疾患解説
| フリガナ | エイズ/エッチアイブイカンセンショウ |
| 別名 | 後天性免疫不全症候群 |
| 臓器区分 | 感染性疾患 |
| 英疾患名 | Acquired Immune Deficiency Syndrome(AIDS) |
| ICD10 | B24 |
| 疾患の概念 | レトロウイルス科のヒト免疫不全ウイルス(Ⅰ型、Ⅱ型)の感染により、CD4リンパ球が破壊され、免疫不全を来し、日和見感染または日和見腫瘍のいずれか、または両者の病態を呈する疾患である。CD4リンパ球数によって分類され、CD4リンパ球数が200/μL未満になればHIV感染症と定義される。HIVの感染は、HIVウイルスまたは感染細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌物、母乳、唾液、粘膜病変からの滲出物)との接触により起こる。通常は1.性交による性器、直腸または口腔内分泌液の移行 2.血液で汚染された注射針の共用 3.出産、授乳 4.輸血、汚染した医療器具への曝露などの医療行為などが挙げられる。 |
| 診断の手掛 |
AIDSの定義は、CDCのHIV感染臨床カテゴリーのB項、C項に記載されている疾患のいずれかを発症するか、CD4陽性Tリンパ球数が200/μL未満まで減少した場合である。臨床的には感染成立、無症候性キャリア、AIDS、AIDS関連症候群に分けられ、きわめて多彩な臨床症状を呈する。無症候性のびまん性リンパ節腫脹、口腔カンジダ症、帯状疱疹、下痢、易疲労感、発熱を訴える患者を診たら本症を疑う。また、日和見感染が先行することもあるので注意する。 【診断基準:1999年厚労省】 1.HIVの抗体スクリーニング検査法(ELISA)、(PA)、(IC)などの結果が陽性であって、以下のいずれかが陽性の場合にHIV感染症と診断する。 (1)抗体確認検査(Western Blot法、IFA法など) (2)HIV抗体検査、ウイルス分離及びPCRなどの病原体に関する検査 2.ただし、周産期に母親がHIVに感染したと考えられる生後18ヶ月未満の児の場合は少なくともHIVの抗体スクリーニング検査が陽性であり、以下のいずれかを満たす場合にHIV感染症と診断する。 (1)HIV病原検査が陽性 (2)血清免疫グロブリン高値に加え、リンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数:CD8陽性Tリンパ球数比の減少という免疫学的検査所見のいずれかを有する。 |
| 主訴 |
易感染性|Susceptibility to infection 易疲労感|Fatigue 関節痛|Arthralgia 感冒様症状|Symptomes of common cold 下痢|Diarrhea 髄膜刺激症状|Meningeal irritation sign 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 認知障害|Cognitive impaorment/Dementia 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 発疹|Eruption/Exanthema やせ|Weight loss リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
| 鑑別疾患 |
子宮頸癌|Cancer of Cervix イソスポーラ症 カポジ肉腫|Kaposi's Sarcoma カンジダ症 クリプトコッカス症|Cryptococcosis クリプトスポリジウム症 結核 血友病|Hemophilia 好中球減少症|Neutropenia 口内炎 コクシジオイデス症 サイトメガロウイルス感染症|Cytomegalovirus Infection 食道炎|Esophagitis 髄膜炎|Meningitis 多発性白質脳症 単純ヘルペスウイルス感染症|Herpes Simplex Infection(HSV) トキソプラズマ症|Toxoplasmosis 脳症 肺炎|Pneumonia 敗血症|Sepsis ヒストプラスマ症|Histoplasmosis 貧血 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma 伝染性単核球症|Infectious Mononucleosis |
| スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [ Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [ Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [ Amylase|アミラーゼ [ Activated Partial Thromboplastin Time|活性化部分トロンボプラスチン時間 [ Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [ Calcium|カルシウム [ Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [ Creatinine|クレアチニン [ Eosinophils|好酸球 [ Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [ Ferritin|フェリチン [ Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [ Follicle-stimulating Hormone|黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモン/性腺刺激ホルモン [ HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [ Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [ Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [ Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [ Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [ LDL-Cholesterol|LDL-コレステロール/低比重リポ蛋白コレステロール [ Leukocytes|白血球数 [ Lymphocytes|リンパ球 [ MCV|平均赤血球容積 [ Monocytes|単球 [ Neutrophils|好中球 [ Platelets|血小板 [ Potassium|カリウム [ Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [ Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [ Sodium|ナトリウム [ Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [ Thyroid Stimulating Hormone|甲状腺刺激ホルモン [ Urea Nitrogen|尿素窒素 [ |
| 異常値を示す検査 |
1,25-Dihydroxy Vitamin D3|1,25-ジヒドロキシビタミンD3/1α,25-ジヒドロキシビタミンD/活性型ビタミンD [ Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [ Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [ Anti-Protein S Antibodies [Positive/S] Antibody Titer [ Anticardiolipin Antibodies|抗リン脂質抗体/抗PL抗体/抗カルジオリピン(CL)抗体/ループスアンチコアグラント(LA)/リン脂質抗体 [ Apolipoprotein A-I|アポリポ蛋白A-I [ Apolipoprotein B-1000 [ Apolipoproteins|アポリポ蛋白 [ Arginine|アルギニン [ Asparagine|アスパラギン [ Carnitine|カルニチン分画/ビタミンBT [ Carnitine, Free|カルニチン分画/ビタミンBT [ Carotenoids|カロチン/プロビタミンA/カロチノイド [ CD14+ Monocytes [ CD4+ Lymphocytes [ CD4+:CD8+ Lymphocytes Ratio [ CD8+ Lymphocytes [ Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [ Coproporphyrin|コプロポルフィリン [ Cysteine|システイン [ Cystine|シスチン [ Erythropoietin|エリスロポエチン [ Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [ Folate|葉酸/プテロイルモノグルタミル酸/ビタミンM/乳酸菌発育因子 [ Ganglioside GD3 [ Glial Fibrillary Acidic Protein [ Globulin|グロブリン [ Glutathione|グルタチオン [ Glutathione Peroxidase [ Glycine|グリシン [ Granulocyte-Macrophage Colony Stimulating Factor|顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 [ Hepatitis Core Antigen [ HIV p24 Antibody|p24抗体検査/抗p24抗体 [ HIV p24 Antigen|p24抗原検査 [ HIV-1 p24 Antigen [ HIV-1 RNA|HIV-1 RNA定量/ヒト免疫不全ウイルス1型RNA定量試験 [ Homocysteine|ホモシステイン/ホモシスチン/総ホモシステイン [ Homovanillic Acid|ホモバニリン酸 [ IgG Index|IgG合成比 [ Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [ Intercellular Adhesion Molecule-1|CD54 [ Interferon-γ|インターフェロン-γ [ Interleukin-1|インターロイキン-1/インターロイキン-1α/インターロイキン1β [ Interleukin-1α [ Interleukin-1β|インターロイキン-1β [ Interleukin-6|インターロイキン-6 [ Interleukin-8|インターロイキン-8 [ Ionized Calcium|イオン化カルシウム/Caイオン [ Leucine|ロイシン [ Lipase|リパーゼ/膵リパーゼ [ Lipid Hydroperoxide [ Luteinizing Hormone|黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモン/性腺刺激ホルモン [ Lymphocyte T-Cells|T細胞 [ Lysine|リジン [ Macroamylase|マクロアミラーゼ/アミラーゼ結合免疫グロブリン/アミラーゼアイソザイムアノマリー [ Macrophage Inflammatory Protein-1α [ Methionine|メチオニン [ Monocyte Chemotactic Protein-1 [ N2,N2-Dimethylguanosine [ Neopterin|ネオプテリン [ Nitrite|亜硝酸/硝酸イオン [ Ornithine|オルニチン [ Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [ Phosphohexoseisomerase|ホスホヘキソイソメラーゼ/グルコースリン酸イソメラーゼ/ホスホへキソムターゼ [ Phospholipase A|ホスホリパーゼA [ Plasmin-α2-Plasmin Inhibitor Complex|α2-プラスミンインヒビター-プラスミン複合体/プラスミンインヒビターアンチプラスミン [ Plasminogen|プラスミノゲン活性 [ Porphyrins, Total|ポルフィリン [ Prolactin|プロラクチン/乳汁分泌ホルモン [ Protein S, Functional [ Protein S|プロテインS/プロテインS抗原量 [ Pseudouridine|シュードウリジン [ Quinolinic Acid [ RANTES [ Retinol|ビタミンA/レチノール [ S-100b Protein [ Selenium|セレン/セレニウム [ Soluble CD14+ [ Soluble CD35+ [ Soluble CD4+ [ Soluble CD8+ [ Soluble E-Selectin|可溶性E-セレクチン/可溶性CD62E/可溶性ELAM-1 [ Soluble HLA-I [ Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [ Soluble Intercellular Adhesion Molecule-2 [ Soluble Intercellular Adhesion Molecule-3 [ Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor-II [ Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor-p75 [ Soluble Vascular Cell Adhesion Molecule-1|可溶性VCAM-1/可溶性CD106/可溶性血管細胞接着分子-1 [ Taurine|タウリン/アミノエチルスルホン酸 [ Testosterone|テストステロン/総テストステロン/アンドロゲン [ Testosterone, Free|テストステロン/総テストステロン/アンドロゲン [ Thiobarbituric Acid-reacting Substances [ Threonine|トレオニン [ Thymosin-α1|サイモシン [ Thyroxine Binding Globulin|サイロキシン結合グロブリン/チロキシン結合グロブリン [ Transthyretin|トランスサイレチン/プレアルブミン [ Tri-Iodothyronine, Reverse (rT3)|リバースT3 [ Tryptophan|トリプトファン [ Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [ Tyrosine|チロシン [ Uroporphyrin|ウロポルフィリン [ Valine|バリン [ Vitamin B12|ビタミンB12/コバラミン/シアノコバラミン [ Zinc|亜鉛 [ α-Tocopherol [ α-Tocopherol:Lipids Ratio [ β-Carotene|β-カロチン [ β-Carotene:Total Lipids Ratio [ β-Endorphin|β-エンドルフィン [ β2-Macroglobulin [ β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [ |
