疾患解説
| フリガナ | コウジョウセンキノウコウシンショウ |
| 別名 | 甲状腺中毒症 |
| 臓器区分 | 内分泌疾患 |
| 英疾患名 | Hyperthyroidism |
| ICD10 | E05.9 |
| 疾患の概念 | 甲状腺ホルモンの産生・分泌が亢進し、甲状腺中毒症状を来す病態で、臨床的に最も頻度が高いものは、Basedow病で88%を占め、30~50歳代の女性に好発する臓器特異性の自己免疫疾患である。高齢者では、中毒性多結節性甲状腺腫も甲状腺機能亢進症の原因の一つである。またヨードを含んだ薬物によっても発症する。最も頻度の高い原因は、グレーブス病、甲状腺炎、多結節性甲状腺腫、単一の自律的かつ機能が亢進した「ホット」結節である。甲状腺機能亢進症は、血清T3の上昇が、T4の上昇を上回るが、これはT3の分泌の亢進、末梢組織でのT4からT3への変換によるものである。一部の患者では、T3のみが上昇するT3中毒症を発症する。 |
| 診断の手掛 |
多彩な症状を呈するが、多くはアドレナリン過剰症状に類似している。神経質、動悸、活動亢進、多汗、暑さに対する過敏性、全身倦怠感、食欲亢進、体重減少、不眠、脱力感、腸管運動亢進などを訴える患者は、甲状腺機能検査を行う。高齢患者は、抑うつまたは認知症に近い症状を呈することがあるので注意する。 【診断基準:2013年日本甲状腺学会】 a)臨床所見:1.頻脈、体重減少、手指振戦、発汗などの甲状腺中毒所見 2.びまん性甲状腺腫大 3.眼球突出又は特有の眼症状。 b)検査所見:1.遊離T4、遊離T3のいずれか一方または両方高値 2.TSH低値(0.1μU/mL以下) 3.抗TSH受容体抗体陽性、または刺激抗体陽性 4.放射性ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性。 1)バセドウ病:a)のうち1つ以上に加えて、b)の4つを有するもの。 2)確からしいバセドウ病:a)のうち1つ以上に加えて、b)の1、2、3を有するもの。 3)バセドウ病疑い:a)の1つ以上に加えて、b)の1と2を有し、遊離T4、遊離T3が3ヶ月以上続くもの。 【付記】 1.コレステロール低値、ALP高値を示すことが多い。 2.遊離T4が正常で遊離T3のみが高値の場合が稀にある。 3.眼症状がありTRAbまたはTSAb陽性であるが、遊離T4およびTSHが正常の例はeuthyroid Graves'diseaseまたはeuthyroid ophthalmopathyと言われる。 4.高齢者は臨床症状が乏しく、甲状腺腫が明らかでないことが多いので注意する。 5.小児では学力低下、身長促進、落ち着きのなさ等を認める 6.遊離T3/遊離T4比は無痛性甲状腺炎の除外に参考になる。 7.甲状腺血流測定、尿中ヨウ素の測定が無痛性甲状腺炎との鑑別に有用である。 |
| 主訴 |
息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 易疲労感|Fatigue いらいら|Irritability 眼球突出|Exophthalmos/Exophthalmus 筋力低下|Weakness 月経不順|Paramenia 下痢|Diarrhea 甲状腺腫|Thyroid enlargement/Goiter 四肢麻痺|Quadriplegia/Tetraplegia 手指振戦|Finger shivering 食欲亢進|Hyperorexia 振戦|Tremor 情緒不安定|Emotional lability 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 多汗|Hidrosis/Hyperhidrosis 脱力感|Weekness 動悸|Palpitations 軟便|Soft stool 発汗異常|Dyshidrosis/Paridrosis 頻脈|Tachycardia 不整脈|Arrhythmia 不眠|Insomnia 無月経|Amenorrhea やせ|Weight loss |
| 鑑別疾患 |
TSH産生下垂体腺腫 甲状腺ホルモン不応症 妊娠 Plummer病 胞状奇胎|Hydatidiform Mole 無痛性甲状腺炎 iodine-Basedow病 Graves病 絨毛癌 妊娠高血圧症候群|Pregnancy-induced Hypertension 甲状腺炎 薬物誘発性甲状腺機能亢進症 薬剤(ヨード) 転移性甲状腺癌 卵巣甲状腺腫 甲状腺クリーゼ|Thyroid Crisis |
| スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [ Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [ Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [ Amylase|アミラーゼ [ Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [ Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [ C-Peptide|C-ペプチド [ Calcium|カルシウム [ Chloride|クロール [ Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [ Cholinesterase|コリンエステラーゼ/ブチルコリンエステラーゼ/偽コリンエステラーゼ [ Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [ Creatinine|クレアチニン [ Eosinophils|好酸球 [ Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [ Ferritin|フェリチン [ Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [ Follicle-stimulating Hormone|黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモン/性腺刺激ホルモン [ Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [ HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [ Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [ Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [ LDL-Cholesterol|LDL-コレステロール/低比重リポ蛋白コレステロール [ Leukocytes|白血球数 [ Lymphocytes|リンパ球 [ Magnesium|マグネシウム [ MCH|平均赤血球ヘモグロビン量 [ MCHC|平均赤血球ヘモグロビン濃度 [ MCV|平均赤血球容積 [ Monocytes|単球 [ Neutrophils|好中球 [ Phosphate|無機リン [ Potassium|カリウム [ Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [ Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [ Sodium|ナトリウム [ Thyroxine (T4)|総サイロキシン/総T4/サイロキシン/チロキシン [ Thyroxine,Free(fT4)|遊離サイロキシン/遊離T4/フリーT4/遊離チロキシン [ Tri-Iodothyronine (T3)|総トリヨードサイロニン/総T3/トリヨードサイロニン/トリヨードチロニン [ Tri-Iodothyronine, Free (fT3)|遊離トリヨードサイロニン/フリーT3/遊離T3/遊離トリヨードチロニン [ Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [ Thyroid Stimulating Hormone|甲状腺刺激ホルモン [ Urea Nitrogen|尿素窒素 [ Uric Acid|尿酸 [ |
| 異常値を示す検査 |
17-Hydroxycorticosteroids|17-ヒドロキシコルチコステロイド [ 17-Ketogenic Steroids|17-ケトジェニックステロイド [ 17-Ketosteroids|17-ケトステロイド [ 2,3-Diphosphoglycerate|2,3-ジホスホグリセレート/2,3-ジホスホグリセリン/2,3-ビスホスホグリセリン酸 [ 3,3'-Di-iodothyronine [ Acid Phosphatase, Tartrate Resistant|骨型酒石酸抵抗性フォスファターゼ [ Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [ Alkaline Phosphatase, Bone Isoenzyme|骨型アルカリホスファターゼ/骨性ALP [ Amino Acids|アミノ酸分析/アミノ酸41分画 [ Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [ Anti-TSH Receptor Antibodies|TSHレセプター抗体/抗TSH受容体抗体 [ Antibodies against Megalin (qp330) [ Antithyroglobulin Antibodies|抗サイログロブリン抗体/サイロイドテスト [ Antithyroid Peroxidase Antibodies|抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体/抗マイクロゾーム抗体/マイクロゾームテスト/抗TPO抗体 [ Antithyroid Receptor Antibodies [ Apolipoprotein A-I|アポリポ蛋白A-I [ Apolipoprotein B|アポリポ蛋白B [ Apolipoproteins|アポリポ蛋白 [ Atrial Natriuretic Peptide|心房性Na利尿ペプチド [ Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [ BSP Retention|BSP test/ブロムサルファレイン試験 [ C-Peptide|C-ペプチド [ C-terminal Propeptide of Type I Procollagen|Ⅰ型プロコラーゲンC末端プロペプチド [ C-terminal Telopeptide of Type I Collagen|I型コラーゲンC末端テロペプチド [ Carbon Dioxide Partial Pressure|動脈血CO2分圧/炭酸ガス分圧/CO2分圧/PCO2/PaCO2 [ Carbonic Anhydrase I|炭酸脱水素酵素 [ Catecholamines|カテコールアミン総 [ Cholesterol Esters|エステル型コレステロール/コレステロールエステル [ Creatine|クレアチン [ Creatine Kinase MB-Isoenzyme|CK-MB [ Erythrocyte Survival|赤血球寿命 [ Estradiol|エストラジオール/E2 [ Factor VIII|第VIII因子活性/抗血友病因子 [ Free Fatty Acids|遊離脂肪酸/非エステル型脂肪酸/FFA [ Fibronectin|フィブロネクチン [ Gastrin|ガストリン [ GH response to GHRH [ Glucose Tolerance|ブドウ糖負荷試験/グルコース負荷試験 [ Glutathione S-Transferase [ Glycerol|グリセロール/グリセリン/遊離グリセロール [ Guanosine Monophosphate [ HLA Antigens|HLA抗原 [Present/B] HLA-A1 [ HLA-B8 [ HLA-Cw7 [ HLA-D5 [ Homocysteine|ホモシステイン/ホモシスチン/総ホモシステイン [ Hydroxyproline|総ヒドロキシプロリン/ヒドロキシプロリン [ Immunoglobulins|免疫グロブリン [ Insulin|インスリン [ Insulin-like Growth Factor-I|インスリン様成長因子-1/ソマトメジンC [ Interleukin-2|インターロイキン-2 [ Interleukin-6|インターロイキン-6 [ Ionized Calcium|イオン化カルシウム/Caイオン [ Ketones|ケトン体定性 [ Laminin|ラミニン [ Lipids|総脂質 [ Lipoprotein Lp (a)|リポ蛋白(a)/リポプロテイン(a) [ Long Acting Thyroid Stimulating Hormone|持続性甲状腺刺激物質 [ Low Density Lipoprotein Receptor Activity [ Luteinizing Hormone|黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモン/性腺刺激ホルモン [ Neopterin|ネオプテリン [ Neutrophil Elastase|顆粒球エラスターゼ/好中球エラスターゼ [ Osteocalcin|オステオカルシン [ Oxygen Partial Pressure|動脈血O2分圧/酸素分圧/O2分圧/PO2 [ Oxygen Saturation|酸素飽和度/O2飽和度 [ Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [ pH|尿pH [ Phospholipids|リン脂質 [ Procollagen Type III Peptide|プロコラーゲンIIIペプチド [ Pyridinoline Cross-linked Telopeptide of Type I Collagen [ Pyridinoline, Free|ピリジノリン [ Pyridinoline|ピリジノリン [ Reticulated Platelets|網血小板 [ Ristocetin Agglutination [ Serine|セリン [ Sex-Hormone Binding Globulin|性ホルモン結合グロブリン [ Soluble CD23 [ Soluble CD25+ [ Soluble CD8+ [ Soluble E-Selectin|可溶性E-セレクチン/可溶性CD62E/可溶性ELAM-1 [ Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [ Soluble L-Selectin|可溶性L-セレクチン/可溶性CD62L/可溶性LECAM-1/可溶性白血球内皮細胞接着分子-1 [ Soluble P-Selectin|可溶性P-セレクチン/可溶性CD62P/可溶性GMP-140 [ Soluble Vascular Cell Adhesion Molecule-1|可溶性VCAM-1/可溶性CD106/可溶性血管細胞接着分子-1 [ T3-Uptake|トリヨードサイロニン摂取率/トリオソルブテスト/T3摂取率 [ Testosterone|テストステロン/総テストステロン/アンドロゲン [ Thyroid Stimulating Antibody|TSH刺激性レセプター抗体/甲状腺刺激抗体/刺激型TSHレセプター抗体/抗TSH刺激性レセプター抗体 [ Thyroxine (T4) Index, Free [ Tri-Iodothyronine (T3) Index, Free [ Tumor Necrosis Factor|腫瘍壊死因子-α [ Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [ Type IV Collagen 7S Domain [ Type IV Collagen Peptide|Ⅳ型コラーゲン [ Urobilin [ Vitamin B12|ビタミンB12/コバラミン/シアノコバラミン [ Vitamin B1|ビタミンB1/チアミン/サイアミン [ Vitamin B2|ビタミンB2/リボフラビン/ラクトフラビン [ Vitamin C|ビタミンC/アスコルビン酸 [ Volume [ von Willebrand Factor Antigen|第VIII因子様抗原/第VIII因子関連抗原/フォンウィルブランド因子抗原量 [ Zinc|亜鉛 [ |
| 関連する検査の読み方 |
