疾患解説
フリガナ |
ダイチョウガン |
別名 |
悪性腫瘍(大腸/直腸) 悪性腫瘍(直腸) 悪性腫瘍(S状結腸)
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臓器区分 |
消化器疾患
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英疾患名 |
Cancer of Colon
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ICD10 |
C18.9
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疾患の概念 |
直腸、結腸の粘膜上皮から発生する悪性腫瘍で、浸潤が粘膜下層に留まっている早期癌と、固有筋層以下に及んでいる進行癌に分けられる。現在、大腸癌の大半は腺腫様ポリープの悪性転換と考えられている。発症率は40歳で上昇し始め、60~75歳でピークに達し、全症例の70%が直腸およびS状結腸に発生し、95%は腺癌である。結腸癌は女性に多く、直腸癌は男性に多い。動物性脂肪食、脂肪および精製炭水化物を多く含む低繊維食、結腸ポリープ、非ポリープ症候群(Lynch症候群)、炎症性腸疾患、Streptococcus bovisによる菌血症、尿管S状結腸吻合術、喫煙はリスクファクターである。また、 潰瘍性大腸炎や肉芽腫性大腸炎などは、罹病期間が長くなるほど発癌のリスクが増大する。
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診断の手掛 |
大腸腺癌は増殖が遅く、症状が出現するまでに長期間が経過する。症状は、病変の部位、種類、進展範囲および合併症により異なる。最も一般的な症状は、排便時の出血と排便習慣の変化である。このため明らかな痔核や既知の憩室疾患がある場合でも、直腸出血を訴える患者を診たら本症を疑う。右側結腸は内腔が広く、壁が薄く、腸内容も液状のため、閉塞は経過の後期に発生し、出血は潜血である。左側結腸は内腔が狭く、便は半固形状で、癌は腸壁の全周を侵す傾向があるため、便秘と排便回数の増加または下痢が交互に起こる。仙痛性の腹痛を伴う部分閉塞または完全閉塞が初発症状のことがある。血液が便に縞状に付着、または混入することがある。また、原因不明の鉄欠乏性貧血を訴える患者(閉経前の経産婦は例外)を診たら一度は大腸癌を疑い検査する。
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主訴 |
血便|Bloody stool/Hemorrhagic stool/Hematochezia 下血|Melena 残便感|Sense of incomplete evacuation 消化管出血|Gastrointestinal bleeding 体重減少|Weight loss 排便回数増加|Increase of stool frequency 排便障害|Excretory disorder 貧血症状|Anemic symptom 腹水|Ascites 腹痛|Abdominal pain 腹部腫瘤|Abdominal tumor/Abdominal mass 腹部膨隆|Abdominal swelling/Gastromegaly 便秘|Constipation やせ|Weight loss
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鑑別疾患 |
悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma 潰瘍性大腸炎|Ulcerative Colitis カルチノイド症候群|Carcinoid Syndrome 虚血性大腸炎|Ischemic Colitis クローン病|Crohn's Disease 腸結核 低K血症|Hypokalemia 低アルブミン血症 貧血 筋原性腫瘍 痔核
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スクリーニング検査 |
α-Fetoprotein|α-フェトプロテイン [/S, /Tissue] Albumin|アルブミン [/S, /U] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/WBC, /S] CEA|癌胎児性抗原 [/AsF, /Bile, /PeF, /PlF, /S, /Tissue] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S, /F] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Erythrocytes|赤血球数 [/AsF] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Ferritin|フェリチン [/S] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B, /F] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S, /U] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/U] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/U] Iron|鉄/血清鉄 [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/AsF, /B] Lymphocytes|リンパ球 [/B] MCH|平均赤血球ヘモグロビン量 [/B] MCHC|平均赤血球ヘモグロビン濃度 [/B] MCV|平均赤血球容積 [/B] Monocytes|単球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B] Potassium|カリウム [/S] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S, /AsF] TIBC|総鉄結合能 [/S, /S] Uric Acid|尿酸 [/S] α2-Globulin|α2-グロブリン [/S]
