疾患解説
フリガナ | コクシジオイデスシンキンショウ |
別名 |
サンホアキン熱 渓谷熱 |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Coccidiodomycosis |
ICD10 | B38.9 |
疾患の概念 | 真菌のCoccidioides immitisおよびC. posadasiiが原因の肺疾患又は血行播種性感染症で、通常は無症候性又は自己限定性の呼吸器感染症であるが、時に進行性疾患を発症し、広範な肺病変や播種性に皮下組織、骨、髄膜に巣状病変を引き起こす。進行性疾患は、男性に多く、HIV感染、高齢、免疫抑制療法、妊娠後半期又は分娩後などが危険因子である。我が国では、最近輸入感染症として報告が増加している。感染は胞子を含んだ塵埃の吸入によるため、農業や建築業と野外のレジャーでリスクが高くなる。吸入されたC. immitisの胞子は、組織侵襲性のある大型の球状体となり、この球状体が大きくなり破裂すると、数千個の小さな内生胞子が放出され、それが新しい球状体を形成する。肺に感染すると、線維化を伴う急性、亜急性または慢性の肉芽腫性反応を特徴とする病変を作り、空洞化するか結節様の貨幣状病変を作る。進行性コクシジオイデス症は、健常者では稀で、HIV感染症、免疫抑制薬使者、高齢者、妊娠後半期または分娩後に発症する可能性が高い。また、特定の人種的背景が知られており、相対リスクの高い順にフィリピン人、アフリカ系アメリカ人、アメリカ先住民,ヒスパニック系、アジア人が挙げられる。4類感染症である。 |
診断の手掛 | 原発性コクシジオイデス真菌症は、殆どの患者が無症候性であるが、時にインフルエンザ又は急性気管支炎に類似した非特異的な呼吸器症状を呈する。症状は、頻度順には発熱、咳、胸痛、悪寒、喀痰、咽頭痛、喀血である。進行性コクシジオイデス真菌症は、一次感染から数週~数年後に微熱、食欲不振、体重減少、脱力感などの非特異症状を発現する。肺病変を発症すれば、進行性のチアノーゼ、呼吸困難、粘液膿性痰、血痰が見られる。流行地では好酸球増加が、診断の手がかりとなることがある。進行性コクシジオイデス症は、初感染から数週間または数カ月、ときに数年後に、微熱、食欲不振、体重減少および脱力感などの非特異的症状が出現する。主に易感染状態の患者に発症する広範囲の肺病変は、進行性のチアノーゼ、呼吸困難、粘液膿性痰または血痰を引き起こすことがある。広範囲の肺病変は,健常者での発生は稀である。 |
主訴 |
咽頭痛|Pharyngodynia 悪寒戦慄|Chill with shivening 喀血|Hemoptysis 胸痛|Chest pain 血痰|Bloody sputum/Hemoptysis 呼吸困難|Dyspnea 咳|Cough 痰|Sputum チアノーゼ|Cyanosis/Cyanopathy 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever |
鑑別疾患 |
アレルギー性肺炎 間質性肺炎 寄生虫症 結核 真菌症 梅毒|Syphilis 肺炎|Pneumonia 肺癌|Lung Cancer |
スクリーニング検査 |
Eosinophils|好酸球 [/B] ESR|赤血球沈降速度 [/B] Leukocytes|白血球数 [/B] VDRL|性病研究所梅毒検査法/VDRL法 [Positive/S] |
異常値を示す検査 |
Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/S] Cells [/CSF] Complement Fixation [/CSF] Complement Fixation Antibodies [/CSF] Interleukin-1|インターロイキン-1/インターロイキン-1α/インターロイキン1β [/CSF] Oxygen Partial Pressure|動脈血O2分圧/酸素分圧/O2分圧/PO2 [/B] Precipitins [/CSF] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/CSF] |
関連する検査の読み方 |
【C.immitis】 喀痰、尿、膿の塗抹標本と培養で検出する。未破裂の球状体は通常、直径20~80μmで厚壁を有し、小型の内生胞子(2~4μm)で満たされている。破裂した球状体から組織中へ放出された内生胞子は、出芽のない酵母と間違えられることがあるので注意する。 【C.immitis球状体】 痰、胸膜液、脳脊髄液、排膿性病変部からの浸出液、生検材料中に見られ、直径20~30μmで厚壁を持ち、小型の内生胞子(2~4μm)が詰まっている。 【コクシジオイデス抗体】 最近の感染では1:4以上になり、それ以上(1:32)になれば、肺外性播種の可能性が高い。免疫不全患者は抗体価が低い。抗コクシジオイデス抗体は免疫拡散法と補体結合法の2種の検査法があるが、免疫拡散法は感染後2週間で80%以上の陽性率を示すため、感染のスクリーニングとして、また補体結合法は重症度判定や経過観察に用いる。補体結合法で16倍以上なら播種性病変を、128倍を超えれば広範囲に病巣が広がっていることが予想されるので、緊急処置が必要になる。 【CSF培養】 めったに陽性にならない。 【好酸球】 好酸球増多が重要な手がかりとなることがある。 【遅延型皮膚過敏反応】 免疫能正常の患者は、通常はコクシジオイジンまたはスフェルリンに対する遅延型皮膚過敏反応が、急性感染後10~21日以内に発生するが、進行性の感染例では認められない特徴的がある。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、皮膚テスト |