疾患解説
フリガナ | タイシャセイアルカローシス |
別名 | |
臓器区分 | 救急疾患 |
英疾患名 | Metabolic Alkalosis |
ICD10 | E87.3 |
疾患の概念 | 細胞外液からのH+喪失、HCO3-の投与、Cl-を多く含みHCO3-の含有量の少ない体液の喪失により血漿中のHCO3-が増加し、pHは高値またはほぼ基準範囲内の病態である。原因は、遷延性の嘔吐、循環血液量減少、利尿薬および低K血症などがある。代謝性アルカローシスは、酸の喪失、アルカリ投与、水素イオン(H+)の細胞内への移動またはHCO3−のうっ滞によるHCO3−の蓄積の結果である。HCO3−再吸収を増大させる要因として、最も多いものは、反復性嘔吐や経鼻胃管吸引による体液量減少および利尿薬による低K血症であるが、アルドステロンまたはミネラルコルチコイドが増加するあらゆる病態でHCO3−は増加しうる。塩素の喪失または過剰分泌を伴う代謝性アルカローシスは、Cl反応性と呼ばれ、発症は、重度のMg欠乏、K欠乏またはミネラルコルチコイド過剰が関与している。 |
診断の手掛 | 症状は血液中のHCO3-の蓄積による頭痛、嗜眠、テタニーが見られる。診断の手掛りは臨床所見による。軽度のアルカリ血症の症状は、基礎疾患と関連しているが、より重度のアルカリ血症では、Ca2+への蛋白結合が亢進し、低Ca血症とそれに続く頭痛、嗜眠、神経筋の興奮性亢進を来し、時にせん妄、テタニー、痙攣発作を来す。低K血症が合併すると脱力を起こすことがある。 |
主訴 |
筋力低下|Weakness 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure 嗜眠|Lethargy 頭痛|Headache/Cephalalgia せん妄|Delirium テタニー|Tetany |
鑑別疾患 |
腎不全 バーター症候群|Bartter's Syndrome 劇症肝炎|Fulminant Hepatitis 低K血症|Hypokalemia 原発性アルドステロン症|Primary Aldosteronism 幽門狭窄症 神経性食欲不振症 |
スクリーニング検査 |
Chloride|クロール [/S] Potassium|カリウム [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] |
異常値を示す検査 |
Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/S] Carbon Dioxide Partial Pressure|動脈血CO2分圧/炭酸ガス分圧/CO2分圧/PCO2/PaCO2 [/B] Ionized Calcium|イオン化カルシウム/Caイオン [/S] pH|尿pH [/B, /U] |
関連する検査の読み方 |
【血清電解質】 Kは低下し、程度により危険状態を予測できる。ClはNaの低下より軽度。 【尿電解質】 Clが20mEq/L未満であればクロール反応性代謝性アルカローシス、20mEq/L以上ならクロール不応性代謝性アルカローシスである。尿中K30mEq/日未満は低K血症または緩下薬の誤用が強く示唆され、尿中Kが30mEq/日を上回り高血圧がなければ、利尿薬の乱用、バーター症候群またはギテルマン症候群を考える。尿中Kが30 mEq/日を上回り高血圧があれば、高アルドステロン症、ミネラルコルチコイド過剰および腎血管疾患を疑う。 【動脈血ガス分析】 PaCO2が増加し、pHが7.4以下になる。HCO3-は26mEq/L以上である。PaCO2は動脈血中に溶解しているCO2の分圧で、肺でのガス交換の効率を示すため、呼吸機能検査の一つとして用いられる。CO2分圧は肺胞の換気量に逆比例するため換気が不足すればPco2は上昇、過換気であれば低下する。 【尿一般検査】 尿pHはK喪失が高度でなく、嘔吐によるNa欠乏がなければ7.0以上である。 |
検体検査以外の検査計画 |