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異常値を示す検査 |
Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [/S] Aldolase|アルドラーゼ/アルドラーゼアイソザイム [/S] Alkaline Phosphatase Isoenzymes|アルカリホスファターゼアイソザイム/ALPアイソザイム [/S] Amyloid A Protein|血清アミロイドA蛋白/アポSAA/アミロイドA蛋白 [/S] Androgens|テストステロン/総テストステロン/アンドロゲン [/U] Androsterone|アンドロステロン [/U] Anti-p53 Antibodies|抗p53抗体 [/S] Arginase|アルギナーゼ [/S] Arginine|アルギニン [/P] Arylsulfatase [/U] Aspartic Acid|アスパラギン酸 [/S] c-erb-B2 Oncoprirein [/S] CA 125|CA125 [/Tissue] CA 15-3|CA15-3 [/S] CA 19-9|CA19-9 [/S, /Tissue] CA 195 [/S] CA 242 [/S] CA 27-29 [/S] CA 50|CA50 [/S] CA 549 [/S] CA 72-4|CA72-4 [/S] CA-M43 [/S] Catalase|カタラーゼ [/RBC] Cathepsin B|カテプシンB/カテプシンL [/Tissue] Colon Specific Antigen [/S] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Complement C4|補体第4成分/β1Eグロブリン/C4 [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S] Copper|銅 [/S] Copper Zinc Superoxide Dismutase|スーパーオキサイドディスムターゼ/スーパーオキサイドジスムターゼ [/S] Creatine Kinase MB-Isoenzyme|CK-MB [/S] Cryofibrinogen|クリオフィブリノゲン [/P] Cytokeratin 19 Fragment|サイトケラチン19フラグメント/シフラ/シフラ21-1/CYFRA [/S] D-Dimer|Dダイマー/フィブリン分解産物Dダイマー [/P] Deoxycholic Acid|デオキシコール酸 [/F] DF3 [/S] Factor VIII Activity|第VIII因子活性/抗血友病因子 [/P] Folate|葉酸/プテロイルモノグルタミル酸/ビタミンM/乳酸菌発育因子 [/RBC, /S] Fucose|フコース [/S] Galactosyltransferase Isoenzyme II [/S] Gastrin|ガストリン [/S] Glutamine|グルタミン [/P] Glutathione Peroxidase [/S] Haptoglobin|ハプトグロビン [/S, /U] Hexokinase|ヘキソキナーゼ(赤血球) [/S] HIV p53 Antigen [/P] Immunosuppressive Acidic Protein|免疫抑制酸性蛋白 [/S] Insulin|インスリン [/P] Iron Saturation|鉄飽和度 [/S] Lactate|乳酸/ラクテート [/B] Laminin|ラミニン [/S] Lithocholic Acid|リトコール酸 [/F] Metallopanstimulin [/S] NCC-ST 439|NCC-ST-439 [/S] Neopterin|ネオプテリン [/U] Neuron-specific Enolase|神経特異エノラーゼ [/S] Neutrophil Elastase|顆粒球エラスターゼ/好中球エラスターゼ [/F] Occult Blood|潜血反応(便)/グアヤック法/o-トリジン法/ラテックス凝集法 [/F] Ornithine|オルニチン [/P] Pancreatitis-Associated Protein|膵炎関連蛋白 [/S] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/P] Phenylalanine|フェニルアラニン [/P] Plasminogen Activator Inhibitor-1|プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1 [/P] Prolactin|プロラクチン/乳汁分泌ホルモン [/P] Proline|プロリン [/P] Pseudouridine|シュードウリジン [/U] Putrescine|ポリアミン/プトレッシン [/U] Pyruvate [/B] Selenium|セレン/セレニウム [/S] Serine|セリン [/P] Sialic Acid, Lipid-associated [/S] Sialyltransferase [/S] Soluble CD44+ [/S] Soluble Fibrin Monomer|可溶性フィブリンモノマー複合体/フィブリンモノマー複合体 [/P] Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] Soluble Urokinase Receptor [/S] Spermidine|スペルミジン [/U] Spermine|スペルミン [/U] Squamous Cell Carcinoma Antigen|扁平上皮癌関連抗原/SCC抗原 [/Tissue] Tennessee Antigen [/S] Threonine|トレオニン [/P] Thrombin Antithrombin III Complex|トロンビン・アンチトロンビンIII複合体/トロンビン・アンチトロンビン複合体/TATテスト [/P] Tissue Plasminogen Activator|組織プラスミノゲンアクチベータ [/P, /Tissue] Tissue Polypeptide Antigen|組織ポリペプチド抗原 [/S] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] Tumor-associated Glycoprotein-72 [/S] Urokinase Plasminogen Activator|ウロキナーゼプラスミノゲンプロアクチベータ [/Tissue] von Willebrand Factor Antigen|第VIII因子様抗原/第VIII因子関連抗原/フォンウィルブランド因子抗原量 [/P] Zinc|亜鉛 [/S] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/S] α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/S] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/F] β-Chorionic Gonadotropin|ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット [/P, /Tissue] β-Glucuronidase|β-グルクロニダーゼ [/S] β-Hexosaminidase|β-ヘキソサミニダーゼ [/S] β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [/S] γ-Enolase [/S]
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関連する検査の読み方 |
【CBC】 低色素性貧血が唯一の異常所見(特に右側結腸癌)のことがある。炎症反応として白血球が増加する場合がある。 【CEA】 70%の患者で高値になるが特異的でないので、スクリーニング検査としては推奨されない。手術後の残存の有無、転移巣の存在、再発などの経過観察の指標とする。完全に切除すれば6~12週で正常化する。腫瘍の大きさを反映する。CA19-9とCA125も同様の目的で測定される。 【CEA mRNA】 腹膜播種があると陽性である。 【KRAS遺伝子】 遺伝子点変異陽性。K-ras遺伝子は細胞内の癌遺伝子の一つで、癌を疑う患者から採取した組織を用いて遺伝子構造異常や遺伝子点突然変異の有無をみる。臨床的には肺癌、大腸癌、膵癌、前立腺癌などの診断に用いる。 【YH-206抗原】 YH-206抗原は肺腺癌細胞株A-549を免疫原として作製されたモノクローナル抗体YH-206で検出される分子量の大きなムチン抗原で、エピトープは糖鎖であると考えられる。抗原決定基はノイラミダーゼ抵抗性で、CA 19-9,CA 125,CA 50などのムチン抗原と異なっている。またX,Yハプテン,T抗原などの血液型糖鎖とも異なっている。ムチン抗原であるため腺癌での発現率が高く胃癌および膵癌の治療効果のモニターとして有用である。 【アルドラーゼ】 中等度に増加し、アイソザイムはA型が優位である。 【抗p53抗体】 陽性である。p53はアポトーシス誘導、遺伝子修復、細胞周期回転抑制などの生理機能を持ち、癌抑制遺伝子としての働きを持つ。胃、大腸、食道、肺、脳などの多くの悪性腫瘍ではp53遺伝子が変異により失活し、変異p53蛋白が産生され抗p53抗体が出現する。抗p53抗体は癌細胞特異抗原に対する抗体であること、癌細胞が微量であっても検出が可能なことから、臨床的には癌の早期発見と再発モニタリングに有用とされている。陽性の場合は病理組織検査で腫瘍細胞のp53遺伝子変異の有無を確認する。 【膵炎関連蛋白】 軽度に増加する。PAPは正常の膵ではランゲルハンス島のα細胞で発現しているが、外分泌細胞では急性膵炎で膵腺房細胞が障害を受けた場合のみ発現するストレス蛋白である。膵炎発症直後に上昇する膵酵素や炎症マーカーは炎症の消退と共に急速に低下するが、PAPは発症3~7日目にピークとなり、ゆっくりと低下する。臨床的には炎症の程度や治療効果の判定に用いる。また膵癌では異所性にこの蛋白の発現が知られており、膵導管細胞癌の80%で上昇する。 【組織ポリペプチド抗原】 増加する。TPAはサイトケラチンを認識するモノクローナル抗体で検出される非特異的腫瘍マーカーである。悪性腫瘍で増加し腫瘍の進行度と関連するとされている。臓器特異性に乏しく良性疾患でも陽性を示すため早期診断には不適であるが、転移の確認、治療効果判定などに用いられる。 【K】 Kが低下したら直腸絨毛腫瘍の可能性を考える。 【5-HIAA】 尿中の値はカルチノイド腫瘍では増加する。 【糞便一般検査】 潜血反応が陽性である。 【尿沈渣】 膀胱浸潤例で異型細胞(腺癌細胞)が認められることがある。
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検体検査以外の検査計画 |
注腸X線検査、大腸内視鏡検査、超音波検査、胸部・腹部・骨盤CT検査、結腸鏡検査
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