疾患解説
| フリガナ | ハイケッカク |
| 別名 | 結核 |
| 臓器区分 | 呼吸器疾患 |
| 英疾患名 | Pulmonary Tuberculosis |
| ICD10 | A16.2 |
| 疾患の概念 | 抗酸菌属の中の結核菌群が、ヒトの組織や器官に感染し発症する疾患で、症例の90%は肺結核である。ヒト-ヒトの感染形式をとるが、30歳以下の90%以上は自然感染を受けていないため免疫力が弱い。また感染症の死亡者数では最多である。感染した95%の症例では、結核菌は3週間に亘り増殖した後、症状が現れる前に免疫系により増殖が抑制される。感染病巣になると、病巣中心部に乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫が作られ、結核菌は、その中で何年にも亘って生存し、宿主の抵抗力と菌の病原性との間のバランスで、感染が無治療で頓挫するか、潜伏状態のまま維持されるか、活動性となるかが決まる。結核に感染しているが健康な個人では、生涯で活動性疾患を発症するリスクは約5~10%であるが、その比率は、年齢と危険因子によって変動する。活動性疾患を発症する患者の50~80%は、結核の再活性化は、最初の2年以内にみられる。また、疾患の経過は菌の毒性と宿主防御の状態で大きく変化する。結核は1類感染症である。 |
| 診断の手掛 | 3週間を超える咳、喀血、胸痛、呼吸困難、易疲労感、体重減少や原因不明の発熱を訴える患者を診たら本症を疑う。患者は、数週間かけて徐々に発現する「気分が優れない」、食欲不振、易疲労感、体重減少以外に全く症状を示さないこともあれば、より特異的な症状を示すこともある。特異的な症状としては、咳嗽が最もよく見られる。発病初期の咳は、起床時に少量の黄色または緑色の痰を伴う特徴があり、進行に伴い多くの喀痰を排出するようになる。肉芽腫性の血管損傷が原因の喀血は空洞性結核のみで起こる。寝汗は結核では一般的でも特異的でもない。 |
| 主訴 |
易疲労感|Fatigue 喀血|Hemoptysis 胸痛|Chest pain 血痰|Bloody sputum/Hemoptysis 原因不明熱|Fever of unknown origin/FUO 呼吸困難|Dyspnea 食欲不振|Anorexia 咳|Cough 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 痰|Sputum 寝汗|Night sweats 膿性痰|Purulent sputum 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 微熱|Low grade fever/Febricula やせ|Weight loss |
| 鑑別疾患 |
肺癌|Lung Cancer エイズ/HIV感染症|Acquired Immune Deficiency Syndrome(AIDS) 気管支拡張症|Bronchiectasis 塵肺症 胸膜炎 肺炎|Pneumonia 肺化膿症 肺真菌症 マイコプラズマ肺炎 肺真菌症 誤嚥性肺炎 非結核性抗酸菌症|Non-Tuberculous Mycobacteria(NTM) ウェゲナー肉芽腫症 サルコイドーシス|Sarcoidosis ランゲルハンス細胞組織球症|Langerhans Cell Histiocytosis(LCH) 中皮腫 ニューモシスチス肺炎|Pneumocystis Pneumonia 慢性閉塞性肺疾患|Chronic Obstructive Pulmonary Disease(COPD) 慢性気管支炎 肺胞微石症 ブルセラ症|Brucellosis |
| スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [ Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [ Amylase|アミラーゼ [ Anti-Streptolysin O|抗ストレプトリジンO価/抗ストレプトリジン抗体 [ Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [ Calcium|カルシウム [ CEA|癌胎児性抗原 [ Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [ C-reactive Protein|C反応性蛋白 [ Erythrocytes|赤血球数 [ Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [ Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [ Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [ Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [ Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [ Leukocytes|白血球数 [ Lymphocytes|リンパ球 [ Monocytes|単球 [ Neutrophils|好中球 [ Platelets|血小板 [ Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [ Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [ Sodium|ナトリウム [ Uric Acid|尿酸 [ VDRL|性病研究所梅毒検査法/VDRL法 [Positive/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [ |
| 異常値を示す検査 |
