疾患解説
フリガナ | ヒケッカクセイコウサンキンショウ |
別名 | 非定型抗酸菌症 |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Non-Tuberculous Mycobacteria(NTM) |
ICD10 | A31.9 |
疾患の概念 | 非結核性抗酸菌(Non-tuberculous mycobacteria)による感染症で、以前は非定型抗酸菌(Atypical mycobacteria)と呼ばれていた。ヒトに対する病原性は弱く、ヒト-ヒトの感染はない。結核、胸膜炎、肺炎、肺化膿症などの罹患歴を持つ人や塵肺、粉塵症などに併発する二次型が多かったが、最近は基礎疾患の無い一次型が増加している。大部分は、呼吸器感染症として発症するが、皮膚、リンパ節、軟部組織にも病変が見られることがある。HIV感染患者などの免疫能低下例では全身に播種性の病変を作る。 |
診断の手掛 |
臨床症状は、肺結核より軽微で、気管支拡張症、肺気腫、塵肺などの基礎疾患の症状が前面に出ることが多い。発症には局所または全身性の宿主防御の欠損が必要で、免疫学的な異常の有無を確認する。 【診断基準:2008年日本結核病学会】 A.臨床的基準(以下の2項目を満たす)1.胸部画像所見(HRCTを含む)で、結核性陰影、小結節性陰影や分枝状陰影の散布、均等性陰影、空洞陰影、気管支又は細気管支拡張所見のいずれかを示す。但し、先行肺疾患による陰影がすでにある場合は、この限りではない。2.他の疾患を除外できる。 B.細菌学的基準(菌種の区別なく、以下のいずれか1項目を満たす)1.2回以上の異なった喀痰検体での培養陽性。 2.1回以上の気管支洗浄液での培養陽性。 3.経気管支肺生検または肺生検組織の場合は、抗酸菌症に合致する組織学的所見と同時に組織、または気管支洗浄液、または喀痰での1回以上の培養陽性。 4.稀な菌種や環境から高頻度に分離される菌種の場合は、検体種類を問わず2回以上の培養陽性と菌種同定検査を原則とし、専門家の見解を必要とする。以上のA,Bを満たす。 |
主訴 |
喀血|Hemoptysis 血痰|Bloody sputum/Hemoptysis 呼吸困難|Dyspnea 咳|Cough 体重減少|Weight loss 痰|Sputum 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 微熱|Low grade fever/Febricula やせ|Weight loss |
鑑別疾患 |
びまん性汎細気管支炎 ウェゲナー肉芽腫症 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 肺結核|Pulmonary Tuberculosis 肺癌|Lung Cancer スポロトリコーシス|Sporotrichosis サルコイドーシス|Sarcoidosis |
スクリーニング検査 |
Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] |
異常値を示す検査 |
Anti-Mycobacteria Antibody|抗抗酸菌抗体/抗コードファクター抗体/抗結核菌リン脂質抗原抗体/抗TBGL抗体 [Positive/S] Detection and Identification of M.Tuberculosis Complex and Mycobacterium other than Tuberculosis [Positive/Specimen] |
関連する検査の読み方 |
【喀痰細菌検査】 連続3ヶ日間検査を行う。抗酸菌染色では結核菌との鑑別は不可能である。 【抗酸菌抗体】 抗リポアラビノマンナン抗体と抗コードファクター抗体を検出する。早期診断に有用である。抗抗酸菌抗体は結核菌やその他の抗酸菌の細胞壁に存在する抗原物質に対する抗体で、抗酸菌に対し90%以上の特異度がある。この抗体は結核菌が検出されない肺結核、結核性胸膜炎、カリエス、腸結核が疑われる患者の補助診断として有用である。陽性の場合は非結核性抗酸菌感染症との鑑別が必要である。また、抗体価は化学療法により低下するので治療効果判定にも用いられる。 【結核菌群・非結核性抗酸菌核酸増幅同定】 陽性である。この検査は体液、組織、気管支洗浄液やその培養液を検体に、PCRやTMA法で抗酸菌の核酸同定し、目的の抗酸菌が検体中に存在するか否かを判定するために行う。臨床的には抗酸菌感染症を疑う場合に用いる。 【ナイアシンテスト】 陰性である。ヒト型結核菌と非結核性抗酸菌を鑑別するための検査で、試験紙を用いる簡易検査であるが核酸同定法が普及しているので、ヒト型結核菌鑑別法としての臨床的意義は少ない。陽性の結果が出た場合は、ヒト型結核菌以外でもナイアシンテストが陽性になる場合があるので、核酸同定法などでの確認が必要である。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、胸部CT検査、内視鏡検査 |