【FT3】【T3】 著しく増加する。FT3は総トリヨードサイロニンのわずか0.3%であるが、甲状腺ホルモン作用を発揮する活性型ホルモンで標的細胞のT3受容体に結合して生物学的作用を発現する。T3の80%はT4の脱ヨード反応で生成されるので、T3測定は末梢組織でのT4代謝の指標にもなる。臨床的には甲状腺機能異常を疑う場合、甲状腺機能亢進症の再発を疑うときや甲状腺疾患の治療効果のモニタリングとして測定する。甲状腺機能異常を疑う場合はTSH、FT4とともに測定するが、FT3が基準範囲内でもTSHが増加していれば機能低下状態と考えてよい。T3はT4の4~5倍の生物学的活性を持ち、標的細胞のT3受容体に結合して生理作用を発揮する。甲状腺での産生量は20%程度で、残り80%は肝や腎などの末梢組織でT4から脱ヨードして生成される。このため、甲状腺機能評価の指標のみならず、T4の末梢における代謝状態を反映する指標にもなる。臨床的には甲状腺機能異常を疑うとき、甲状腺機能亢進症の診断、治療効果判定に用いる。 【FT4】【T4】 増加する。臨床症状がありFT4が4ng/dL以上、T4が16μg/dL以上なら診断が確定する。FT4は総サイロキシン量のわずか0.03%であるが標的細胞に入りトリヨードサイロニンに転換後、甲状腺ホルモンとして生理作用を発揮することから、血中FT4濃度は甲状腺機能の最も信頼できる指標といえる。臨床的には甲状腺の機能を直接的に示す指標であることから、甲状腺機能異状が疑われる全ての疾患で測定される。異常値を見た場合は遊離T3、TSH、TGBを測定する。また、自己免疫異常の疑いがあれば、TRAb、TgAb、TPOAbなどの検査を行う。T4は甲状腺で合成され、コロイド状態で貯蔵され血中に分泌される。その、99.97%は甲状腺ホルモン結合蛋白に結合し0.03%が遊離T4として存在している。臨床的には甲状腺機能異常が疑われるとき、甲状腺疾患の治療効果判定に用いられる。 【T3摂取率】 患者の85%で増加する、このためT3はT4より著しく増加する。RT3Uは甲状腺ホルモン結合蛋白(TBG)のT4不飽和結合能を知るもので、甲状腺ホルモン濃度と結合蛋白量および結合能の変化を同時に知ることが出来る。両者の間には「遊離T4index=総T4×T3摂取率」の関係が成立している。現在、TBGやT4は直接測定されているのでこの検査の意義が薄れつつある。臨床的には甲状腺機能異常を疑うとき、またTBGの量的・質的異常を疑うときに測定する。 【TSH】 0.02mIU/L以下に低下する。TSHが低値にもかかわらず、FT4が基準範囲内の場合はT3のみの増加による甲状腺機能亢進症の可能性がある。TSHは下垂体前葉の甲状腺刺激ホルモン産生細胞から分泌される糖蛋白で、甲状腺ホルモン(T3、T4)により産生が抑制される。このホルモンの甲状腺刺激作用と甲状腺ホルモンによる視床下部と下垂体へのnegative feedbackにより甲状腺機能の恒常性が維持されている。臨床的には甲状腺機能異常が疑われる全ての症例について、甲状腺ホルモンと同時に測定する。異常値を認めたらFT4、FT3、甲状腺自己抗体、サイログロブリンを測定する。 【リバースT3】 著しく増加する。T3はT4のベンゼン環から作られるが、外側環からはホルモン活性を持つT3が、内側環からホルモン活性のないrT3が作られる。臨床的にはT3と並行して増減するので、甲状腺機能異常やTGB異常症などで測定される。 【TSHレセプター抗体】 未治療患者の80~100%に認められる。TR Abは甲状腺細胞膜上の存在する甲状腺刺激ホルモンレセプターに対する自己抗体で、この抗体の存在が甲状腺機能亢進症や機能低下症発症の原因と考えられている。未治療のBasedow病患者での陽性率は95~100%とされ、治療により低下し寛解期には殆ど陰性になる。臨床的にはTSHレセプター抗体の存在の有無、Basedow病の診断、治療効果と寛解の判定に用いる。 【抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体】 Basedow病で陽性である。多くの患者で中等度から高度の力価(100倍以上)である。TPO Abは甲状腺ホルモン合成に関与している酵素(甲状腺ペルオキシダーゼ)に対する抗体で、橋本病やBasedow病などの自己免疫性甲状腺疾患で高い陽性率を示す。陽性率は橋本病では90~100%、Basedow病では75~90%とされる。ただし、健常成人の10%は陽性を示し、加齢とともに陽性率が上昇するので、この検査のみで自己免疫性甲状腺疾患と診断することは危険である。また、甲状腺自己抗体が陽性の妊婦の2/3は出産後甲状腺機能異常を生じるので注意が必要である。臨床的には橋本病、Basedow病の診断と病態把握や疾患活動性の評価に有用である。 【抗サイログロブリン抗体】 Basedow病で陽性である。甲状腺濾胞コロイドの主要構成成分であるサイログロブリンは甲状腺ペルオキシダーゼの作用で甲状腺ホルモンを生成する。TG Abは自己免疫性甲状腺疾患で高い陽性率を示し、その診断に有用性がある。陽性率は橋本病で75~90%、Basedow病で60~80%とされている。健常成人の10%は陽性を示し、加齢とともに陽性率が上昇するので、この検査のみで自己免疫性甲状腺疾患を診断するのは危険である。また、本抗体陽性の妊婦の2/3は出産後に甲状腺機能異常を生じるので、陽性者の経過観察を慎重に行う。 【サイロキシン結合グロブリン】 基準範囲内かやや低値である。 【サイログロブリン】 基準範囲上限以上のことが多い。抗サイログロブリン抗体価も同時に測定する。 【ALP】 患者の75%で増加し、350IU/L以上のことが多い。アイソザイムは骨型が優位である。 【Ca】【無機リン】【Mg】 Caは患者の10%で増加する。iPは基準範囲内か増加する。Mgは低値を示す。 【コレステロール】 低下し150mg/dL以下のことが多い。 【グルコース】 軽度に増加する。 【フルクトサミン】 アルブミン代謝亢進で著しく低下する。 【クレアチニン】 基準範囲内であれば本症は考えにくい。 |
| 検体検査以外の検査計画 | 甲状腺超音波断層撮影、心電図検査、甲状腺シンチグラフィー |