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疾患解説

フリガナ バイドク
別名
臓器区分 感染性疾患
英疾患名 Syphilis
ICD10 A53.9
疾患の概念 Treponema pallidumによる全身感染症で、胎盤を通して母体から胎児に感染する先天梅毒と、性行為で感染する後天梅毒がある。5類感染症のため、7日以内に報告の義務がある。感染後3ヶ月までの第1期から、10年以降の第4期まであるが、わが国では第3・4期は極めて少ない。梅毒は、性的接触で感染するが、皮膚接触または胎盤を介して非性的に感染することもある。感染のリスクは、第1期梅毒を有する人との1回の性行為で約30%、感染した母親から胎児へは60~80%である。梅毒トレポネーマは、粘膜または皮膚から侵入し、数時間以内に所属リンパ節に達し、急速に体全体に広がるが、特に皮膚、粘膜、眼、骨、大動脈、髄膜および脳がよく侵される。
診断の手掛 感染の機会を持った患者に典型的な皮膚病変が見られたり、または原因不明の神経疾患を訴えたら本症を疑う。第1期の下疳は、感染後3週、リンパ節腫脹は、感染後4週頃に明らかになる。第1期の直後に続く第2期では発疹、粘膜にびらん、脱毛症などが見られる。第1期梅毒は、3~4週間の潜伏期の後に、第1期病変である下疳が感染部位に発症する。初め紅色丘疹が見られるが、すぐに固い基底部を伴う無痛性潰瘍である下疳を形成し、隣接するリンパ節に圧痛を伴わない腫脹、硬化を認める。この時期は、殆ど症状がないので、感染女性の約半分、および感染男性の1/3は下疳に気づかない。この下疳は、通常3~12週間で治癒し、患者は全く異常がないように見える。第2期梅毒は、スピロヘータが血流を介して拡散するので、広範囲の粘膜・皮膚病変とリンパ節腫脹が生じる。下疳が出現した6~12週間後から発熱、食欲不振、悪心、易疲労感などの症状が認められる。この時点では、80%以上の患者に皮膚粘膜病変が認められる。潜伏梅毒は、活動性梅毒の症状または徴候を欠いた状態で、VDRLとTPHA検査がともに陽性の場合に診断されるので、このような患者を診たら第2期および第3期梅毒を除外するため、徹底的に性器、皮膚、神経、心血管系の診察をすることが重要である。未治療患者の約1/3が、晩期梅毒を発症するが、初回感染から何年、何十年と経たないと発症しない。晩期梅毒の病変は、良性第3期梅毒、心血管梅毒、神経梅毒に分類される。
主訴 関節痛|Arthralgia
乾癬|Psoriasis
丘疹|Papule
硬性下疳|Hard chancre/Hard sore
ゴム腫|Gumma
初期硬結|Initial sclerosis
全身倦怠感|General malaise/Fatigue
脱毛|Alopecia
粘膜疹|Enanthema
発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever
バラ疹|Rose spot/Roseola
扁平コンジローマ|Flat condyloma
発疹|Eruption/Exanthema
リンパ節腫脹|Lymphadenopathy
鑑別疾患 ウイルス発疹症
エイズ/HIV感染症|Acquired Immune Deficiency Syndrome(AIDS)
肝炎
髄膜炎|Meningitis
中毒疹
動脈炎
Gibertばら色粃糠疹
類乾癬
滴状乾癬
薬疹|Drug Eruption
スクリーニング検査 Chloride|クロール [/CSF]
Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B]
Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/CSF]
Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B]
Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B]
Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/CSF]
Leukocytes|白血球数 [/B, /CSF]
Lymphocytes|リンパ球 [/B, /CSF]
Monocytes|単球 [/B]
Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF]
Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S]
VDRL|性病研究所梅毒検査法/VDRL法 [Positive/CSF, Positive/S]
γ-Globulin|γ-グロブリン [/CSF, /S]
異常値を示す検査 Anti-Cardiolipin Antibodies|抗リン脂質抗体/抗PL抗体/抗カルジオリピン(CL)抗体/ループスアンチコアグラント(LA)/リン脂質抗体 [Positive/S]
Anti-Mitochondrial M1 Antibodies [/S]
Anti-Mitochondrial M5 Antibodies [/S]
Cells [/CSF]
TPHA|TPHA法/TPHA分画/トレポネーマ受身赤血球凝集反応/梅毒TPHA [Positive/S]
関連する検査の読み方 【血清反応陽性率】
VDRL:第1期70~75% 第2期99% 第3期75% FTA-ABS:第1期85~95% 第2期100% 第3期98%
【TPHA】
破砕した梅毒トレポネーマを赤血球に吸着させ、梅毒トレポネーマ感作赤血球を作り、これを用いた梅毒血清診断法である。特異性が高く現在最も普及している。レアギン試験に比べ病初期での陽性率が低いこと、治癒しても陽性反応が出るという欠点がある。
【オリゴクローナルバンド】
神経梅毒で陽性になる。髄液蛋白電気泳動像で複数のモノクローナルバンドが認められたときにオリゴクロナールバンドと呼び、ある種のリンパ球が活性化され複数のM蛋白を産生した結果と考えられている。臨床的には多発性硬化症、中枢神経系炎症疾患、変性疾患の髄液中に出現するが、特に多発性硬化症での陽性率が高いことから、当該疾患の診断に用いられる。我が国のMS患者の約50%はオリゴクロナールバンドが陽性とされており、MSの診断に高い有用性を持つ、ただし中枢神経系の炎症や変性疾患でも陽性となることがある。
【抗カルジオリピン抗体】
強陽性である。麻疹、伝染性単核球症、全身性エリテマトーデス、各種ワクチン接種で生物学的偽陽性を示す。
【抗ミトコンドリア抗体】
弱陽性である。
【髄液一般検査】
リンパ球が増加する。蛋白は中等度に増加するが、糖は基準範囲内である。VDRLは陽性であるが、神経梅毒の30~70%では陰性になる。
【IgG合成比】
神経梅毒で基準範囲上限以上である。炎症性神経疾患では中枢神経系の組織でIgGの合成が起こっているが、このIgGの合成量を知るために髄液と血清中のIgGとアルブミンの量からIgG合成比として算定する。臨床的にはIgGの値により炎症性神経疾患、感染症の診断、経過観察に用いる。IgG合成比=(髄液IgG×血清アルブミン)÷(血清IgG×髄液アルブミン) 異常値を認めたらオリゴクロナールIgGバンドの検索、髄液中の免疫グロブリンκ/λ比、IgGサブクラス、IgA Index、IgM Indexの測定を行う。
【リンパ球刺激試験】
PHAとConAが低値である。
【顕微鏡検査】
病巣からの新鮮な滲出液や局所リンパ節の吸引物中に暗視野顕微鏡で梅毒トレポネーマが見られる。
【偽陽性の原因】
1.急性偽陽性反応(6ヶ月以内)最近のウイルス疾患または予防接種、陰部ヘルペス、ヒト免疫不全ウイルス感染、マラリア、薬物常用
2.慢性偽陽性反応(6ヶ月以上続く)加齢、自己免疫疾患、SLE、関節リウマチ、薬物常用
検体検査以外の検査計画 潜伏期梅毒:神経学的検査、第3期梅毒:神経学的検査、胸部X線検査、大動脈画像検査

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