疾患解説
フリガナ | フォン ヴィルブランドビョウ |
別名 | |
臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
英疾患名 | von Willebrand's Disease(VWD) |
ICD10 | D68.0 |
疾患の概念 | 血中のvon Willebrand因子の遺伝的な質的異常や量的減少による、血小板粘着障害に起因する先天性出血性疾患で、I型、II型、III型の3つの型に分類される。患者は、家族歴を有し出血が認められる場合が多いが、出血傾向は軽症である。I型は、VWFの量的欠乏で、最も多く見られ常染色体優性遺伝疾患である。II型は、VWF合成の質的障害で、遺伝的異常が原因の常染色体優性遺伝疾患である。III型は、稀な常染色体劣性遺伝疾患で、ホモ接合体ではVWFが検出されない。VWDは、重度の場合は中等度の第VIII因子欠乏症を引き起こすことがある。 |
診断の手掛 | 紫斑が出来易い、小さな切り傷から何時間も出血と止血を繰り返す、月経過多、外科的処置(抜歯、扁桃摘出)後の異常出血などの症状を見たら本症を疑う。ただし、血小板機能は十分良好なので、点状出血および紫斑は見られない。最も診断に有用なパターンは1.出血時間の延長 2.血漿vWFレベルの低下 3.リストセチン凝集能の低下 4.第Ⅷ因子の活性低下の組み合わせである。 |
主訴 |
月経過多|Menorragia 歯肉出血|Gingival bleeding/Ulorrhagia 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 出血斑|Ecchymosis 消化管出血|Gastrointestinal bleeding 鼻出血|Nosebleed/Nasal hemorrhage/Epistaxis |
鑑別疾患 |
2N型フォン ヴィルブランド病 血小板無力症|Thrombasthenia 血友病|Hemophilia 歯肉炎 Bernard-Soulier症候群 |
スクリーニング検査 |
Activated Partial Thromboplastin Time|活性化部分トロンボプラスチン時間 [/P] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S] Platelets|血小板 [/B] |
異常値を示す検査 |
Bleeding Time|出血時間 [/Patient] Clotting Time|全血凝固時間 [/B] Factor VIII|第VIII因子活性/抗血友病因子 [/P] Platelet Aggregation Tes [/P] Protein Z|プロテインZ/プロテインゼット [/P] Prothrombin Consumption [/B] Thromboxane A2 Generation [/B] von Willebrand Factor Activity|フォンウィルブランド因子活性/リストセチン・コファクター活性 [/P] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 血小板は通常は基準範囲内だが、IIB型や血小板型vWDでは軽度低下、血小板形態は正常である。 【PT】【APTT】【トロンビン時間】 APTTとトロンビン時間は延長、PTと血餅退縮は基準範囲内である。 【第VIII因子様活性】 Type1と3では欠乏しており、Type2では低値または基準範囲内になるので、病型診断に有用である。第VIII因子様抗原は主として血管内皮細胞で産生されるが、巨核球や血小板にも存在し、第VIII因子の産生刺激と安定化作用がある。血管内皮ではコラーゲンなどと結合し、血小板粘着作用で止血に重要な役割を果たしている。臨床的には出血時間とAPTTの延長が見られたらvon Willebrand病を疑い測定する。 【フォンウィルブランド因子活性】 vWF:Ag/RCo比>0.7であれば量的vWF異常(Type1)を疑う。vWF:Ag/RCo比<であればType2を疑う。von Willebrand因子はリストセチン存在下で血小板に結合し凝集させ一次止血に関与する生物学的活性を持つ。臨床的には先天性の出血傾向を示すvon Willebrand病の診断に用いる。臨床的にはAPTT、出血時間延長が見られた場合にvon Willebrandを疑い検査を行う。 【第VIII因子活性】 基準範囲内から重度低下まで様々である。第VIII因子関連抗原は低下する。この因子に対するvWFの結合親和性を測定すれば2N型の診断が確定できる。肝で産生されCaイオンの存在下でトロンビンにより活性化され、活性第IX因子と複合体を作り第X因子を活性化する。血漿中ではvon Willebrand因子と結合している。先天性欠乏症は血友病Aと呼ばれ出生男児約6000人に一人の割で発症する。臨床的には乳幼児期より関節内出血、筋肉内出血、消化管出血、血尿、脳内出血等を繰り返す患者と肝実質性疾患の診断、治療効果判定に用いる。 【血小板凝集能・血小板粘着能】 ADPやコラーゲンによる凝集能は基準範囲内であるが、リストセチン凝集能低下が特徴的である。血小板粘着能は低下する。 【毛細血管抵抗試験】 著しく減弱し、出血点は20個以上認められる。毛細血管抵抗試験は毛細血管に圧をかけ毛細血管の破綻による点状出血を観察することにより、血管の脆弱性と透過性を評価する検査である。測定結果には血管性因子の他、血管周囲組織、血小板数、血小板凝集能などが関与している。臨床的には出血性素因を疑う場合に用いる。異常は点状出血の数で判断する。4以下(-)、5~9(+)、10~19(++)、20以上(+++)、前腕の前後面に広範囲の出血斑(++++) 【出血時間】 延長するが信頼性は低い。皮膚に一定の切傷を作り、涌出する血液が止血するまでの時間を測定する検査で、血小板血栓形成で始まる一次止血能を反映する。臨床的には血小板機能検査の一つで、外科的手術前のスクリーニングとして頻用されてきたが、出血時間と術中の出血量が相関しないとの報告もあり、現在はこの検査の臨床的な意義は薄れつつある。血小板が少ないときは、当然延長するので施行する意義はない。 【正常血漿輸血の反応】 注入量以上の第VIII因子活性増加は確定診断に有用である。 |
検体検査以外の検査計画 |