを負荷すると、ビタミンB12欠乏症ではメチルマロン酸の排泄増加がみられる。ビタミンB12が正常でメチルマロン酸尿症を疑うときはビタミンB12を連続投与し、メチルマロン酸の反応を観察する。 【トランスコバラミンII-B12複合体】 40pg/mLを下回る場合は、ビタミンB12が欠乏している。コバラミン結合蛋白の一種で血液中でコバラミン(ビタミンB12)を輸送している。分子量、物理化学的性質、機能の異なる3種が知られている。小腸上皮細胞や肝で産生される。 【Schilling試験】 ビタミンB12の吸収障害の検査として有用である。食物中のビタミンB12は空腸で胃壁細胞から分泌される内因子と結合し回腸で吸収される。このため胃壁細胞や内因子など吸収に関与するいずれかの部分に障害があるとビタミンB12は不足し、巨赤芽球性貧血を発症する。この検査はビタミンB12の不足の原因を知るために行う検査である。 【抗内因子抗体】【抗胃壁細胞抗体 抗内因子抗体、抗胃壁細胞抗体が陽性となる。 |
検体検査以外の検査計画 | 胃内視鏡検査、MRI検査 |