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疾患解説

フリガナ コツズイイケイセイショウコウグン
別名 不応性貧血
臓器区分 血液・造血器疾患
英疾患名 Myelodysplastic Syndrome
ICD10 D46.9
疾患の概念 無効造血を主徴とする単クローン性造血幹細胞の異常で、無効造血による汎血球減少、血球形態異常、治療不応性、急性骨髄性白血病への移行などが特徴の疾患で、多くは60~70歳代の男性に発症する。この疾患はフィラデルフィア染色体陰性の慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病および特発性骨髄化生と類似しているが、同じではない。骨髄は正常または過形成で、無効造血により貧血、好中球減少症、血小板減少症とそれらが複合した症状がみられる。造血障害は、骨髄中および血液中の血球の形態学的異常にも関係する。髄外造血が生じることがあり、肝腫大および脾腫を来す。
診断の手掛 高齢者に不応性貧血、白血球減少、または血小板減少が見られたら本症を疑う。症状は最も影響を受けた細胞系列を反映するので、赤血球(貧血)、白血球(感染)、血小板(出血)を注意深く観察する。その他、顔面蒼白、筋力低下、脾腫および肝腫大がよくみられる。
【診断基準:2010年厚労省】
1.臨床所見として、慢性貧血を主とするが、時に出血傾向、発熱を認める。症状を欠くこともある。
2.末梢血で、1血球系以上の持続的な血球減少を認めるが、血球減少を欠くこともある。不応性貧血(骨髄異形成症候群)の診断の際の血球減少とは、成人で、ヘモグロビン濃度10g/dL未満、好中球1,800/μL未満、血小板数10万/μL未満を指す。
3.骨髄は正ないし過形成であるが、低形成のこともある。
A.必須基準(FAB分類では1)、2)がWHO分類では1)~4)が必須である。
 1)末梢血と骨髄の芽球比率が30%未満(WHO分類では20%未満)である。
 2)血球減少や異形成の原因となる他の造血器あるいは非造血器疾患が除外できる。
 3)末梢血の単球数が1×10⁹/L未満である。
 4)t(8;21)(q22;q22),t(15;17)(q22;q12),inv(16)(p13;q22)またはt(16;16)(p13;q22)の染色体異常を認めない。
B.決定的基準
 1)骨髄塗抹標本において異形成が、異形成程度区分でLow以上である。
 2)分染法、またはFISH法で骨髄異形成症候群が推測される染色体異常を認める。
C.補助基準
 1)骨髄異形成症候群で認められる染色体異常が証明できる。
 2)網羅的ゲノム解析法で、ゲノム異常が証明できる。
 3)フローサイトメトリーで異常な形質を有する骨髄系細胞が証明できる。
*鑑別疾患:巨赤芽球貧血、血清エリスロポエチン欠乏、薬剤性血球減少症、慢性肝疾患、肝硬変、脾機能亢進症、アルコール過剰摂取、重金属暴露、銅欠乏、HIV感染、慢性疾患による貧血、自己免疫性血球減少症、血球貪食症候群、感染症、癌の骨髄転移、白血病、骨髄増殖性腫瘍、再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、大顆粒リンパ性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫
主訴 易感染性|Susceptibility to infection
易疲労感|Fatigue
歯肉出血|Gingival bleeding/Ulorrhagia
紫斑|Purpura
出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis
咳|Cough
全身倦怠感|General malaise/Fatigue
痰|Sputum
発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever
貧血症状|Anemic symptom
鼻出血|Nosebleed/Nasal hemorrhage/Epistaxis
鑑別疾患 転移性骨髄腫瘍
肝硬変|Cirrhosis of Liver
急性白血病|Acute Leukemia
骨髄線維症|Myelofibrosis
再生不良性貧血|Aplastic Anemia
全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE)
多発性骨髄腫|Multiple Myeloma
発作性夜間血色素尿症|Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria(PNH)
慢性貧血
ビタミンB12欠乏症|Vitamin B12 Deficiency
葉酸欠乏症|Folic Acid Deficiency
薬剤(抗生物質)
スクリーニング検査 Leukocytes|白血球数 [/B]
MCV|平均赤血球容積 [/B]
Neutrophils|好中球 [/B]
Platelets|血小板 [/B]
異常値を示す検査 Interleukin-1β|インターロイキン-1β [/S]
Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S]
Thrombopoietin|トロンボポエチン [/P]
Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S]
関連する検査の読み方 【CBC】
汎血球減少、正球性で時に小球性貧血、網赤血球減少、好中球減少、血小板減少、白血球と血小板の形態異常を認める。白血球は基準範囲内かわずかに増減する。好中球や好酸球の細胞質顆粒に大小不同や顆粒数のばらつきがみられ、Pelger-Huet核異常細胞やDohle小体を認めることもある。貧血が最も一般的な特徴で大赤血球症と赤血球大小不同を伴いMCVとRDWが増加する。
【血液像】
好中球乏顆粒、乏分葉(Pelger-Huet様異常)、赤血球好塩基性斑点、巨赤芽球性変化がみられる。
【骨髄像】
クローン性増殖異常で末梢血の細胞数減少と骨髄造血異常を示す3系統の形態異常(異形成)が特徴的である。赤血球系細胞では分化成熟異常(特に核の異常)、環状鉄芽球が認められる。骨髄巨核球は数が減少する。骨髄芽球の割合は予後と強く関係している。
【血球機能】
赤血球酵素・膜抗原異常、好中球殺菌能・走化能低下、血小板凝集能低下を認める。
【NAPスコア】
低値である。末梢血液塗抹標本の好中球に存在するアルカリホスファターゼを化学的に染色して検出する検査で、アルカリホスファターゼが好中球の成熟とともに増加することから、細胞の成熟度を知るために行われる検査でNAP(neutrophil alkaline phosphatase) scoreと呼ばれている。
【骨髄細胞のコロニー培養】
形成不全である。
【鉄染色】
異常鉄芽球(環状鉄芽球)が増加する。鉄染色は骨髄塗抹標本上の赤芽球中の非ヘモグロビン鉄を細胞化学的に染色して検出するもので、鉄染色顆粒が細胞質内に認められた赤芽球を鉄芽球と呼び、赤芽球100個に対する割合を%で表わす。
【CD34陽性細胞】
基準範囲上限以上のことがある。
【p53遺伝子】
遺伝子変異を認める。
【血液細胞核酸増幅同定】
病型の確定診断と治療効果判定に有用である。
【染色体分析】
5,7番染色体の喪失と8番染色体トリソミーが頻繁に認められる。
【除外診断】
ビタミンB12と葉酸を測定し巨赤芽球性貧血を除外する。
【併発する疾患】
急性非リンパ性白血病を発症する。
検体検査以外の検査計画 骨髄MRI検査
疾患

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