1,25-Dihydroxy Vitamin D|1,25-ジヒドロキシビタミンD3/1α,25-ジヒドロキシビタミンD/活性型ビタミンD [ 1,25-Dihydroxy Vitamin D3|1,25-ジヒドロキシビタミンD3/1α,25-ジヒドロキシビタミンD/活性型ビタミンD [ 25-Hydroxy Vitamin D|25-ヒドロキシビタミンD/25OHビタミンD [ Antibody Titer [ Antituberculous Glycolipid Antigen [ Arginine Vasopressin|アルギニンバゾプレッシン/抗利尿ホルモン/バゾプレシン [ Arylsulfatase [ Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [ CA 19-9|CA19-9 [ Calcium|カルシウム [ Cells [ Complement Fixation [ Copper|銅 [ Cortisol|コルチゾール [ Interferon-γAssay for Tuberculosis Infection|結核菌特異蛋白刺激性遊離インターフェロン-γ [Positive/B] Interleukin-6|インターロイキン-6 [ Leukotriene B4|ロイコトリエンB4 [ Lymphocyte T-Cells|T細胞 [ Lysozyme|リゾチーム/ムラミダーゼ/ムコペプタイド/グリコヒドロラーゼ [ Neopterin|ネオプテリン [ Oxygen Partial Pressure|動脈血O2分圧/酸素分圧/O2分圧/PO2 [ Oxygen Saturation|酸素飽和度/O2飽和度 [ Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [ pH|尿pH [ Precipitins [ Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [ Specific Gravity|比重(尿)/尿比重 [ Zinc|亜鉛 [ |
| 関連する検査の読み方 |
【喀痰抗酸菌塗抹染色・培養】 疑わしい場合は、鏡検で抗酸菌の有無を確認する。結核菌は、ラム陽性とされているが、グラム染色液の取込みにむらがあるので、光学顕微鏡検査用の検体はZiehl-Neelsen染色または Kinyoun染色、蛍光顕微鏡検査用の検体は蛍光染色で処理する。塗抹鏡検は喀痰1mL当たり約10,000個の菌を検出できる。塗抹標本中に抗酸菌が検出されたら、結核を推定する強力な根拠となるが、確定診断には抗酸菌培養または核酸増幅検査で陽性となることが必要である。 【結核菌特異蛋白刺激性遊離インターフェロン-γ】 IGRAは陽性になる。IGRAは血液検査で、in vitroで結核特異的抗原に曝露されたリンパ球によるインターフェロンγの遊離に基づいている。IGRAの結果は、ツベルクリン検査と常に一致するとは限らないが、感度は同じぐらい、特異性はより高い。また、この検査は、過去に結核に感染した患者は陰性となることが多い。 【胃液中結核菌】 高頻度に陽性である。ただし、胃液は培養にのみ使用する。理由は結核がなくとも非結核性のマイコバクテリウムが胃液に存在するからである。 【胸水一般検査】 滲出液でリンパ球優位である。胸膜結核が存在しても、培養で陽性となるのは25%程度である。 【結核菌群同定】 結核の診断は塗抹染色検査、分離培養検査、遺伝子検査が行われている。しかし、塗抹染色検査は短時間で結果が出るが感度が低い。分離培養検査は感度は高いが結果を得るまでに6~8週を要する。また、遺伝子検査は高感度で短時間で結果が出るが日常臨床の場では使いにくい。これに対し本法は喀痰を検体にして診察室で1時間以内に結果が得られるため早期診断に有用性が高いとされている。 【結核菌群抗原】 陽性である。結核菌群抗原はMycobacterimu bovis BCGの培養液から調整した結核菌群特異外分泌蛋白で、これによりヒト型結核菌と他の抗酸菌が鑑別できる。固形培地上に発育した抗酸菌か液体培地で培養陽性になった培養液を検体とする。培養検査で陽性となり、本検査で陰性となった場合はM.tuberculosis以外の抗酸菌が考えられるので、DNAプローブ法などによる同定検査が必要となる。 【結核菌群・非結核性抗酸菌核酸増幅同定】 結核の診断は塗抹染色検査、分離培養検査、遺伝子検査が行われている。しかし、塗抹染色検査は短時間で結果が出るが感度が低い。分離培養検査は感度は高いが結果を得るまでに6~8週を要する。また、遺伝子検査は高感度で短時間で結果が出るが日常臨床の場では使いにくい。これに対し本法は喀痰を検体にして診察室で1時間以内に結果が得られるため早期診断に有用性が高いとされている。 【結核菌特異蛋白刺激性遊離インターフェロン-γ】 陽性である。患者静脈血に結核菌特異抗原を加えると、結核菌抗原によりリンパ球が刺激され、インターフェロン-γが産生される。この産生量を測定し結核感染の有無を判断する。肺結核では感度80%以上、特異度95%以上とされているので、ツベルクリン反応に代わる検査法として有用性が高い。結核患者と濃厚な接触があれば、陽性となるので接触者検診にも使われる。また、結核菌特異抗原を用いるため、BCG接種の影響を受けない。 【抗酸菌抗体】 活動性肺結核の80%で陽性である。抗抗酸菌抗体は結核菌やその他の抗酸菌の細胞壁に存在する抗原物質に対する抗体で、抗酸菌に対し90%以上の特異度がある。抗酸菌抗体は結核菌やその他の抗酸菌の細胞壁に存在する抗原物質に対する抗体で、抗酸菌に対し90%以上の特異度がある。この抗体は結核菌が検出されない肺結核、結核性胸膜炎、カリエス、腸結核が疑われる患者の補助診断として有用である。陽性の場合は非結核性抗酸菌感染症との鑑別が必要である。また、抗体価は化学療法により低下するので治療効果判定にも用いられる。 【抗コードファクター抗体】 高頻度に陽性である。この抗体は結核菌が検出されない肺結核、結核性胸膜炎、カリエス、腸結核が疑われる患者の補助診断として有用である。陽性の場合は非結核性抗酸菌感染症との鑑別が必要である。また、抗体価は化学療法により低下するので治療効果判定にも用いられる。 【ツベルクリン反応】 ツベルクリン反応陰性ならば結核感染を除外できる。 【薬剤感受性試験】 全ての患者の初期の分離株を用いて施行する。3カ月間の治療後も喀痰培養陽性が続く場合と陰性期間の後に培養陽性となった場合は、検査を繰り返す。従来法では、薬剤感受性試験の結果が得られるまでに最長で8週間を要するが、新しい分子生物学的感受性試験は、数時間以内に喀痰検体でリファンピシンまたはリファンピシンおよびイソニアジドに対する薬剤耐性を検出することができる。 |
| 検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、胸部CT検査、気管支内視鏡検査 |

