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疾患解説
フリガナ
カイヨウセイダイチョウエン
別名
臓器区分
消化器疾患
英疾患名
Ulcerative Colitis
ICD10
K51.9
疾患の概念
大腸に限局した粘膜の炎症と定義されている。大腸粘膜にびまん性のびらんや潰瘍を形成する非特異性炎症性疾患で、寛解、再燃、再発を繰り返し、40歳以下の成人が患者の2/3を占める。原因として免疫異常、腸内細菌のバランスの破綻などが考えられている。大腸癌を発症するリスクが高く、腸管外症状として関節炎を発症することがある。病変は通常、直腸から始まり、直腸に限局することもあれば口側に進展して、結腸全体を侵すこともある。炎症は粘膜および粘膜下層に及び、正常組織と罹患組織の間にはっきりとした境界がみられる。重症例では筋層が侵される。
診断の手掛
排便回数の増加、血便様の水様または粘液便、下腹部不快感を訴える患者を診たら本症を疑う。血性下痢の程度や持続期間は様々で、無症状の期間が挟まれることもある。アメーバ症や細菌性赤痢に引き続き発症する例もあるので注意する。また、中毒性巨大結腸症に進行する可能性があるので慎重に観察を続ける。
【診断基準:2014年難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班】
a)臨床症状:持続性または反復性の粘血・血便、あるいはその既往がある。
b)①内視鏡検査:Ⅰ)粘膜はびまん性に侵され、血管透見像は消失し、粗造または細顆粒状を呈する。さらに、もろくて易出血性(接触出血)を伴い、粘血膿性の分泌物が付着しているか、Ⅱ)多発性のびらん、潰瘍あるいは偽ポリポーシスを認める。
②注腸X線検査:Ⅰ)粗造または細顆粒状の粘膜表面のびまんせい変化、Ⅱ)多発性のびらん、潰瘍、Ⅲ)偽ポリポーシスを認める。その他、ハウストラの消失(鉛管像)や腸管の狭小・短縮が認められる。
c)生検組織学的検査:活動期では粘膜全層にびまん性炎症細胞浸潤、陰窩膿瘍、高度な杯細胞減少が認められる。いずれも非特異的所見であるので、総合的に判断する。寛解期では腺の配列異常(蛇行・分岐)、萎縮が残存する。上記変化は通常直腸から連続性に口側に見られる。
*鑑別疾患:細菌性赤痢、アメーバ性大腸炎、キャンピロバクター腸炎、薬剤性大腸炎、リンパ濾胞増殖症、虚血性大腸炎、腸型ベーチェットなど。
上記のa)のほか、b)の1項目、およびc)を満たし、鑑別疾患が除外できれば、確診となる。
主訴
嘔吐|Vomiting
悪心|Nausea
血便|Bloody stool/Hemorrhagic stool/Hematochezia
下痢|Diarrhea
消化管出血|Gastrointestinal bleeding
心窩部痛|Epigastralgia/Epigastric pain/Upper abdominal pein
疝痛|Colic
全身倦怠感|General malaise/Fatigue
体重減少|Weight loss
腸管運動亢進|Hyperactivity of intestinal motility
腸管運動低下|Depression of intestinal motility
発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever
貧血症状|Anemic symptom
頻脈|Tachycardia
腹痛|Abdominal pain
腹部不快感|Abdominal discomfort
腹部膨隆|Abdominal swelling/Gastromegaly
やせ|Weight loss
鑑別疾患
アメーバ赤痢|Amebic Dysentery
カンピロバクター感染症
クローン病|Crohn's Disease
痔疾
腸Behcet病
腸結核
低蛋白血症
貧血
便秘症
壊疽性膿皮症
結節性紅斑
出血性大腸炎
原発性硬化性胆管炎|Primary Sclerosing Cholangitis(PSC)
Sweet病
スクリーニング検査
Albumin|アルブミン
[
/S]
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ
[
/S,
/WBC]
Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ
[
/S]
Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ
[
/S]
Calcium|カルシウム
[
/S,
/U]
CEA|癌胎児性抗原
[
/S]
Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン
[
/F]
C-reactive Protein|C反応性蛋白
[
/S]
Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度
[
/B]
Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子
[
/P]
Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率
[
/B]
Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量
[
/B,
/F]
Immunoglobulin A|免疫グロブリンA
[
/S]
Immunoglobulin G|免疫グロブリンG
[
/S]
Iron|鉄/血清鉄
[
/Bone Marrow,
/S]
Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ
[
/S]
Leukocytes|白血球数
[
/B]
Magnesium|マグネシウム
[
/S]
MCH|平均赤血球ヘモグロビン量
[
/B]
MCHC|平均赤血球ヘモグロビン濃度
[
/B]
MCV|平均赤血球容積
[
/B]
Monocytes|単球
[
/B]
Neutrophils|好中球
[
/B]
Platelets|血小板
[
/B]
Potassium|カリウム
[
/S]
Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量
[
/S]
Prothrombin Time|プロトロンビン時間
[
/P]
Sodium|ナトリウム
[
/S]
TIBC|総鉄結合能
[
/S]
Tri-Iodothyronine (T3)|総トリヨードサイロニン/総T3/トリヨードサイロニン/トリヨードチロニン
[
/S]
Uric Acid|尿酸
[
/U]
α1-Globulin|α1-グロブリン
[
/S]
α2-Globulin|α2-グロブリン
[
/S]
γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ
[
/S]
異常値を示す検査
Anti-Endothelial Cell Antibodies|抗内皮細胞抗体
[
/S]
Anti-Myeloperoxidase Antineutrophil Cytoplasmic Autoantibodies|抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体/核周囲型抗好中球細胞質抗体/MPO-ANCA/P-ANCA
