疾患解説
フリガナ | アクセイリンパシュ |
別名 | リンパ腫 |
臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
英疾患名 | Malignant Lymphoma |
ICD10 | C85.9 |
疾患の概念 | リンパ系細胞の悪性腫瘍で、組織学的にはホジキンリンパ腫(HL)と非ホジキンリンパ腫(NHL)に分けられる。NHLは、B細胞性とT/NK細胞性に分けられる。HLとNHLの発症比率は1:10である。HLとNHLの特徴的な相違は、1.HLは特定のリンパ節群に限局して浸潤するが、NHLは通常は複数のリンパ節群に播種する。2.進展はHLは隣接部位に拡がる傾向があるが、NHLは隣接していない部位に拡がる傾向が強い。3.HLは、リンパ細網系細胞の限局性または播種性の悪性増殖で、主にリンパ節組織、脾臓、肝臓および骨髄に浸潤する。NHLは、リンパ節、骨髄、脾臓、肝臓および消化管を含むリンパ細網組織のリンパ系細胞の単クローン性悪性増殖が原因の疾患である。 |
診断の手掛 | 無痛性のリンパ節腫脹、不明熱、寝汗、体重減少、そう痒を訴える患者を診たら本症を疑う。AIDS患者で、脳症状を訴える患者にも注意する。HLは殆どの患者に無痛性の頸部リンパ節腫脹がみられる。機序は不明であるが、アルコール飲料を摂取した直後に病変部位に疼痛が生じ、それにより早期に診断の示唆が得られることがある。NHLは多くの患者は症状を伴わない末梢リンパ節腫脹を呈し、腫大したリンパ節は弾性があり、初期には個々のリンパ節は分離しているが、後に癒合する。一部の患者は病変が限局性であるが、複数の領域に病変が見られる患者が多いので慎重に触診する。 |
主訴 |
嚥下障害|Dysphagia かゆみ|Itching 原因不明熱|Fever of unknown origin/FUO 呼吸困難|Dyspnea 食欲不振|Anorexia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 寝汗|Night sweats 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 脾腫|Splenomegaly やせ|Weight loss リンパ節腫脹|Lymphadenopathy ペル・エプスタイン型発熱|Pel-Ebstein fever |
鑑別疾患 |
エイズ/HIV感染症|Acquired Immune Deficiency Syndrome(AIDS) 結核 サルコイドーシス|Sarcoidosis 伝染性単核球症|Infectious Mononucleosis リンパ節炎 亜急性壊死性リンパ節炎 悪性腫瘍リンパ節転移 EBウイルス感染症|Epstein-Barr Virus Infection ぶどう膜炎 ランゲルハンス細胞組織球症|Langerhans Cell Histiocytosis(LCH) 骨腫瘍 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Calcium|カルシウム [/U, /S, /U] Creatinine|クレアチニン [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Lymphocytes|リンパ球 [/B] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] α2-Globulin|α2-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
1-Methylinosine [/U] 5'-Nucleotidase|5'-ヌクレオチダーゼ [/S] 5-Nucleotide Phosphodiesterase Isoenzyme V [/S] Alkaline Phosphatase, Bone Isoenzyme|骨型アルカリホスファターゼ/骨性ALP [/S] Anti-p53 Antibodies|抗p53抗体 [/S] CA 125|CA125 [/S] Copper|銅 [/S] Copper:Zinc Ratio [/S] Epidermal Growth Factor|上皮細胞増殖因子/上皮細胞成長因子 [/U] Epstein Barr Virus Antibodies|EBウイルス抗体/抗EBウイルス抗体 [/S] HTLV-1 DNA [Positive/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Lactate Dehydrogenase Isoenzymes|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S] Metallopanstimulin [/S] N2,N2-Dimethylguanosine [/U] Neopterin|ネオプテリン [/S, /U] Neuron-specific Enolase|神経特異エノラーゼ [/S] Oligoclonal Banding|オリゴクローナルバンド [/CSF] P53 Gene|p53遺伝子/p53関連検査 [/Blood] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/P] pH|尿pH [/B] Phospholipase A|ホスホリパーゼA [/S] Pseudouridine|シュードウリジン [/U] Ribonuclease|リボヌクレアーゼ/RNアーゼ [/S] Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor-p55 [/S] Thymidine-5'-triphosphatase [/S] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] Volume [/U] Zinc|亜鉛 [/S] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/S] β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [/CSF, /S] |
関連する検査の読み方 |
【LD】 LDが上昇する。経過観察に必要な検査で、急性期には1~2/週、回復期には1~2/月毎に測定する。 【ALP】 600IU/L以上の高値で、アイソザイムはALP1が増加する。 【BCL-2遺伝子再構成】 びまん性B細胞性リンパ腫で、再構成が生じていると完全寛解には至りにくい。 【B細胞表面免疫グロブリン】 B細胞性ALLで増加する。 【抗p53抗体】 高値になる。p53はアポトーシス誘導、遺伝子修復、細胞周期回転抑制などの生理機能を持ち、癌抑制遺伝子としての働きを持つ。胃、大腸、食道、肺、脳などの多くの悪性腫瘍では、p53遺伝子が変異により失活し、変異p53蛋白が産生され、抗p53抗体が出現する。抗p53抗体は癌細胞特異抗原に対する抗体であること、癌細胞が微量であっても検出が可能なことから、臨床的には癌の早期発見と再発モニタリングに有用とされている。陽性の場合は病理組織検査で腫瘍細胞のp53遺伝子変異の有無を確認する。 【p53遺伝子】 遺伝子変異を認める。p53遺伝子の変異はヒトのあらゆる組織の腫瘍で認められる。変異は多くの場合17番染色体短腕(17p)の一方のアレル欠失と点突然変異である。この遺伝子の変異はヒトのあらゆる組織由来の腫瘍で認められる。臨床的には癌の悪性度の評価や予後推定に有用である。 【遺伝子検査】 化学療法後の残存細胞の度合い確認や寛解の確認のほか、微量残存細胞の検出、骨髄への浸潤の有無を見るために行う。 【可溶性IL-2レセプター】 増加する。sIL-2Rは細胞表面に存在し、リンパ球などと結合し刺激を細胞内に伝える働きがある。悪性リンパ腫では受容体の発現が亢進している為、血液中のsIL-2Rが増加するので、これら疾患の重症度推定、治療効果判定などに用いる。臨床的にはATLLと非ホジキンリンパ腫の病勢や治療効果判定、再発の早期発見に使われる。 【CBC】 中等度の正色素性正球性貧血を認める。白血球減少、白血球の著増、貧血が見られれば予後不良である。 【血液像】 悪性のリンパ球がしばしば認められる。50%の患者に好酸球増加がみられる。 【パス染色】 陽性になる。細胞内にグリコーゲンやムコ蛋白があるとSchiff試薬中の塩基性フクシンが反応し、赤色または紫紅色の物質が形成される。この色素の出現を観察し、白血病細胞の芽球をリンパ性、骨髄性、単球性に鑑別する。急性リンパ性白血病では粗大顆粒状、赤白血病の巨赤芽球様細胞はびまん性~顆粒状に染色される。 【骨髄像】 異常細胞の骨髄浸潤がある。 【細胞表面マーカー】 腫瘍細胞の分化レベルとその由来の検討に有用である。 【ESR】【CRP】 いずれも約50%の患者で、活動期に増加するが、寛解期には基準範囲内に戻る。 【蛋白分画】 アルブミン低下、α1、α2-グロブリンの増加が疾患活動期に認められる。 【ペプシノゲンI】【ペプシノゲンII】 胃悪性リンパ腫で高値を示す。 【リンパ球刺激試験】 PHAとConAが低値である。リンパ球にレクチンの一種であるPHAやCon-Aを加え培養すると、リンパ球は活性化され大型の芽球様細胞になる。PHAとCon-AはT細胞を活性化し、PHAはCD4陽性細胞を、Con-AはCD陽性細胞をより強く活性化する。この現象を利用してリンパ球の免疫機能を見るのがリンパ球幼若化検査である。異常値を認めたらリンパ球ポピュレーション比率、免疫グロブリン値・産生能、免疫電気泳動などを行う。 【リンパ節生検】 遺伝子検査は確定診断のためにリンパ節の生検が必要で同時に、染色体分析、遺伝子、表面マーカーの検査も行う。HLではリード・ステルンベルグ細胞がみられる。 【尿沈渣】 尿路に発生すると異型細胞(悪性リンパ腫細胞)がみられることがある。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、CT検査、PETスキャン、MRI検査、腹部超音波検査 |