疾患解説
フリガナ | アメーバセキリ |
別名 |
アメーバ症 腸アメーバ症 |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Amebic Dysentery |
ICD10 | A06.0 |
疾患の概念 | 赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)による腸管感染症で、大腸に寄生し、急性の赤痢症状を呈するものをアメーバ赤痢と呼ぶ。一般的には無症状であるが、軽度の下痢から重度の赤痢まで様々な症状を発症する。腸管外感染症には肝膿瘍などがある。熱帯地方を中心に5億人の感染者がいると推定されているが、発症者はその1/10とされる。4類感染症である。 |
診断の手掛 | 感染性シストに汚染された水や食物の摂取後、2~6週の潜伏期間を経て下痢、イチゴゼリー状の粘血便、腹部膨満感などの症状を訴える患者を診たら本症を疑う。典型的な赤痢症状を呈する患者では、一日あたり3~6回採便し赤痢アメーバの栄養型や嚢子を証明する。アメーバ赤痢は細菌性赤痢、サルモネラ症、住血吸虫症や潰瘍性大腸炎と混同されることがある。アメーバ赤痢は通常、細菌性赤痢に比べて排便の頻度が少なく、水様性も低い。また、粘度の高い粘液および斑点状の血液を含むのも特徴である。細菌性赤痢、サルモネラ症や潰瘍性大腸炎とは異なり、アメーバ赤痢は栄養型が白血球を溶解するため便中に白血球は見られない。大半の感染は、中米、南米西部、西および南アフリカとインド亜大陸で発生しているので、これらの地方の旅行後に、慢性の下痢を訴える患者を診たら本症を疑う。わが国では海外旅行者と同性愛者の増加に伴い患者数が増加傾向にある。 |
主訴 |
イチゴゼリー状粘血便|Strawberry-jelly like bloody mucoid stool 血便|Bloody stool/Hemorrhagic stool/Hematochezia 下痢|Diarrhea しぶり腹|Tenesmus/Straining after stool 粘血下痢|Mucous and bloody diarrhea/Bloody mucoid diarhrea 腹痛|Abdominal pain 腹部膨満感|Sense of Abdominal fullness 慢性下痢|Chronic diarrhea |
鑑別疾患 |
クローン病|Crohn's Disease 潰瘍性大腸炎|Ulcerative Colitis 過敏性大腸炎 ジアルジア症|Giardiasis 腸結核 日本住血吸虫症 偽膜性腸炎 大腸癌|Cancer of Colon 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma 細菌性赤痢|Bacillary Dysentery 腸管感染症 肝膿瘍|Liver Abscess 肝嚢胞 肝エキノコックス症 虚血性大腸炎|Ischemic Colitis |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/PlF] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
5'-Nucleotidase|5'-ヌクレオチダーゼ [/S] CA 195 [/S] Complement Fixation [/S] Entamoeba Histolytica Antibody|赤痢アメーバ抗体/抗赤痢アメーバ抗体 [/S] Hemagglutination Inhibition [/S] pH|尿pH [/PlF] Specific Gravity|比重(尿)/尿比重 [/PlF] |
関連する検査の読み方 |
【PCR】 赤痢アメーバの核酸配列が検出される。特異度はほぼ100%で、赤痢アメーバを非病原性微生物と鑑別することが可能である。 【赤痢アメーバ抗体】 アメーバ赤痢、アメーバ性大腸炎、アメーバ性肝膿瘍で陽性である。腸の活動性患者の陽性率は約70%、無症候のキャリアでは10%程度である。抗体価は数ヶ月~数年持続することがあることから、急性と過去の感染を区別することは困難である。抗赤痢アメーバ抗体はヒトに病原性を有するEntamoeba histolyticaに対する抗体で、陽性を示せば赤痢アメーバが人体組織内、特に肝に進入していることを示している。アメーバが腸内にとどまっている状態では抗体価は低い。臨床的には肝腫大、発熱等から肝膿瘍を疑う場合に用いる。 【形態学的検査】 病原性のある赤痢アメーバと無害なE.disparは形態学的には区別できない。 【胆汁一般検査】 赤痢アメーバが検出されることがある。 【糞便一般検査】 有形便では嚢子、下痢便からは栄養型虫体が検出される。3回検査を行えば診断率は90%になる。粘着性の粘液と斑点状に血液を含んでいる。アメーバの同定には3~6回分の便検体の検査および濃縮操作を要することがある。 【ELISA】 アメーバ性肝膿瘍で約95%、腸の活動性感染患者の70%以上、無症候性キャリアの10%で陽性となる。 【直腸鏡検査】 症状のある患者では、直腸鏡検査で特徴的なフラスコ形の粘膜病変を認めるので、この部分を吸引し、吸引物中の栄養型の有無を検査すべきである。直腸S状部病変の生検でも栄養型を検出できる。 |
検体検査以外の検査計画 | 大腸内視鏡検査、腹部超音波検査、腹部CT検査、腹部MRI検査 |