疾患解説
フリガナ | エシセイキンマクエン |
別名 |
連鎖球菌性壊疽 壊死性皮下組織感染症 壊死性蜂窩炎織 |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Necrotizing Fasciitis |
ICD10 | M72.6 |
疾患の概念 | 主として好気性菌と嫌気性菌の混合感染により、急速進行型の筋膜を含む皮下組織に壊死を来す感染症で、DIC、ARDS、多臓器不全などにより20%を超える死亡率がある。近年はVibrio vulnificusによる重篤な症例が増加している。好発部位は四肢と会陰部で、広範囲の軟部組織感染と微小循環の血栓による壊死が特徴である。好気性菌(A群レンサ球菌)と嫌気性菌(Bacteroides属)の混合感染が多い。これらの菌は潰瘍、感染巣または外傷から皮下組織へ拡大するが、レンサ球菌は血流により遠隔部の感染巣から到達することもある。本症は細い皮下血管が広範に閉塞するため、組織虚血が生じ、皮膚に梗塞および壊死を来し、壊死組織で偏性嫌気性菌の増殖が促進されると共に、通性嫌気性菌による嫌気性代謝が促進され、結果として壊疽を来すことになる。 |
診断の手掛 | 病歴と皮膚に急速に変色する発赤、水泡、腫脹、強い疼痛等の所見が認められたら本症を疑う。臨床所見と釣り合わない強い疼痛が早期診断の手がかりとなることがある。患部組織は発赤し、熱感を伴い腫脹し急速に変色し、水疱、軟部組織のガスに由来する捻髪音および壊疽を生じる。隣接する筋膜を含む皮下組織は壊死に陥る。特に、V.vulnificusは、海水温が18℃以上になると貝類などの海産物で繁殖を始めるので注意する。感染すると死亡率が極めて高い緊急感染症疾患なので、早めの診断と外科的治療(デブリドマン)が絶対適応である。特に慢性の肝疾患を持つ患者には注意する。全身所見と初期の抗菌薬に反応しないことも診断の鍵になる。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 壊死|Necrosis 錯乱|Confusion 紫斑|Purpura 腫脹|Swelling/Tumor 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis ショック|Shock 水疱|Bulla/Blister 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 疼痛|Pain/Ache 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 頻脈|Tachycardia 発赤|Flare/Rubor |
鑑別疾患 |
悪性腫瘍 ガス壊疽 肝硬変|Cirrhosis of Liver 劇症型A群溶血連鎖球菌感染症 糖尿病|Diabetes Mellitus Vibrio vulnificus感染症 Aeromonas感染症 |
スクリーニング検査 |
Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] |
異常値を示す検査 | |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 白血球が著増する。 【A群β溶血連鎖球菌迅速試験】 A群連鎖球菌による劇症型A連鎖球菌感染症で半数の症例が本症を発症する。A群溶血性連鎖球菌感染を疑わせる咽頭炎や扁桃炎の患者の咽頭拭い液を検体として菌体抗原を迅速に検出する検査である。臨床的には迅速に原因菌を確定することで、早期の感染コントロールが可能となる。ただし、検査材料中の菌数が少ない場合は、陰性となる可能性もあるので注意が必要である。また、最近増加が報告されている劇症型溶連菌感染症では、迅速検査の有用性が評価されているので、中高齢者の咽頭炎を見たら積極的に検査を進める。 【CK】 高値である。値は壊死の広がりに比例する。 【肝機能検査】 肝疾患の有無を確認する。 【細菌塗抹染色】 外科的に切除した検体と血液の培養を行う。細菌培養は結果まで時間がかかるので、迅速診断として必ずグラム染色を行う。 【Vibrio vulnificus】 肝硬変やヘモクロマトーシスなどの鉄過剰状態を伴った患者が、この菌による敗血症を起こすと、予後が極めて悪い壊死性筋膜炎を発症する。 【劇症型A群連鎖球菌」 皮膚軟部組織や血液からA群連鎖球菌がグラム染色で観察され、培養で陽性となる。ほかの病原体による壊死性筋膜炎より進行が速く、血圧低下などのショック症状を認め、多臓器不全、DIC、急性呼吸窮迫症候群などを発症する。A群連鎖球菌はガスを産生しないため、病変組織内のガス貯留は認められない。 |
検体検査以外の検査計画 | 病変部局所単純X線検査、MRI検査、CT検査 |