疾患解説
フリガナ | クロイッフェルト・ヤコブビョウ |
別名 | プリオン病 |
臓器区分 | 神経・筋疾患 |
英疾患名 | Creutfeldt-Jakob Disease(CJD) |
ICD10 | A81.0 |
疾患の概念 | 孤発性、家族性または感染性(医原性)のプリオン病の一種で、脳に異常なプリオン蛋白が蓄積することで発症する。ウシ海綿状脳症(狂牛病)はその変異型である。孤発性(80~85%)、家族性(15%)、医原性(<1%)、変異型(ウシ海綿状脳症)の4種類に分けられる。孤発性は40歳以上(中央値、約60歳)で発症し、家族性は通常は発症年齢がより低く、罹病期間がより長い。医原性は角膜または硬膜の移植、定位脳手術での電極、ヒト下垂体から抽出された成長ホルモンの使用により感染する。変異型は稀で、大半の症例が英国で発生している。 |
診断の手掛 | 急激な進行性認知症を呈する患者が、ミオクローヌスまたは運動失調を訴えたら本症を疑う。患者の70%は記憶障害、記憶消失と錯乱を、また、15~20%は協調不能及び運動失調を呈し、これ等は初期症状としてしばしば認められる。患者の1/3は易疲労感、睡眠障害、体重減少、頭痛、全身倦怠感、疼痛などの非特異症状が前駆症状として認められる。また、幻覚、痙攣発作、神経障害、様々な運動障害などの神経学的異常や視野欠損、複視、視野のかすみまたは無視、視覚失認などの眼症状もよく見られる。急速に進行する認知症がみられる高齢患者で、特にミオクローヌスまたは運動失調を伴う場合はCJDを考える。ただし、中枢神経系血管炎、橋本脳症、血管内リンパ腫、大脳辺縁系、脳幹および小脳を侵す脳炎、レビー小体型認知症、リチウムまたはビスマス中毒もCJDに類似しているので、鑑別が必要である。 |
主訴 |
意識消失|Loss of consciousness/Unconsciousness 運動失調|Ataxia 記憶障害|Memory impairment 記憶消失|Amnesia 協調不能|Incoordination 錯乱|Confusion 視覚障害|Visual disorder 認知障害|Cognitive impaorment/Dementia ミオクローヌス|Myoclonus 無動性無言|Akinetic mutism 抑うつ状態|Depressive state |
鑑別疾患 |
アルツハイマー病|Alzheimer's Disease 進行性多巣性白質脳症 多発脳梗塞性認知症 Pick病 Huntington病 脳炎|Encephalitis 橋本脳症 脳虚血 てんかん|Epilepsy 甲状腺機能亢進症|Hyperthyroidism ウィルソン病/肝レンズ核変性症|Wilson's disease/Hepatolenticular Degeneration Wernicke脳症 Lewy小体型認知症 中枢神経血管炎 薬剤(ビスマス) |
スクリーニング検査 | |
異常値を示す検査 |
14-3-3 Protein [/S] Amyloid β-Protein|アミロイドβ蛋白 [/CSF] Tau Protein|タウ蛋白 [/CSF] α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/CSF] |
関連する検査の読み方 |
【アミロイドβ蛋白】 Aβ蛋白は健常な脳では産生から排出まで恒常的なバランスを保っているが、Alzheimer病の脳ではこのバランスが崩れ、Aβがアミロイドに変わり細胞間に沈着し老人斑を形成すると考えられている。AβはC末端の異なるAβ40とAβ42があるが、Aβ42は40に比べアミロイド線維形成能と神経毒性が強い。臨床的には脳脊髄液中のAβ42を測定するが、目的はAlzheimer病と他の認知症との鑑別と早期診断である。またタウ蛋白を測定しAD index=(tau×Aβ40/Aβ42)を算定すると、より鑑別診断の特異度が上がるとされている。 【PrP遺伝子】 プリオンの主成分であるプリオン蛋白(PrP)をコードする遺伝子で、遺伝子発現は主にニューロンで見られる。遺伝子変異はプリオン病に見られる。死亡後の確定診断に用いる。 【GPIアンカー型蛋白質】 プリオン病にこの蛋白の関与が考えられている。 【脳生検】 本症の唯一の特異的な検査である。 【CSF】 髄液中の14-3-3蛋白及び神経特異的エノラーゼ測定が診断に役立つことがある。 |
検体検査以外の検査計画 | 脳波検査、脳MRI検査 |