疾患解説
フリガナ | チャーグ-ストラウスショウコウグン |
別名 |
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 アレルギー性血管炎 アレルギー性肉芽腫性血管炎 |
臓器区分 | 呼吸器疾患 |
英疾患名 | Churg-Strauss disease |
ICD10 | D69.0 |
疾患の概念 | この疾患は、好酸球に富む壊死性肉芽腫、好酸球増多および好酸球の組織浸潤を特徴とする全身性壊死性脈管炎で、主に小動脈~小静脈が侵され、喘息、好酸球増加症と強く関連している。どの器官も侵されるが、肺、皮膚、副鼻腔、心血管系、腎、末梢神経系、中枢神経系、関節および消化管が最も侵され易い。原因は不明であるが、好酸球と好中球の分解産物により傷害された組織を伴うアレルギー機序が関与している可能性があり、Tリンパ球の活性化が好酸球性炎症の持続に関与していると考えられている。また、喘息でロイコトリエン受容体拮抗薬を服用している患者で、コルチコステロイドを減量すると発症することが知られている。平均発症年齢は44歳で、稀な疾患である。 |
診断の手掛 |
多彩な病態が順次発現してくるという特徴があり、20~30歳代にアトピー性気管支喘息、アレルギー性鼻炎の発症で始まる。特に、気管支喘息は本症の95%以上に認められる重要な症状である。その後、末梢血好酸球増加や好酸球の臓器浸潤がみられる。侵される臓器は肺と消化管が多い。30~40歳代になると血管炎が発症する時期になる。喘鳴または肺浸潤とその他の臓器に血管炎を示唆する症状を有する患者を診たら本症を疑う。前駆期(prodromal)の病期は数年間持続し、アレルギー性鼻炎、鼻茸、喘息またはこれらの組合せがみられる。第2期(2nd phase)は末梢血および組織の好酸球増多が見られ、慢性好酸球性肺炎および好酸球性胃腸炎を発症する。第3期(3rd phase)は生命を脅かす可能性がある血管炎が出現し、発熱、全身倦怠感、体重減少、易疲労感などの全身症状が見られる。2012年のChapel Hill Consensus Conferenceで、この疾患は、「喘息および好酸球増多と関連し、小型および中型の血管を侵す壊死性血管炎を伴う、気道に病変を生じる好酸球に富んだ壊死性肉芽腫性炎症」と定義された。 【診断基準:2002厚労省】 主要臨床所見:1)気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎、2)好酸球増加、3)血管炎による症状(38℃以上の発熱が2週以上続く、6ヶ月以内に6kg以上の体重減少、多発性単神経炎、消化管出血、紫斑、多関節炎・多関節痛、筋肉痛・筋力低下)。 2.臨床経過の特徴:主要臨床所見1)、2)が先行し3)が発症する。 3.主要組織所見:1)周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性またはフィブリノイド壊死性血管炎の存在 2)血管外肉芽腫の存在。 4.判定:1)確実(a)主要所見のうち気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎、好酸球増加および血管炎による症状のそれぞれ1つ以上を示し、同時に、主要組織所見の1項目を満たす場合(アレルギー性肉芽腫性血管炎)。(b)腫瘍臨床所見3項目を満たし、臨床経過の特徴を示した場合(チャーグ-ストラウス症候群)。2)疑い(a)主要所見1項目および主要組織所見の1項目を満たす場合(アレルギー性肉芽腫性血管炎)。(b)主要所見3項目を満たすが、臨床経過の特徴を示さない場合(チャーグ-ストラウス症候群)。 5.参考となる検査所見:1)白血球増加(1万/μL以上) 2)血小板増加(40万/μL以上) 3)血清IgE増加(600IU/mL以上) 4)MPO-ANCA陽性 5)リウマトイド因子陽性 6)肺浸潤陰影 |
主訴 |
呼吸困難|Dyspnea 咳|Cough 喘鳴|Wheeze/Stridor 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 貧血症状|Anemic symptom やせ|Weight loss |
鑑別疾患 |
結節性多発動脈炎|Polyarteritis Nodosa(PAN) 顕微鏡的多発血管炎|Microscopic Polyangitis 好酸球性肺炎|Pulmonary Infiltration with Eosinophilia/Eosinophilic pneumomia 好酸球増加症|Eosinophilia 多発血管炎性肉芽腫症|Granulomatosis with Polyangitis(GPA) |
スクリーニング検査 | Eosinophils|好酸球 [/B] |
異常値を示す検査 |
Anti-Neutrophil Cytoplasm Antibodies|抗好中球細胞質プロテナーゼ-3抗体/抗好中球細胞質抗体/好中球細胞質抗体/C-ANCA/PR-3ANCA [/S] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] Myeloperoxidase Antineutrophil Cytoplasmic Autoantibodies|抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体/核周囲型抗好中球細胞質抗体/MPO-ANCA/P-ANCA [/S] Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 好酸球が増加し80%以上の患者で1,000/μL以上になる。好酸球数は疾患活動性の指標にもなる。血小板増加、正球性・正色素性貧血がみられる。 【IgE】 高値になる。 【ANCA】 40%の患者にANCAが検出される。ANCAが検出されたら酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で特異抗体を確認する。ミエロペルオキシダーゼに対する抗体を伴う核周囲ANCA(p-ANCA)が最も多くみられるが,ANCAは本症に対して特異的ではなく感度の高い検査でもない。 【P-ANCA】 P-ANCAは陽性になるが、C-ANCAは陰性である。 【CRP】【ESR】 疾患活動性の評価に用いる。 【可溶性IL-2受容体】 活動性の指標となる。sIL-2Rは細胞表面に存在し、リンパ球などと結合し刺激を細胞内に伝える働きがある。悪性リンパ腫では受容体の発現が亢進している為、血液中のsIL-2Rが増加するので、これら疾患の重症度推定、治療効果判定などに用いる。 【生検】 確定診断に必要である。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査 |