疾患解説
フリガナ | テイKケッショウ |
別名 | |
臓器区分 | 電解質代謝疾患 |
英疾患名 | Hypokalemia |
ICD10 | E87.6 |
疾患の概念 | 低K血症とは、血中K値が3.5mEq/L以下のもので、消化管からの喪失、Kの摂取不足(飢餓)、排泄増加(下痢、汗などによる腎外性喪失、遠位尿細管尿流量増加、K分泌増加による腎性喪失)、細胞内への再分布、薬物などで発症する。消化管からの異常なK喪失は、慢性下痢、嘔吐、胃内容の吸引、大腸の絨毛腺腫などによる。細胞内移動は高カロリー輸液、インスリン投与、β2作動薬による交感神経系の刺激、家族性周期性四肢麻痺で見られる。腎性喪失はクッシング症候群、原発性高アルドステロン症、バーター症候群、ギテルマン症候群、低Mg血症、甘草に含まれるグリチルリチンの摂取などによる。利尿薬は、低K血症を引き起こす代表的な薬物で、遠位ネフロンより近位でのNa再吸収を阻害する。K喪失性の利尿薬にはサイアザイド系薬剤、ループ利尿薬、浸透圧利尿薬がある。 |
診断の手掛 | K欠乏の症状は、患者によって大きく異なる。通常血中K濃度が3.0mEq/L未満にならないと臨床症状は見られない。一般的な症状は、筋力低下(3.0mEq/L未満)に関連する神経症状で、腸管運動低下による便秘、腸雑音の低下、腱反射の低下、脱力感などを訴える。その他の筋肉の機能障害としては、痙攣、線維束性収縮、麻痺性イレウス、低換気、低血圧、テタニー、横紋筋融解症などがある。持続性の低K血症では、腎濃縮能が障害され、二次性多飲症を伴う多尿症が生じる。低K血症は、重症になると心室細動や心停止を招くので、診断は迅速に行う。隠れ嘔吐、利尿薬や緩下薬の隠れた使用が、低K血症の原因であることが多いが、特に体重を減らしたい女性や医薬品を入手しやすい医療従事者に見られるので、利尿剤や下剤の使用の有無を聞くことを忘れてはいけない。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 筋肉痛|Myalgia 筋力低下|Weakness 傾眠|Drowsiness/Somonolency 腱反射低下|Depression of tendon reflex 呼吸困難|Dyspnea 多飲|Polydipsia 多尿|Polyuria 脱力感|Weekness 腸雑音減弱|Hyporeflexia of intestinal murmur 便秘|Constipation |
鑑別疾患 |
アルコール依存症|Alcoholism クッシング症候群|Cushing's Syndrome 原発性アルドステロン症|Primary Aldosteronism 甲状腺機能亢進症|Hyperthyroidism 腎血管性高血圧症|Renovascular Hypertension 尿細管性アシドーシス|Renal Tubular Acidosis(RTA) 腎疾患 摂食障害 低Mg血症|Hypomagnesemia 熱傷 周期性四肢麻痺 異所性ADH産生腫瘍 バーター症候群|Bartter's Syndrome ファンコニー症候群|Fanconi syndrome 薬剤(利尿剤、甘草、グリチルリチン、下剤) |
スクリーニング検査 |
Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Potassium|カリウム [/S] |
異常値を示す検査 | Myoglobin|ミオグロビン [/U] |
関連する検査の読み方 |
【アルドステロン】 アルドステロン症による低K血症を診断するため血漿レニン活性とともに測定することも必要である。PACは副腎皮質球状層から分泌される鉱質コルチコイドで、レニン-アンジオテンシン系、ACTH、K+が分泌の調節を行っている。PACは遠位尿細管に作用し、Na+とOH-を再吸収し代わりにK+とH+-を排出させる働きがある。PACはレニンにより産生されるアンジオテンシンIIの刺激により産生される。測定は血漿レニン活性と同時に行いPAC/PRA比を評価することが望ましい。また、PACは60歳以上の男性や閉経後の女性では有意に低値を示すこと、早朝に高値で深夜に低値になることに注意する。臨床的には分泌過剰による代謝性アルカローシスと、分泌不足による代謝性アシドーシス、電解質異常、高血圧症の診断に用いる。 【K】 Kが3mEq/L以下でなると筋力低下を認める。2.5mEq/L以下の重度の低K血症は不整脈や横紋筋融解を起こす。 【24時間尿中K値】 低K血症ではK排泄が通常は15mEq/L未満である。尿中K値が15mEq/L未満の時に原因不明の慢性低K血症があれば、消化管性のK喪失またはK摂取の減少を疑う。15mEq/L以上であれば原因は腎にあると考えてよい。 【ミオグロビン】 著しく増加する。血中濃度が300ng/mLを超えると尿中に出現する。 【動脈血ガス分析】 代謝性のアシドーシスかアルカローシスかで原因を鑑別する。HCO3-は26mEq/L以上である。 【浸透圧】 尿<血漿である。 【24時間尿K排泄量】 15mEq/L未満である。 【尿細管k濃度勾配/TTKG】 TTKG=(尿中K/血清K)÷(尿浸透圧/血清浸透圧) TTKG<2:腎外性喪失 TTKG>4:腎性喪失 【白血球】 AMLのような著明な白血球増加症では採血後、室温に放置すると白血球がKを取り込み偽低K血症を呈するので注意する。 【関連する疾患】 K排泄増加・高血圧(アルドステロン分泌腫瘍、Liddle症候群)、K排泄増加・正常血圧(Bartter症候群)、低Mg血症、隠れた嘔吐、利尿剤乱用 |
検体検査以外の検査計画 | 心電図検査 |