疾患解説
フリガナ | トキソプラズマショウ |
別名 | |
臓器区分 | 寄生動物疾患 |
英疾患名 | Toxoplasmosis |
ICD10 | B58.9 |
疾患の概念 | 細胞内寄生原虫であるToxoplasma gondiiによる人畜共通感染症で、わが国の成人の25%は不顕性感染を受けている。エイズ患者では日和見感染として発症するが、妊婦では先天性トキソプラズマ症も注意が必要である。原虫は鳥と哺乳類に多く寄生しているが、ネコの糞便からの感染が最も一般的と云われている。ネコの糞便で汚染された食品や水中のオーシストが経口感染するとタキゾイトが放出され、全身に広がり、急性感染に続いて防御免疫反応が起こり臓器内で組織シストが形成され、このシストは主に易感染性患者で再活性化することがある。 |
診断の手掛 |
1.先天性トキソプラズマ症:未感染の妊婦が初感染すると、原虫が胎盤を通じて胎児に移行する。妊娠初期の感染では死産や眼、中枢神経の障害を起こす。妊娠後期の感染では網脈絡膜炎、精神運動障害、水頭症、脳内石灰化を起こす。 2.後天性トキソプラズマ症:大部分は不顕性感染で無症状のまま慢性感染状態に移行する。一部はリンパ節腫脹が見られ、感冒様症状が見られる場合もあるが予後は良好である。眼では網膜黄斑部に病変を生じる。 3.免疫不全患者:免疫力低下により、慢性トキソプラズマ感染症が急性化する日和見感染症を発症する。全身に原虫が移行すると脳髄膜炎、肝炎、肺炎、心筋炎などの重篤な症状を来す。免疫不全を疑われる患者がリンパ節炎や眼症状を訴えたら、感染早期に上昇するIgM抗体価を測定する。 |
主訴 |
筋肉痛|Myalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 発汗異常|Dyshidrosis/Paridrosis 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 発疹|Eruption/Exanthema リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
伝染性単核球症|Infectious Mononucleosis 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma ネコひっかき病 サルコイドーシス|Sarcoidosis 結核 亜急性壊死性リンパ節炎 ウイルス性リンパ節炎 網脈絡炎 髄膜脳炎 免疫不全症 エイズ/HIV感染症|Acquired Immune Deficiency Syndrome(AIDS) |
スクリーニング検査 |
α-Fetoprotein|α-フェトプロテイン [/S] Erythrocytes|赤血球数 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B, /P] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /B, /CSF] Lymphocytes|リンパ球 [/B, /CSF] Monocytes|単球 [/B, /CSF] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF] |
異常値を示す検査 |
Antibody Titer [/CSF] Cells [/CSF] Complement Fixation [/S] Complement-fixing Antibodies [/S] Hemagglutination Inhibition [/S] Indirect Fluorescent Antibodies [/S] Methylene Blue (Sabin-Feldman) Dye Test|セービン-フェルドマン色素試験 [/S] Toxoplasma Gondii Antibody|トキソプラズマ抗体/トキソプラズマIgG抗体/トキソプラズマIgM抗体/抗トキソプラズマ抗体 [Positive/S] |
関連する検査の読み方 |
【マウス腹腔内接種】 急性トキソプラズマ症の診断はマウスに試料を接種し、6~10日後に寄生虫を検出する。 【原虫の検出】 髄液、リンパ節、羊水、胎盤のギムザ染色、蛍光染色で原虫を確認する。 【トキソプラズマ抗体】 IgM抗体が陽性の場合は急性感染を意味し、診断上有用である。抗体は最初の2週間に現れる。リンパ節炎の場合も抗体価は高い。1~2ヶ月でピークに達するIgG抗体は、陽性でも感染か既往かの判断が困難の場合がある。低IgG抗体を伴うIgM抗体は、免疫能正常者の最近の感染を示す。 【抗体価判定の際の注意】 エイズ患者では抗体価の上昇が弱いため、抗体価で感染の有無を判断することはできない。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、脳造影CT検査、脳MRI検査、眼科検査 |