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疾患解説

フリガナ コウチュウショウ
別名 鉤虫感染症
臓器区分 寄生動物疾患
英疾患名 Ancylostomiasis
ICD10 B76.9
疾患の概念 ズビニ鉤虫とアメリカ鉤虫による感染症で、成虫は、小腸特に十二指腸に寄生する。ズビニ鉤虫は、感染幼虫の経口摂取により、またアメリカ鉤虫は、経皮的に感染する。ズビニ鉤虫とアメリカ鉤虫は、同じ生活環を持ち、便中の虫卵は、1~2日で孵化し、ラブジチス型幼虫を放出し、5~10日で脱皮してフィラリア型幼虫になる。幼虫は3~4週間生存し、汚染された土壌を裸足で歩くヒトの皮膚から体内に侵入する。幼虫は、血管から肺に到達して肺胞を通過し、気管支を上行して喉頭蓋に達し嚥下される。嚥下された幼虫は、小腸内で成虫になり、腸壁に吸着して吸血する。吸血による慢性的な失血は鉄欠乏性貧血を引き起こす。貧血が発症するかどうかは,感染虫体数および食事中の吸収可能な鉄の含量により異なる。成虫は2年以上生存することがある。
診断の手掛 鉤虫が分布している地域に旅行あるいは滞在した患者が、腹痛などの消化器症状を訴えたら本症を疑う。栄養が十分でない患者は虚弱、息切れ、皮膚色素消失を含む進行性の鉄欠乏性貧血と低蛋白血症を発症する。鉤虫感染症は、しばしば無症状であるが、幼虫の侵入部位にそう痒を伴う水疱性丘疹を見ることがある。多数の幼虫が肺にて移行すると、Löffler症候群を引き起こすことがあり、咳嗽、喘鳴、好酸球増多症ときに喀血を来す。急性期には、腸管内成虫が心窩部の仙痛、食欲不振、鼓腸、下痢、体重減少を引き起こすことがある。慢性感染症は鉄欠乏性貧血を発症し、蒼白、呼吸困難、脱力感、頻脈、全身倦怠感、末梢浮腫を引き起こし、軽度の好酸球増多がしばしばみられる。
主訴 嘔吐|Vomiting
悪心|Nausea
喀血|Hemoptysis
食欲不振|Anorexia
咳|Cough
喘鳴|Wheeze/Stridor
体重減少|Weight loss
痰|Sputum
皮疹|Eruption/Exanthema
貧血症状|Anemic symptom
腹痛|Abdominal pain
腹部膨満感|Sense of Abdominal fullness
やせ|Weight loss
鑑別疾患 腸管線虫症
幼虫移行症
肺寄生虫症
鉄欠乏性貧血|Iron Deficiency Anemia
低蛋白血症
Loeffler症候群
好酸球性胃腸炎
スクリーニング検査 Eosinophils|好酸球 [/B]
Erythrocytes|赤血球数 [/B]
Ferritin|フェリチン [/S]
Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B]
Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B]
Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S]
Iron|鉄/血清鉄 [/S]
Leukocytes|白血球数 [/B]
MCH|平均赤血球ヘモグロビン量 [/B]
MCHC|平均赤血球ヘモグロビン濃度 [/B]
MCV|平均赤血球容積 [/B]
TIBC|総鉄結合能 [/S]
異常値を示す検査 Eosinophil Cationic Protein|好酸球塩基性蛋白/好酸球顆粒蛋白/好酸球陽イオン蛋白/好酸球陽性荷電蛋白 [/S, /U]
Eosinophil-derived Neurotoxin [/S, /U]
Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S]
Iron Saturation|鉄飽和度 [/S]
Myeloperoxidase|ミエロペルオキシダーゼ抗原/MPO抗原 [/S]
Occult Blood|潜血反応(便)/グアヤック法/o-トリジン法/ラテックス凝集法 [/F]
関連する検査の読み方 【糞便一般検査】
新鮮便中に殻の薄い長円形(40×60μm)の卵が見られる。便を室温に数時間放置すると卵が孵化して幼虫が見られることがある。幼虫は糞線虫の幼虫と見誤ることがある。
【CBC】
重度の低色素性小球性貧血が特徴的な所見である。好酸球増多症(総白血球の30~60%を占めるほど高くなり、17,000/μLに達する)が肺への移行段階で見られる。腸に移行し慢性になれば低下する。
【Fe】
血清鉄は低くなる。
【フェリチン】
低値になる。フェリチンはフェリチン鉄を貯蔵している蛋白で、大部分が細胞内に存在し、トランスフェリンにより運ばれてくる鉄を細胞内に貯蔵する働きがある。血清Fer 1ng/mLは貯蔵鉄8~10mgに相当し、鉄欠乏性貧血では貯蔵鉄量が減少するため、血清鉄減少、総鉄結合能増加に加え血清フェリチンが低下する。臨床的には貧血症状のない鉄欠乏性貧血の全段階での潜在的鉄欠乏の把握、鉄過剰状態の診断に用いる。
【TIBC】
高値である。血清中の鉄は鉄結合蛋白トランスフェリンの約1/3と結合して血清鉄(Fe)を形成しており、トランスフェリンの残り2/3 が鉄と結合可能な部分で不飽和鉄結合能(UIBC)と呼ばれている。総鉄結合能(TIBC)とは血清鉄と不飽和鉄結合能の和であり、TIBC=UIBC+Fe(μg/dL)の関係が成立している。臨床的には鉄欠乏あるいは鉄過剰を疑う場合に測定されるが、特に小球性低色素性貧血の鑑別診断に有用である。
検体検査以外の検査計画 胸部X線検査、小腸内視鏡検査

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