疾患解説
フリガナ | ニホンノウエン |
別名 | |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Japanese Encephalitis |
ICD10 | A83.0 |
疾患の概念 | トガウイルス群に属する日本脳炎ウイルスによる脳炎で、わが国での発症は、ワクチンの普及で激減し年間50人以下であるが、中国、インド、インドシナ半島、台湾などでは多発している。このウイルスの宿主はブタで、ウイルスを持ったブタを刺したコダカアカイエカによりヒトに感染する。わが国での発症は、コガタアカイエカの現れる春~初秋の発症に限られ、顕性感染率は 100~1,000人に 1人程度と考えられるが、発症すると死亡率は10%前後と高い。病理組織学的には視床、黒質に血管周囲細胞浸潤、限局性組織壊死巣が見られる。4類感染症である。 |
診断の手掛 | 夏期にウイルス流行地(西日本)で全身倦怠感、脳圧亢進症状、髄膜刺激症状を訴え、しかも日本脳炎ワクチンの接種をしていない患者を診たら本症を疑う。典型的には、ウイルスに感染した蚊に刺されて1~2週間後に発熱、頭痛で発症し、高熱、頭痛が持続し、意識障害とともに悪心、嘔吐、項部硬直、Kernig徴候などの髄膜刺激症候と四肢麻痺、痙攣、不随意運動などの脳局所症候がみられる。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 片麻痺|Hemiplegia 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure 高熱|High fever/Hyperthermia 項部硬直|Nuchal stiffness/Stiffness of neck/Stiff neck 振戦|Tremor 髄膜刺激症状|Meningeal irritation sign 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 不随意運動|Involuntary movement Kernig徴候 |
鑑別疾患 |
髄膜炎|Meningitis 脳膿瘍|Brain Abscess 単純ヘルペスウイルス脳炎|Herpes Simplex Encephalitis ウイルス感染後脳脊髄炎 ウイルス性脳炎|Viral Encephalitis 矢状静脈洞血栓症 |
スクリーニング検査 |
Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/CSF] Lymphocytes|リンパ球 [/CSF] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF] |
異常値を示す検査 |
Japanese Encephalitis Virus Antibody|日本脳炎ウイルス抗体/抗日本脳炎ウイルス抗体 [/S] Japanese Encephalitis Virus RNA|日本脳炎ウイルスRNA [Positive/CSF] |
関連する検査の読み方 |
【日本脳炎ウイルス抗体】 日本脳炎ウイルスや他のフラビウイルス感染症で陽性である。日本脳炎ウイルスはブタの体内で増殖しコガタアカイエカにより媒介されるフラビウイルスで、ヒトからヒトへの感染はない。日本脳炎ウイルスは大部分が不顕性感染であるが、発症すると高熱・頭痛・意識障害を3主徴とする死亡率25~30%の急性脳炎を引き起こす。また回復後も約半数は精神・神経障害の後遺症を残す。臨床的には日本脳炎を疑うとき、ワクチン接種後の効果判定に用いられる。迅速検査としてはPCRによる髄液中のウイルスRNA検出が優れている。 【髄液一般検査】 圧が200~300mmH₂Oに上昇する。細胞はリンパ球が優位で100~1,000/μL程度に増加する。蛋白とグルコースが増加し、グルコースは75mg/dL以上になる。 【日本脳炎ウイルスRNA】 確定診断は感度・迅速性に優れているPCRを行う。日本脳炎は致死率が20~50%と高く、回復者の半数が後遺症として精神・神経障害を残す疾患で法定伝染病に指定されている。夏から秋にかけてウイルスを持つコガタアカイエ蚊によって媒介され、最終的には脳の神経細胞で増殖し、細胞を破壊することで脳炎症状を呈する。ただし、ウイルスが血液に入っても殆どは不顕性感染で、発症例は300人に一人とされている。診断はウイルス分離が確実だが、脳脊髄液からのウイルス分離率は低いため、PCRを用いるウイルスRNA検出法が薦められる。 |
検体検査以外の検査計画 | 脳CT検査、脳MRI検査 |