[
/S]
Anti-Neutrophil Cytoplasm Antibodies|抗好中球細胞質プロテナーゼ-3抗体/抗好中球細胞質抗体/好中球細胞質抗体/C-ANCA/PR-3ANCA
[
/S]
Anti-Saccharomyces cerevislae Antibodies [
/S]
CA 19-9|CA19-9
[
/S]
CA-M43 [
/S]
Catecholamines|カテコールアミン総
[
/P,
/U]
Complement, Total|補体価/CH50
[
/S]
Coombs' Test|クームス試験
[Positive/S]
D-Dimer|Dダイマー/フィブリン分解産物Dダイマー
[
/P]
Factor XIII Activity|第XIII因子活性/フィブリン安定化因子
[
/P]
Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物
[
/P]
Folate|葉酸/プテロイルモノグルタミル酸/ビタミンM/乳酸菌発育因子
[
/S]
Glutathione Peroxidase [
/S]
Haptoglobin|ハプトグロビン
[
/S]
HLA Antigens|HLA抗原
[Present/B]
Hydrogen Sulfide|硫化水素
[
/F]
IgA Anti-Neutrophil Cytoplasm Antibodies [
/S]
IgA Anti-Saccharomyces cerevisiae Antibodies [
/S]
IgG Anti-Saccharomyces cerevisiae Antibodies [
/S]
Immunoglobulin G2|IgG2
[
/S]
Immunoglobulin G3|IgG3
[
/S]
Immunoglobulin G4|IgG4
[
/S]
Interleukin-1 Receptor Antagonist [
/S]
Interleukin-10|インターロイキン-10
[
/S]
Interleukin-6|インターロイキン-6
[
/S]
Iron Saturation|鉄飽和度
[
/S]
Lysozyme|リゾチーム/ムラミダーゼ/ムコペプタイド/グリコヒドロラーゼ
[
/S]
Neutral Sterols [
/F]
Neutrophil Elastase|顆粒球エラスターゼ/好中球エラスターゼ
[
/F]
Occult Blood|潜血反応(便)/グアヤック法/o-トリジン法/ラテックス凝集法
[
/F]
p-Antineutrophil Cytoplasmic Autoantibodies|抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体/核周囲型抗好中球細胞質抗体/MPO-ANCA/P-ANCA
[
/S]
pH|尿pH
[
/B]
Phospholipase A2 [
/S]
Phospholipase A2 Type II [
/S]
Plasminogen Activator Inhibitor-1|プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1
[
/P]
Pyridoxine|ピリドキシン
[
/S]
Selenium|セレン/セレニウム
[
/S]
Sialic Acid|シアル酸/ノイラミン酸
[
/S]
Soluble CD44 Splice Variant 6 [
/S]
Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1
[
/S]
Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体
[
/S]
Thyroxine Binding Globulin|サイロキシン結合グロブリン/チロキシン結合グロブリン
[
/S]
Transthyretin|トランスサイレチン/プレアルブミン
[
/S]
Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α
[
/S]
Urokinase Plasminogen Activator|ウロキナーゼプラスミノゲンプロアクチベータ
[
/P]
Vitamin B12|ビタミンB12/コバラミン/シアノコバラミン
[
/S]
Vitamin C|ビタミンC/アスコルビン酸
[
/S]
Volume [
/P]
Zinc|亜鉛
[
/S]
α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン
[
/S]
α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン
[
/S]
α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン
[
/F,
/S]
α2-Plasmin Inhibitor [
/P]
関連する検査の読み方
【ALP】【γ-GT】
軽度~中等度に増加する。活動期にはALP6(免疫グロブリン結合ALP)が増加する。ALPとγ-GTが上昇していれば原発性硬化性胆管炎の存在を考える。
【CBC】
血小板が増加し、低色素性貧血を認め、好中球が増加する。ヘマトクリットは重症度を反映する。
【CRP】【オロソムコイド】【ESR】
活動期にCRPは上昇、オロソムコイドは増加する。CRPは直腸炎や左側結腸炎では上昇しない。ESRは重症度を反映する。
【インスリン様成長因子-2】
急性期には低値を示す。
【凝固検査】
重症発作時にはDICを合併することがある。
【抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体】
特異的検査で60~70%で陽性である。この抗体が陽性で抗Sasscharomyses cerevisiae抗体が陰性なら潰瘍性大腸炎を強く疑う。MPO-ANCAは好中球細胞質にあるα顆粒中の酵素(ミエロペルオキシダーゼ)に対する抗体で好中球の細胞質部分と反応する。この抗体は血管炎症候群の病態形成の主要因であり、血管炎症候群の診断、活動性評価に極めて有用とされている。
【Saccharomyces cerevisiae 抗体】
クローン病に比較的特異性の高い抗体である。
【アルブミン】
重症例では急速な低下が見られる。
【コリンエステラーゼ】
低値になる事がある。
【電解質】
下痢による脱水で異常値の場合がある。
【ビタミンK】
低値のこともある。
【糞便一般検査】
反復性の粘血・血便を認める。細菌培養を行う。
【葉酸】
赤血球中の葉酸が低値を示す。
【大腸生検】
粘膜固有層に炎症性の細胞浸潤があり、杯細胞は減少する。
【重症度】
軽症:排便回数4回未満/日、全身症状は無い。中等度:排便回数4~5回/日、軽度の全身症状が見られる。重症:排便回数6回以上/日、発熱、頻脈、貧血、ESR上昇が見られる。激症:排便回数11回以上/日、持続する出血、腹部の圧痛や膨満、腸管の拡張がある。
検体検査以外の検査計画
大腸内視鏡検査、単純腹部X線検査、注腸X線検査、S状結腸鏡検査
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