| 関連する検査の読み方 |
【CBC】 白血球減少症、貧血、血小板減少症を認めるが、血小板は増加することもある。リンパ球は1,000/μL以下である。 【HIV感染症パネル】 スクリーニング検査が繰り返し陽性となり、ウエスタンブロット法で確認されれば感染とする。AIDSの原因ウイルスにはHIV-1とHIV-2の二つのタイプがあるが、この検査は免疫クロマト法を用いるHIV-1とHIV-2抗体の同時簡易測定法である。15分で結果が出ることからスクリーニング検査として有用である。通常HIVに感染すると数週間後にHIV抗体が検出されるが、ウイルスは共存しているため、抗体検出はHIV感染と考えてよい。ただし、最近はウィンドウピリオドの短縮を目的に「HIV-1+HIV-2とHIV-1抗原」の同時検査が用いられている。陽性の場合はHIV-1抗体(WB)、HIV-2抗体(WB)とHIV-1-RNA定量法を組み合わせて確認試験を行う。 【ELISA】 スクリーニング検査で、HIV感染後22日以内では50%が陽性、6週間以内では95%が陽性となる。感度は99.9%を超える。 【ウエスタンブロット】 診断確定検査で、ELISAと組み合わせると特異度は99.99%を超える。初期HIV感染、HIV-2感染、自己免疫疾患、妊娠、直近の破傷風予防接種では結果は不確定になるので、注意する。 【CD4】 HIv感染患者の免疫応答能の最良の指標であり、2~3ヶ月に一回は測定すべきである。日和見感染あるいは悪性腫瘍へ進行するリスクはCD4数が200/μL以下である。 【CD4:CD8比】 CD4の絶対数よりも信頼性が高い。20%未満では日和見感染あるいは悪性腫瘍への進行リスクが高い。Tリンパ球はCD4(ヘルパー/インデューサー)を表出するものと、CD8(サプレッサー/細胞障害性)を表出するものに分けられる。CD4陽性Tリンパ球は、細菌感染や膠原病など免疫系が活動状態にあると増加する。一方、CD8リンパ球は末梢血中ではCD4リンパ球と相補的な関係にあり、両者は恒常性を保っている。免疫不全症や自己免疫疾患では、この恒常性が崩れるためCD4/CD8の比をとり病態を判断する。 【HIV-1 RNA定量】 急性期の感染診断に最適の検査であるが、ウイルス量が少ないと偽陽性になる。AIDSの原因ウイルスにはHIV-1とHIV-2の二つのタイプがあるが、感染の多くはHIV-1である。この検査は患者血液中のHIV-RNAを定量的に測定するもので400copy/mLから検出できるが、高感度法の検出限界は40copy/mLである。臨床的にはHIV感染の症状がある場合、HIV抗体検査が陽性を示した場合、治療薬の効果判定、母子感染の迅速診断、予後推定などの目的で測定される。 【NK細胞活性】 低下する。ナチュラルキラー細胞は抗原感作や組織適合性抗原複合体の影響を受けずに、ウイルスや腫瘍細胞などを非特異的に障害するリンパ球系細胞で、表面マーカーとしてCD2、CD56、CD57、CD16aが発現している。この細胞はウイルス感染の初期の防御、腫瘍細胞の障害作用、真菌や細菌の殺菌など多彩な生理作用がある。 【T細胞】 低下する。遅延型過敏反応の低下、日和見感染症、悪性新生物の発生がある時は機能低下も考える。T細胞はその成熟・分化に胸腺が重要な役割を果たしているリンパ球で、細胞性免疫機能の中心的役割を持つ。生理機能はヘルパーT細胞として免疫応答の活性化、サプレッサーT細胞として免疫応答抑制やキラーT細胞としてウイルス感染細胞や癌細胞の排除などであるる。臨床的にはヘルパー活性、サプレッサー活性、キラー活性などを調べる機能検査により、種々の疾患への関与が評価出来る。 【サイモシン】 70~80%の患者で検出される。 【β2-マイクログロブリン】 血中では増加し、臨床経過と相関する。疾患が急速に進行すると3.5mg/dLを超える。 【HIV p24抗原】 活発なHIV複製の証拠となる。p24抗原検査はEIA法で血清中のウイルス蛋白p24抗原を検出する検査で、PCR法よりは簡便であるが検出感度は劣る。PCR法よりは簡便であるが検出感度は劣るが感染後最短で17日で陽性化するため、急性感染期のHIV患者に特に有用である。 【蛋白分画】 アルブミンが減少し、γ-グロブリンが増加する。 【免疫グロブリン】 IgGとIgAは増加するがIgMも軽度に増加する。 【リンパ球サブセット】 CD4は低下、CD8は増加し、CD4:CD8比は1.0以下(正常2.0)である。EBウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス感染症でも同様の値である場合がある。 【予後と治療のモニタリング】 HIV感染症と診断したら、CD4陽性細胞数と血漿HIV RNAレベルを測定する。CD4陽性細胞数は以下の数値の積で計算される。白血球数(例、4000/μL)、白血球中のリンパ球の割合(例、30%)、リンパ球中のCD4陽性細胞の割合(例、20%)とするとCD4陽性細胞数は4000×0.3×0.2=240μLであり、基準値の1/3になる。また、HIV RNAレベルはウイルス量であり、HIVの複製率が反映されている。 |
| 検体検査以外の検査計画 | 造影増強CT検査、MRI検査 |