疾患解説
フリガナ | サルコイドーシス |
別名 | |
臓器区分 | 呼吸器疾患 |
英疾患名 | Sarcoidosis |
ICD10 | D86.9 |
疾患の概念 | 原因不明の慢性多臓器疾患で、非乾酪性の類上皮細胞肉芽種病変が、肺門リンパ節、肺、眼、皮膚などに見られる。好発年齢は20歳代と40歳代以降の二つのピークがあり40歳代以降は女性に多い。世界的にみて有病率が最も高いのは、アフリカ系アメリカ人および北欧人で、特にスカンジナビアおよびアイルランドの女性に多い。Löfgren症候群は急性多関節炎、結節性紅斑および肺門リンパ節腫脹の三徴を伴って発症し発熱、倦怠感、ぶどう膜炎がしばしばみられ、ときに耳下腺炎がみられる。この疾患は多くの場合、自然に軽快し再発率は低い。Blau症候群は、常染色体優性遺伝形式の遺伝性サルコイドーシスで、小児に発症する。4歳未満の小児で関節炎、発疹およびぶどう膜炎を発症し、しばしば自然に軽快する。この疾患は遺伝的に感受性の高い人が環境曝露を受けた際の炎症反応と考えられている。未知の抗原により、T細胞とマクロファージの集積、サイトカインとケモカインの放出ならびに応答細胞による肉芽腫形成を特徴とする細胞性免疫応答が誘発される。炎症が進行すると、特徴的な病理組織所見である非乾酪性肉芽腫が形成される。肉芽腫は、類上皮細胞と多核巨細胞に分化する単核球とマクロファージの集積で、周囲をリンパ球、形質細胞、線維芽細胞およびコラーゲンに囲まれている。疾患の定義はAST/FRS/WASOG合同国際委員会報告(1999年)を参照する。 |
診断の手掛 |
症状および徴候は、病変の部位とその程度によって異なり、自然寛解するものから緩徐に進行し慢性経過をたどるものまで様々である。呼吸困難、乾性咳、痰、胸部圧迫感などの肺病変を疑う症状を訴えたら本症を念頭に置き検査を進める。肺疾患が、成人患者の 90%以上に起こるが、視力障害、皮疹(結節性紅斑)、ブドウ膜炎にも注意する。 【診断基準:2015年厚労省】 検査所見:1.両側肺門リンパ節腫脹。2.血清ACE活性値。 3.ツベルクリン反応陰性。4.気管支肺洗浄液中のリンパ球増加またはCD4/CD8比高値。5.Ga67-シンチで著明な集積所見。 6.血清あるいは尿中のCa高値の6項目中2項目以上が認められることである。 |
主訴 |
息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 顔面神経麻痺|Facial paralysis/Facial palsy 胸部圧迫感|Cest oppression 筋萎縮|Muscle atrophy 筋力低下|Weakness 呼吸困難|Dyspnea 失神|Syncope 羞明|Photophobia/Photosensitibity 食欲不振|Anorexia 視力障害|Blurred vision/Visual impairment 徐脈|Bradycardia 咳|Cough 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 痰|Sputum 動悸|Palpitations 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 皮下結節|Subcutaneous nodule 皮疹|Eruption/Exanthema 霧視|Misty vision めまい|Dizziness やせ|Weight loss リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
肺癌|Lung Cancer 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma 過敏性肺炎 癌性リンパ管症 関節炎 珪肺症|Silicosis 高Ca血症|Hypercalcemia 静脈洞炎 粟粒結核 特発性間質性肺炎|Idiopathic Interstitial Pneumonia(IIP) 肺門リンパ節結核 慢性ベリリウム症 リンパ性白血病 結核 真菌症 クローン病|Crohn's Disease 原発性胆汁性肝硬変|Primary Biliary Cirrhosis(PBC) |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S, /S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Calcium|カルシウム [/F, /S, /U] Chloride|クロール [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Eosinophils|好酸球 [/B, /BAL Fluid] Erythrocytes|赤血球数 [/B] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/CSF] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Leucine Aminopeptidase|ロイシンアミノペプチダーゼ [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/BAL Fluid, /S] Leukocytes|白血球数 [/B, /CSF] Lymphocytes|リンパ球 [/B, /BAL Fluid] Monocytes|単球 [/B] Platelets|血小板 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/BAL Fluid, /CSF] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S] Uric Acid|尿酸 [/S] α2-Globulin|α2-グロブリン [/S] β-Globulin|β-グロブリン [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
