疾患解説
フリガナ | フクジングウハツシュ |
別名 | 副腎腫瘍 |
臓器区分 | 内分泌疾患 |
英疾患名 | Adrenal Incidentaloma |
ICD10 | D44.1 |
疾患の概念 | CT検査や超音波検査などで偶然発見される副腎腫瘍で、良性か悪性かの鑑別をすることと、副腎皮質ホルモン産生能の有無をチェックする必要がある。 |
診断の手掛 | 理由のわからない高血圧、耐糖能異常、高脂血症などを訴える患者を診たら、偶発腫の存在を念頭において検査を進める。診断に必要な検査は、血清コルチゾール、ACTH、アルドステロン、尿中カテコールアミン、17-OHCS、17-KSである。 |
主訴 |
筋力低下|Weakness 高血圧|Hypertension 頭痛|Headache/Cephalalgia 体重減少|Weight loss 体重増加|Obesity 多飲|Polydipsia 多尿|Polyuria 多毛|Hypertrichosis/Hirsutism 動悸|Palpitations 肥満|Obesity/Adiposity 腹痛|Abdominal pain やせ|Weight loss 腰痛|Low back pain/Lumbago 冷汗|Cold sweat |
鑑別疾患 |
クッシング症候群|Cushing's Syndrome 原発性アルドステロン症|Primary Aldosteronism 原発性副腎皮質癌 褐色細胞腫|Pheochromocytoma |
スクリーニング検査 | |
異常値を示す検査 |
17-Ketogenic Steroids|17-ケトジェニックステロイド [/U] Active Plasma Renin|活性型レニン/血漿レニン活性/総レニン [/P] Amino-terminal Propeptide of Type III Collagen [/S] Androstenedione|アンドロステンジオン [/P] C-terminal Telopeptide of Type I Collagen|I型コラーゲンC末端テロペプチド [/S] Corticotropin|副腎皮質刺激ホルモン/コルチコトロピン [/P] Dehydroepiandrosterone Sulfate|デヒドロエピアンドロステロンサルフェート [/P, /P] Osteocalcin|オステオカルシン [/S] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/P] Pyridinoline Cross-linked Telopeptide of Type I Collagen [/S] |
関連する検査の読み方 |
【血漿レニン活性】 アルドステロン過剰によるフィードバッグでPRAは低値になる。レニンは腎糸球体輸入臍動脈壁に存在する傍糸球体細胞で産生されるタンパク分解酵素である。検査は血漿中のレニン活性を有するARC濃度を特異的なモノクローナル抗体を用いて測定する。血圧や水・電解質の調節に重要な役割を持つレニン・アンジオテンシン系の評価には血漿レニン活性が測定されてきたが、ARCの直接測定により、レニンの分泌状態がより正確に判断できる。異常値を示したらアルドステロン濃度(PAC)を測定しPAC:PRA比を評価する。臨床的には腎疾患、高血圧、浮腫、腹水などの症状を持つ患者やミネラルコルチコイド異常が疑われる場合に測定する。 【アルドステロン】 PACはPRAに依存して増減する。PRAが1ng/mL/時以下で、同時にPACが12ng/dL以上あれば、原発性アルドステロン症である。PACは副腎皮質球状層から分泌される鉱質コルチコイドで、レニン-アンジオテンシン系、ACTH、K+が分泌の調節を行っている。PACは遠位尿細管に作用し、Na+とOH-を再吸収し代わりにK+とH+-を排出させる働きがある。PACはレニンにより産生されるアンジオテンシンIIの刺激により産生される。測定は血漿レニン活性と同時に行いPAC/PRA比を評価することが望ましい。また、PACは60歳以上の男性や閉経後の女性では有意に低値を示すこと、早朝に高値で深夜に低値になることに注意する。 【コルチゾール】 午前中のコルチゾール値が15ng/dL以上あれば、Cushing症候群を考える。コルチゾールは副腎皮質束状層から分泌されるグルココルチコイドの主成分で、下垂体性ACTHによって分泌が調節されている。肝と腎で代謝され尿中に排泄されるが、コルチゾール分泌量の20~30%は尿中17-OHCSとして測定される。生理作用は糖代謝、脂肪代謝、蛋白代謝、水・電解質代謝と免疫機構への関与で生命維持に欠くことのできないホルモンである。臨床的には下垂体-副腎機能異常、副腎機能亢進症・低下症、下垂体機能低下症を疑う症状のある患者に測定が必要となる。高値の場合はACTHを測定し、コルチゾール高値でACTHが10pg/mL以上ではACTH依存性Cushing症候群を、10pg/mL未満ならACTH非依存性Cushing症候群を疑う。 【アンドロゲン】 血中DHEA-Sと尿中17-KSが増加すれば、アンドロゲン産生腫瘍か副腎皮質癌を考える。DHEA-Sは副腎皮質で産生される主要なアンドロゲンで分泌はACTHに依存している。DHEAに比べ生物学的半減期が長く(6~8時間)、分泌状態も安定しているので、より診断的有用性が高い。臨床的には副腎皮質に特有の物質であることから、副腎皮質機能の評価に用いる。また、本検査は間接的にはACTHの分泌状態を推定できるのでCushing症候群の病型鑑別が可能である。すなわち、Cushing病は下垂体からのACTH過剰分泌が原因であるのでDHEA-S値は正常~高値であるが、Cushing症候群ではACTHの分泌が抑制されるので、DHEA-S値は低値になる。 17-KSは精巣性テストステロンと副腎性アンドロゲンの総和として尿中に排泄されるが、男性では70%が副腎由来で、睾丸由来の精巣性テストステロンは20~30%で量的に少ないため主として副腎性アンドロゲンの分泌指標とされている。女性や小児は殆どが副腎由来である。臨床的には下垂体-副腎系、下垂体-性腺系の機能異常を疑うときに測定される。 【カテコールアミン】 血漿ノルアドレナリン2ng/mL以上、アドレナリン0.4ng/mL以上は褐色細胞腫である。CAはドパミン(DA)、ノルアドレナリン(NA)、アドレナリン(A)の総称で、主として、交感神経、副腎髄質、脳などに分布している。DAはNAの前駆物質であるが、中枢神経、消化器、循環器、腎などに生理作用がある。NAは交感神経伝達物質として、Aは副腎髄質ホルモンとしての作用がある。臨床的には尿中のCA測定により褐色細胞腫や神経芽腫などの診断に用いる。 |
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