疾患解説
フリガナ | サイキンセイセキリ |
別名 | |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Bacillary Dysentery |
ICD10 | A03.9 |
疾患の概念 | 赤痢菌の大腸粘膜への感染によって発症する腸管の急性感染症で、菌が粘膜上皮細胞内で増殖し、内毒素による症状を呈する。赤痢菌は世界中に分布し、多くの地域で下痢性疾患の原因の5~10%を占める。赤痢菌は、血清型によりA,B,C,Dの4群に分類され、A群のS.dysentereeが最も病原性が強い。感染源は、感染者又は回復期患者の糞便による経口感染である。赤痢菌は、胃酸に比較的強いため、10~100個の菌の摂取で感染が成立する。赤痢菌は、結腸の粘膜を通過して粘液分泌、充血、白血球浸潤および浮腫としばしば表在性の粘膜潰瘍を引き起こす。志賀赤痢菌1型は、志賀毒素を産生し、著明な水様性下痢と、時に血栓性血小板減少性紫斑病および溶血性尿毒症症候群を引き起こす。2類感染症である。 |
診断の手掛 | 1~4日間の潜伏期の後、38~39℃の発熱、水溶性下痢、頻回の粘血便を訴え、テネスムスが出現した患者を診たら本症を疑う。しかし、この時点での水様性下痢は、腸上皮細胞の分泌活動による他の細菌性、ウイルス性、原虫性感染症による下痢と区別できない。初期症状は腹部のキリキリ痛、便意ひっ迫であるが、便排出により一時的に疼痛が軽減する特徴がある。症状が進むと下痢は著明となり、粘液、膿としばしば血液を含む軟便または液状便がみられ、重度のしぶり腹から直腸脱や、その結果として便失禁を来すことがある。幼児では、発症は突然で、発熱、易刺激性、眠気、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、腹部膨隆、しぶり腹などがみられる。3日以内に便中に血液、膿、粘液を認めるようになり、排便回数は1日20回以上まで増加し、重度の体重減少と脱水が認められる。また、小児は、志賀赤痢菌1型による感染と溶血性尿毒症症候群が合併することがあるので注意する。HLA-B27遺伝子型患者では反応性関節炎を発症することがある。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪寒戦慄|Chill with shivening 悪心|Nausea 血便|Bloody stool/Hemorrhagic stool/Hematochezia 下痢|Diarrhea しぶり腹|Tenesmus/Straining after stool 消化管出血|Gastrointestinal bleeding テネスムス|Tenesmus 膿粘血便|Mucous and bloody stool 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 腹痛|Abdominal pain |
鑑別疾患 |
大腸癌|Cancer of Colon 潰瘍性大腸炎|Ulcerative Colitis 関節炎 感染性食中毒 アメーバ赤痢|Amebic Dysentery 脱水症|Dehydration 腸重積症 サルモネラ感染症 カンピロバクター感染症 腸管出血性大腸菌感染症 エルシニア感染症 ウイルス性胃腸炎 |
スクリーニング検査 |
Chloride|クロール [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /B, /F] Neutrophils|好中球 [/B, /B] Potassium|カリウム [/S] Sodium|ナトリウム [/S, /S] |
異常値を示す検査 |
Hemagglutination Inhibition [/S] Occult Blood|潜血反応(便)/グアヤック法/o-トリジン法/ラテックス凝集法 [/F] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 発症時には白血球は減少し、その後増加するが、平均13,000/μL程度である。 【電解質】 Kが低値になるがNaは高値あるいは低値を示す。 【糞便細菌培養】 抗菌薬投与前の培養が大切である。 【糞便白血球】 多量の白血球を含むので、メチレンブルー染色またはライト染色で確認する。 |
検体検査以外の検査計画 | 直腸鏡検査 |