疾患解説
フリガナ | ウイルスセイノウエン |
別名 | |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Viral Encephalitis |
ICD10 | A86 |
疾患の概念 | ウイルスによる脳実質の炎症が主体の疾患で、原因ウイルスとして日本脳炎ウイルス、風疹ウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、単純ヘルペスウイルスが代表的である。単純ヘルペスウイルス以外のヘルペスウイルスは、免疫不全の患者に好発する。ウイルスは、脳実質に侵入し脳炎を引き起こすが、感染後に急性播種性脳脊髄炎を誘発することがある。急性脳炎では大脳半球、脳幹、小脳、ときに脊髄に炎症および浮腫が発生する。ウイルスが脳に直接侵入すると、ニューロンが損傷し、封入体が形成される。 |
診断の手掛 | 発熱、頭痛に髄膜刺激症状や精神・神経学的症状を合併する患者を診たら本症を疑う。意識障害の程度は、軽度の嗜眠から深昏睡まで様々である。脳炎症状に先行して、胃腸または呼吸器の前駆症状が見られることもある。髄膜刺激徴候は軽度で、他の症状よりも目立たない。てんかん重積状態または昏睡症状の発症は、脳に重度の炎症が予測され、予後不良である。腐った卵や焦げた肉のような臭いを訴えたら、側頭葉の感染であり、単純ヘルペスウイルス脳炎を考える。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 片麻痺|Hemiplegia 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure 健忘|Amnesia 幻覚|Hallucination 言語障害|Language disorder/Allophasis 構音障害|Dysarthria 行動異常|Behavior abnomality 項部硬直|Nuchal stiffness/Stiffness of neck/Stiff neck 昏睡|Coma 嗜眠|Lethargy 髄膜刺激症状|Meningeal irritation sign 頭痛|Headache/Cephalalgia 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 不随意運動|Involuntary movement |
鑑別疾患 |
非ヘルペス性辺縁系脳炎 急性散在性脳脊髄炎 インフルエンザ脳炎 脳膿瘍|Brain Abscess 細菌性髄膜炎|Bacterial Meningitis 結核性髄膜炎|Tuberculos Meningitis 破傷風|Tetanus 脳マラリア AIDS脳症 クロイツフェルト-ヤコブ病 亜急性硬化性全脳炎|Subacute Sclerosing Panencephalitis(SSPE) 進行性多巣性白質脳症 脳住血吸虫症 結核 真菌性髄膜炎 トキソプラズマ脳炎 クリプトコッカス髄膜炎 ライ症候群|Reye's Syndrome |
スクリーニング検査 |
C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] ESR|赤血球沈降速度 [/B] Lymphocytes|リンパ球 [/B] Transferrin|トランスフェリン [/U] |
異常値を示す検査 |
Amyloid β-Protein|アミロイドβ蛋白 [/CSF] Amyloid β-Protein Precursor|アミロイドβ蛋白質前駆体 [/CSF] Atypical Lymphocytes|異型リンパ球 [/B] Granulocyte Colony Stimulating Factor|顆粒球コロニー刺激因子 [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Myeloperoxidase|ミエロペルオキシダーゼ抗原/MPO抗原 [/S] Neopterin|ネオプテリン [/S] Nerve Growth Factor|神経成長因子 [/S] Neutrophil Lipocalcin [/S] Phospholipase A2 Type II [/S] Procalcitonin|プロカルシトニン [/P] Soluble HLA-I [/S] α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/CSF] |
関連する検査の読み方 |
【尿中トランスフェリン】 基準範囲以上に増加することがある。トランスフェリンは分子量が7.7万で、分子量6.7万のアルブミンより大きく、正常腎ではサイズバリアーと電荷バリアーのため、糸球体で濾過されにくい。しかし、腎疾患では糸球体の微妙な変化を捉え、アルブミンよりも尿中に排泄されやすくなる。 【髄液一般検査】 微塵~微濁が高頻度に見られ、時に白濁が見られる。脳脊髄液は脳と脊髄のクモ膜下腔および脳室を満たしており、物理的衝撃保護、化学的恒常性維持や栄養物質・代謝産物の輸送と除去を行っている。髄液中の成分は主として血液に由来しているが、血液脳関門が存在するため、両者には濃度差がある。臨床的には中枢神経疾患が存在すると病態を反映して様々な変化をきたすので、これ等疾患を疑う場合は必須の検査で、概観、蛋白定量、糖定量、細胞数が行われる。急性期にはリンパ球・単球優位の細胞増加を認め、蛋白は増加するが糖は基準範囲内(髄液糖/血糖値比0.6~0.8)である。初期に多形核白血球のみられることがある。糖の低値を認めたら細菌、結核、真菌性髄膜炎を疑う必要がある。 |
検体検査以外の検査計画 | 脳波検査、頭部CT検査、頭部MRI検査 |