疾患解説
フリガナ | キョウケンビョウ |
別名 | |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Rabies |
ICD10 | A82.9 |
疾患の概念 | ラブドウイルスに感染しているイヌ、キツネ、アライグマ、リス、コウモリなどの唾液を介して伝染するウイルス性脳炎で、我が国では2006年に2例の発症が確認されている。海外では殆どの国がウイルス感染動物の常在国である。狂犬病に感染した動物の咬傷により、唾液を介して伝播する。稀に、皮膚の擦過傷、眼、鼻腔または口腔の粘膜から感染することがある。感染後1~3ヶ月の潜伏期間をおいて発症する。感染が疑われる時は、直ちにワクチンを接種する必要があり、発症すると死亡率はほぼ100%である。ウイルスは侵入部位から末梢神経を通って脊髄に至り、脳に到達し、その後、末梢神経を通じて中枢神経系から他の部位に波及する。4類感染症に指定されている。 |
診断の手掛 | 海外で温血動物に咬まれたり、コウモリに接触した既往があり、しかも頭痛、発熱などを訴えたら本症を疑う。特にコウモリの咬傷は浅く見過ごされ易いので注意する。臨牀症状は1.非特異的な前駆症状期 2.他のウイルス性脳炎と同様の急性脳炎症状期 3.脳幹の機能不全期 4.死亡または非常に稀に回復する、に分けられる。臨牀症状から他のウイルス性脳炎と狂犬病を見分けることは殆ど不可能である。最も有益な情報は、動物に咬まれたり、唾液に暴露した履歴であることに留意する。初期症状は非特異的で、発熱、頭痛および全身倦怠感で、数日以内に脳炎(80%でみられる狂躁型狂犬病)または麻痺(20%でみられる麻痺型狂犬病)を発症する。脳炎では不穏、錯乱、興奮、奇異な行動、幻覚および不眠症を訴える。唾液が過剰に分泌され、水を飲もうとすると喉頭筋と咽頭筋に痛みを伴う痙攣を生じ、これを恐水症と呼ぶ。動物に接触後に、原因不明の脳炎または上行性麻痺がみられる患者は、頸部皮膚の生検または唾液、髄液、組織検体のPCR検査を行うことが望ましい。 |
主訴 |
嚥下障害|Dysphagia 幻覚|Hallucination 行動異常|Behavior abnomality 興奮|Excitation 昏睡|Coma 昏迷|Stupor 錯乱|Confusion 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 不眠|Insomnia 抑うつ状態|Depressive state |
鑑別疾患 |
脳炎|Encephalitis 神経系感染症 破傷風|Tetanus |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/U] Erythrocytes|赤血球数 [/Saliva] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF, /U] |
異常値を示す検査 |
Cells [/CSF] Ketones|ケトン体定性 [/S, /U] Specific Gravity|比重(尿)/尿比重 [/U] |
関連する検査の読み方 |
【Negri小体】 咬んだ動物の脳組織中にNegri小体が検出されれば感染動物である。Negri小体は狂犬病ウイルスに感染した神経細胞に出現する楕円形の好酸性細胞内封入体でヌクレオカプシドの集積と考えられ、狂犬病の確定診断に用いられる。 【CBC】 12,000~17,000/μL程度に上昇するが、30,000/μLを超えることはない。 【ウイルス抗原】 項部の皮膚生検材料からの抗原の検出は最も高感度な検査で第一選択である。 【皮膚生検】 生検は毛包に神経線維の多い項部の皮膚を材料とする。 |
検体検査以外の検査計画 | CT検査、MRI検査、脳波検査 |