疾患解説
フリガナ | インスリノーマ |
別名 | |
臓器区分 | 内分泌疾患 |
英疾患名 | Insulinoma |
ICD10 | D13.7 |
疾患の概念 | インスリンを分泌する膵β細胞が腫瘍化し、自律的にインスリンが過剰分泌され、低血糖症状を呈する疾患で、80%は良性・単発性であるが、10%が多発、10%が悪性とされている。主要症状である低血糖を来す平均年齢は、40~50歳である。例外として、多発性内分泌腫瘍症1型は、20歳代で発症する。MEN1型に関連するインスリノーマは多発性である可能性が高い。 |
診断の手掛 | Whippleの3徴(1.症状は絶食時に起こる 2.症状は低血糖時(40mg/dL以下)に起こる 3.症状は炭水化物の摂取で軽減する)が診断の手掛りとなる。主症状は、低血糖に反応して分泌されたカテコールアミンによる交感神経亢進症状と低血糖による中枢神経症状に大別すると理解できる。症状は潜行性で、様々な精神および神経疾患に類似しているので注意が必要である。早朝時、欠食後、運動後に発症することが多く低血糖時にインスリン値が上昇していれば診断は確定する。多くの患者は、診察時には症状が見られないため、診断には48時間または72時間絶食試験のための入院を必要とする。絶食試験では、絶食開始から48時間以内にインスリノーマ患者の98%で、症状が出現するが、70~80%の患者は24時間以内に出現する。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 顔面蒼白|Pallor of face 傾眠|Drowsiness/Somonolency 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure 錯乱|Confusion 振戦|Tremor 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 動悸|Palpitations 発汗異常|Dyshidrosis/Paridrosis 頻脈|Tachycardia 複視|Diplopia 霧視|Misty vision |
鑑別疾患 |
アデノーマ Whipple病 膵島細胞腫瘍 多発性内分泌腫瘍症 薬剤(インスリン、スルフォニル尿素薬) 低血糖症|Hypoglycemia, Unspecified 劇症肝炎|Fulminant Hepatitis インスリン自己免疫症候群 アジソン病/急性副腎不全|Addison's Disease/Adrenal Crisis |
スクリーニング検査 |
C-Peptide|C-ペプチド [/P] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] Hemoglobin A1c|グリコヘモグロビン/糖化ヘモグロビン/ヘモグロビンA1c/HbA1c [/S] |
異常値を示す検査 |
Free Fatty Acid|遊離脂肪酸/非エステル型脂肪酸/FFA [/S] Hemoglobin A1c|グリコヘモグロビン/糖化ヘモグロビン/ヘモグロビンA1c/HbA1c [/B] Insulin|インスリン [/S] NSE|神経特異エノラーゼ [/S] Proinsulin|プロインスリン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【血糖】 90%の患者が24~36時間の空腹で低血糖(50mg/dL以下)を起す。血糖値を症状出現時に測定し、40mg/dL以下の低血糖を認めた場合は、同時に採取した検体でインスリン濃度を測定すべきである。 【C-ペプチド】 1.5ng/mL(基準範囲0.5~2.0ng/mL)以上である。膵β細胞で合成されたプロインスリン1分子はインスリン1分子とC-ペプチド1分子に分解され血中に分泌されるので、CPRの測定によりインスリンの分泌能を推測できる。 【C-ペプチド抑制試験】 長時間の絶食後にWhipple三徴が認められず1晩絶食後の血糖値が50mg/dLを超えたは、Cペプチド抑制試験を行う。インスリノーマ患者はインスリン注入(0.1U/kg/時)時にCペプチド濃度を基準値(1.2ng/mL以下)に抑制できない。 【HbA1c】 著しく低下する。 【インスリン】 低血糖の割りには不釣合いに増加し、10μIU/mL以上になる。40mg/dL以下の血糖値で、6μU/mL以上の血漿インスリン濃度があれば本症と診断できる。 【プロインスリン】 健常人では総インスリンの20%以下であるが、本症では増加(0.2ng/mL超)する。一晩の絶食後に総インスリンの30%以上あれば本症を疑う。プレプロインスリンから作られるプロインスリンはインスリンとC-ペプチド生成の基となる物質で、インスリン分泌の増加を来す負荷が生じると血中に増加する。臨床的にはインスリン分泌の異常増加を来す疾患を疑う場合、すなわち2型糖尿病、Insulinoma、肥満などで測定する。特に、Insulinomaではプロインスリン:インスリン比(正常:0.1~0.2)が増加する。また、家族性プロインスリン血症では、血中IRIとして測定される905以上がプロインスリンであり、確定診断には必須の検査である。 【インスリン:C-ペプチド比】 モル単位で1.0以下である。 【インスリン:グルコース比】 0.3以上である。 【神経特異エノラーゼ】 膵島細胞でも発現するため、膵の腫瘍で増加することがある。 【FFA】 低値になる。FFAは総脂肪酸の4~5%程度であるが末梢組織でのエネルギー代謝に重要な役割を持つ。血中濃度は消化管からの吸収、肝での合成、脂肪組織からの放出によって決まる。臨床的には糖質・脂質代謝異常や内分泌機能の評価に用いられる。 【Wippleの3徴】 1)症状は絶食時に起こる、2)低血糖時に起こる、3)症状は炭水化物摂取で軽減する。 【確定診断】 72時間絶食の間に4~8時間ごとにグルコース、C-ペプチド、インスリンを測定する。 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部超音波検査、腹部CT検査、腹部MRI検査、選択的動脈造影検査、超音波内視鏡検査、造影CT検査 |