疾患解説
フリガナ | ヒケトンセイコウシントウアツショウコウグン |
別名 |
高浸透圧性非ケトン性昏睡 非ケトン性高浸透圧状態 高血糖性高浸透圧状態 |
臓器区分 | 代謝性疾患 |
英疾患名 | Nonketotic Hyperosmolar syndrome(NKHS) |
ICD10 | E14.0 |
疾患の概念 | 非ケトン性高浸透圧症候群は、糖尿病の合併症で、高血糖、脱水、血漿浸透圧高値および意識障害が特徴である。2型糖尿病の高齢者に見られる疾患で、インスリンの絶対的な作用不足により、著しい高血糖>600mg/dLと血清浸透圧の上昇および脱水を呈するケトーシスおよびアシドーシスを伴わない病態で、浸透圧は310mOsm/L以上になる。誘因は、インスリン治療の中断、感染症、嘔吐、下痢、極端な糖質の摂取、生理的ストレスなどである。血糖≧800mg/dL、血漿浸透圧≧350mOsm/L、血液pH>7.3で診断される。2型糖尿病の高血糖の期間を経て発症するが、この期間中の水分摂取が不十分であるため、高血糖誘発性の浸透圧利尿による極度の脱水が生じ死亡率は最大40%に達する。 |
診断の手掛 | 高血糖の患者が錯乱、見当識障害、昏睡などを発症したら本症を疑う。糖尿病性ケトアシドーシスとは対照的に痙攣または一過性の片麻痺が生じることもある。高齢の2型糖尿病患者が数週にわたる多尿、体重減少、食欲不振を訴えたら注意を怠らない。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 片麻痺|Hemiplegia 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure 見当識障害|Disorientation 口渇|Thirst 昏睡|Coma 昏迷|Stupor 錯乱|Confusion ショック|Shock 多尿|Polyuria |
鑑別疾患 |
2型糖尿病 肝性昏睡 急性感染症 腎不全 ストレス 中毒性意識障害 糖尿病性低血糖 乳酸アシドーシス 脳血管障害 薬剤(グルココルチコイド、利尿薬) |
スクリーニング検査 |
Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S,/U] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Leukocytes|白血球数 [/B] Potassium|カリウム [/S] Sodium|ナトリウム [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] |
異常値を示す検査 |
Anion Gap|アニオンギャップ [/B] Ketones|ケトン体定性 [/U] Lactate|乳酸/ラクテート [/S] Osmolality|浸透圧 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【グルコース】 600~2,400mg/dLの高血糖になる。 【電解質】 Naは135~145mEq/Lと著しく増加し、Kは低下することが多い。 【浸透圧】 血清の値は330~440mOsm/kgになる。清の浸透圧は体液の恒常性を保つ作用があり、280~290mOsm/kgH2Oに調節されており、この調節は生理作用としての口渇と抗利尿ホルモン(アルギニンバゾプレッシン)を介して行われている。浸透圧測定は体液の恒常性維持機能が正常に働いているかどうかを見るスクリーニング検査で的確な判断をするためには、血液と尿の浸透圧を同時測定する。 【ケトン体分画】 尿中ケトンは高値になるが、ケトン血症は見られない。ケトン体分画は静脈血中のアセト酢酸(AcAc)、3-ヒドロキシ酪酸(3-HBA)、総ケトン体と動脈血中のアセト酢酸/3-ヒドロキシ酪酸比(ケトン体比)を測定するもので、糖代謝障害、飢餓状態、悪液質などの際のケトン血症の診断に用いる。AcAcや3-HBAが血中に増加した状態をケトン血症と呼び、濃度が腎閾値を超えるとケトン尿になる。また、ケトン体はインスリンと逆相関にあり、インスリン作用が低下し血糖が上昇すると血中ケトン体は上昇する。 【UN】【クレアチニン】 腎前性高窒素血症が必ず存在し、UNは100mg/dLを超える。 【動脈血ガス分析】 pHは6.98~7.25(基準範囲7.38~7.42)、HCO₃-は低下する。 【Anion Gap】 15mEq/L以上に増加する。代謝性アシドーシスはすべて乳酸アシドーシスを考慮する。AGは乳酸やケトン体などの量を間接的に表す指標でAG=(Na)-(Cl-)+(HCO3-)の式で計算され、陰イオン(乳酸、ピルビン酸、リン酸、硫酸)増減の指標となる。臨床的には酸塩基平衡以上を来す疾患に用いる。 【尿一般検査】 尿比重は上昇し、尿糖増加とともにケトン体が強陽性になる。 |
検体検査以外の検査計画 |