1,25-Dihydroxy Vitamin D|1,25-ジヒドロキシビタミンD3/1α,25-ジヒドロキシビタミンD/活性型ビタミンD [/S] 1,25-Dihydroxy Vitamin D3|1,25-ジヒドロキシビタミンD3/1α,25-ジヒドロキシビタミンD/活性型ビタミンD [/S] 5'-Nucleotidase|5'-ヌクレオチダーゼ [/S] Adenosine Monophosphate|アデノシン一リン酸/アデニル酸 [/U] Alkaline Phosphatase Isoenzymes|アルカリホスファターゼアイソザイム/ALPアイソザイム [/S] Amino-terminal Propeptide of Type III Procollagen [/S] Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/CSF, /S] Antibody Titer [/S] Apolipoprotein A-I|アポリポ蛋白A-I [/S] Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/S] CA 125|CA125 [/S] Carbon Dioxide Partial Pressure|動脈血CO2分圧/炭酸ガス分圧/CO2分圧/PCO2/PaCO2 [/B, /B] CD18|CD18 [/Lymphocytes] CD4+:CD8+ Lymphocytes Ratio [/BAL Fluid] Cells [/BAL Fluid, /CSF] Complement Fixation [/S] Copper|銅 [/Liver] Eosinophil Cationic Protein|好酸球塩基性蛋白/好酸球顆粒蛋白/好酸球陽イオン蛋白/好酸球陽性荷電蛋白 [/BAL Fluid] HDL2-Cholesterol|HDL2,3-コレステロール/HDLコレステロール亜分画 [/S] HDL3-Cholesterol|HDL2,3-コレステロール/HDLコレステロール亜分画 [/S] Hydroxyproline|総ヒドロキシプロリン/ヒドロキシプロリン [/P, /U] Immunoglobulin D|免疫グロブリンD [/S] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] Immunoglobulins|免疫グロブリン [/S] Macrophages|マクロファージ [/BAL Fluid] Neopterin|ネオプテリン [/S, /U] Oligoclonal Banding|オリゴクローナルバンド [/CSF] Oxygen Partial Pressure|動脈血O2分圧/酸素分圧/O2分圧/PO2 [/B] Oxygen Saturation|酸素飽和度/O2飽和度 [/B] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/P] pH|尿pH [/B] Procollagen Type III Peptide|プロコラーゲンIIIペプチド [/S] Plasma Renin Activity|活性型レニン/血漿レニン活性/総レニン [/P] Sialyltransferase [/S] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/BAL Fluid, /Lymphocytes, /Macrophages, /S] Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] Surfactant Protein A|サーファクタントプロテインA/肺サーファクタントプロテインA [/BAL Fluid] Type III Procollagen Amino-terminal Peptide-related Antigen [/BAL Fluid] β2-Macroglobulin [/S] |
関連する検査の読み方 |
【ALP】 著しく増加する。アイソザイムではALP1(高分子ALP)が増加し、骨型ALPも軽度増に加する。 【Ca】 10%の患者で軽度から著明に増加する。多くの症例は一過性である。高Ca血症の患者では1,25-ジヒドロキシビタミンD3が増加する。24時間尿中Ca濃度は上昇する。 【CBC】 軽度の正球性正色素性貧血が起こる。白血球は低下するが好酸球が増加することがある。 【蛋白分画】 アルブミンの低下とγグロブリンの増加がみられ、「サルコイドステップパターン」を示す。 【アンジオテンシン転換酵素】 活動性患者の40~80%で上昇するので、疾患の活動性と治療効果判定に有用である。脊髄液中のACEは中枢神経サルコイドーシスの診断に有用である。 【関節液一般検査】 炎症性関節液の所見を示し、白血球は2,000~50,000/μLである。 【気管支肺胞洗浄液一般検査】 総細胞数が増加し、リンパ球が増加する。 【髄液一般検査】 細胞数が10~50/μL程度に増加する。 【ツベルクリン反応】 陰性になる。 【尿一般検査】 比重が早朝第一尿で1.010以下に低下する。 【呼吸機能検査】 肺気量、コンプライアンス、拡散能の低下を認める。 【リンパ球刺激試験】 PHAとConAが低値である。リンパ球にレクチンの一種であるPHAやCon-Aを加え培養すると、リンパ球は活性化され大型の芽球様細胞になる。PHAとCon-AはT細胞を活性化し、PHAはCD4陽性細胞を、Con-AはCD陽性細胞をより強く活性化する。この現象を利用してリンパ球の免疫機能を見るのがリンパ球幼若化検査である。異常値を認めたらリンパ球ポピュレーション比率、免疫グロブリン値・産生能、免疫電気泳動などを行う。 【病理組織所見】 肺、リンパ節、肝の生検組織では類上皮細胞からなる乾酪壊死を伴わない肉芽腫病変を認める。生検は触知可能なリンパ節、皮膚病変部、唾液腺で陽性を示す可能性が高い。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、骨X線検査、胸部CT検査、眼科検査、心電図検査、心超音波検査、骨MRI検査、腹部CT検査、全身ガリュウムスキャン(67Gaシンチグラム)、PET検査、呼吸機能検査 |