疾患解説
フリガナ | スティーブンス-ジョンソンショウコウグン |
別名 | 中毒性表皮壊死融解症(TEN) |
臓器区分 | アレルギー疾患 |
英疾患名 | Stevens-Johnson Syndrome(SJS) |
ICD10 | L51.1 |
疾患の概念 | 薬剤により皮膚に紅斑を生じ、全身に急速に拡大して熱傷様のびらんを呈する重症の皮膚過敏反応で、表皮細胞が壊死に陥るため、擦るだけで表皮は容易に剥離する(Nikolsky現象)。表皮剥離の面積が30%以上を中毒性表皮壊死剥離症(TEN)と呼ぶ。SJSの50%以上およびTENの95%の症例は、薬剤により誘発されたもので、サルファ剤、抗てんかん薬、抗菌薬が頻度の高い原因薬剤である。薬剤以外では肺炎マイコプラズマ、予防接種、移植片対宿主病がある。SJSとTENは、臨床的に類似し、病変領域が体表面積の10%未満であればSJS、30%を超えればTENとし、病変部が体表面積の15~30%であれば、SJS/TENのオーバーラップとみなされる。発症機序は細胞傷害性T細胞とナチュラルキラー細胞から放出されるグラニュリシンが、角化細胞の細胞死に何らかの役割を果たしている可能性が示唆されており、水疱内の液体のグラニュリシン濃度に重症度との相関が認められる。 |
診断の手掛 |
薬物投与開始後1~3週以内に発熱、全身倦怠感、頭痛、咳、痰などのインフルエンザ様症状や角結膜炎を訴える患者を診たら本症を疑う。その後、標的状の斑が顔面、頸部、体幹上部に出現する。これらの斑は融合して大きな弛緩性水泡になり1~3日かけて剥離する。この疾患特有の皮膚病変は、薄黒い紫斑様紅斑、非典型的な標的様紅斑上の小水疱出現である。重症例では、圧迫を加えた部分で表皮が大きなシート状に剥離し(Nikolsky現象)、疼痛を伴う滲出性の紅斑が生じた皮膚が露出する。多くのの症例では、皮膚の剥離とともに、疼痛を伴う口腔内の痂皮、びらん、角結膜炎、尿道炎、腟癒着がみられる。 【診断基準:2015年厚労省】 (1)概念:発熱を伴う口唇、眼結膜、外陰部などの皮膚粘膜移行部における重度の粘膜疹および皮膚の紅斑で、しばしば水泡、表皮剥離などの表皮の壊死性障害を認める。原因の多くは医薬品である。 (2)主要所見(必須):①皮膚粘膜移行部の重篤な粘膜病変(出血性あるいは充血性)がみられること。 ②しばしば認められるびらんもしくは水泡は、体表面の10%未満のこと。 ③発熱。 (3)副所見:④疹は非典型的ターゲット状多型紅斑。 ⑤眼症状は眼表面上皮欠損と偽膜形成のどちらか、あるいは両方を伴う両眼性の急性角結膜炎。 ⑥病理組織学的に、表皮の壊死性変化を認める。 *主要所見の全てを満たす場合スティーブンス-ジョンソン症候群と診断する。 |
主訴 |
壊死|Necrosis 関節痛|Arthralgia 紅斑|Erythema/Rubedo 水疱|Bulla/Blister 頭痛|Headache/Cephalalgia 咳|Cough 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 痰|Sputum ニコルスキー現象|Nikolsky phenomenon 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 皮膚剥離|Abrasio cutis |
鑑別疾患 |
ブドウ球菌感染症 ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 薬疹|Drug Eruption 薬物アレルギー 多形滲出性紅斑 ウイルス性発疹症 腫瘍随伴性天疱瘡 毒素性ショック症候群|Toxic Shock Syndrome(TSS) 剥脱性紅皮症 熱傷 |
スクリーニング検査 |
Anti-Streptolysin O|抗ストレプトリジンO価/抗ストレプトリジン抗体 [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Eosinophils|好酸球 [/B] Erythrocytes|赤血球数 [/B] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Leukocytes|白血球数 [/B,/B] Lymphocytes|リンパ球 [/B,/B] Neutrophils|好中球 [/B,/B] Platelets|血小板 [/B] |
異常値を示す検査 |
5-Oxoproline [/RBC, /U] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【IgE】 増加することがある。IgEは肥満細胞や好塩基球のIgEレセプターに結合し、ヒスタミンやロイコトリエンなど様々なケミカルメディエーターを放出しI型アレルギーを引き起こす。臨床的にはアレルギー疾患、寄生虫疾患の他、全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどで高値となる。IgEはアレルギーと密接な関係にあるが総IgE値はアレルギーの強さを必ずしも反映しない。異常値を見た場合は特異IgEを測定する。 【リンパ球刺激試験】 原因薬剤の同定に用いる。薬剤によるアレルギーを疑う患者のリンパ球に、原因と考えられる薬剤を加えて培養すると、もし患者のリンパ球の中に薬剤を異物と認識する感作リンパ球が存在すれば、感作リンパ球は薬剤の刺激を受けて幼若化する。この検査はアレルギー反応のうち細胞媒介型(IV型)アレルギー、すなわち肝障害、接触皮膚炎などにどの薬剤が関与しているかを知るために行う。 【組織診】 剥離した皮膚の組織学的な検査では、壊死を来した上皮が認められ、鑑別に有用な情報となる。 【原因薬剤】 サルファ剤、抗てんかん薬、抗生物質が多い。報告例の6%は一般用総合感冒薬である。 【診断基準】 病巣が体表面積の10%未満ならStevens-Johnson症候群、30%を超えれば中毒性表皮壊死剥離症である。 |
検体検査以外の検査計画 |