疾患解説
フリガナ | ユーサイロイド シックショウコウグン |
別名 | |
臓器区分 | 内分泌疾患 |
英疾患名 | Euthyroid Sick Syndrome |
ICD10 | E07.8 |
疾患の概念 | Euthyroid sick syndromeは、甲状腺疾患以外の全身疾患を有する患者で、甲状腺機能に異常が無いにもかかわらず、甲状腺ホルモンが低値を示す病態で、絶食、栄養障害、重度の外傷、心筋梗塞、慢性腎不全、糖尿病性ケトアシドーシス、神経性食欲不振症、肝硬変、熱傷、敗血症などで認められる。T3及びfT3が低下する型とT4及びfT4が低下する型がある。発症の機序は不明であるが、末梢でのT4からT3への変換の減少、T4から生成されるrT3のクリアランス低下、サイロキシン結合グロブリンへの甲状腺ホルモンの結合低下などが考えられている。また、TNFα、IL-1などの炎症性サイトカインが原因となっている可能性がある。 |
診断の手掛 | 甲状腺機能低下による症状、徴候を示す患者で、甲状腺疾患以外の全身性疾患を有し甲状腺機能に異常がない患者は本症を疑う。特に、発熱や悪性腫瘍などの消耗性疾患や栄養障害のある患者に認められることが多い。診断上最も難しい問題は、患者が甲状腺機能低下症とEuthyroid sick syndromeのどちらに罹患しているのかを鑑別することである。 |
主訴 |
感覚障害|Sensory disturbance 記憶障害|Memory impairment 傾眠|Drowsiness/Somonolency 月経異常|Menoxenia 嗄声|Hoarseness 耐寒能低下|Decrease in cold function 体重増加|Obesity 皮膚乾燥|Xeroderma 肥満|Obesity/Adiposity 便秘|Constipation 無気力|Helplessness |
鑑別疾患 |
心筋梗塞 慢性腎不全|Chronic Renal Failure 糖尿病|Diabetes Mellitus 神経性食欲不振症 肝硬変|Cirrhosis of Liver 外傷 熱傷 敗血症|Sepsis |
スクリーニング検査 |
Tri-Iodothyronine, Free (fT3)|遊離トリヨードサイロニン/フリーT3/遊離T3/遊離トリヨードチロニン [/S] Thyroxine,Free(fT4)|遊離サイロキシン/遊離T4/フリーT4/遊離チロキシン [/S] Thyroid Stimulating Hormone|甲状腺刺激ホルモン [/S] |
異常値を示す検査 | Cortisol|コルチゾール [/S] |
関連する検査の読み方 |
【TSH】 甲状腺機能低下症の患者では著明な上昇がみられるが、euthyroid sick syndromeの患者は、低値、基準範囲内、またはごくわずかな上昇しかみられない。 【fT3】【T3】 低下が認められる。FT3は総トリヨードサイロニンのわずか0.3%であるが、甲状腺ホルモン作用を発揮する活性型ホルモンで標的細胞のT3受容体に結合して生物学的作用を発現する。T3の80%はT4の脱ヨード反応で生成されるので、T3測定は末梢組織でのT4代謝の指標にもなる。臨床的には甲状腺機能異常を疑う場合、甲状腺機能亢進症の再発を疑うときや甲状腺疾患の治療効果のモニタリングとして測定する。甲状腺機能異常を疑う場合はTSH、FT4とともに測定するが、FT3が基準範囲内でもTSHが増加していれば機能低下状態と考えてよい。 【fT4】【T4】 重症、または、経過が長い患者では低下する。FT4は総サイロキシン量のわずか0.03%であるが標的細胞に入りトリヨードサイロニンに転換後、甲状腺ホルモンとして生理作用を発揮することから、血中FT4濃度は甲状腺機能の最も信頼できる指標といえる。臨床的には甲状腺の機能を直接的に示す指標であることから、甲状腺機能異状が疑われる全ての疾患で測定される。異常値を見た場合は遊離T3、TSH、TGBを測定する。また、自己免疫異常の疑いがあれば、TRAb、TgAb、TPOAbなどの検査を行う。 【リバースT3】 上昇する。T3はT4のベンゼン環から作られるが、外側環からはホルモン活性を持つT3が、内側環からホルモン活性のないrT3が作られる。臨床的にはT3と並行して増減するので、甲状腺機能異常やTGB異常症などで測定される。 【コルチゾール】 euthyroid sick syndromeではしばしば上昇するが、下垂体-視床下部疾患による甲状腺機能低下症では低値または基準値低値を示す。 |
検体検査以外の検査計画 |